■本
7 50代からの人生戦略/佐藤 優
8 世界は四大文明でできている/橋爪 大三郎
9 三の隣は五号室/長嶋 有
7 各年代に向けての人生戦略本をいろいろと書かれている佐藤優さん。私も今年50歳になるので、50代をターゲットにしたこの本を読みました。人生の残り時間から逆算して、いかに生きていくべきかについて、ご自身の経験も踏まえながら、仕事、同僚、お金、家族、自分自身との向き合い方を中心に、具体的に教えてくれます。いつもの通り、したたかにサバイブしていこうという姿勢が貫かれているものの、人生の下り坂を迎えた層をターゲットにしているためか、「あまり無理をしなくてもよい」という優しい視線が印象的です。キリスト教徒である佐藤優さんによる、死への向き合い方についての考え方も参考になります。
8 「企業トップが学ぶリベラルアーツ」とシリーズ化された書籍です。以前に読んだ、同シリーズのアメリカと宗教の関係を説明された「宗教国家アメリカのふしぎな論理」が抜群に面白かったので、こちらも読んでみました。キリスト教、イスラム、ヒンドゥー、儒教の四つの文明と、なぜ日本は文明ではないのか(シンプルに言うと「正典」-基準になるテキスト-がないため)、について、とても分かりやすく論理的に説明してくれます。特に、ヒンドゥー教については、ほとんど学んだことがなかったので、奴隷制と対比したカースト制のメリット(奴隷と違って極めて制限された環境ではあるものの自分の意志で配偶者や財産を持つことはできる)や、階級が固定されているが故の輪廻転生の意味(現生での階級の上昇はカースト制のため難しいが、来世で上位の階級として生まれることは可能)を学べたことはとても有意義でした。儒教の、政治的リーダーが有能であることを重視する姿勢や、家族道徳が組織倫理に優先するという考え方が、現在の中国の体制にどのような影響を与えているか(安全保障が実現されているからこその体制支持と腐敗が進みやすい体質)についても興味深かったです。どの文明もその中では強固な論理的整合性を持っていることがよくわかりました。翻って日本はその基盤が確固ではないので、よく言えば柔軟、悪く言えば信念のない国家と見なされているという事実も、重く受けとめなければいけないと感じました。
9 あるアパートの5号室に代々住んだ13世帯のエピソードを時間や登場人物を頻繁に変えながら描いた作品です。ひたすら自作のゲームやTwitterのやり取りに興じる人々を描いた作品など、トリッキーな設定が多い長嶋有さんの面目躍如たる作品です。かなり実験的な作品で、その設定と13人の主人公に慣れるのに時間がかかりますが、いったん、そのルールを覚えると抜群の面白さで、長嶋さんの最高傑作とも言える作品だと思います。それぞれの主人公は、失恋、単身赴任の不便さ、家族との死別、同居人への葛藤、留学生との交流、など、それぞれ言ってみれば、ありきたりな問題(一人だけ、訳ありの物品を預かりそれを強奪しようとしたため命を落とすぶっ飛んだ登場人物がいますが)を抱えていますが、それが、同じ部屋が舞台に展開されたという横串が刺されることにより、一気にありきたりでない深みを持つから不思議です。同部屋という同じ舞台で、各登場人物のささやかな生活を描くことにより、人生に立ち向かう同志としての共感のようなものが生まれるのか、奇妙な感動を覚えました。
■CD
1 Something Else/The Kinks
2 Face to Face/The Kinks
1,2 昨年からサブスクリプションサービスでキンクスの作品にはまっています。中古CD屋さんで、初期の2作品を見つけたので購入しました。シンプルで粗削りな活気を持ちながらも、捻りの効いた個性的でポップな作品が多く、この時期の作品は特に大好きです。ジャム、XTC、オアシスやブラーといった、後のイギリスのロックバンドに与えた影響も随所に感じられます。「Something Else」に収録されている「Waterloo Sunset」は、この世に生まれた最も美しい楽曲の一つだと思います。
■映画
8 スマホを落としただけなのに/監督 中田 秀夫
スマホのセキュリティリスクをテーマにしたという点では新鮮ですが、それ以外はありきたりなサイコサスペンスかと思っていたら、被害者にスマホの悪用がかわいく思えるほどの衝撃的な過去があることが判明する、というまさかの展開で終盤にかけて一気に盛り上がりました。そのストーリー上のテンションの高まりにシンクロするかのように、成田凌さんの演技も熱を帯びてきて、圧倒されました。大晦日の「ガキの使い」で身体を張っていた姿が印象に残っていますが、今後も成田凌さんには注目したいと思います。
7 50代からの人生戦略/佐藤 優
8 世界は四大文明でできている/橋爪 大三郎
9 三の隣は五号室/長嶋 有
7 各年代に向けての人生戦略本をいろいろと書かれている佐藤優さん。私も今年50歳になるので、50代をターゲットにしたこの本を読みました。人生の残り時間から逆算して、いかに生きていくべきかについて、ご自身の経験も踏まえながら、仕事、同僚、お金、家族、自分自身との向き合い方を中心に、具体的に教えてくれます。いつもの通り、したたかにサバイブしていこうという姿勢が貫かれているものの、人生の下り坂を迎えた層をターゲットにしているためか、「あまり無理をしなくてもよい」という優しい視線が印象的です。キリスト教徒である佐藤優さんによる、死への向き合い方についての考え方も参考になります。
8 「企業トップが学ぶリベラルアーツ」とシリーズ化された書籍です。以前に読んだ、同シリーズのアメリカと宗教の関係を説明された「宗教国家アメリカのふしぎな論理」が抜群に面白かったので、こちらも読んでみました。キリスト教、イスラム、ヒンドゥー、儒教の四つの文明と、なぜ日本は文明ではないのか(シンプルに言うと「正典」-基準になるテキスト-がないため)、について、とても分かりやすく論理的に説明してくれます。特に、ヒンドゥー教については、ほとんど学んだことがなかったので、奴隷制と対比したカースト制のメリット(奴隷と違って極めて制限された環境ではあるものの自分の意志で配偶者や財産を持つことはできる)や、階級が固定されているが故の輪廻転生の意味(現生での階級の上昇はカースト制のため難しいが、来世で上位の階級として生まれることは可能)を学べたことはとても有意義でした。儒教の、政治的リーダーが有能であることを重視する姿勢や、家族道徳が組織倫理に優先するという考え方が、現在の中国の体制にどのような影響を与えているか(安全保障が実現されているからこその体制支持と腐敗が進みやすい体質)についても興味深かったです。どの文明もその中では強固な論理的整合性を持っていることがよくわかりました。翻って日本はその基盤が確固ではないので、よく言えば柔軟、悪く言えば信念のない国家と見なされているという事実も、重く受けとめなければいけないと感じました。
9 あるアパートの5号室に代々住んだ13世帯のエピソードを時間や登場人物を頻繁に変えながら描いた作品です。ひたすら自作のゲームやTwitterのやり取りに興じる人々を描いた作品など、トリッキーな設定が多い長嶋有さんの面目躍如たる作品です。かなり実験的な作品で、その設定と13人の主人公に慣れるのに時間がかかりますが、いったん、そのルールを覚えると抜群の面白さで、長嶋さんの最高傑作とも言える作品だと思います。それぞれの主人公は、失恋、単身赴任の不便さ、家族との死別、同居人への葛藤、留学生との交流、など、それぞれ言ってみれば、ありきたりな問題(一人だけ、訳ありの物品を預かりそれを強奪しようとしたため命を落とすぶっ飛んだ登場人物がいますが)を抱えていますが、それが、同じ部屋が舞台に展開されたという横串が刺されることにより、一気にありきたりでない深みを持つから不思議です。同部屋という同じ舞台で、各登場人物のささやかな生活を描くことにより、人生に立ち向かう同志としての共感のようなものが生まれるのか、奇妙な感動を覚えました。
■CD
1 Something Else/The Kinks
2 Face to Face/The Kinks
1,2 昨年からサブスクリプションサービスでキンクスの作品にはまっています。中古CD屋さんで、初期の2作品を見つけたので購入しました。シンプルで粗削りな活気を持ちながらも、捻りの効いた個性的でポップな作品が多く、この時期の作品は特に大好きです。ジャム、XTC、オアシスやブラーといった、後のイギリスのロックバンドに与えた影響も随所に感じられます。「Something Else」に収録されている「Waterloo Sunset」は、この世に生まれた最も美しい楽曲の一つだと思います。
■映画
8 スマホを落としただけなのに/監督 中田 秀夫
スマホのセキュリティリスクをテーマにしたという点では新鮮ですが、それ以外はありきたりなサイコサスペンスかと思っていたら、被害者にスマホの悪用がかわいく思えるほどの衝撃的な過去があることが判明する、というまさかの展開で終盤にかけて一気に盛り上がりました。そのストーリー上のテンションの高まりにシンクロするかのように、成田凌さんの演技も熱を帯びてきて、圧倒されました。大晦日の「ガキの使い」で身体を張っていた姿が印象に残っていますが、今後も成田凌さんには注目したいと思います。