本、CD、映画日記

目標は年間読書100冊。その記録と目標管理をかねたブログです。

世界は四大文明でできている

2020-01-25 10:12:04 | Weblog
■本
7 50代からの人生戦略/佐藤 優
8 世界は四大文明でできている/橋爪 大三郎
9 三の隣は五号室/長嶋 有

7 各年代に向けての人生戦略本をいろいろと書かれている佐藤優さん。私も今年50歳になるので、50代をターゲットにしたこの本を読みました。人生の残り時間から逆算して、いかに生きていくべきかについて、ご自身の経験も踏まえながら、仕事、同僚、お金、家族、自分自身との向き合い方を中心に、具体的に教えてくれます。いつもの通り、したたかにサバイブしていこうという姿勢が貫かれているものの、人生の下り坂を迎えた層をターゲットにしているためか、「あまり無理をしなくてもよい」という優しい視線が印象的です。キリスト教徒である佐藤優さんによる、死への向き合い方についての考え方も参考になります。

8 「企業トップが学ぶリベラルアーツ」とシリーズ化された書籍です。以前に読んだ、同シリーズのアメリカと宗教の関係を説明された「宗教国家アメリカのふしぎな論理」が抜群に面白かったので、こちらも読んでみました。キリスト教、イスラム、ヒンドゥー、儒教の四つの文明と、なぜ日本は文明ではないのか(シンプルに言うと「正典」-基準になるテキスト-がないため)、について、とても分かりやすく論理的に説明してくれます。特に、ヒンドゥー教については、ほとんど学んだことがなかったので、奴隷制と対比したカースト制のメリット(奴隷と違って極めて制限された環境ではあるものの自分の意志で配偶者や財産を持つことはできる)や、階級が固定されているが故の輪廻転生の意味(現生での階級の上昇はカースト制のため難しいが、来世で上位の階級として生まれることは可能)を学べたことはとても有意義でした。儒教の、政治的リーダーが有能であることを重視する姿勢や、家族道徳が組織倫理に優先するという考え方が、現在の中国の体制にどのような影響を与えているか(安全保障が実現されているからこその体制支持と腐敗が進みやすい体質)についても興味深かったです。どの文明もその中では強固な論理的整合性を持っていることがよくわかりました。翻って日本はその基盤が確固ではないので、よく言えば柔軟、悪く言えば信念のない国家と見なされているという事実も、重く受けとめなければいけないと感じました。

9 あるアパートの5号室に代々住んだ13世帯のエピソードを時間や登場人物を頻繁に変えながら描いた作品です。ひたすら自作のゲームやTwitterのやり取りに興じる人々を描いた作品など、トリッキーな設定が多い長嶋有さんの面目躍如たる作品です。かなり実験的な作品で、その設定と13人の主人公に慣れるのに時間がかかりますが、いったん、そのルールを覚えると抜群の面白さで、長嶋さんの最高傑作とも言える作品だと思います。それぞれの主人公は、失恋、単身赴任の不便さ、家族との死別、同居人への葛藤、留学生との交流、など、それぞれ言ってみれば、ありきたりな問題(一人だけ、訳ありの物品を預かりそれを強奪しようとしたため命を落とすぶっ飛んだ登場人物がいますが)を抱えていますが、それが、同じ部屋が舞台に展開されたという横串が刺されることにより、一気にありきたりでない深みを持つから不思議です。同部屋という同じ舞台で、各登場人物のささやかな生活を描くことにより、人生に立ち向かう同志としての共感のようなものが生まれるのか、奇妙な感動を覚えました。


■CD
1 Something Else/The Kinks
2 Face to Face/The Kinks

1,2 昨年からサブスクリプションサービスでキンクスの作品にはまっています。中古CD屋さんで、初期の2作品を見つけたので購入しました。シンプルで粗削りな活気を持ちながらも、捻りの効いた個性的でポップな作品が多く、この時期の作品は特に大好きです。ジャム、XTC、オアシスやブラーといった、後のイギリスのロックバンドに与えた影響も随所に感じられます。「Something Else」に収録されている「Waterloo Sunset」は、この世に生まれた最も美しい楽曲の一つだと思います。


■映画 
8 スマホを落としただけなのに/監督 中田 秀夫

 スマホのセキュリティリスクをテーマにしたという点では新鮮ですが、それ以外はありきたりなサイコサスペンスかと思っていたら、被害者にスマホの悪用がかわいく思えるほどの衝撃的な過去があることが判明する、というまさかの展開で終盤にかけて一気に盛り上がりました。そのストーリー上のテンションの高まりにシンクロするかのように、成田凌さんの演技も熱を帯びてきて、圧倒されました。大晦日の「ガキの使い」で身体を張っていた姿が印象に残っていますが、今後も成田凌さんには注目したいと思います。
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パラサイト 半地下の家族

2020-01-18 07:43:11 | Weblog
■本
4 がんばらない練習/pha
5 安売り王一代 私の「ドン・キホーテ」人生/安田 隆夫
6 マーケティングのデジタル化5つの本質/横山隆治、簗島亮次、榮枝洋文

4 28歳で会社を辞められてたのち、定職に就かず、ブログや書籍の執筆、スポット的なプログラミングなどで生計を立てているphaさんの近況について書かれたエッセイ集です。以前の書籍では、お金にとらわれ過ぎないマイペースで自由な生活やシェアハウス、田舎暮らしなどのライフスタイル提案的な要素が強かったですが、この本では、40歳を過ぎたphaさんが、ご自身が提案されて実践されてきたそのライフスタイル自体に飽きが出始めて、一人暮らしを考え始めるなどの心境の変化が語られている点が印象的です。これまで以上に、「後ろ向き」な内容ですが、「『できなさ』こそが人生の醍醐味」と言い切るなど、既成概念やこれまでの自分のポリシーさえからも自由な、柔軟な思考スタイルは参考になります。「自由」に生きることもそれなりに大変であるということもわかります。

5 タイトル通り、日本最大級の総合ディスカウントストアにまで成長した、「ドン・キホーテ」創業者安田隆夫さんの自伝的内容です。イノベーションとは何かを考える上でとても参考になる上に、読み物としてもすごぶる面白いです。成熟産業の小売業で、素人ならではの逆張りの発想を貫き、様々な苦境を乗り越えながら、成功していく過程が詳細に描かれています。倉庫を借りる余裕がなかったので考案した「圧縮陳列」、そのために探しにくい店舗の中で商品を目立たせるために工夫した「POP洪水」、多忙のため深夜まで店頭で作業していたところ意外と声をかけてくれる顧客が多いことから実施した「深夜営業」など、一見行き当たりばったりなように見える現場での気づきから生み出された施策が、楠木健さんのおっしゃるような「ストーリー」として時系列としてつながり、整合性を持った戦略として確立されている点が見事です。現場からの知の大切さとイノベーションは辺境から生まれるということを再認識させてくれます。

6 タイトル通り「5つの本質」が語られているかはよくわかりませんが(語られている5つの内容に方法論やスキル、ビジネスモデルなどの要素が混在していてレイヤーが合っていない気がしました)、手段ではなく「プロセス」のデジタル化という視点と、サブスクリプションサービスに象徴的な、特定カテゴリーに特化してデジタルで直接顧客と繋がって製造直販する「デジタル・ネイティブ・バーティカル・ブランド(DNVB)」という概念を紹介されている点は参考になりました。一方、DMPなどマーケティングツールの活用については目新しい視点が少なく、個人情報やクッキー利用の規制強化の背景もあり、この分野の進化のスピードが若干鈍化している(逆に言うと、DMP等を導入する段階から、どう活用するかの段階に進んでいるとも言えるかもしれませんが)との印象を受けました。

■映画 
4 ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル/監督 ジェイク・カスダン
5 疾風ロンド/監督 吉田 照幸
6 パラサイト 半地下の家族/監督 ポン・ジュノ
7 ジョン・ウィック:チャプター2/監督 チャド・スタエルスキ

4 謎のゲーム内世界に閉じ込められた登場人物たちの脱出劇を描いた作品です。リメイク作品ですが、設定自体のユニークさは色褪せません。ロビン・ウィリアムズ主演の1995年の作品はもっとダークだったという印象ですが、21世紀風にポップにアレンジされた、ファミリー向けのファンタジーに仕上がっています。スクールカーストなど、今風の要素も巧みに盛り込んでいて、リアル世界のストーリーも意外としっかりしています。CGの技術向上により、ゲーム内世界観のリアリティは格段に上がっていますし、ドウェイン・ジョンソンやジャック・ブラックというハリウッド映画常連の俳優の演技は安心感があります。2度まで死ねる設定や、時間経過の取り返しのつかなさが緩和されていて、イージーモードのゲームとなっている点は賛否が分かれそうですが、時代に合わせたリメイク作品としては十分合格点を与えられる作品だと思います。

5 先週観た「マスカレード・ホテル」と同様に、東野圭吾さんの原作作品は安定感があります。犯人が冒頭で死ぬという斜め上の設定が秀逸でした。サスペンスとコメディの融合というチャレンジングな試みは評価できますが、上滑り気味で必ずしも成功していないところが少し残念でした。阿部寛さんは大好きな役者さんですが、「新参者」など同じ東野圭吾作品の加賀恭一郎ほどには、この作品の主人公からは魅力的を感じませんでした。柄本明さん演じる超自分勝手な研究所長など、確信犯的に人物設定されているのだと思いますが、主人公に限らず登場人物にほとんど共感できなかったので、もろもろの謎が解けた際の爽快感には若干欠けました。

6 評判通りとても面白かったです。カンヌ映画祭でパルムドールを受賞したのも納得の完成度です。コメディ風で始まり、サスペンス、ホラー的展開を経て、最後はファンタジーっぽく終わります。格差社会に対する毒やメッセージ性も強くありながら叙情的な後味で、同じテーマなのでよく比較される「ジョーカー」ほど絶望的な気持ちにもなりません。エンターテイメント作品としても秀逸で、先の読めない展開と、半地下の住居からの視点に象徴的なように、普通の映画とは異なる角度から切り取られる映像も素晴らしいです。韓国独特の国家的な問題もさりげなく盛り込まれていて、作品としてのスケール感も大きく、この点が良くも悪くも、同じくパルムドールを獲得した「万引き家族」とは異なる存在感を放っています。小粒ながらもよくできた作品レベルに留まらない、ハリウッド作品とも真正面から張り合える力強さがあります。アカデミー賞レースでは、「ジョーカー」にはかなわないかもしれませんが、「アイリッシュマン」には勝って欲しいです。

7 キアヌ・リーブスが無敵の殺し屋を演じるアクション映画の2作目です。1作目の公開当初はそれほど話題になっていなかった印象ですが、完全に化けました。テンポよくひたすらアクションの格好良さを追求する、近年ありそうでなかった作品で、とても楽しめました。B級っぽくもスタイリッシュで、一見小難しい世界観でありながら、実はほとんど頭を使わなくても理解できるという、感覚への訴えかけ方が巧みです。キアヌ・リーブスにあまりしゃべらせていない点も功を奏しています。アクション映画好きな方は、観ておいて損はない作品です。
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世界標準の経営理論

2020-01-11 09:26:36 | Weblog
■本
2 世界標準の経営理論/入山 章栄
3 アレグリアとは仕事はできない/津村 記久子

2 お正月休みの課題図書として読みました。タイトル通り、経済学、心理学、社会学をベースにした、世界の学術誌で評価されている経営理論について、体系立ててわかりやすく解説されています。文系理系の区分に意味がなくなりつつある昨今ですが、学生時代に社会学や心理学を学んだビジネスパーソンには特にお勧めです。日々の仕事に役に立たないと思っていた大学の講義内容が日々直面するビジネス課題とも繋がって、視野が広がった気がしました。個人的には「『人・組織は本質的にこう考え、こう行動するものである』ということにしっかりとした基盤を持つ」ことの重要性が強調されている点の腹落ちが大きかったです。分厚い本ですが、とても読みやすく、ストレッチした知的刺激も受けられる素晴らしい本です。理論の組み立て方、実証の仕方についてもわかりやすく解説されていて、学生にもお勧めです。若い時に出会っておきたかったと思える本です。

3 仕事に対して屈託を抱えつつも、地味な仕事にも真摯に取り組む人々を描いた、津村さんのお仕事小説が大好きなので、新年の仕事始めにあたって気合を入れるために読みました。本作は2つの中編小説が収録されているのですが、不具合を繰り返すコピー複合機(ちなみに「アレグリア」とは、この複合機に主人公がつけた名前です)に対する不満を描いた一作目と、視点を変えながら満員の地下鉄の情景を描いた二作目とも、いつもの津村さんの作品よりもさらに怒りの成分が多めです。両方の作品とも、職場や電車内での、他人にとっては一見なにげなく見える日常の中でも、それぞれの当事者はいろいろな理不尽な仕打ちにさらされていて、それぞれの立場で戦っていることが、その怒りに対する共感を持って描かれています。私も職場や電車内でイライラすることが多いたちなので、周囲の人に優しくできないまでも、それぞれに厄介ごとを抱えている同志として、少なくとも極力迷惑はかけないようにしたいと思いました。

■映画 
3 マスカレード・ホテル/監督 鈴木 雅之

 木村拓哉さん主演のドラマ「HERO」のスタッフが多数関わった作品ということで、さほど期待せずに観たのですが、東野圭吾さんによる原作がしっかりしているためか予想以上に面白かったです。木村拓哉さんは、良くも悪くもいつもの安定感のある演技でしたが、現場の刑事ということもあって、「HERO」の検事役よりも尊大さは控えめで、はるかに好感が持てました。ホテルのフロント係を演じた長澤まさみさんも、最近はぶっ飛んだ役が多い印象ですが、落ち着いた抑制の効いた演技が素晴らしかったと思います。先の読めないストーリー展開は引き込まれますし(松たか子さんが演じた役の存在感の大きさだけは先が読めてしまいましたが)、コメディ要素が過剰でないところも個人的には好みです。高いクオリティのエンターテインメント作品です。

 
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アパートの鍵貸します

2020-01-05 05:43:32 | Weblog
毎年言っていますが、今年は読書の質も上げていきたいです。

■本
1 死神の浮力/伊坂 幸太郎

 年末に読んだ「死神の精度」が面白かったので、その続編的位置付けのこの作品も読みました。死神の設定やそのルールなど、ツッコミどころが満載ですが、絶対的な悪に対抗する無力な善人という伊坂さんお得意の構造にドキドキハラハラとさせられる、フィクションの楽しさを存分に楽しめる作品です。ただ、作品の世界観の中では整合が取れているものの、長編だとさすがに死神のご都合主義的な行動の無理が目立ってきますので、この設定は前作のような連作の短編向きなのかもしれません。本作でも重要なテーマである、「死」に対するスタンスは甘すぎず苦すぎずと絶妙で、自分の最期についてもいろいろと考えさせられました。また、ここまで衒いもなく、個々人が持つ「死」に対する恐怖について描く作品もありそうでないので、新鮮でした。不器用ながらも、人生に必要な知恵を、子どもに伝えようとする主人公の父親の姿勢にも感銘を受けました。


■映画 
1 アパートの鍵貸します/監督 ビリー・ワイルダー
2 バンブルビー/監督 トラヴィス・ナイト

1 1960年のアカデミー賞で作品賞を含む5部門を受賞した名作との評判が高い作品なので、新年初めに取り上げる作品としてふさわしいと思い観ました。もう少しライトなコメディかという印象を勝手に持っていたのですが、現代にも通じるサラリーマン社会での権力者の傲慢やその犠牲者の描写など、意外とヘビーな内容もあり少し驚きました。とはいえ、古き良きアメリカ映画特有のドタバタ劇と性善説に基づく安定のハッピーエンドで、観終わった後には温かい気持ちになりました。「愛と追憶の日々」の母親役のイメージが強かったので、キュートなヒロインがシャーリー・マクレーンだったとは調べるまで気づきませんでした。ジャック・レモン演じる主人公のダメさ加減と、最後の最後での気高さもとても印象的です。

2 「トランスフォーマー」シリーズは回を重ねるごとに残念な内容になっていますし、監督がナイキ創業者の息子で、しかもその父親が経営するするアニメーション会社で働いているという情報から、さほど期待せずに観ましたが、こじんまりとしているものの、拡大化路線を取り続け破綻した本家とは異なり、ストーリー的に上手くまとまっていて、意外と良い作品でした。原作の世界観にも忠実で、スピンオフ作品としては十分合格点を与えられる内容だと思います。1980年代後半のアメリカが舞台で、当時のヒット曲がバックに常に流れていて、その時代に最も熱心に音楽を聴いていた私はとても楽しめました。特に、「ザ・スミス」の音楽の使い方が絶妙で、ファンとしてはとてもうれしかったです。あと、ティアーズ・フォー・フィアーズの「Everybody Wants to Rule the World」をバックに、フォルクスワーゲン・ビートルに変形したバンブルビーに乗って主人公がドライブするシーンは、ベタではありますが爽快感が抜群でした。ヒロインを演じた、ヘイリー・スタインフェルドはコーエン兄弟の「トゥルー・グリット」で、天才少女としての評判が高かった彼女です。
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