■本
29 大人のためのメディア論講義/石田 英敬
30 ケンブリッジ・サーカス/柴田 元幸
29 インターネット、スマホ、ソーシャルメディア普及後のメディアの状況や課題を、学術的な観点からわかりやすく解説してくれる良い本です。「記号論」をベースに、デジタル・メディアと人間の関係について、独自の視点から深く考察されているので、通り一辺倒な状況整理を超えた、知的好奇心が満たされる内容です。個人的には、「注意力の経済」(情報提供者側にとって、受け手の注意力は奪い合うべき資源であるという考え方)を、「精神のエコロジー」(情報が氾濫する世界で、自らの精神をいかに自律的に制御していくか、という考え方)という視点と結び付けて論じられている点が興味深かったです。「メディア・リテラシー」と言ってしまうと、バズワードっぽくなりますが、氾濫する情報に流されず、自分とメディアとの関係を俯瞰的な視点でときには見直すことが、主体的に自分の人生を生きていくうえで、重要なのだと思います。
30 ポール・オースターなどの現代アメリカ文学の翻訳家として有名な柴田元幸さんの著作集です。そのポール・オースターとの対談目当てで読みましたが、東京都大田区で育った柴田さんの幼少時代や東大での大学院生時代などを描いたエッセイで、普段はあまり意識することがない、翻訳者のひととなりを知ることができて面白かったです。少年時代の自分と対話するというモチーフが多い、自作短編小説は、少し難解で私にはあまり合いませんでした。翻訳作品は大好きでも、自作小説は好みに合わないこともあるということが発見できたことも興味深かったです。アメリカに住んでいるお兄さんに会いに行かれた紀行文を読むと、私より少し上の世代のアメリカに対するスタンスを理解することができ、自信に満ち満ちたアメリカと主体的に関われた世代が少しうらやましくもあります。
■映画
26 ブリッジ・オブ・スパイ/監督 スティーヴン・スピルバーグ
ストーリー展開的には、それほど大きな盛り上がりはないですが、スティーヴン・スピルバーグが監督し、コーエン兄弟が脚本に参加しているだけあって、手堅くじわじわと心に染み入るものがある作品です。主演のトム・ハンクスもさすがの安定感ですが、アカデミー助演男優賞も獲得した、ソ連のスパイ役のマーク・ライランスの演技が素晴らしいです。職務や国家に対する独特の責任感を、シニカルかつユーモラスに演じていて、圧倒的な存在感です。トム・ハンクスのタフネゴシエーターぶりや、制作スタッフ側の職人芸とも相まって、「仕事」についていろいろと考えさせられました。さりげなく、ポピュリズムの恐ろしさや利害関係を超えた友情も描かれていて、今の国際状況に対する示唆にも満ちています。
29 大人のためのメディア論講義/石田 英敬
30 ケンブリッジ・サーカス/柴田 元幸
29 インターネット、スマホ、ソーシャルメディア普及後のメディアの状況や課題を、学術的な観点からわかりやすく解説してくれる良い本です。「記号論」をベースに、デジタル・メディアと人間の関係について、独自の視点から深く考察されているので、通り一辺倒な状況整理を超えた、知的好奇心が満たされる内容です。個人的には、「注意力の経済」(情報提供者側にとって、受け手の注意力は奪い合うべき資源であるという考え方)を、「精神のエコロジー」(情報が氾濫する世界で、自らの精神をいかに自律的に制御していくか、という考え方)という視点と結び付けて論じられている点が興味深かったです。「メディア・リテラシー」と言ってしまうと、バズワードっぽくなりますが、氾濫する情報に流されず、自分とメディアとの関係を俯瞰的な視点でときには見直すことが、主体的に自分の人生を生きていくうえで、重要なのだと思います。
30 ポール・オースターなどの現代アメリカ文学の翻訳家として有名な柴田元幸さんの著作集です。そのポール・オースターとの対談目当てで読みましたが、東京都大田区で育った柴田さんの幼少時代や東大での大学院生時代などを描いたエッセイで、普段はあまり意識することがない、翻訳者のひととなりを知ることができて面白かったです。少年時代の自分と対話するというモチーフが多い、自作短編小説は、少し難解で私にはあまり合いませんでした。翻訳作品は大好きでも、自作小説は好みに合わないこともあるということが発見できたことも興味深かったです。アメリカに住んでいるお兄さんに会いに行かれた紀行文を読むと、私より少し上の世代のアメリカに対するスタンスを理解することができ、自信に満ち満ちたアメリカと主体的に関われた世代が少しうらやましくもあります。
■映画
26 ブリッジ・オブ・スパイ/監督 スティーヴン・スピルバーグ
ストーリー展開的には、それほど大きな盛り上がりはないですが、スティーヴン・スピルバーグが監督し、コーエン兄弟が脚本に参加しているだけあって、手堅くじわじわと心に染み入るものがある作品です。主演のトム・ハンクスもさすがの安定感ですが、アカデミー助演男優賞も獲得した、ソ連のスパイ役のマーク・ライランスの演技が素晴らしいです。職務や国家に対する独特の責任感を、シニカルかつユーモラスに演じていて、圧倒的な存在感です。トム・ハンクスのタフネゴシエーターぶりや、制作スタッフ側の職人芸とも相まって、「仕事」についていろいろと考えさせられました。さりげなく、ポピュリズムの恐ろしさや利害関係を超えた友情も描かれていて、今の国際状況に対する示唆にも満ちています。