本、CD、映画日記

目標は年間読書100冊。その記録と目標管理をかねたブログです。

国家を考えてみよう

2020-06-27 06:09:36 | Weblog
■本
59 国家を考えてみよう/橋本治
60 ポートレイト・イン・ジャズ/和田 誠 、 村上 春樹

59 橋本治さんのトリッキーな論理展開の本を久しぶりに読んでみたくなり手に取りました。やはりこの方の頭の良さは桁外れです。「国家」には、「国民」を示す「nation」と「領土」を示す「state」の二つの考え方があるという説明や、「大政奉還」(征夷大将軍がその職を辞するとともに政治の全権を朝廷に返還する)と「王政復古」(朝廷がこれからは天皇が日本の政治の中心となることを宣言すること)の二つのステップの説明など、似たような言葉の視点の違い理解することにより、その本質がよりくっきりと浮かび上がるという知的興奮を得ることができました。それ以外にも、「封建制度」(土地を諸侯に分け与えて統治させる制度-ただし当時の日本は土地の所有を許可していなかったので所有権を保証するだけ)や「国家主義」(多民族国家などで、単一のアイデンティティを持つ人々が独立して国家を作ろうと考えることや、既存国家が存亡の危機に立たされているときにその国家をなんとかしようと考えること)など、普段何気なく使っている言葉の意味を深く考えることの重要さも教えてくれます。結局は、「立憲主義」や「民主主義」といった、過去の様々な失敗を乗り越えて生み出された仕組みのメリット、デメリットを丁寧に考えながら、個々人が国家に関わっていくことの大切さを若者向け(「ちくまプリマー新書」なので)に説明された本だと、私は理解しました。橋本さんがご存命であれば、今のコロナ状況下を適切に分析され、示唆に富んだ発言をされていたと思うので、その不在が残念でなりません。

60 昨年亡くなられたグラフィックデザイナーの和田誠さんが描かれたジャズ・ミュージシャンのイラストに、村上春樹さんがそのミュージシャンにまつわるエッセイを添えられた本です。単行本の「ポートレイト・イン・ジャズ」は読んていたのですが、続編の「ポートレイト・イン・ジャズ2」の方は未読だったので、1、2が合わせて収録されている文庫本を読みました。ジャズはあまり聴かないので、知っているアーチストは三分の一にも満たないのですが、和田さんのイラストと村上さんのエッセイから、個性に満ちた人物像やその音楽が伝わってきて、実際の演奏も聴いてみたくなりました。個人的には、サックスやピアノといったメジャーな楽器よりもヴィブラフォンやフルートといったマイナーな楽器を演奏する人物やそのレコードに興味を持ちました。ジャズはロックやポップス以上にライブ盤が重視されていて、レコード収集にはまると、かなり厄介そうなので、徐々に接していきたいと思います。


■映画 
54 ハートブレイク・リッジ 勝利の戦場/監督 クリント・イーストウッド
55 コンフィデンスマンJP-ロマンス編-/監督 田中亮

54 引き続き、クリント・イーストウッド関連作品を観ています。この作品は21世紀に入ってからのイーストウッド監督作品の奇跡的に素晴らしいクオリティの作品には遠く及びませんが、それでも、監督として俳優クリント・イーストウッドの魅力を十分活かした演出は見事です。こういう頑固で愛情表現が不器用な中年役が本当に似合います。無気力な海兵隊員たちをしごき上げて、嫌みな上官に一泡吹かせる成果を上げるという、わかりやす過ぎる展開も痛快です。それでも、タイトルになっている主人公の朝鮮戦争での悲惨な経験やグレナダ侵攻の実戦で仲間が戦死するシーンなど、戦友との強い絆を描きつつも、過度に戦争を美化しないバランス感覚もさすがです。クリント・イーストウッドのあまり進化しない俳優業と、進化し続ける監督業の過程の作品として観ると、興味深いです。

55 ドラマ版は観たことがなかったのですが、映画館で予告編に何度も接しているうちに印象に残ったので観てみました。予想以上にスケールの大きい作品で楽しめました。最近の日本の映画は、観終わったあとに予告編でほぼ全て語られていたな、と思うことも多いのですが、この作品は詐欺師ものでは必須のネタバレしない範囲で、作品への興味を喚起できていたので、予告編がよくできていたということもよくわかりました(ゲストの大御所女優の見せ方が巧みです)。やはり、主演の長澤まさみさんのぶっ飛んだキャラクターが、とても魅力的です。それでいて、過剰な演技がギリギリのところで嫌みにならない点が、役者としての引き出しの多さを感じました。小日向文世さん、小手伸也さんは安定のバイプレイヤーぶりですし、東出昌大さんは、今となってはいろんな意味でドキドキしますが、実生活とは真逆の性的要素を感じさせない演技がこの作品にはマッチしていると思いました。ドラマの映画化としては、十分合格点を与えられるエンターテイメント作品だと思います。
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業界破壊企業

2020-06-20 07:39:16 | Weblog
■本
57 業界破壊企業/斉藤 徹
58 「最前線の映画」を読む/町山 智浩

57 タイトル通り、「イノベーション」により既存の業界秩序を破壊し、急成長を遂げている、「Uber」や「Airbnb」といった世界のディスラプターについて、基本的なビジネスモデルやそのパターンについて解説された本です。各ディスラプターのビジネス上の着眼点や創業者の思い、企業成長のストーリーまでがコンパクトに紹介されているので、日々の仕事の参考になるだけでなく読み物としても面白いです。特に、個人的には、「母校の後輩を支援する」というコンセプトの、「P2Pレンディング」(個人間のお金の貸し借り)をサポートするSoFiという会社の事例が興味深かったです。「母校への思い」と「与信リスクおよびそのコストの低減」をうまく結びつけた着眼点が秀逸だと思います。筆者の斉藤さんご自身が、日本のシリアルアトレプレナーでもあるので、その視点から様々な事例を解説されている点も参考になります。様々な栄光や挫折を経験し、酸いも甘いも嚙み分けた斉藤さんが、たどり着いた起業のあるべき姿の一つの結論が「ハッピーイノベーション」(幸せの連鎖を生むサステナブルな起業)であることも様々な示唆に富んでいると感じました。コロナ後のビジネスの重要なキーワードが、「サステナブル」(持続可能性)であることは間違いないと思います。

58 映画評論家でもあるコラムニストの町山さんによる、比較的新しい作品を中心とした映画評論集です。最近発売されたこの本のシリーズ二作目に収録されている「スリー・ビルボード」の解説が読みたいのですが、まずは順番通りに読もうと思い、一作目のこちらから読みました。観たことのある作品は「ブレードランナー2049」や「ラ・ラ・ランド」、「ダンケルク」など意外に少なかったのですが、原作者や監督に関するエピソードなど町山さんの豊富な知識に基づく解説が興味深く、未鑑賞の作品でも楽しく読むことができました。最初に発表された媒体にバラつきがあるためか、作品ごとに解説の長さが異なるのですが、引用が多岐にわたる複雑な構造の長文のものよりも、切れ味の鋭い短いものの方が、町山さんのセンスが堪能できて、個人的には好みでした。二作目の方も早く読みたいと思います。


■映画 
53 ジャングル・ブック/監督 ジョン・ファヴロー

 主人公の少年のみ実写でそれ以外の動物や背景は全てCGということですが、全く違和感のない映像が素晴らしかったです。逆に、狼や蛇が言葉を話すのに、進化論的にはより人間に近いとされている猿とは、一部のキャラクターしか意思疎通ができないという、不思議な世界観には違和感たっぷりでした。この世界観なら、中途半端にリアルな要素を入れずに、フルCGかアニメーションでよかったのではと思いました。特に、プーさんを思わせる、ハチミツ好きの熊のキャラクターはとても愛らしく、魅力的だったので、そのリアル過ぎる映像が薄気味悪かった点が残念でした。ストーリーの方は王道のビルドゥングスロマンで面白く、親子で安心して楽しむことが出来ると思います。
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村上T

2020-06-13 07:04:05 | Weblog
■本
55 「寝たりない」がなくなる本/菅原 洋平
56 村上T 僕の愛したTシャツたち/村上 春樹

55 長男の睡眠が安定しないのと、私も加齢のためか夜目覚めることが多くなったので読みました。「しっかり眠れる『最高の環境』をつくる」(ベッドが眠るための特別な場所であると脳に記憶させるために、そこではスマホやテレビを見ない)と「『よく眠る』ための”リズム”をつくる」(起床後4時間以内に外の光を見る、6時間たったら仮眠タイム、11時間たったらプチ運動)の2つを押さえれば、よく眠れるようになるというシンプルなメッセージでわかりやすいです。どうしても眠れない場合は、いったんベッドから離れて好きなことをして眠くなるまで待つ、など、私がすでに実践している対応が間違っていなかったとわかり安心しました。睡眠の仕組みや大切さを理解することができる本です。まず、就寝前にベッドでスマホを見る習慣をやめることと、朝新聞を取りに行くときに太陽の光を浴びるよう意識することから始めたいと思います。

56 村上春樹さんが、つい集めてしまったTシャツについて、そのデザインのテーマごとに書かれたエッセイです。そういえば、若いころの村上さんはこういうポップなエッセイをたくさん書かれていたな、と思い、懐かしい気持ち半分に楽しく読みました。私もマラソン大会に出るたびにいただくTシャツがかなり増え、ユニクロの気に入ったデザインのものをついつい買ってしまって、タンスを圧迫しているにもかかわらず、なかなか捨てることができないので共感するところも多かったです。ニューヨーク・シティ・マラソン、ボストン・マラソンやロックバンドR.E.MのTシャツ(2枚も出てきます!)はかなりうらやましかったです。億万長者であろう村上さんが、リサイクルショップでTシャツを買うことが多いことも驚きでした。懲りずにまた、新しいTシャツが欲しくなりました。


■映画 
52 ニュースの真相 /監督 ジェームズ・ヴァンダービルト

 子ブッシュ大統領の軍歴詐称のスクープを、様々な努力の末にCBSの看板番組「60 Minutes」で見事に報道した前半と、その報道の証拠文書が偽造ではないかとバッシングを受ける後半の対比が鮮やかな、事実をベースにした骨太の作品です。やり手の番組プロデューサーを演じたケイト・ブランシェットと、彼女を支える番組司会者役のロバート・レッドフォードが圧巻の演技合戦を見せてくれます。ただ、主人公のキャラクターが特に前半はイケイケのキャリア・ウーマンで紋切り型だったところと、結局、彼女たちのチームはジャーナリストとしての基本に忠実に事実を伝えていたのか、という部分があいまいだったので共感しきれませんでした。玄人筋に受けそうな作風にもかかわらず、興行的にも賞レース的にも苦戦したのはこのあたりが影響したのかもしれません。それでも、ねじ伏せるような腕力で作品に引き込む展開は見事だと思います。

 
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「気の持ちよう」では治せない

2020-06-06 07:20:12 | Weblog
■本
52 絲的ココロエ---「気の持ちよう」では治せない/絲山 秋子
53 首を整えると脳が体を治しだす/島崎 広彦
54 ねこねこ日本史でよくわかる 日本のお城/そにしけんじ

52 先週読んだ「御社のチャラ男」で、うつの登場人物の描写がとても興味深かったので、個人的にこの病気についての関心が高いこともあり、作者の絲山秋子さんご自身が双極性障害(躁うつ病)になった経験について書かれたこの本を読みました。一番興味深かったのは、絲山さんが作家になった後にこの病気になったのではなく、この病気の入院時の有り余る時間を埋めるために文章を書き始め、その延長線上で芥川賞作家にまでなったという事実です。人の人生がさまざまなきっかけで転機を向かえるという事実を、小説以上に伝えてくれます。また、この病気にかなり悩まされ、自殺未遂や人間関係に支障をきたすほどだったにもかかわらず、原稿の遅延や仕事の欠席がほとんどなく、きちんとセルフマネジメントされている方法論も参考になりました。特に、「アドバイスや共感よりも理解を」という言葉が身に沁みました。安易に「共感」しておけば大丈夫と思うことが多いので反省しました。この病気に対する正確な理解を深めるために、より勉強していこうと思います。

53 在宅勤務が続き、首の痛みが限界にきたので読みました。書かれている内容を自分なりに実践してみたところ少し楽になりました。この本に書かれているように、円形脱毛症や内臓系の不調まで、首押しで改善されるのかはわかりませんが、少なくとも首や肩の痛みや不快感には効果があると思います。よい姿勢が痛みに悩まされないためには大切であることも改めて理解できました。筆者の治療を受けた人の体験談に多くの紙面が割かれていて、通販のCMを見ているかのような気分にもなりますが、できるところから実践していけばよいのではと思います。

54 子どもが「ねこねこ日本史」のテレビ版を欠かさず観ているのと、私自身の趣味の列車旅の過程で城に立ち寄ることが多いので、日本史学び直しの試みの一環として読みました。列車の時間調整で何気なく立ち寄った城や城跡が意外に多く、そして、その中にはとても由緒のあるものもあったことがわかり興味深かったです。各城にゆかりのある人物を掘り下げてくれているので、その人物を地理的な側面と結び付けて理解することができました。また、城の構造上の特徴や建造物としての価値についても解説されている点もよかったです。新型コロナの影響による自粛期間が終われば、また、列車に乗って城を見に行きたいと思います。


■映画 
50 キングダム/監督 佐藤 信介
51 音量を上げろタコ!なに歌ってんのか全然わかんねぇんだよ!! /監督 三木 聡

50 シンプルに面白いアクション大作でした。原作者の原泰久さんが脚本に関わられているためか、詰め込み過ぎず省略し過ぎず、原作漫画のエッセンスを抽出する塩梅が絶妙でした。映像の方も、時に予算が足りなかったんだろうなと思わせるところもありましたが、キメとなるシーンは迫力満点でメリハリが効いていました。日本アカデミー賞で最優秀助演賞を受賞した、吉沢亮さん、長澤まさみさんを筆頭に、原作のイメージを壊すことなく、それぞれの個性を表現されている演技も素晴らしかったと思います。原作漫画映画化作品では珍しい成功作だと思います。続編も楽しみです。

51 個別のギャグやぶっ飛んだ世界観はそんなに嫌いじゃないですし、阿部サダヲさん、吉岡里帆さんのコミカルな演技も安定感がありますが、全体を通してみると、何を言いたいのか全然わかりませんでした。後味も一見良さそうで実は残酷なので笑えませんし、不条理劇と呼ぶには予定調和な面が多すぎます。サブスクリプションサービスで観たので、実験的過ぎたということで整理できましたが、映画館で正規料金を払っていたらかなり激怒していたと思います。吉岡里帆さんが劇中で歌う、元チャットモンチー橋本絵莉子さんによる歌はよかったです。
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