本、CD、映画日記

目標は年間読書100冊。その記録と目標管理をかねたブログです。

一般意志2.0

2016-02-28 07:13:35 | Weblog
■本
17 一般意志2.0 ルソー、フロイト、グーグル/東浩紀
 
 最近「民主主義」をテーマにした本がたくさん出版されていますが、その先駆けとも言える本だと思います。2011年に出版された当時話題になっていたのを思い出して、文庫化に伴い読んでみました。ルソーの「一般意思」という概念をビッグデータ時代に蘇らせて、ブログやTwitterの書き込みでの頻出ワードや検索エンジンのクエリーの盛り上がり状況(これが「一般意思2.0」だと私は理解しました)を、ニコニコ動画の画面上に流れる視聴者の書き込みのように、代議士にリアルタイムで見せて、国民の無意識を可視化することにより、専門家の議論(熟議)に影響を与え、衆愚政治と政治のプロによる政治の蛸壺化の間の落としどころを見つけようという趣旨だと私は理解しました。ルソー、フロイトといった有名な思想家の概念とテクノロジーを結びつけながら、丁寧に議論を進めてくれるので、論旨はわかりやすく、知的好奇心も刺激してくれます。ネットの書き込みが右傾化しやすいという昨今の状況を見ると突っ込みどころも多い考え方だと思いますが、IoT化が進みリアルとネットの垣根が低くなると(例えばデモ参加者の主張ごとの数が警察やマスコミからのバイアスがかかって報告される参加者数ではなく正確に把握できるようになるなど)、それなりの有効性を持つのではないかという期待を持ってしまいます。閉塞感漂う民主主義に一定の希望を与えるよい本です。


■CD
9 A Collection/Underworld

 もうすぐ新作が発表されるUnderworldの2011年に発表されたベスト盤です。2枚組のベスト盤やライブ盤は持っているのですが、代表曲の別ヴァージョンやレアトラックも収録されていて価格も安かったので買いました。短く編集されたダンサブルな楽曲がテンポよくつながっていくので、ジョギングのBGMに最適です。コアなUnderworldファンには物足りないかもしれませんが、キャッチーなメロディラインの楽曲が満載で、Underworldのエッセンスを知る入門用として、お勧めできる作品だと思います。


■映画
13 ワールド・ウォーZ/監督 マーク・フォースター

 冒頭10分くらいの迫力に満ちた怒涛の展開は素晴らしいです。一気に作品世界に引き込まれて、主人公たちと一体化したようなパニックに襲われます。ただ、ゾンビたちからいったん逃れることに成功し、ブラッド・ピット演じる主人公が家族と別れ、ゾンビウイルスの原因究明に向かい始めると、一気に緊迫感が薄まります。集団で襲ってくるゾンビの迫力は相変わらずなのですが、主人公が守るべき家族と別れたことと、しっかりとした絆で結ばれた相棒がいなかったことにより、主人公や仲間の命が相対的に軽く感じられてしまいました。また、留守を守る主人公の奥さんが、家族を思うがあまり、いかにも身勝手に感じられ(この奥さんが主人公にかけた携帯電話の着信音でゾンビが主人公の行動に気付き、それを守るために多くの軍人さんが死んでしまいます)、徐々に感情移入できなくなったのも残念でした。ブラッド・ピットも格好いいですし、映像の迫力は非の打ちどころがなく、悪くない映画だと思いますが、ストーリー展開という点では、同じハイテンションのゾンビ映画だと、ウィル・スミスの「アイ・アム・レジェンド」の方が私好みです。
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インターネット的

2016-02-20 07:11:16 | Weblog
■本
14 インターネット的/糸井 重里
15 怒り(上)/吉田 修一
16 怒り(下)/吉田 修一

14 いろんな書評で書かれていますが、インターネット普及率が国民の半数を超えたばかりの2001年に書かれた本とは思えないほど、インターネットが普及した社会の本質について見事に描写されている本だと思います。この後、いろんなところで議論される、「リンク」、「シェア」、「フラット」、「グローバル」、「与えることと信頼されることの重要さ」、「速く失敗する」などの考え方のエッセンスが早くも提示されていて驚かされます。何より感銘を受けたのは、糸井さんが「ほぼ日」を始めたきっかけが45歳ごろに感じた「ものをつくることへの危機意識」という部分でした。糸井さんのようなクリエイティブな仕事からはるかにかけ離れたところにいるものの、まさにそのころの糸井さんと同じ齢の私が日々感じている、「変わらなきゃ」という思いと呼応していて、非常に勇気づけられました。

15、16 「怒り」というよりも、「信じる」ことをテーマにした作品だと思いました。人を信じることの難しさとその背景にある人間の弱さについて、執拗に描かれています。傑作「悪人」である種の頂点に達した、吉田修一さんの人間描写力が、この作品ではさらに進化していて、3人の犯人候補とその人物に関わる人々の様々な思いや葛藤が、複雑に絡み合いつつ見事に丁寧に描かれています。犯人の謎解きを結構引っ張った割には、そのネタばらしは結構あっけないですし、犯行動機は最後まで不明なままですが、そこからの後日談での、犯人以外の主要人物それぞれが心に抱えていた葛藤が明らかにされる怒涛の展開に圧倒されます。「悪人」で感じられた、悲惨な事件の先にある「救い」のようなものがあまりないので、読後感はそれほどよくないですが、それだけに自分の「信じる力」をいろいろ反省させられる引っかかりのある作品となっています。


■CD
8 Butterflies/BUMP OF CHICKEN

 EDM的要素を入れたハイテンションな楽曲が増えていることも新鮮ですが、歌詞もメロディもアレンジもさらにスケール感が増していて、日本のビッグバンドとしての自信と責任感を感じる大作です。内省的な世界観がBUMP OF CHICKENの魅力の一つだと思うのですが、「Hello, world!」というタイトルの曲に象徴的なように、世界に開かれた広大なイメージが喚起される楽曲が多く、新たな魅力が増しています。


■映画
10 ジャックと天空の巨人/監督 ブライアン・シンガー
11 オデッセイ/監督 リドリー・スコット
12 ゼロ・ダーク・サーティ/監督 キャスリン・ビグロー

10 X-MENシリーズで有名なブライアン・シンガー監督作というだけあって、安定感抜群の特撮で見応えのあるファンタジー作品となっています。おとぎ話にしては、天空の巨人が結構グロテスクに描かれていて、日本人にとっては進撃の巨人と被るのではないでしょうか?ストーリーの方は、子どもにも楽しめるように配慮されたためか、極めてシンプルでわかりやすいです。そのためか、あれだけ強力な巨人にあっけなく勝ってしまう展開が、ご都合主義に感じられ物足りない部分もあります。それでも、誰もが知っている「ジャックと豆の木」に独自のアレンジを加えて、長尺のエンターテイメント作品として仕上げている手腕は見事だと思います。

11 78歳のリドリー・スコット監督が、こんなに活力に満ちた若々しい作品を撮れたことにまず驚きです。人間の生命力や他人を思いやる心に対する青臭いまでの信頼感で全編貫かれています。火星を見事に再現した映像はもちろんのこと、主演のマット・デイモンの演技も素晴らしく、ほとんどが一人芝居であるにもかかわらず全く飽きさせません。「ゼロ・グラビティ」で称賛された、サンドラ・ブロックに匹敵する名演だと思います。有名な原作の良さはもちろんのこと、総合芸術としての映画の魅力がいっぱい詰まった作品です。

12 イラク戦争での爆弾処理班を描いた「ハート・ロッカー」でアカデミー作品賞などを取ったキャスリン・ビグロー監督作品らしく、硬派でリアルな作品です。本作は、ウサーマ・ビン・ラーディンの捕獲・殺害ミッションの顛末を、若い女性CIA分析官の視点から主に描かれています。「ハート・ロッカー」を観たときも思ったのですが、ヒリヒリとしたリアル感に重点を置くあまり、演出は冗長でどうしてもダレるところが出てきます。そもそも現実自体が、一直線に進まずじれったいくらいドラマ性がないという側面があるのは事実ですが、それをドキュメンタリー映画ではない作品で、どこまで許容できるかによって評価が分かれる作品だと思います。個人的には少し長すぎたという印象が残りました。
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好きなようにしてください

2016-02-13 10:14:45 | Weblog
■本
13 好きなようにしてください/楠木 建

 名著「ストーリーとしての競争戦略」の著者であり大学教授の楠木健さんが、ネットメディアで連載していた、主に仕事に関する悩み相談をまとめたものです。タイトル通り、ほとんどの質問に「好きなようにしてください」(要は自分の好きなことしかやっても幸せになれないし、したくないことを無理に続けてもキャリア形成上プラスになることはない、というのが基本的な楠木さんのスタンスです)と回答しつつ、その後に展開される個々の相談に関連した楠木さんの脱力しつつも辛口の仕事論が抜群に面白く参考になります。「自分以外の誰かのためにやるのが仕事」、「怒るな、悲しめ」、「仕事はアウトプットがすべて」、「川の流れに身をまかせ」など、印象的な言葉が満載で、反省させられたり、気分が楽になったりしまくりやがりますが、自分の仕事に対する(さらに言えば生き方に対する)スタンスを確認する上で、非常に示唆に富んだ本です。


■映画
9 ワイルド・スピード EURO MISSION/監督 ジャスティン・リン

 長く続くシリーズものの宿命か、各登場人物の関係性を結構忘れているので、キャラを理解するのに少し苦労しますが、いったん世界観を思い出せば、いつも通りの痛快なアクションもので、気楽に楽しめました。死んだはずの主人公の恋人が記憶喪失で敵側として登場する、極めてベタな設定ですが、これもこのシリーズだと妙な説得力があります。シナリオのチープさと反比例して、シリーズを重ねるごとに、アクションシーンは予算が十分にかけられていて、今回はついに飛行機とのチェイスシーンがあるなど、圧倒的な迫力です。せっかく苦労して生き残ったメンバーが、過去の作品(3作目の「ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT」)との関連で後に東京であっけなく死んでしまったことが示唆され、続編を作る気満々の後味のあまりよくないエンディングではありますが、最近は少なくなったアメリカらしいマッチョな価値観がなぜか心地よく、続編も観たくなりました。
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母と暮せば

2016-02-06 10:34:55 | Weblog
■本
12 ワーク・シフト/リンダ・グラットン

 確か、ちきりんさんのブログか本で絶賛されていたので読みました。かなりのボリュームのなかなか読み応えのある本ですが、論理構成が明確で中だるみすることなく一気に読めました。自分が仕事とどう向かい合うのかについて考える上で非常に参考になります。さまざまなデータやネット上などでの議論から、今後の世界に大きな影響を与える要素として、①テクノロジーの進化、②グローバル化の進展、③人口構成の変化と長寿化、④社会の変化(家族や男女の役割の変化などです)、⑤エネルギー・環境問題の深刻化、を上げ、それらに対応するために、1.ゼネラリストから「連続スペシャリスト」へ、2.孤独な競争から「協力して起こすイノベーション」へ、3.大量消費から「情熱を傾けられる経験」へ、という働き方(生き方)の3つのシフトを提言している構成は極めてシンプルでわかりやすいです。語られていることはそう目新しいものはないと思うのですが、起こりうる未来の明暗それぞれをストーリー化してわかりやすく説明されている点と、これらの要素を統合して明確に提言されているところが非常に優れており、頭で理解するだけでなく、行動へとつながる本です。私も、新たなスキル獲得とその仲間づくりから地道に始めてみたいと思います。


■CD
7 幸福/岡村 靖幸

 岡村靖幸さんらしくない、いかがわしさに欠けたタイトルとジャケット(このイラストの多幸感がまた素晴らしいです)ですが、そのイメージ通りの全編ポジティブな雰囲気に満ちた作品です。声もブランクを全く感じさせない若々しさに満ちていて、「早熟な天才」のイメージが強いデビュー当時よりもエネルギッシュです。変化球投手が投げるド直球がかえってバッターの意表を突くような、驚きに満ちた作品です。なんか楽しくてよいです。


■映画
7 ミート・ザ・ペアレンツ2/監督 ジェイ・ローチ
8 母と暮せば/監督 山田 洋次

7 先週観た「ミート・ザ・ペアレンツ」の続編です。前作は主人公がヒロインの父親に会いに行く話でしたが、今作はヒロイン家族が、主人公の家族に会いに行く話です。バーブラ・ストライサンド演じる主人公の母が、セックス・セラピストであることに象徴的なように、ますます、下ネタ全開で引き続き日本人の私としては素直に笑えないものがあります。ロバート・デ・ニーロとダスティン・ホフマンといった、アメリカン・ニューシネマの代表的な名優が、こういう極めてベタなアメリカン・コメディで共演しているところが、悲しくもあり、また、裏に何か批評的なメッセージか経済的な困窮があるのでは、と勘繰りたくなります。そんな中、甥役の赤ちゃんが絶妙の表情と無垢な演技で(結局この子にも汚い言葉をしゃべらせるというベタなギャグを連発するのですが)、少しなごまされます。クドイようですが、あくまで好みの問題で、作品としてはよくできたコメディ大作だと思います。

8 「父と暮せば」は、最高の反戦作品だと思うので、その作品の対となるこの作品もかなり期待して観に行きました。期待にそぐわぬ内容で、涙腺が緩みっぱなしでした。原爆の悲惨さを生き残った人の「罪悪感」を通して描く、やるせなさ、切なさ、気高さは、「父と暮せば」と同様ですが、そこに母性の強さ、大きさ、温かさが加味されて、また違った感動を感じました。「父と暮せば」は生き残った方が娘だったので、最後にかすかな希望が感じられて現世の救いを感じましたが、こちらは生き残ったのが母なので、天国での救いとならざるを得ないところがより辛い作品となっています。その分再生の役割は、黒木華さん演じる主人公の婚約者が見事に演じていて、基本二人芝居だった「父と暮せば」とは違ったアクセントを与えています。もちろん、吉永小百合さん、二宮和也さんの演技も素晴らしく、山田洋次監督の抑制の効いた演出や坂本龍一さんの美しい音楽と相まって、悲しいながらも良質の作品を観たという心地よい余韻の残る作品です。
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