本、CD、映画日記

目標は年間読書100冊。その記録と目標管理をかねたブログです。

ラストスパート

2006-12-31 05:39:39 | Weblog
■本
87 口コミ2.0 ~正直マーケティングのすすめ~/上原 仁, 保田 隆明, 藤代 裕之
88 なぜかお客様が納得する!必ず買わせる営業心理学/菅谷 新吾, 宮崎 聡子
89 陰日向に咲く/劇団ひとり
90 海の仙人/絲山 秋子

87 類似書にあるように「口コミで売り上げが10倍!」みたいな派手なことを書かず、筆者の経験に基づいた地に足の着いた主張が多い(タイトルにあるように、「正直に誠実にファンになってもらうように対応すべし」みたいな乗りが多い)ので、好感が持てます。目から鱗が落ちるような新たな知見は得られませんが、少なくともうそのない本だと思います。筆者3人の座談会は、唐突にいろんな概念が提出されるので僕にはわかりにくかったです。注などでもっと補ってくれればよかったのにと思いました。悪くはない本ですが、「毒にも薬にもならない」といった感じの本です。

88 80で読んだ本の(たぶん)姉妹書。NLPってたいそうな表現ですが、実はこれまでの心理学の知見の応用でたいしたことはないということがこの2冊でよくわかりました。ただ、具体的にどのように活用すればいいのかという点についてはなかなかよく考えられていると思いました。お客様に反論するときは、文法的におかしくても、「しかし」ではなくて「実は」を使え、という点など参考になる点もいくつかありました。結局は提唱者の原典を読まないとNLPの全体像はわからないのかもしれません。

89 ラストスパートということで今年話題なった本を(「国家の品格」とどっちにしようかと迷ったのですが、僕には品格がないもので)。全ての短編が微妙に絡みあうよく考えられた本です。何よりいろんなキャラクターをいろんな文体を使い分けながら書き分けているところがすごいと思います。町田康風の文体でポール・オースターっぽい話を描いてみたり、どこか「まがい物」っぽい感じを出しながらも独特の雰囲気を醸し出しているところがこの人の才能だと思います。読んで損はないと思います。もっとほめたいのですが、次に紹介する90が圧倒的によかったので少し霞んでしまいました。

90 文句なしの傑作。65を読んだときにも感じたのですが、なんて格好いい作品を書く人なんだろうと思います。神様っぽい「ファンタジー」なる人が出てくるし、主人公は宝くじにあたって仕事をやめて半隠遁生活を送っているし、2回も雷に打たれるし、ちょっと現実離れした設定なのに、「せかチュー」なんかのような作り物くささが全くなく、圧倒的なリアリティを持って迫ってきます。別れや喪失に対するたんたんとした描写(某作のように決して、くどくどと劇的に描写しようとはしていない)が、「実際人生ってそんなもんだよなあ」という説得力を持っています。かといって、人生に対して「あきらめ」ているわけでもなく、クールなんだけど、人生や人間に対する「信頼」みたいなものも感じられる、微妙な温度感を持った作品です。とりあえず、来年はこの筆者の作品を全部読まねば。

■CD
56 Broken Boy Soldiers/The Raconteurs

 「CROSS BEAT」の2006年ベストアルバム特集で紹介されていて、ホワイト・ストライプスのジャック・ホワイトとブレンダン・ベンソンが組んだバンドだと知って衝動買いしました。ホワイト・ストライプスほど、とんがった感じはないですが、ちょっと他の人には出せないなあ、って感じの音を出してくれてます。正月ゆっくり聴き込みたいと思います。


■映画
35 鉄コン筋クリート/監督 マイケル・アリアス
36 リトル・ミス・サンシャイン/監督 ジョナサン・デイトン&ヴァレリー・ファリス


35 こちらもラストスパートということで観て来ました。なんといっても蒼井優さんのシロがイメージ通りの声でびっくり。この人は単なる、ともさかりえのそっくりさんじゃないですね。すごい演技力というか才能です。このシロの声だけでも原作を超えていると思いました。原作では少しストーリーがごちゃごちゃしてわかりにくかった(そこが松本太陽作品の魅力と言えば魅力でもあるのですが)のですが、その混沌とした感じを残しながらも、各キャラクターを丁寧に描き、実は「クロがシロに守られている」という主題をわかりやすくしたことにより、観る側の負担を軽減した親切な内容になってます。その点が原作との比較で評価が分かれるところですが、僕はかなりよいと思いました。絵もスピード感と迫力がたっぷりで、映画館で観てよかったと思わせる力作でした。何より、監督の作品に対する愛情が伝わってきて好感が持てます。

36 今年のアメリカでの大穴ヒットということや僕好みのロード・ムービーということもあり、すごく期待して観に行ったのですが、期待が大きすぎたのか、ちょっと後半尻つぼみな感じがして物足りませんでした。キャラクターは全員魅力的ですし、故障したワーゲンのミニバスを家族で押しながらエンジンをかけて乗り込んでいく場面など、印象に残る絵もありますし、何より、娘のミスコン出場のために家族全員がバスで旅をする、という設定はすごく好きなのですが、逆に、事前に僕が持っていたこれらの情報以上の何かを提示してくれるまでには至りませんでした。もちろん平均以上の映画ではあります。特に今年のお正月映画はこぶりな感じがするので、時間のある方は是非。ヒロインの女の子がかわいいのでそれを観るだけでも価値はあります。


 結局、今年は、本は90冊、映画は36本と目標を突破できました。たくさんの、本や映画に接することができて幸せな1年でした。特に映画はここ5年ほど年間10本も観てなかったので、とてもうれしいです。来年の目標は、本は月6冊の年間72冊、映画は30本。読書は量とともに質も追求していきたいです。今年は新書系の入門書が多かったので、その分野の大御所が書いた読み応えのある単行本を読む機会をもっと増やしたいです。あと、「罪と罰」などの長編小説も読みたいです。CDはナップスターの聴き放題サービスを導入したので、たぶん購入枚数は減ると思うので目標設定はしません。来年も今年のようにたくさんの本や音楽や映画に接する余裕のある生活を送れますように。
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ラブシティ

2006-12-23 06:55:58 | Weblog
■本
85 ウェブ人間論/梅田 望夫, 平野 啓一郎
86 ほんじょの虫干。/本上 まなみ

85 お二人の意見の対比がはっきり出た対談で興味深く読めました。ただ、なぜか読んでいて少ししんどくなりました。「ウェブ進化論」は間違いなく傑作ですが、あれだけ精緻に「あちら側の世界」を分析した本を一度出してしまうと、あとはどうしてもそのエッセンスの繰り返しになってしまいますね。また、僕は文系の悲観的な人間なので、平野さんの意見の方にどちらかと言えば共感を持ってしまいます。「ウェブ進化論」を読んでいるときには気にならなかった梅田さんの「技術に対するさわやかなオプティミズム」がどうしても少しひっかかってしまいます。ただ、「ウェブ進化論」に書かれているような現在進行中のできごと、または、今後起こり得るできごとに対して、自分がどのようなスタンスを持って接しているのか(接し得るのか)を相対化して考えるにはいい本だと思います。

86 中島らもさんをはじめ、いろんな方が絶賛していたので前から一度読みたいと思っていました。「僕」を一人称に使うところがあるなど、「少し狙いすぎかなあ」と感じる部分もありますが、独特の感性と文体で、この人にしか出せない世界を構築しているのは本当にすごいと思います。ただ、30代後半のおっさんが読むにはちょっと気恥ずかしいですね。読んでいてナンシー関さんの毒が少し欲しくなりました。


■CD
54 Whatever People Say I Am, That's What I'm Not/Arctic Monkeys
55 ラブシティ/曽我部恵一

54 そろそろ今年もラストスパートということで、「CROSS BEAT」の2006年ベストアルバムに選ばれた本作を買いました。メロディもよく勢いのあるいいバンドだと思いますが、これが今年のベストと言われると、本当かなあって気が少しします。「Clap Your Hands Say Yeah」のような個性があまり感じられませんでした。それとも歳をとったのでこういう「初期衝動」系のバンドが少しきつくなっただけでしょうか?もう少し聴きこんでみたいと思います。

55 全2作と比べると、スローな曲やこった作りの曲が多いのですが、愛にあふれるテンションの高さは相変わらずです。それにしても、この人は素敵な歳の取り方をしていますね。メロディだけがよい(といってもそれだけでもすごいことですが)、演奏の下手なバンドの元ヴォーカルで、しかもたいした大ヒット曲もないのに今では音楽界に確かな存在感を築いている感じがします。むしろ、大ヒット曲がなかった方がよかったのかもしれません。ソングライターとしての才能は、元LRの黒沢健一さんの方がはるかに上だった気がするのですが、「KNOCKIN' ON YOUR DOOR」以降、なにか窮屈な感じがするのに対し、曽我部さんのこののびのびとした活動振りと音楽は本当にすばらしいと思います。このアルバムも後半のめくるめくたたみかける怒涛の展開はすごく好きです。
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中年クライシス

2006-12-17 06:20:34 | Weblog
■本
84 中年クライシス/河合 隼雄

 自分の中ではまだ中年ではないと思っているのですが、そろそろ中年としての心構えを持つ準備をしようと読みました。小説を例に、老い、性や家族などの中年に現れる問題を解説した内容でとても興味深い本でした。読んだことのある小説は一つもなかったのですが、引用と解説が巧みですごくわかりやすかったです。大江健三郎さんの「人生の親戚」の引用が特に衝撃的で印象に残っています。生きていくうえで生じる問題も含めて味わいつくすことが人生の醍醐味、といったことがテーマだと思うのですが、そう考えると少しは励まされるものの、生きていくことは大変なことだなあ、と改めて思いました。


■CD
53 Once Again/John Legend

 ボーナスが出たので自分へのご褒美として買いました。1stと比べると少し声が変わった(太く力強くなった)気がしますし、地味な印象もありますが、どの楽曲も才気がほとばしっていてクオリティが高い名盤だと思います。冒頭のシングルカットされた「save room」で、ほぼAメロだけで押し切って聴かせてしまうところもすごいです。聴くたびに新たな発見があるので、この冬にじっくり聞き込みたいと思います。
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バズ・マーケティング

2006-12-09 08:03:44 | Weblog
■本
83 バズ・マーケティング/マーク・ヒューズ

 冒頭から自信満々な語り口が鼻につきますが、それなりに読む価値があると思います。前半のバズ・マーケティングの成功の秘訣について触れられた部分は「言うは易し、行うは難し」のようなものばかりなので、あまり参考になりません(例えば、秘訣4の「誰も成しえなかったことに挑戦する」-そりゃ成功しますよ)。しかし、後半のケースはさまざまな商材、規模が取り上げられており参考になりますし、読み物としても面白いです。 要は成功の鍵は人の注目を集め、語りたくなるような仕掛けを労を厭わず頭を使って考えましょう、ということのようです。
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ULRICH SCHNAUSS

2006-12-02 08:13:30 | Weblog
■本
81 マッキンゼー流 プレゼンテーションの技術/ジーン・ゼラズニー
82 ららら科學の子/矢作 俊彦

81 プレゼンテーションに向かうにあたって必要な内容が過不足なく書かれていて参考になるいい本です。翻訳がいいのか、わかりやすい言葉でかかれているので、読みやすく理解しやすいです。次のスライドに移る際のつなぎの言葉をあらかじめ準備しておく、など個人的に役立つ内容も多かったです。ただ、本の価値は文字数やページ数ではないとわかってはいるのですが、この量で2200円は少し高いかなと思いました。

82 数年前に各書評で結構絶賛されていたので、文庫化に伴い読みました。読後感の不思議な本です。最初タイトルだけで30年ぶりに日本に帰ってきた主人公が科学的知識を背景に発明などで活躍する話かと思っていたのですが、結局は初老の男が現代の東京を徘徊する話でした。30年ぶりに日本に帰ってきた主人公の視点から見た現代日本社会の批判というねらいはわかるのですが、学生闘争の時代背景がよくわからないので、30年もの長い月日を一見無駄(主人公は無駄とは思っていませんが)に過ごす動機がいまひとつよく理解できませんでした。主人公と同年代の人だけに理解できればよいという感じの小説なので、世代が違う僕には阻害されたような奇妙な読後感が残ったのかもしれません。現代日本にいると、国家によって自分の人生が大きなダメージを受けるということをリアルに感じることはほとんどありませんが、そういった危険性は十分にありうるということを認識させてくれる本でした。否定的なことを書きましたが、先の展開が読めない(結構期待が裏切られます)読んでいておもしろい本ではあります。


■CD
52 A Strangely Isolated Place/Ulrich Schnauss

 11月に1枚もCDを買っていなかったので、1枚くらいいいかと、amazonで値下げしていたこともあり買いました。46で紹介した前作「Far Away Trains Passing By」と比較するとアッパーでよく考えられたポップな曲が多いです。少しウェルメイド過ぎるかなという感じもあり、前作の方が好きですが、聴いていて楽しくなるいい作品です。ただ、曲を邪魔する感じなので、あまりヴォーカルはいれないで欲しいなあと個人的には思います。
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