本、CD、映画日記

目標は年間読書100冊。その記録と目標管理をかねたブログです。

ライフ・オブ・パイ

2013-02-24 06:03:00 | Weblog
■本
14 Think Simple/ケン・ シーガル

 広告代理店のクリエイターの立場から、スティーブ・ジョブズとの打ち合わせエピソードを交えつつ、その考え方のエッセンス(複雑さを拝して、徹底的にシンプルにものごとを考え実行に移していく)を解説した本です。タイトル通り、「シンプルに考えろ」というメッセージだけを、それこそシンプルに伝えてあるだけなので、読んでいるとかなりくどい印象が残りますし、若干自慢話的な文体も人によっては嫌悪感を持たれるかもしれません。それでも、スティーブ・ジョブズと筆者を含む広告代理店との緊迫感溢れるやりとりや、失敗も含めた数々のエピソードは読み物としてはなかなか興味深く楽しめます。ジョブズ本として、一番に読むべき本ではないかもしれませんが、他のジョブズ本を読んだ上で、多面的にスティーブ・ジョブズという人間やアップル社の哲学のようなものを学びたい人にはお勧めできる本です。


■CD
11 99匹目のサル/THE COLLECTORS

 相変わらずのコレクターズ節、ぶれません。青臭いポジティブな歌詞にシンプルでキャッチーだけど少しトリッキーなメロディー。聴いていて元気が出てきます。大人向けの良質なロックアルバムです。全盛期のような球威はないものの、コントロールと緩急自在の投球術で、好成績を残し続けるベテランピッチャーを連想させるような作品です。


■映画
10 ブリジット・ジョーンズの日記/監督 シャロン・マグワイア
11 ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日/監督 アン・リー

10 際どいセクシャルな表現が多すぎる気もしますが、女性の赤裸々な感情を誇張気味にコミカルに描かれたコメディ作品です。頭を全く使わず気楽に楽しめます。レニー・ゼルウィガーはこういう、少し頭の弱い不器用な女性を演じさせると本当にうまいです。役作りのために体重をかなり増やされていますが、ひきつり気味の笑顔がとても魅力的です。ヒュー・グラントも格好いいけど外道な男を自虐的に巧みに演じています。コリン・ファースもダサ格好いい役を好演。若干ベタ過ぎるので日本人の好みに合うかは微妙な面もありますが、優秀なスタッフの確かな技術に支えられた優れたコメディ作品だと思います。

11 冒険を楽しむアドベンチャー作品としても、美しい映像を楽しむ芸術作品としても、哲学的な思索を楽しむ文芸作品としてもとらえることのできる、独特な味わいのある重層的で魅力的な作品です。アカデミー賞ノミネートも納得のクオリティです。アン・リー監督らしい、雄大な自然の描き方はとてもすばらしく、CGが駆使された無数の星がきらめく夜の大海原のシーンは息をのむような美しさです。3D映像としてもかなりレベルが高いですが、この作品に3Dが必要かは正直疑問です。ストーリーと通常の2D映像だけでシンプルに勝負してもよかったかも。それだけのクオリティの作品だと思います。単純なハッピーエンドではない、観客に結論を委ねる引っかかりのある結末は賛否が分かれるかもしれませんが、僕は好きです。中年のパイ役を演じる俳優が、苦悩を抱えながらもどこかコミカルな印象を与える絶妙の演技をされていて、後味もそう悪くはありません。
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オーデュボンの祈り

2013-02-17 16:09:50 | Weblog
■本
12 オーデュボンの祈り/伊坂 幸太郎
13 池上彰の政治の学校/池上 彰

12 「しゃべる案山子が殺害される」というあらすじに惹かれて、ずっと読みたかった作品です。伊坂 幸太郎さんのデビュー作ということですが、これまで読んだ伊坂さんの作品の中で一番好きです。伊坂さんのウエルメイド過ぎる部分(SEらしい隙のない論理構造)が、若干苦手だったので、この作品のデビュー作らしい綻び(主人公のコンビニ強盗の動機があまりにも不自然なところなど若干バグが消されきれていないところ)が逆に魅力的でした。おそらく多くの書評でも指摘されているであろう、村上春樹さんの「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」とのその世界観の類似性も、僕はあまり気になりませんでした。むしろ、優れた作家による、無から存在感のある世界を作り出せる力量に感心しました。十分すぎるくらいカタルシスが感じられ、読後感もよく、読んでいてとても心地のよい作品でした。

13 いつも通りの池上さん節で、わかりやすく政治について教えてくれます。これまたいつもながら、政治をよくするための池上さんなりの処方箋が語られているところも参考になります。天皇陛下に新任挨拶に来る他国の外交官は皇居までの案内に車か場所を選べる、などトリビアルなネタも含まれていて読んでいて面白いです。恥ずかしながら「代議士」が衆議院議員だけに使われる呼称であることは初めて知りました。


■CD
 9 Comes a Time/Neil Young
10 ANTHOLOGY '59-'62/Phil Spector

9 ニール・ヤングは作品ごとに静と動の対比がかなりはっきりしていますが、「After the Gold Rush」や「Harvest」といった静の名作群と比べても、この作品の穏やかさは非常に際立っています。エッジが立っていないためか、世間的な評価はこの2作品には及びませんが、個人的にはこれらに並び立つ傑作だと思っています。消え入りそうな優しい声で訥々と歌われていて、胸に染み入ります。疲れているときに聴くとかなり癒されます。

10 敏腕プロデューサー、フィル・スペクター初期の作品集です。どの曲もとにかくPOPです。3枚組でamazonで900円と超お買い得です。代表曲であるロネッツの「ビー・マイ・ベイビー」は1963年の作品なので、本作には含まれていませんが、全米ナンバー1ヒットのThe Crystalsの「He's A Rebel」や The Teddy Bearsの「To Know Him Is To Love Him」も収録されています。
さすがに通して聴くとお腹いっぱいになりますが、長く楽しめる作品だと思います。


■映画
 9 オペラ座の怪人/監督 ジョエル・シューマカー

 歌も日本語で吹き替えされているバージョンで観たのがまず失敗でした。決して歌が下手というわけではないのですが、無理やり日本語の歌詞に乗せられるとどうしても違和感が先に立ちます。ストーリーや各キャラクターがそれほど共感できるものではないだけに(行動の背景となる部分の心理描写が甘いので、みんな自分勝手なだけのような気がします)、歌の部分の違和感と合わさり、作品世界に最後まで入り込むことが出来ませんでした。映像自体は独特の世界観を表現しようと、モノクロを巧みに使うなど、かなり工夫されていたので残念です。
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40歳からの仕事術

2013-02-10 10:24:43 | Weblog
■本
10 ビッグデータの衝撃/城田 真琴
11 40歳からの仕事術/山本 真司

10 「ビッグデータ」を単なるバズワードとしてとらえることなく、地に足がついた丁寧な議論でそのビジネス上の可能性について語ってくれている良書です。「ビッグデータ」についての基本的な知識からそれを支える技術までわかりやすく解説されており、また、国内外の活用事例もネット企業に限らず幅広く取り上げてくれているので参考になります。最近、よく取り上げられる「ハドゥープ」というソフトウエアがなぜ重要で、人材不足が指摘されることの多い「データサイエンティスト」がどのような職種であるのか、ということも本書を読むととてもよく理解できます。「データマーケットプレイス」や「データ・アグリゲーター」という概念も、具体的にどのようなものであるか解説してくれているので、自分の仕事との関わりがイメージしやすいです。「ビッグデータ」関連書籍ではこの本を真っ先に読むことをお勧めします。

11 筆者の考える「40歳からの仕事術」を小説形式でわかりやすく説明してくれている本です。戦略論的視点から、時間、体力などの制約がある40代が、「何を捨てて、何に集中して」仕事をしていけばよいかを、登場人物に対する友人のアドバイスというかたちを借りながら教えてくれます。要約すると「他者の借り物ではなく自分の頭で考えた価値あるアウトプット」をいかに出して、実践につなげ成果を出していくか、についての自己鍛錬法が書かれた本だと思います。MBA取得者にありがちな単なるフレームワークの提示に留まらず、具体的な活用法について書かれているところがとても参考になります(この本を読んで「仮説思考」の具体的イメージが初めて持てました)。「想像力を働かせて、『あるべき姿』を描き出す」というメッセージや「論理は、右脳に映ったイメージを他人に伝達するときに必要」といったように、右脳と左脳の役割分担の考え方が特に個人的には刺激的でした。最近、読書が必ずしも仕事上の成果に結びつかないことに漠然とした疑問を感じていたので、この本の内容からいろいろと考えさせられました。僕もまず、英語の勉強と「自分の頭で考える」ことから始めたいと思います。

■CD
7 Long Way to Fall/Ulrich Schnauss
8 Greatest Hits/Morrissey

7 Ulrich Schnaussの最新作。いつもの雄大でドラマティックな構成はそのままですが、本作はかなり明るい印象が残ります。じっくり音に浸れます。このジャンルは「シューゲイザー・エレクトロニカ」というらしいですが、「Screamadelica」のころのプライマル・スクリームやマイ・ブラッディ・バレンタインが好きな方にもお勧めです。

8 「The Smiths」のヴォーカリスト、モリッシーのソロベスト盤。「The Smiths」と比べると捻りのない単なるポップソングばかりですが、モリッシーの古臭くも新しい独特の声に乗ると、いろんな企みが隠されるような気がして、聴いていてドキドキしてしまいます。ポップソングの限界を知り尽くした人がそれでも歌い続けるという、自分のアーチスト人生自体を壮大な皮肉にして体現している気がします。


■映画
8 スミス都へ行く/監督 フランク・キャプラ

 いかにもフランク・キャプラ監督作品らしい、性善説的視点にたった作品です。ますます問題解決が複雑になっている現在の政治状況からこの映画を観ると、フランク・キャプラ的世界がうらやましくもあり、一つのソリューションを提示してくれているような気もします。ストーリーとしては、純朴な青年がひょんなことから政治家となり、自分のささやかな政策を主張したところ、政治界の黒幕の利害に抵触し窮地に陥るが、周囲の助けと主人公の情熱により克服していくという、今となってはよくあるストーリーですが、登場人物の心情を丁寧に描きつつ、巧みにエンターテイメント作品として仕上げています。若干ベタですが、登場人物の表情のアップで心境の変化を表す手法がとても効果的で、観ていてほのぼのとした温かい気持ちになります。
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レ・ミゼラブル

2013-02-03 08:04:34 | Weblog
■本
8 ウェブで政治を動かす!/津田 大介
9 ラッシュライフ/伊坂 幸太郎

8 政治家のソーシャルメディア利用実態の解説に留まらず、我々一般市民がインターネットの双方向性を活かしつつ、どのように政治にコミットしていくかについて書かれた本です。筆者の高い志が伝わってきますが、政治家、行政、一般市民と次々に活用法の視点が変わりつつ語られていて若干散漫な印象がし、いいことが書かれているなあ、と読書中には思うのですが、不思議とあまり読後に得られた知見として残るものがありません。「アラブの春」での既存政治体制を打ち倒した後の各国の混乱を見ていると、決して「ウェブで政治を動かす」ことは万能ではないと思うので、変革のきっかけとしてウェブを使うことは正しいと思いますが、そのできることとできないことをもう少し冷静に考えるフェーズに来ているのかも、とも思いました。

9 伊坂幸太郎さんの最高傑作、との書評もあったので読みました。相変わらずキャラは立っていて、魅力的ですし(特に、父親を自殺でなくした登場人物のその父とのエピソードとサラリーマンがリストラにあった後ボディブローのように疲弊していく様子の描き方が巧みです)、広げるだけ広げた伏線を徐々にかつ効果的に回収していく手腕もさすがです。死体が勝手にバラバラになり、さらに再度元に戻って動き出す、といった非現実的な話の背景を、複数の登場人物の絡み合いからロジカルに解明していく一方で、迷宮入りの事件を解決し、超高額配当の宝くじを当てる現実離れした教祖を登場させているところは、個人的には場当たり主義的な印象も持ちました。ただ、読後感もよく、読んでいて楽しい作品だと思います。


■CD
5 Lost Sirens/New Order
6 Anthology/Muddy Waters

5 2005年に発売された「Waiting For The Sirens Call」のアウトテイク集です。8年前の作品のアウトテイク集なので音は古臭い(2005年にしても古臭くどちらかといえば1990年代風の作品が多いです)ですが、ここまで突き抜けると思わず聴いていて笑みがこぼれます。キャッチーな曲が多いですが、New Orderの影の部分に惹かれている人にとっては物足りないかもしれません。といっても1990年代以降のNew Orderの作品は大体こんな感じなので、特にこの作品だけが、劣っているというわけではありません。

6 Amazonで3枚組み900円と格安だったので買いました。エリック・クラプトンやキース・リチャーズなど、ロック界の大御所に影響を与えた、ブルース界の代表的アーチストです。通して聴くとブルースの世界にどっぷり浸れてお腹いっぱいになりますが、不思議と飽きることなくまた聴きたくなります。ブルースのCDにしては音が格段によい印象です。


■映画
6 めがね/監督 荻上直子
7 レ・ミゼラブル/監督 トム・フーパー

6 「かもめ食堂」とほぼ同じスタッフで制作された、ゆるーい感じの癒し系作品です。もたいまさこさんが不気味でかわいらしく神秘的で滑稽な役を好演されています。南の島のさびれた海岸に都会での生活に疲れた女性がやってきて、そこの住民や客のマイペースさに振り回されながら、影響を受けていく、という私好みの設定ですし、「かもめ食堂」は大好きな作品ですが、本作はウエルメイド過ぎるのか、あまり引き込まれませんでした。小林聡美さん演じる主人公の旅の動機(あえて描かなかったのだと思いますが)が不明で、あまり共感できなかったのもその理由の一つです。それにしても、薬師丸ひろこさんは、すごい存在感の役者さんになりましたね。友情出演の一瞬だけの登場なのに強烈なインパクトでした。

7 原作は子ども向け小説しか読んだことがなく、ミュージカルも見たこともないので、想像以上に複雑な構成をもった作品であったことに、まず驚きました。その複雑な構造を持つ作品を大胆に話を要約しつつ、ほぼ歌だけで描いて映画として成立させている、トム・フーバー監督の手腕に感心します(元ネタのミュージカル版が優れていたのだとも思いますが)。各楽曲のクオリティは本当に高く、また、それを歌い演じる俳優人の演技も素晴らしいです。ヒュー・ジャックマン、ラッセル・クロウ、アン・ハサウェイといったメインキャストはもちろんですが、個人的には、コゼットを虐待していたうさんくさい宿屋(この役を演じているヘレナ・ボナム・カーターも相変わらずの怪演で、悲劇に巧みにコメディ的要素を盛り込んでいます)の娘エボニーヌ役を演じたサマンサ・バークスの演技に最も惹き付けられました。舞台版でも同じ役を演じていただけあって、片思いにゆれる女性の心情を抜群の歌唱力で完全に自分のものにしました。この役を有名ハリウッド女優にあてなかったあたりも、トム・フーバー監督の見識を示していると思います。2時間半ほどの映画なのに、ダレることなく一気に観終えました。お勧めの作品です。オスカーもかなりの部門で取るのではないでしょうか。
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