本、CD、映画日記

目標は年間読書100冊。その記録と目標管理をかねたブログです。

Oczy Mlody

2017-01-28 10:17:53 | Weblog
■本
6 おどろきの中国/橋爪 大三郎、大澤 真幸、宮台 真司
7 日本人のための怒りかた講座/パオロ・マッツァリーノ

6 日本を代表する社会学者3名による中国をテーマにした鼎談です。「神」に対する「天」という概念を用いて、キリスト教社会や天皇制との違いを明確にし、中国という国の成り立ちや思考様式をわかりやすく説明してくれるなど、高度でトリッキーな議論に知的好奇心が刺激されます。日中問題については、「元をただせば中国の方が圧倒的に先進的でプライドの高い国だ」など「中国人の認知地図」をよく理解して、解きほぐしていくべきという主張はもっともだと思います。この本を読んで、もっと「文化大革命」という奇妙な事象について勉強してみたいと思いました。

7 タイトル通り、パオロ・マッツァリーノさんによる怒り方講座です。電車でのイヤホン音漏れや図書館での携帯通話といった、街中での迷惑行為を実際に注意してきた経験から、効果的で社会的にも有意義な叱り方について教えてくれます。この本でも少し触れられていますが、中島義道さんの街中の騒音との闘いを描いた一連の作品にも似た強い批評性が感じられます。批評性が前面に出ているためか、いつものパオロ・マッツァリーノさん独特のどこかとぼけたユーモラスな皮肉は控えめで、しごく真っ当な主張ではありますが、少し読んでいて冗長に感じてしまいました。身近な迷惑に行動して対処できない人間が、大きな社会問題を解決することはできない、という主張には、いろいろと考えさせられました。



■CD
13 Journey to the West/Monkey
14 Oczy Mlody/Flaming Lips

13 ブラー、ゴリラズのデーモン・アルバーンが、別ユニットとして発表した2008年の作品です。「西遊記」をモチーフにしたオペラのサントラらしいです(「ゴリラズ」と「西遊記」をかけて、「モンキー」というユニット名にしたものと思われます)。ブラー、ゴリラズやソロの作品だけでなく、「マリ・ミュージック」や「ザ・グッド,ザ・バッド・アンド・ザ・クイーン」といったデーモン・アルバーンのサブ・プロジェクトの作品も全て大好きなのですが、この作品は少し取っつき難くて、頻繁に繰り返して聴くことはなさそうです。中国音楽と現代ポップ・ミュージックを融合させ、それをオペラ風にアレンジするという試みはとてもユニークだと思いますが、個人的にはあまりしっくりきませんでした。

14 名盤「Soft Bulletin」に匹敵する大傑作です。フレーミング・リップスの代表作として後々まで語り継がれるべき作品だと思います。「Soft Bulletin」のような、くっきりとした印象的なメロディで魅了する作品ではないですが、はかなげでドリーミーなサウンドが聴いていてとても心地よいです。「Soft Bulletin」が剛速球だとしたら、この作品は滅茶苦茶揺れるナックルボールのようなイメージです。最近、実験的な作品が多かったですが、その実験の成果を見事にポップ・ミュージックとして昇華させています。


■映画
8 J・エドガー/監督 クリント・イーストウッド-

 半世紀近くの長きに渡ってその地位に君臨した、FBI初代長官ジョン・エドガー・フーバーの半生を描いた作品です。クリント・イーストウッド監督らしい手堅い演出に支えられ、ホモセクシュアルでマザコンの傲慢な男という難しい役を、レオナルド・ディカプリオが、青年期から老年期まで見事に演じています。しかし、実績抜群のスタッフが集結した映画にもかかわらず、ストーリーが平板なためか、観ていてさほど感情が揺さぶられることはなかったです。私が題材となった人物をよく知らなかったこともあると思いますが、オスカー狙いのディカプリオの壮大な演技と、淡々とした演出・ストーリー展開があまりマッチしていない気がしました。
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問いのない答え

2017-01-21 11:21:27 | Weblog
■本
4 古市くん、社会学を学び直しなさい!!/古市 憲寿
5 問いのない答え/長嶋 有

4 古市さんのことはよく存じあげないのですが、家族が最近よくテレビに出ているということなので、私が大学時代社会学部だったということもあり、「社会学者」という古市さんの肩書と本のタイトルに惹かれて読んでみました。古市さんが有名な社会学者のところに行って、「社会学って何ですか?」という質問を皮切りにそれぞれの専門分野について質問をするという本です。古市さんやその対談相手の方全員がそれぞれに個性的でとても楽しく読めました。12人の社会学者それぞれの視点から社会学について語って下さっているので、複合的な視点から今の社会学の業績と問題点を知ることができ参考になります。古市さんも「かませ犬」という自分の立場に自覚的に立ち回られていて、読み物としても面白いです。参考図書をさりげなく紹介されているので、それらの本も読んでみたくなりました。大学で社会学を勉強してみようか、と漠然と考えている高校生の方にもお勧めです。

5 東日本大震災後に長嶋有さんがTwitterで始めた、質問の前半を隠した問いへの答えをみんなで投稿するという遊びを題材にした小説です。長嶋さんを思わせるネムオという作家を含め、この遊びの参加者それぞれの視点に次から次へと変わっていく群像劇になっています。登場人物の視点が切り替わるタイミングがわかりにくく、しかもさほど説明もなく次々と新たな人物が登場するので、最初はかなり取っつきにくいですが、慣れてくるとこの参加者全体が一つの有機体のような気がしてきてさほど気にならなくなります。自ら編み出した遊びを題材に自分の半径数メートル程度の世界を深堀するのは長嶋さんの得意技ですが、今作は東日本大震災や秋葉原通り魔事件などの社会的な題材を真正面から取り上げているのが特徴的ですし、それが長嶋さんの新境地を開いていると思います。非常にとりとめのない小説ですが、そのとりとめのなさこそ人生であることを、暗示的な題名とともに読者に寄り添うように教えてくれる感動的な作品です。


■CD
4 Almost Blue/Elvis Costello and The Attractions
5 King of America/The Costello Show featuring The Attractions and Confederates
6 Blood and Chocolate/Elvis Costello and The Attractions
7 Spike/Elvis Costello
8 Mighty Like a Rose/Elvis Costello
9 The Juliet Letters/Elvis Costello and The Brodsky Quartet
10 Kojak Variety/Elvis Costello
11 When I Was Cruel/Elvis Costello
12 The Delivery Man/Elvis Costello and The Imposters

4~12 昨年、ボブ・ディランのCDを時系列で聴いたのですが、その変化の軌跡が興味深くとても楽しかったので、今年はエルヴィス・コステロを集中的に聴こうと思っています。上記作品は、ディスク・ユニオンで1枚100円で売られていたのでまとめ買いしました。通して聴くと、ポップなメロディセンスよりも、いつまでも青臭さの残る声が彼の最大の武器だということがよくわかります。初期衝動に忠実に従った勢いある作風から、次第にいろんな音楽的要素を取り込みながら、ときに迷走しつつ円熟味が増してきていますが、歌声自体はさほど変わらないので、いつまでも瑞々しい印象が残るところがとても魅力的です。あと、ボブ・ディランと同様にコンスタントに作品を出し続けているところが素直に素晴らしいと思います。


■映画
7 偉大なる、しゅららぼん/監督 水落 豊

 万城目学さんの小説を原作にした琵琶湖周辺に住む不思議な能力を持つ一族の対立を描いた作品です。万城目学さんの小説は読んだことがないのですが、評判通りその世界観がとても独創的です。人間の想像力の果てしなさにあらためて感心します。濱田岳さんが特殊能力者の世間ずれした跡取り、という独特のキャラクターを魅力的に演じています。 岡田将生さんや深田恭子さんの役に入り込んだ少しコミカルな演技も好ましく、予想がつかないストーリー展開も含め楽しめました。ただ、想像力の豊かさを味わう作品なので、小説で読んで自分の中で各キャラクターを膨らませる方がより楽しかったのかもしれません。
 
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戦火の馬

2017-01-14 09:31:52 | Weblog
■本
3 路/吉田 修一

 台湾新幹線のプロジェクト受注から開通までに関わった人々を描いた作品です。年末に台北旅行に行って来たので、ずっと読まずに積んだままになっていたこの作品を読みました。吉田修一さんの都会的でポジティブな作風の方の作品です。個人的には、「悪人」や「怒り」といった、地方都市の鬱屈した感情が爆発した、ドロドロとした作風の吉田修一作品の方が好きなので、多くのメインキャストを巧みな構成で描いた優れた職業小説ではありますが、私にとってはあまり引っかかりの少ない作品です。台湾の食べ物や風景とおおらかな人々の描写はとても魅力的で、今回旅行してみて私も台湾のことが大好きになったので、台湾新幹線には是非乗ってみたいと思いました。


■CD
3 A Single Man/Elton John

 1978年に発表されたエルトン・ジョンの12作目。1970年代前中期に発表され今でもキャリア上最高作品と言われることの多い、「Goodbye Yellow Brick Road」、「Captain Fantastic and the Brown Dirt Cowboy」を経て、若干勢いが衰え始めた時期の作品です。「Your Song」、「Crocodile Rock」といった誰もが知っているシングルヒット曲もなく、どうしても地味な印象が残ります。逆にその地味さが、時に押し付けがましさを感じるエルトン・ジョン節のエグみを緩和し、すっと歌声が耳に入ってきて心地よくもあります。ラストの美しいバラード「Song For Guy」のじらしにじらしたイントロがとても印象的です。


■映画
6 戦火の馬/監督 スティーヴン・スピルバーグ

 スティーヴン・スピルバーグ監督による、第一次世界大戦を背景に馬とその飼い主の青年のつながりを描いた正統派の感動作です。主人公(?)の馬と関わった人々がご都合主義に出会いすぎるところが少し気になりますが、戦争という大きな波に翻弄される愚直な人々を、戦争に利用される馬を軸に丁寧に描いている点は好感が持てます。馬が傷つきながらも戦場を疾走するクラマックスシーンの美しさも、「さすがスピルバーグ監督」と唸らされます。有名スター俳優やトリッキーなストーリーに頼らず、良質の原作をしっかりとした技術を持つ監督が演出すると素晴らしい作品が出来上がるというお手本のような作品です。この作品があったから、名優ダニエル・デイ=ルイスと組んだ、同じく歴史ものの次作「リンカーン」の高評価につながったのだと思います。
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ローグ・ワン

2017-01-07 11:02:24 | Weblog
■本
2 LIFE SHIFT(ライフ・シフト)/リンダ グラットン、 アンドリュー スコット

 新年早々に今後の生き方を考えるために読みました。寿命が100歳に伸びる可能性のある我々が、その長くなった人生をより有意義に過ごすための考察が書かれています。教育・仕事・引退といったリニアな3ステップの人生モデルが崩壊し、教育、仕事、休息のステージを行き来しながら、AIの発展などの環境変化により仕事を奪われないために自分の価値や活力を随時ブラッシュアップし、引退をできるだけ遅くする戦略的な生き方が提唱されています。長くなった人生に対応するための資産計画(できるだけ長く働き引退を遅らせることと、長くなり得る引退後の生活に備えて金融リテラシーを高めること、などが推奨されています)だけでなく、生産性資産(学生時代だけでなく、定期的に学習する機会を作り、陳腐化したスキルをブラッシュアップすること、などが推奨されています)、活力資産(できるだけ長く働くための活力を維持するために、健康に留意すること、定期的にリフレッシュする期間を設けること、家族や友人との良好な関係を築くこと、などが推奨されています)、変身資産(長くなった人生で環境変化に順応する必要性がより高まっているので、自分の適正に対する理解を深めること、多様なネットワークを築くこと、新しい経験にチャレンジする姿勢を持つこと、などが推奨されています)といった無形資産について多く言及されているところが興味深いです。


■CD
2 No Further Ahead Than Today/Ulrich Schnauss
 
 癒しのエレクトロニカミュージシャン、ウルリッヒ・シュナウスの新作です。今回も音の洪水にじっくり浸れます。モノクロジャケットの前作「Long Way to Fall」がどちらかと言えば落ち着いたしっとりとした作品だったのですが、今作は対照的に、印象的な赤いジャケットそのままのテンション高めのアッパーなサウンドで気持ちが上がります。前作は寝る間際に、今作は朝一番に聴くことが多いです。


■映画
2 世界から猫が消えたなら/監督 永井 聡
3 ジェイソン・ボーン/監督 ポール・グリーングラス
4 ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー
5 ビリギャル/監督 土井裕泰

2 原作に忠実に作られてますが、冒頭の主人公が倒れるシーンやナイアガラの滝で宮崎あおいさんが号泣するシーンなど、美しい映像が随所に挿入されているのが印象的で、原作が気に入った方は映画も観ることをお勧めします。主人公が淡々と自分の死と人生に必要なものと向き合う姿勢は好感が持てますが、原作でも若干鼻についた作り手側の「泣かそう」という意図がより鮮明に透けて見えるので、私のような屈折した人間は拒否反応が出る作品かもしれません。

3 大好きなジェイソン・ボーンシリーズの最新作です。初期3部作が素晴らし過ぎるためか、あまり評判は良くないですが、マット・デイモンがジェイソン・ボーンを演じるだけでファンとしてはうれしいですし、黒幕のトミー・リー・ジョーンズも抜群の安定感です。ポール・グリーングラスのアクション演出もさすがのクオリティです。ただ、初期3部作と異なり、単純な個人的な恨みの報復が前面に出過ぎているところがストーリーとして薄っぺらくなっているのかもしれません。それでも、マット・デイモンがが出演していない前作「ボーン・レガシー」よりも格段に面白かったです。「リリーのすべて」でオスカー女優になったアリシア・ヴィキャンデルの腹黒い演技も魅力的でした。

4 あまり期待していなかったのですが、かなり評判が良いので観ました。スター俳優はあまりいないものの(主演の「博士と彼女のセオリー」のフェリシティ・ジョーンズと「バンテージ・ポイント」のフォレスト・ウィテカーしか知っている人はいませんでした)、スターウォーズシリーズを踏襲した見事な映像と、サイドストーリーらしいチャレンジングなシナリオでとても楽しめました。スターウォーズシリーズの小ネタを随所に盛り込みながらも、フォース使いの超人がいなくても(盲目の超絶剣士はいるものの)、普通の人たち(ドロイドはいるものの)の命を懸けた奮闘で、圧倒的戦力を誇る相手から目的を果たすという、泥臭くもオリジナルなストーリーが魅力的です。

5 学年最下位の成績の女の子が懸命の努力で慶応大学に合格するという感動的な話なんですが、主人公「ビリギャル」の両親のキャラ設定があまりにも現実離れし過ぎて(母親はあれだけ子ども思いの人格者なら、煙草を吸って停学になる前になんとかなりそうですし、長男だけを溺愛する父親も、困っている人を助けずにはいられない性格なら、もう少し子どもの窮地にも興味を持つはずです)、あまり入って来ませんでした。学校の先生も、いくらなんでも塾の先生に嫌がらせに行くほど根性が腐った人はいないでしょうし。。。主演の有村架純さんはとてもかわいかったですし、塾の先生役の伊藤淳史さんも好演されていました(ただ、この先生もあまりにも人格者過ぎて現実離れしてますが)。実話の映画化ではなく、一種のファンタジーとして観た方がよいのかもしれません。
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みんなの道徳解体新書

2017-01-01 06:30:00 | Weblog
あけましておめでとうございます。
昨年は本はぎりぎり100冊到達だったので、今年はもっとたくさん読みたいです。
CDはいい感じで購入枚数を抑制できました。サブスクリプションサービスの利用が増えた効果です。
映画はたくさん観ることができました。エンタメ系が多かったので今年は芸術作品も観たいです。


■本
1 みんなの道徳解体新書/パオロ・マッツァリーノ

 過去から現在に至るまでの道徳副読本の内容を面白おかしく紹介しつつ、2018年度から小学校で正式な教科として格上げされる「道徳」教育の矛盾や、それを推進する側のズルさが指摘されています。パオロ・マッツァリーノさんの著作に一貫する姿勢ですが、事実に基づかず感覚で過去や自分の理想像を美化する大人たちを、資料やデータをもとに一刀両断してくれるのでとても痛快です。自分の頭で考えることと、自分と異なる多様な他者を受け入れようと努力すること、の大切さを教えてくれる素晴らしい本です。


■CD
1 Armed Forces/Elvis Costello and the Attractions

 バンド名義のエルヴィス・コステロの3作目。この次の「Get Happy!!」あたりまでが、ポップでかつ勢いのある初期のエルヴィス・コステロ節が堪能できます。捨て曲なしの3分前後の短い楽曲がたたみかけるように続き、聴いていてとても心地よいです。演奏する側が楽しんでいることが伝わってくる素敵な作品です。


■映画
1 HERO/監督 鈴木 雅之

1 木村拓哉さん主演の人気ドラマの映画化2作目。ドラマをを観ていなくても、豪華俳優陣演じる各キャラクターの個性が際立っているので、わかりやすく楽しめます。ただ、そのキャラクターが強烈過ぎてかつ人数も多いので、その活用に力を注ぎ過ぎたのか、ストーリーの方がかなりチープです。検察官が事件を解決する謎解きのスリリングさは全く味わえませんでした。松たか子さん演じるヒロインとの関係が微妙なまま終わったのは、最近のドラマにしては奥ゆかしくて好感が持てました。
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