本、CD、映画日記

目標は年間読書100冊。その記録と目標管理をかねたブログです。

寝ながら学べる構造主義

2010-11-29 06:49:22 | Weblog
■本
93 寝ながら学べる構造主義/内田 樹
94 宗教が往く〈上〉/松尾 スズキ

93 構造主義の代表的な思想家が提唱した概念をわかりやすく理解できるとてもよい本です。特に、「実存主義」がなぜ「構造主義」にとって代わられたのか、について解説されている部分は、構造主義が登場した際の知としてのインパクトがよく理解でき、文化人類学者のレヴィ=ストロースがなぜ、現代思想でこれほど大きな影響力を持つのか、とこれまで私が感じていた疑問をかなりクリアにしてくれました。大学生時代に、レヴィ=ストロースの「悲しき熱帯」やフーコーの「監獄の誕生」を何度も読もうとしては挫折した経験を持つ私にとって、この本を当時読んでいたら、違った人生を歩めたかも、と思わず妄想してしまいました。当然、この本で書かれていることはエッセンスの本の一部なのでしょうが、構造主義の入門書としては最適だと思います。

94 松尾スズキさんの初の長編小説。身も蓋もないエグイエピソードの連続で、読んでいてかなりつらいです。本作の後の松尾さんの作品も人間の醜さが全開な作品が多いですが、まだ、緩急というかメリハリが巧みなので、逆に救いや気高さすら感じることがありますが、この作品は剛速球でこれでもか、と人間の業を投げかけてきます。上巻を読んだ限りでは、「海辺のカフカ」ミーツ「コインロッカーベイビーズ」といった趣の、少年の世紀末的ダークな成長物語という印象を持ちました。さて、どう展開していくのでしょうか。
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日の名残り

2010-11-20 06:30:50 | Weblog
■本
91 日の名残り/カズオ イシグロ
92 態度が悪くてすみません/内田 樹

91 「わたしを離さないで 」がとってもよかったので、引き続きカズオイシグロさんの作品を読みました。本作は映画化もされ話題になりましたが、辛気臭い上品なだけの作品と思ってまだ観ていませんでした。それが大間違いだと強く反省しています。「わたしを離さないで 」以上に、完成度の高い素晴らしい作品です。老執事の数日の休暇の模様ととその間に振り返る過去のエピソードが中心のミニマルで個人的な話なのに、恐ろしいほど奥行きがあるスケールの大きな小説です。シンプルで非常にわかりやすい話なのに、難解な哲学書以上に重層的で、品格、人生、恋愛、親子、老い、職業、国家、友情、民主主義、などなど読後に混乱するほどいろんなことを考えさせられます。決して、明るい話ではないのに、全編を通じて独特のユーモアがあり読後感も心地よいです。ただ、その心地よさも、「絶望の先に一筋の希望が残る」といった底を打ったな前向きさや、「後悔だらけの人生で夢や希望がなくても人間は生きていける」といった潔い開き直りとも異なる、もっとベーシックに「地道に生き続ける」ことの崇高さと「人間の強かさ」に対する信頼感がもたらす心地よさなような気がします。当分カズオイシグロさんにはまりそうです。

92 内田さんの本の多くはブログをまとめたものが多いらしいのですが、この本はきちんと原稿になったものを集めたものだそうです。本人もおっしゃるとおり、ブログからコピーしてそのまま原稿にしたものもあるらしく、他の本に収録されているものとほとんど同じ文章もありますが、原稿だけあって、掲載された雑誌の読者にターゲティングされた文章が目立ちます。個人的には翻訳家の卵に向けられた文章がぶっ飛んでいて、また、内田さんの学生時代も垣間見れて興味深かったです。とはいえ、内田さんの本を読みつくしたマニア向けの本ですね。私のような入門者はもっと読むべき本がありそうです。


■CD
46 ...Featuring/Norah Jones

 Herbie Hancock はもちろんFoo FightersからBelle & Sebastian 、さらには OutkastやQ-Tipまで、ジャズ、ロック、ポップ、ソウル、ヒップホップ、カントリーなどなどさまざまなジャンルのアーチストと共演した作品がおさめられていますが、予想に反してリラックスした感じの同じような曲調の曲が並びます。Norah Jonesの個性の強さと共演者がNorah Jonesに求めるものが似ているために、生じた現象なのかもしれません。いわゆる共演者とのケミストリーを感じることは少なく、そういった点での物足りなさは残りますが、Norah Jonesの世界観を堪能したい方には決して期待を裏切らない作品だと思います。
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知に働けば蔵が建つ

2010-11-15 05:42:36 | Weblog
■本
90 知に働けば蔵が建つ/内田 樹

 引き続き内田樹さんの本にはまり中。文章の勢いというかグルーブ感のようなものが読んでいて心地よいです。2004年~2005年にかけてブログに書かれた文章だそうですが、靖国問題や反日デモなど今HOTな日中関係についての考察が多く、全然古びた印象がありません。「国益」についての考察もあり、私自身最近「国益」について考えること(そして政治家の方々が「国益」よりも、自分の「気持ちよさ」の方を優先して発言している傾向が強い気がして疑問を感じています)が多いので、自分の考え方を省みる上で参考になりました。「弱者が負け続ける『リスク社会』」という考察も5年後の現在を予言しているようで、その切り口の鋭さに感心します。
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「体幹」ランニング

2010-11-06 07:37:53 | Weblog
■本
88 「体幹」ランニング/金 哲彦
89 こんな日本でよかったね/内田 樹

88 11月3日に西宮国際ハーフマラソンを走ったので、一夜漬け的にあわてて読みました。暗示効果もあるのでしょうが、この本の通りに走ったら、ここ5年のベストタイムが出ました。脚や腰の負担も少なめで、読んでよかったです。読むのも実践するのも容易です。お勧め。

89 引き続き内田樹さんにはまり中です。ブログに掲載された文章を編集した本とのことですが、楽しく読め、いろんな気づきのある良い本です。「人生はミスマッチ」だけどそれなりに幸せに生きられる、とか、「変化なんかする必要はないよ」(全面刷新ではなくてますはリフォーム程度ですませたら、といったニュアンスが書かれています)とか、あまり他の人が語ってくれませんが、逆にしたたかに生きていくための知恵がつまっています。


■CD
45  Death to False Metal/Weezer

 weezerの未発表曲集。「Pinkerton」と「Green Album」の間に収録された曲とのことで、僕のように「Pinkerton」がweezerの最高傑作と思っている人にはお勧めです。屈折したやけくそ感とPOPさの絶妙のバランスがたまりません。
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とげまる

2010-11-01 05:53:49 | Weblog
■本
86 決闘 ネット「光の道」革命/孫 正義 佐々木 俊尚
87 下流志向/内田 樹

86 Ustreamなどで生中継されたらしい、孫正義さんと佐々木俊尚との「光の道」に関する討論の内容をおさめた本。「決闘」というほど激しい討論ではない感じでしたが、こういうオープンな議論というのは評価されるべきなんでしょうね。お二人のおっしゃることは正論だと思います。孫さんの主張がもし本当なら素晴らしいことだと思いますが、どうも腹に落ちない部分があるので、その正当性を検証していく作業が必要なのだと思います。NTT側の人も交えて討論できたら面白かったんでしょうけど。

87 消費者としてまず社会化され、経済合理性に基づき判断することが習慣となっている子どもたちは、「学び」や「労働」をただしないだけでなく、むしろ、自分の感じる苦痛にこれらの行為が割に合わないので、積極的にしないように努力している、という趣旨の衝撃的な本です。より過酷で割に合わない職に就く機会しか彼らに分配されていないという状況に関する考察が若干不足しているような気がしますが、論理展開は明解で、子を持つ親としてはいろいろと考えさせられる内容です。結局、経済合理性だけでは判断できない、もっとどろどろとして、結論の出にくいもの(筆者の言う「時間を勘定に入れる」考え方)も存在することを子ども達に早い段階から教えることが必要なのだと思いました。


■CD
44 とげまる/スピッツ

44 「いい曲をたくさん集めました」、という印象のとてもよいアルバム。ここ数作は妙にひねった曲が収録されていて、いい意味でも悪い意味でもひっかかりがあるアルバムが続いていましたが、本作は、みんなが期待するスピッツサウンドをさらに期待を上回るクオリティで提供してくれます。アルバムを通して聴いても、それぞれの楽曲だけを選んで聴いても楽しめる作品です。
スケールの大きい曲もあり、余裕と貫禄が感じられます。


■映画
32 シャーロック・ホームズ/監督 ガイ・リッチー
33 かいじゅうたちのいるところ/監督 スパイク・ジョーンズ

32 ガイ・リッチーのスタイリッシュさがいい感じでハリウッド的にわかりやすくされていて、とっつきやすい作品です。嫌味になるぎりぎりの線で新しいシャーロック・ホームズ像を作り出すことに成功していて、個人的には好きです。ただ、欲を言えば、クリストファー・ノーランの作品のように、ハリウッド的な親しみやすさの中に、どこかぶっ飛んだ感じが欲しいと思いました。続編を作る気満々のエンディングなので、次に期待したいと思います。

33 「マルコヴィッチの穴」で有名なスパイク・ジョーンズ監督の作品。絵本の原作も読んだことがあり、原作の世界観を生かしつつ、スパイク・ジョーンズ監督のぶっとんだ想像力を駆使した内容になっていると思います。ただ、僕が親となったためか、主人公の少年の癇癪に共感できなかった時点で、個人的にはこの作品はアウト。その後のどんな感動的なエピソードも、自作自演って感じがして、のめりこまめせんでした。とはいえ、かいじゅうがかわいくないので、小さい子ども(小学生低学年以下)がこの内容についていくのもちょっとつらそうです。世間で言われるほどひどい作品ではないと思いますが、観る側を確実に選ぶ作品です。
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