■本
7 笑える革命/小国 士朗
8 三行で撃つ/近藤 康太郎
7 小国さんが企画された「注文をまちがえる料理店」(認知症の状態にある方がホールスタッフとして働くレストラン)の記事がずっと印象に残っていたので読みました。「注文をまちがえる料理店」が恒常的な施設ではなく、イベント的な展開であるということを知らなかったので、認識を新たにしました。この事例のように、イベントやコンテンツを企画し実現することにより、社会課題を生活者に伝えるためのノウハウが満載で参考になります。小国さんは広告代理店的な立ち位置ではあるものの、お金儲けよりも社会課題の解決(というよりもその前段階の認知拡大や賛同者の増加が目的なのかもしれませんが)を目指されていることがよく理解できました。NHKでドキュメンタリー番組を作られていたご経験から、「どれだけ大切なことだったとしても、伝わらないものは、存在しないのと同じ」という強い決意を元に企画されている姿勢にも共感しました。企画の立て方やPR手法についても学ぶことができます。個人的には企画を全否定した相手に対して、その否定した理由を「言語化してもらい」、それを一つ一つクリアにしていくことで乗り越えて実現させる、という視点が参考になりました。結局は実現させるための情熱が必要なのだと思いますが、企画を絵に描いた餅で終わらせないための方法論について学べる本です。
8 朝日新聞の記者であり、「アロハで田植えしてみました」などの体験型連載企画でも有名な、近藤康太郎さんによる文章論です。副題の「<善く、生きる>ための文章塾」の通り、人生論、職業論にまで話は広がっていき(というよりも、文章が<生>に直結しているという立場の近藤さんからは、文章論=人生論なのだと思います)楽しく読みました。テンプレ表現の多用や形容詞の安易な使用さえも戒めるご指導に、反省しきりです。研究者がよくおっしゃいますが、文章を書くという行為も、世の中にこれまでになかった、新しい視点や真理を追加するという高い志を持って挑まねばならないのかもしれません。プロのライターとして生きていくための周到な準備と日々の精進について強調されている点にも、一職業人として刺激を受けました。文体やグルーヴ感の大切さについて触れられている視点もユニークです。喜怒哀楽の「楽」については、私もよく理解できてなかったのですが、「自分が喜ぶんじゃない。人を喜ばせること」という説明で腹落ちしました。「世界は愚劣で、人生は生きるに値しない」と考えている人が、ニヒリズムに陥らず、こんなにも熱く前向きなスタンスでいるということに、人間の複雑さ、底知れなさを感じました。喜怒哀楽を前面に出し、面倒くささと善良さが同居する人間になりたいとふと思いました。
■映画
5 ライオン・キング/監督 ジョン・ファヴロー
6 土竜の唄 FINAL/監督 三池 崇史
5 1994年公開のアニメ版ではなく、2019年のフルCGの方です。「アイアンマン」シリーズのジョン・ファヴロー監督作品なので、エンターテイメント作品としては無難な仕上がりです。ストーリーも特におかしな脚色もなく、1994年版と同様に一級品のビルドゥングスロマンに仕上がっています(少年ジャンプの漫画等と比較すると、修行編がほとんどなく、ライオンの王の子という天性の才能頼みの要素が大きいですが)。CGのクオリティも高く、動物はリアルでサバンナの風景は実に美しいです。となると、そのリアルな動物が言葉をしゃべり、歌うことの違和感が許容できるかどうかがこの作品の評価のポイントになると思います。私は序盤は抵抗なく観ることができていましたが、「ハクナ・マタタ」や「ライオンは寝ている」を動物が歌っているシーンで、一気に興ざめしてしまいました。アニメ版の方が個人的には好きです。
6 潜入捜査官を描いたバイオレンス・コメディのシリーズ3作目にして最終作です。三池崇史監督の適度に誇張された映像、宮藤官九郎さんのスピーディーかつ露骨な下ネタ全開の脚本、生田斗真さんの身体を張った演技が引き続き楽しめます。何より、堤真一さんが造形された、ポジティブな狂気溢れるキャラクターが最高です。ストーリーが壮大になり過ぎて、ファンタージー的な要素が強くなっています。これまでの伏線や葛藤がきれいに収まり過ぎている面もありますが、シリーズ最終作としての納得度は高いです。あらゆる面でこの作品の持つ過剰さが堪能できますし、それが故に観客を選ぶようになってきているので、お開きにするにはよい頃合いだと思います。私は好きな作品です。
7 笑える革命/小国 士朗
8 三行で撃つ/近藤 康太郎
7 小国さんが企画された「注文をまちがえる料理店」(認知症の状態にある方がホールスタッフとして働くレストラン)の記事がずっと印象に残っていたので読みました。「注文をまちがえる料理店」が恒常的な施設ではなく、イベント的な展開であるということを知らなかったので、認識を新たにしました。この事例のように、イベントやコンテンツを企画し実現することにより、社会課題を生活者に伝えるためのノウハウが満載で参考になります。小国さんは広告代理店的な立ち位置ではあるものの、お金儲けよりも社会課題の解決(というよりもその前段階の認知拡大や賛同者の増加が目的なのかもしれませんが)を目指されていることがよく理解できました。NHKでドキュメンタリー番組を作られていたご経験から、「どれだけ大切なことだったとしても、伝わらないものは、存在しないのと同じ」という強い決意を元に企画されている姿勢にも共感しました。企画の立て方やPR手法についても学ぶことができます。個人的には企画を全否定した相手に対して、その否定した理由を「言語化してもらい」、それを一つ一つクリアにしていくことで乗り越えて実現させる、という視点が参考になりました。結局は実現させるための情熱が必要なのだと思いますが、企画を絵に描いた餅で終わらせないための方法論について学べる本です。
8 朝日新聞の記者であり、「アロハで田植えしてみました」などの体験型連載企画でも有名な、近藤康太郎さんによる文章論です。副題の「<善く、生きる>ための文章塾」の通り、人生論、職業論にまで話は広がっていき(というよりも、文章が<生>に直結しているという立場の近藤さんからは、文章論=人生論なのだと思います)楽しく読みました。テンプレ表現の多用や形容詞の安易な使用さえも戒めるご指導に、反省しきりです。研究者がよくおっしゃいますが、文章を書くという行為も、世の中にこれまでになかった、新しい視点や真理を追加するという高い志を持って挑まねばならないのかもしれません。プロのライターとして生きていくための周到な準備と日々の精進について強調されている点にも、一職業人として刺激を受けました。文体やグルーヴ感の大切さについて触れられている視点もユニークです。喜怒哀楽の「楽」については、私もよく理解できてなかったのですが、「自分が喜ぶんじゃない。人を喜ばせること」という説明で腹落ちしました。「世界は愚劣で、人生は生きるに値しない」と考えている人が、ニヒリズムに陥らず、こんなにも熱く前向きなスタンスでいるということに、人間の複雑さ、底知れなさを感じました。喜怒哀楽を前面に出し、面倒くささと善良さが同居する人間になりたいとふと思いました。
■映画
5 ライオン・キング/監督 ジョン・ファヴロー
6 土竜の唄 FINAL/監督 三池 崇史
5 1994年公開のアニメ版ではなく、2019年のフルCGの方です。「アイアンマン」シリーズのジョン・ファヴロー監督作品なので、エンターテイメント作品としては無難な仕上がりです。ストーリーも特におかしな脚色もなく、1994年版と同様に一級品のビルドゥングスロマンに仕上がっています(少年ジャンプの漫画等と比較すると、修行編がほとんどなく、ライオンの王の子という天性の才能頼みの要素が大きいですが)。CGのクオリティも高く、動物はリアルでサバンナの風景は実に美しいです。となると、そのリアルな動物が言葉をしゃべり、歌うことの違和感が許容できるかどうかがこの作品の評価のポイントになると思います。私は序盤は抵抗なく観ることができていましたが、「ハクナ・マタタ」や「ライオンは寝ている」を動物が歌っているシーンで、一気に興ざめしてしまいました。アニメ版の方が個人的には好きです。
6 潜入捜査官を描いたバイオレンス・コメディのシリーズ3作目にして最終作です。三池崇史監督の適度に誇張された映像、宮藤官九郎さんのスピーディーかつ露骨な下ネタ全開の脚本、生田斗真さんの身体を張った演技が引き続き楽しめます。何より、堤真一さんが造形された、ポジティブな狂気溢れるキャラクターが最高です。ストーリーが壮大になり過ぎて、ファンタージー的な要素が強くなっています。これまでの伏線や葛藤がきれいに収まり過ぎている面もありますが、シリーズ最終作としての納得度は高いです。あらゆる面でこの作品の持つ過剰さが堪能できますし、それが故に観客を選ぶようになってきているので、お開きにするにはよい頃合いだと思います。私は好きな作品です。