本、CD、映画日記

目標は年間読書100冊。その記録と目標管理をかねたブログです。

ボルサリーノ

2024-06-09 07:34:56 | Weblog
■本
51 たった一人の分析から事業は成長する/西口 一希
52 イルカも泳ぐわい。/加納 愛子

51 P&G、ロート製薬、ロクシタン、スマートニュースとキャリアを進め、「顧客ピラミッド」や「9セグマップ」といったフレームワークを開発されたことでも有名なマーケッターの方による本です。とかく「コミュニケーションアイデア」に偏りがちな類似書と比較して、「プロダクトアイデア」を重視されている点は、広告代理店ではなく、事業会社で数字を背負ってきた人ならではの説得力があります。内容的には、定量調査結果を顧客をセグメント化するフレームワークに落とし込み、その中で強化したい領域の対象者にN=1のデプスインタビューを行い、そこから、さまざまな「アイデア」の仮説を立て、実行・検証を行っていくというものです。分析の元となる定量調査項目のシンプルさと、実経験からの具体的な数字に基づく説明とが相まって、とてもわかりやすく実務に活かしやすい内容です。わかったつもりに留まらない、実践につながる素晴らしい本だと思います。

52 最近出版物を目にすることが増えた、Aマッソのツッコミかつネタ担当の加納さんによる、エッセイ、短編小説集です。奇抜な視点のシュールな文章が多く、加納さんの個性的なセンスが楽しめます。一方、オードリー若林さんやピース又吉さんの文章と比較すると、人間味があまり感じられません。そういった面が、初々しくもあり物足りなさも少し感じてしまいます。興味関心が自分よりも外部に向かうタイプなのかもしれません。また、シニカルなクールさよりも、好きなものに対する熱量を文書から感じた点も少し意外でした。お笑いに対する執念とも言える愛情と、細部にまで至る言葉選びのこだわりが印象的でした。爆笑エッセイというよりも、少しずつ角度の違う発想を味わうタイプの作品だと思います。「チョロギ」が食べたくなりました。


■映画 
49 聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア/監督 ヨルゴス・ランティモス
50 ボルサリーノ/監督 ジャック・ドレー

49 引き続き、ヨルゴス・ランティモス監督作品を。「ロブスター」と「女王陛下のお気に入り」の間の2017年公開の作品です。人間の悪意と愚かさをより強調した、身も蓋もない「ソフィーの選択」といった趣の作品で、観ていてなかなか辛い作品ですが、テンション高く先の見えない展開が続き、最後まで目が離せません。「ロブスター」や「哀れなるものたち」と同様に、ちょっとあり得ない設定なのですが、不思議とリアルに感じさせる点がこの監督の魅力のひとつだと思います。そして、何と言ってもその想像力のユニークさ。よくこんな話を(しかも露悪的に)描けるな、とどの作品を観ても感心します。この監督のもうひとつの特徴でもある、「狂気のなかに潜むチャーミングさ」は今回は控えめで、ホラー色が強いのですが、それでも、手淫で重大な秘密をばらす主人公の友人など、バカバカしくも切ない人間の欲を滑稽に描いています。話が進むにつれて、各登場人物の印象が当初から少しずつ変わっていき、人間の先入観の怖さにも気づかされます。コリン・ファレルは「ロブスター」と同様に、一見魅力的ではない人物をセクシーに演じていますし、ニコール・キッドマンは、一癖ありそうで実は凡庸なその妻を、ミステリアスに演じています。恐怖と毒と救いのなさが強すぎて、ヨルゴス・ランティモス監督作品にしては私の評価は低めですが、今これだけのインパクトを観客に与えられる監督はそうはいないと思いますので、今後も注目していきたいです。

50 ジャン=ポール・ベルモンドとアラン・ドロン、二大スターが共演した、1970年公開の作品。古き良き男の美学を描いたクライム・ムービーです。女性を取り合って殴り合った末に友情が芽生えるなど、今の価値観から見るとベタなシーンが多いですが、二人のカリスマ性もあり不思議な安定感があります。二人が成り上がっていく姿が、印象的なアクションシーンを軸に、時系列にテンポよく描かれているので、とてもわかりやすいです。最近の映画は複雑なストーリー展開のものが多いので、このシンプルさはかえって新鮮でした。苦みを残したハッピーエンドかと思いきや、最後は伏線をきれいに回収したバッドエンドとなっている点は、いかにもフランス映画(正確にはフランス=イタリア合作映画)です。しっかりした映画を観たな、という満足感が得られる作品です。
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