本、CD、映画日記

目標は年間読書100冊。その記録と目標管理をかねたブログです。

天然コケッコー

2014-02-23 07:39:15 | Weblog
■本
21 スナックさいばら おんなのけものみち 七転び八転び篇/西原理恵子
22 街場のマンガ論/内田 樹

21 西原理恵子さん主催のWEB投稿サイトの書籍化です。女性のあけすけな本音が聞けて男性としては怖くなります。西原さんらしく、えげつない内容とあかちゃんが生まれたときのような感動的なエピソードのバランスがよいです。相変わらずの西原節ですが、どちらかといえば量産型の作品です。西原さんファンならすでに熟知しているエピソードばかりで既視感たっぶりです。でも、ファンの私は続編も買ってしまうのだと思います。

22 内田樹さんによる漫画エッセイ集です。こちらも相変わらずの内田節でファンには楽しめます。特に井上雄彦さんと宮崎駿さんに対する文章がボリュームがあり、いろんな視点から論じられていて読み応えがあります。特に、表音文字と表意文字を扱う日本人独自の脳の使い方に関する記述と「自分がそのようなことを思っていることを本人さえも意識していないこと」を記号化しうる能力、という少女マンガの特殊性を論じた部分が興味深かったです。


■CD
8 Talking Book/Macy Gray

Macy GrayによるStevie Wonderの超名作アルバムの完全カバーです。元ネタの作品が完璧なのでそれを上回ることは難しいですが、Macy Grayの声が好きな人なら気に入ると思います。なにより大好きな曲をカバーしているMacy Grayがとても楽しそうです。原曲に忠実なものから、大胆にアレンジしたものまで(みんなが知っている「Superstition」はかなり大胆なアレンジです)、結構各曲のキャラが立っていますが、改めてStevie Wonderの楽曲のよさが再認識されます。


■映画
14 天然コケッコー/監督 山下敦弘

 冒頭の教室のシーンから、くるりの主題歌「言葉はさんかく こころは四角」が流れるエンドロールとその終了後の映像まで完璧な映画でした。久しぶりに時間を忘れて映画の世界に没頭する体験をしました。主演の夏帆さんの初々しい演技がまず素晴らしいです。淡々とした中に時折見せる微妙な感情の変化がとても自然です。ボーイフレンド役の岡田将生さんも格好良くて素敵でした。思春期特有の屈折した感情を強調しすぎず、控えめな演技なのに存在感が抜群でした。その他の子役もとにかく自然で上手です。くらもちふさこさんの原作を読んでいないので想像ですが、おそらく原作に忠実にささやかな日常のエピソードを丁寧に演出しつつ、ロケ先の島根県の美しい田園風景を絶妙に織り交ぜて、映画の独自性を出している点にも好感が持てました。田舎生活を過度に賞賛するわけでもなく、都市生活との対比をニュートラルに公正に描いているところもよかったです。
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ブルー・オーシャン戦略

2014-02-15 09:51:33 | Weblog
■本
19 祝福/長嶋 有
20 ブルー・オーシャン戦略/W チャン キム、レネ モボルニュ

19 最近の長嶋さんの作品は変化球(大人がひたすら独自のゲームで遊ぶだけだったり、南の島で怠惰に過ごすだけだったり、、、それはそれで読んでいて楽しいのですが)のものが多い印象ですが、この短編集はいわゆる普通の人々が普通に葛藤を抱えるオーソドックスなものも収録されていて、長嶋さんの心理描写の巧みさが堪能できました。ゆるい雰囲気の小説だけでなく、「十時間」という短編では、不吉な予感に満ちた緊迫感が溢れています。村上春樹さんのセンスのある固有名詞の使い方に注目される方が多いですが、長嶋さんは漫画を読み込んだり、ゲームをやりこんだりした人しかわからない、トリビアルな固有名詞を随所にはさんでくるのが個人的にツボです(今回は「小沢健二」さんの使い方が秀逸でした)。ゆるい印象の小説の中にも、油断しているとはっとするようなクールな視点が時折現れてきて、長嶋さんの「只者でなさ」が実感できます。

20 少し前にはやった「ブルー・オーシャン戦略」のネタ元の本です。最近この言葉をあまり聞かなくなったので、いわゆるバズワードかと思っていましたが、改めてきちんと読むと「未知の市場を生み出し、差別化と低コストを同時に実現する」というこの戦略が非常によく考えられたものであることがよくわかります。「差別化と低コスト」ということがミソで、ニーズに合致する機能やサービスには大胆に投資する一方で、差別化につながらず、生活者にインパクトの少ない不要な要素をそぎ落とすことにより低コストを実現する、という考え方は足し算思考に傾きがちな日本企業が学ぶところも多いと思います。事例は今となってはスタンダードなものが多く目新しさはないですが豊富ですし、なによりわかりやすく、思考のためのツールもたくさん提示されていて、よい本だと思います。


■映画
13 酔いがさめたら、うちに帰ろう/監督 東陽一

 西原理恵子さんの漫画で取り上げられることの多い題材ですが、これは元夫である戦場カメラマン鴨志田穣さんの自伝的小説の映画化です。明らかに西原理恵子さんとわかるイラストが随所に登場するので、フィクションとして描く必要はないと思うのですが、何か事情があったんでしょうね。浅野忠信さんは鴨志田穣さんがモデルのアル中患者を熱演、永作博美さんもサバサバとして元妻(西原理恵子さん)を好演されています。力の入った映画だとは思いますが、少しストーリーがドキュメンタリータッチで淡々としすぎていて、個人的には西原理恵子さん視点の「毎日かあさん」の映画版の方が好きです。
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写字室の旅

2014-02-09 06:59:44 | Weblog
■本
16 スタバではグランデを買え!/吉本 佳生
17 広告会社からのイノベーションって? (1)、(2)/ 田村 大、 白土謙二
18 写字室の旅/ポール オースター

16 価格が決定されるメカニズムを「コスト」という視点からさまざまな事例を元にわかりやすく説明してくれる本です。最初のほうは「裁定」、「規模の経済」、「範囲の経済」、「取引コスト」といったおなじみの事象の説明なので、個人的にはあまりおもしろくなかったですが、終盤に入って「経済格差」の問題や「比較優位」の話になってからは抜群におもしろくなりました。「機会コスト」という考えをもとに、能力や適正にあった相対的に自分が優位にたてる領域をみつける(それこそが「比較優位」の考え方なわけですが)ことの大切さが実感できました。また、「卓越した能力を持つ人」を優遇しすぎ、「あたりまえのことをあたりまえにできる人」の価値を低く見ることの危険性も理解できました。日本企業の低迷は「突出した人材の欠如」という視点が強調されがちですが、「中間的な人材」の使い捨てにもその原因があるような気がします。

17 電子書籍上は2冊になっているのですが、1冊30分程度で読める短いものなので、目標管理上の冊数は1冊としてカウントします。電通と博報堂の方の「イノベーション」をテーマにしたトークセッションの書籍化です。地頭のよい人同士の対話なのでわくわくしながら読めました。広告会社の人らしく雰囲気感を出すのが上手ですが、実際の取り組み事例なども紹介されていて説得力もあります。「スケールアップ」から「スケールアウト」へという視点が面白いと思ったのですが、詳しく説明されていないので消化不良でした。システムのインフラ性能を上げる際に使われているのとは違った趣旨で使われている気がするのですが、切り口がユニークなだけに少し残念でした。デザインやクリエイティブを行う部門を自社で持つ広告会社という組織が、今後イノベーションを行う上で重要な役割を果たし得る可能性はあるとは思いますが、組織の官僚化をどうやって避けるかという問題にも取り組む必要がある気がします。

18 初期のポール・オースターを髣髴とさせる、ストーリーだけでなく、小説内小説などその構造の知的さが堪能できる作品です。オースターの過去の小説の登場人物が次々に登場して、ファンにとっては過去の読書体験を思い出しながら楽しんで読めます(私は、記憶力が悪いので各登場人物の名前をネットで検索しながら読みましたが)。読後に自分の周囲の世界の枠組みが少し変わったような奇妙な感覚が得られます。この作品自体は中編小説で手軽に読み終えますが、過去のオースター作品全てと連なる長大な小説の一部としても読めます。オースターの入門作品としては不適切かもしれませんが、ファンであれば必読の作品です。


■CD
7 Everybody Knows This Is Nowhere/Neil Young

 ニール・ヤングのソロ2作目であり、バックバンド、クレージー・ホースと組んだ初めての作品です。1作目は牧歌的な感じでしたが、こちらは現在のニール・ヤングにも通じる攻めの姿勢がバンバンと伝わってきます。今となってはオーソドックスなロックサウンドですが、発表された1969年当時はかなり斬新な音としてとらえられたのではないでしょうか? ギターの音が格好良く、シンプルに楽曲もよい素敵な作品です。最初の2作での試行錯誤があったからこそ、この次に発表される超名盤「After the Gold Rush」が作れたんだと思います。


■映画
11 シュガー・ラッシュ/監督 リッチ・ムーア
12 NANA/監督 大谷健太郎

11 ドット画のゲームに親しんだ僕らの世代にはツボなのではないでしょうか? ゲーム上の悪役が集まる集会でのパックマンのモンスターが青ざめるシーンが最高に笑えました。ディズニーの作品なのに、ところどころで毒の効いたギャグやパロディがあり、相当シュレックなどドリームワークスの作品を研究している印象も受けました。ストーリーは、逆境にある少しひねくれた大男と少女が、挫折を乗り越えながら友情を育み、最後に勝利をおさめるという王道のものですが、先述した毒や悪役についての伏線が見事で、大人にも十分鑑賞に堪える傑作だと思います。もちろん、親しみやすいゲームのキャラクターは子供たちにもとっつきやすく、ストーリー自体はシンプルなので家族で楽しめました。

12 あまり登場人物に共感できませんでした。宮崎あおいさんが続編を降板したのも肯けます。ハチというキャラクターが、自分勝手にしか見えず、なんといってもおいしくないです。ナナ役の中島美嘉さんも熱演しているとは思いますが、一本調子な印象です。男性俳優も松田龍平さんや松山ケンイチさんといった今となっては日本映画界を支えるいつものメンバーなので、安定感はありますが新鮮味はありません(公開当時は新鮮味があったのだと思いますので、現時点での私の意見は反則ですが)。原作を読んだことがないので、なんとも言えないですが、原作はもっと二人のナナの友情の方が強調されているような気がします。映画の方は恋愛が強調されすぎていて、また、エンディングも取ってつけたような感じで期待はずれでした。
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ルールを変える思考法

2014-02-02 08:10:14 | Weblog
■本
12 ルールを変える思考法/川上 量生
13 ON THE WAY COMEDY 道草 愛はミラクル篇/木皿 泉
14 奇跡の営業/山本 正明
15 「原因」と「結果」の法則/ジェームズ・アレン

12 ドワンゴ代表取締役会長川上さんによるゲームを切り口にビジネスに必要な思考法について語られている本です。川上さんの地頭の良さを強く感じる興味深い本でした。人を惹きつけるコンテンツのつくり方について語られた部分の「人の感情を動かすのは『わかりそうで、わからないもの』」という表現に象徴されるように、あいまいなものをあいまいなまま受け入れつつも、そのまま放置するのではなく、自分に腹落ちできるまで考え抜く強い思考力を感じました。いいかげんなようでいて、会社のマネジメントや日本のコンテンツ産業の将来にまで広い視野を持たれています。バズワードに踊らされずに自分の言葉で語られている点も好感が持てました。ビジネスの思考法を学ぶにはとてもよい本だと思います。お勧め。

13 前回に引き続き木皿泉さんが脚本を書かれたラジオドラマの脚本を読みました。先週読んだ方は家族(平田家)が舞台でしたが、こちらは小人化したり、奥様が上司になったりした、いくぶん変わった境遇の夫婦関係が描かれたものが多いです。個人的にはトゥクトゥクという車の精霊が出てくる話が、輪廻転生までもテーマにした壮大で切なくもおもしろい話で大好きです。

14 ソニー生命保険のトップ営業マンである山本さんお本です。営業で成功する方法論や心構えが語られますが、何よりも「実践すること」が重要であることがよくわかる本です。書かれている方法論はおそらくはさほど目新しくはないと思われますが、44歳で転職して成功を収めた山本さんのサクセスストーリーとして読むと抜群に面白いです。

15 少し前にベストセラーだったような気がしたので読みました。いろんな自己啓発本の元ネタと言われているだけあって、書かれている内容はその通りだと思いますが、その根拠や背景が抜け落ちているので、今一つ納得感は得られませんでした。意識は変わりますが、行動につながるにはもう少し別の本を読んで納得する必要があるかもしれません(だからこそ、自己啓発本が次々に出版されて売れているのだと思いますが)。正論過ぎて、「そりゃそういう人間になれれば最高だけど、そうならないのが不完全な人間の特徴でもあるの、、、で」と思わずつぶやきたくなる本です。理想とする人間の到達点を把握する、という意味では参考になる本ではあります。


■CD
6 Human's Lib/Howard Jones

 中学生時代にすごく流行っていたのを思い出して購入しました。友人にカセットテープにダビングしてもらった記憶がよみがえりました。シンセサイザーの音がもっと安っぽく聴こえるかと思っていましたが、今聴いてもキャッチーなメロディは古ぼけず、21世紀にも十分通用する作品です。シンセサイザーの弾き語りのイメージが強いので、宅録的なミニマルなサウンドという先入観を持っていましたが、意外とスケール感の大きい曲が多く、新たな発見もありました。


■映画
8 エレニの帰郷/監督 テオ・アンゲロプロス
9 ワンピースフィルム ゼット/監督 長峯達也
10 全然大丈夫/監督 藤田容介

8 僕の一番好きな監督であるテオ・アンゲロプロス監督の遺作ということでとても楽しみにしていました。本作は20世紀3部作の第2作目と位置づけられていて、前作「エレニの旅」は美しくも悲しく壮大な傑作でしたのでかなりの期待値でした。同じ「エレニ」が主人公ですが、本作のエレニは前作のエレニとは別人物であると理解するまで少し時間がかかりました。過去を舞台にすることが多いテオ・アンゲロプロス監督が撮る20世紀末のベルリンの美しくも現代的な風景が興味深かったです。ただ、エレニと彼女をめぐる男性二人およびエレニと同じ名前の孫とその父親(エレニの息子)との間の人間関係、心情描写が中心で、アンゲロプロス監督の最大の特徴である、長回しによる壮大な情景描写が少なかったことが少し物足りませんでした。ストーリー的にも、ベルリンが舞台のひとつであるためか、ヴィム・ヴェンダース監督の映画で観たような既視感を感じてしまいました。3部作の2作目ということでつなぎ的要素があったのかもしれません。そういう意味でも、3部作の3作目撮影中の事故でアンゲロプロス監督が亡くなられたことがとても残念です。ご冥福をお祈りします。

9 原作の世界観を見事に踏襲し、スピーディーな展開で楽しめました。登場人物が多い割りに、キャラが立っていましたし、戦闘シーンは、ルフィ、ゾロ、サンジに主に絞っていた点がわかりやすくてよかったです。海軍を辞めた青キジもいい味だしていました。今回の敵である元海軍大将のゼットが島を丸ごと沈める程の怒りを持つに至った葛藤がもう少し丁寧に描かれていたら、もっと感動的になったかもしれません。

10 いかにもインディーズ作品っぽい、ユルくも独特の世界観を持った作品です。悪くない映画だと思いますが、その「インディーズ」っぽさが、紋切り型な印象も受けました。大好きな荒川良々さんが主演ということで楽しみにしていましたが、演技的にはヒロイン?の木村佳乃さんと岡田義徳さんの好演の方が印象に残りました。それにしても映画でのココリコ田中さんはおいしい役が多いですね。人徳なのでしょうか。
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