本、CD、映画日記

目標は年間読書100冊。その記録と目標管理をかねたブログです。

イノベーションへの解

2013-11-24 07:57:45 | Weblog
■本
101 愛に乱暴/吉田 修一
102 イノベーションへの解/クレイトン・クリステンセン、マイケル・レイナー

101 主人の不倫に苦しむ女性心理を緊張感たっぷりに描いた作品です。群像劇などで女性の心理描写に焦点が当てられることはあるものの、ここまで女性目線中心の作品は吉田修一さんの作品の中では珍しいのではないでしょうか? 各章の最初と最後に日記の抜粋を入れることで、入れ子構造的なサスペンス要素も盛り込まれています。このような読ませるための細かいテクニックが駆使されているものの、中心はやはり追い詰められた主人公のおどろおどろしい心理描写にあります。ポール・トーマス・アンダーソンの映画を観るかのようにはじけ飛びそうなくらいにまでに主人公のテンションが高まる過程と、ささいなきっかけでそれが昇華されていく様子の描写が圧巻です。

102 名著「イノベーションのジレンマ」の実践的位置づけの本です。「ビジネスにおける新たな成長を生み出す方法」をテーマに、マーケティング論、組織論、戦略論など、これまで論じられてきた様々なビジネス理論を横串に刺して、具体的な対処方法について考察されています。前作でも主張されている、成功した企業はその成功に最適化された組織、プロセス、価値基準が故に失敗するというジレンマを逆手に取って、イノベーションは一人の天才が生み出すものではなく、成功のジレンマから逃れるための適切な初期条件さえ整えることができれば、その初期条件に従い行動・学習を続けることにより自ずと成功の可能性が高まる、という考え方は僕好みのもので大いに共感しました。知的刺激が得られて読みやすいものの、実際に理解するにはかなりの時間を要するタイプの本だと思いますので、何度か再読して理解を深めたいと思います。

■CD
93 Reflektor/Arcade Fire

 これまでエキセントリックなイメージの強かったArcade Fireですが、本作は単なるマニア受けで終わらない広がりのある壮大な大作で貫禄すら感じられます。2枚組というボリュームの中には実験的な作品も含まれているものの、どの曲も親しみやすいメロディで取っ付きがよいです。その一方で、聴くたびに発見のある深みも合わせ持っていて、Arcade Fireを世界的なメジャーアーチストに押し上げるターニングポイントとなる作品だと思います。
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グランド・イリュージョン

2013-11-16 15:21:21 | Weblog
■本
99 末裔/絲山 秋子
100 30キロ過ぎで一番速く走るマラソン サブ4・サブ3を達成する練習法/小出 義雄

99 絲山秋子さんの作品にしては珍しく中年男性を主人公にした作品です。これまた珍しくタイトル通り、「家族」がテーマの一つです。クールさとは程遠い加齢臭がするような脂ぎった中年男性が主人公なのに、いつもの絲山さん作品と同じようなクールさを感じるところが不思議です。また、主人公は妻に先立たれたり、母が痴呆症になったりといろんなトラブルを抱えている上に、仕事面でも子育て面でも決して成功しているとは言えないのですが、それでも最後に希望と言うか生きる意味のようなものが感じられるところが素敵です。具体的にどこがよいとは言えないのですが、なぜか心に残るつかみどころのない作品です。大技を見せつけるというよりも、細かいテクニックを膨大に積み重ねることで圧倒してくる印象を持ちました。

100 明日の神戸マラソンに備えて読みました。前作「マラソンは毎日走っても完走できない」より、さらに上級者向けに詳細な練習メニューを解説してくれます。実際に小出監督の練習メニューを実践し、その教えを元にレースに出場した市民ランナーの方の体験記も紹介してくれていて非常に参考になります。最初は抑え目に走って体力を温存し、終盤に最速ペースを持ってくることの重要性をロジカルに説明して下さっていて、納得感が大きいです。実際のレースで自制するのはなかなか難しいですが、この教えに従い明日走ってみようと思います。


■映画
71 ザ・マジックアワー/監督 三谷幸喜
72 グランド・イリュージョン/監督 ルイ・ルテリエ

71 出演者が豪華でセットなどにも贅沢にお金がかけられていてとても楽しい作品です。三谷さんの他の作品にも共通する「偽者がいつか本物以上の輝きを放つ」というのがテーマの一つだと思いますが、ハチャメチャなドタバタコメディーなのに適度な品があり、監督のセンスのよさを感じます。でも、ここまで監督の作家性が目立って有名になるのもよしあしな感じがしました。豪華な出演陣を観ても「三谷さんの人脈はすごいなあ」と感心したり、非常にウエルメイドなエンディングを観ても三谷さんのほくそ笑む顔が浮かんだり、ついつい映像世界から現実に引き戻されてしまいます。

72 文句なしの傑作です。個人的には今年一番の作品です。モーガン・フリーマン以外はいわゆるハリウッド・ビッグスターは出演していませんが、実力も魅力もある俳優をたくさん配して(「イングロリアス・バスターズ」に出演していたメラニー・ロランがとても美しいです)、最後まで誰が主役で誰が真犯人かわかりません。CGと組み合わせたマジックは映像的にとても美しく魅力的ですし、何よりどんでん返しの連続の意外性のあるストーリーが素晴らしいです。監督や俳優の知名度、マーケティング的手法の斬新さ、ではなく純粋に脚本、俳優、監督、カメラマン等のスタッフの真の実力で勝負した、至極真っ当で完成度の高い作品だと思います。お勧めです。
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スタンフォードの自分を変える教室

2013-11-10 05:39:58 | Weblog
■本
97 大人のいない国/鷲田 清一、内田 樹
98 スタンフォードの自分を変える教室/ケリー・マクゴニガル

97 鷲田さん、内田さんの冒頭と巻末の対談の間にそれぞれ単独で発表された短めの論考が収録されるという構成の本です。一応、「成熟」、「寛容」がテーマなような気がしますが、内田さんお得意の「「身体感覚」がテーマの対談などもあり、あまり一貫性はありません。まとまった知識を得るというよりも、二人の知識人の知の個人技のバリエーションの多さに、感嘆しながら楽しむのが正しい読み方なような気がします。

98 タイトル通り自己啓発本ですが、この種の本にありがちな自分の成功体験に基づく感覚論ではなく、心理学や神経科学といった科学的な裏づけを元に説明されているので、主張されていることに目新しさがない部分はあるものの、成功体験特有の傲慢さを感じず納得感がとてもありすっと頭に入ってきます。「つねに『将来の自分』を過大評価している」など、今の日本の年金問題に象徴される問題の先送り傾向を見事に言い当てている箇所もあり、自分の脳の癖をきちんと理解し、そのバイアスを意識して行動、決断することの大切さが実感できるよい本だと思います。


■CD
90 The 30th Anniversary/Hooters
91 Transformer/Lou Reed
92 Giant Steps/John Coltrane

90 1stアルバムからのファンとしては、最新スタジオ盤、2種類のライブ盤、他アーチストに提供した楽曲のセルフカバーを収録した企画盤を含む4枚組で1500円以下という超お買い得な内容でした。最新スタジオ盤ではドン・ヘンリーの「Boys of Summer」のカバー、企画盤はシンディ・ローパーに提供した「Time after Time」とジョン・オズボーンに提供した「One of Us」のセルフカバーが、いずれも日本人好みのメロディが立った超名曲なので強く印象に残りますが、「And We Danced」のライブ盤など
Hootersのオリジナル曲も魅力タップリです。派手な曲はないですが、手作り感のある温かさがこのバンドの良さだと改めて実感しました。

91 先日のルー・リードの訃報を聞き、代表作との誉れ高い本作を購入しました。「Hangin Road」というわかりやすいドPOPな曲から、「Walk On The Wild Side」という今聴いても前衛的で斬新な曲まで、ヴァラエティに富んだ内容で楽しめます。音数は決して多くないシンプルな楽曲ばかりですが、どの曲も一捻りがなされていて、この人の溢れる知性と才能が感じられます。聴くたびに発見のある、ジワっとくる作品です。ご冥福をお祈りいたします。

92 普段はジャズはほとんど聴かないのですが、The Rolling Stone誌のTop 500 Albums (2012版)で103位の名盤ということで聴いてみました。高速でグルーヴ感のあるテナーサックスが聴いていて心地よいです。「Countdown」という曲の高速展開は、一昔前のヘビメタギタリストの速弾きを聴いているかのようなスリリングさがあります。


■映画
69 劇場版 SPEC〜天〜/監督 堤幸彦
70 ジェネラル・ルージュの凱旋/監督 中村義洋

69 あまり期待していなかったのですが、意外と楽しめました。連続ドラマ版は観ていないのですが、キャラ設定が強烈でわかりやすいので、世界観にもすんなり入ってきました。若干悪乗り過ぎるコミカルな演出が時に不快ですが、戸田恵梨香さんのような可憐な女優さんが汚い言葉を発することのギャップには、確かにいけないものを観ているような心地よさもあります。迫害され続けた特殊能力者の復讐から一般人を守る特殊能力者、という構造は何度も使い尽くされていますし、そこに国家の陰謀もからめるという展開も目新しさはないですが、逆に言えばそのお約束の安心感の中でどこまで発想を飛ばせるか、と、製作者側が開き直って楽しんでいるのが感じられるところも作品に勢いをつけていて好感が持てました。

70 こちらもストーリーよりもキャラが魅力的な作品です。前作「チーム・バチスタの栄光」は謎解き要素が強かったですが、本作は竹内結子さんと阿部寛さんのコミカルな掛け合いが魅力的な調査する側よりも、堺雅人さんが好演されている調査される側の救命医のヒューマンドラマに焦点が当てられています。若干ウエルメイド過ぎる点もありますが、阿部寛さんがいい感じの毒を発しよいアクセントになっています。今話題の山本太郎先生もなかなかおいしい役で出演されていて、時の流れの速さも感じられます。
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リーン・スタートアップ

2013-11-02 10:35:04 | Weblog
■本
95 リーン・スタートアップ/エリック リース
96 陽だまりの彼女/越谷 オサム

95 翻訳が少しおかしいのか原文自体が冗長なのか若干読みにくいですが、アーリーアダプター向けの必要最小限の機能を持った製品を迅速に市場に投入し、その使用状況やフィードバックを見ながら高速にPDCAを回して製品を改良していき(ときには事業自体の方向性を変えていき)、事業の成功確率を上げる、という「リーン・スタートアップ」の考え方がよくわかるよい本です。すっかりバズワードになった「ビックデータ」活用の基本的な考え方をいち早く示したという意味でも画期的な本だと言えます。読む前は単純に製品を速く市場に出して改良していく、という考え方を示した本だと思っていましたが、想像以上に体系だった方法論でした。また、初期に市場に出す製品も、製品とはいえないくらい必要最小限の機能だったり、レコメンド機能など本来アルゴリズム化しないといけないものも当初は手動でやっていたりするなど、徹底的に軌道修正を容易にするという考え方が貫かれているところに驚きました。こういうスピード感を持ったベンチャー企業と戦うには従来型の階層型の企業はかなり分が悪いと言えそうです。

96 こういう普通の恋愛小説がベストセラーになり映画化もされるのは珍しいので、何が人を惹き付けるのかを知りたいと思い読みました。「女子が男子に読んでほしい、恋愛小説No.1」とあるだけあって、男女双方が一途に相手を思う甘い純愛ものですが、意外と生々しい性描写も多いです。東京を舞台とした都会での恋愛生活を描きつつ、現代版「鶴のおんがえし」的な伝統的で安心感のあるストーリー構成のバランスのよさも人気の背景にあると思います。主人公二人の会話は軽妙で、とても読みやすいです。主人公の女性に大きな秘密があるという書評の前情報を持って読んだため、途中で「ひょっとして謎ってこれ?、でもそんな安直なものではないよなあ」と思った謎がそのまま当たったので、個人的には少し興ざめでした。事前情報を排して読むべき小説だったのだと思います。


■CD
89 Rickie Lee Jones/Rickie Lee Jones

 名作の評判の高いリッキー・リー・ジョーンズのデビュー作です。ウィキぺディアによると「思春期に酒、麻薬に溺れ、妊娠中絶を経験するなど荒れた生活を送り、家出して全米各地を放浪する」とありますが、冒頭のキャッチーな「Chuck E.'s In Love」の印象が強いこともあり、作品の印象としては明るく、若々しい生命感に溢れています。バックを支えるミュージシャンも超一流揃いらしく、シンプルながらも多彩な演奏が魅力的です。ジョニ・ミッチェルに西海岸の明るい日差しを当てたようなサウンドだと思いました。


■映画
68 モンスターVSエイリアン/監督 ロブ・レターマン、コンラッド・ヴァーノン
 
 「シュレック」シリーズのドリームワークスのCG映画だけあって、毒の効いた(若干効き過ぎですが)シュールなコメディに仕上がっています。隕石に当たったため巨大化した主人公の女性の不条理な体験とその隕石のパワーの略奪を目的に地球に攻め込んできたエイリアンに対して主人公と共に戦うモンスターのポンコツぶりが笑えます。そのモンスターもディズニーの「モンスターインク」のようなキモ可愛い感じではなく、リアルな半魚人、ゴキブリと融合したマッドサイエンティスト、巨大化した虫、脳みそのない一つ目のスライム、とかなりグロくてインパクトが大きいです。キャラのインパクトの割にはストーリーはあっさりしていて、惑星を破壊できるくらいのパワーを持ったエイリアンが、あっさりモンスター連合にやっつけられるので、もう少しエイリアン側にも焦点を当ててもよかったのでは、と思いました。子どもにも意外とこのグロさはウケますので、ベタなギャグに大笑いしながら親子で楽しむにはよい映画です。

 
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