本、CD、映画日記

目標は年間読書100冊。その記録と目標管理をかねたブログです。

遠い山なみの光

2012-11-24 06:17:52 | Weblog
■本
115 iPadで現場を変える!/斉藤 徹、河原 潤、 高下 義弘
116 ビッグデータ時代の新マーケティング思考/横山 隆治、海老根 智仁、 鹿毛 比呂志
117 遠い山なみの光/カズオ イシグロ
118 めだかボックス外伝 グッドルーザー球磨川 小説版(下) 『水槽管理のツークツワンク』/西尾 維新

115 iPadをビジネス、地方自治体、学校、病院など組織で活用されている事例を集めた本です。詳しく取材した7つの事例と企業などからのニュースリリースを集めた事例集があり、網羅的にどのように使われているのかを知るには便利な本です。1年前に出版された本なので、事例が若干小ぶりですが、今調べるともっと大規模でより先進的な事例がありそうです。自分で事例を調べる時間のない方が、手っ取り早くiPadの仕事での活用の可能性を把握するには有益な本だと思います。

116 「ビックデータ」をマーケティングでどのように活用可能か、について書かれた本です。様々なデータが関係付けられ、リアルタイムに取得できるようになったことにより、生活者の反応を迅速に個人レベルで把握可能となったので、その反応のあった人の特徴を解析し、随時そのペルソナを修正していくような対応の重要性が説かれています。ターゲティングの仮説検証が非常に高速にできるようになったので、仮説設定に時間をかけるよりも、実証検証に力を入れる方が成功の可能性が上がるという趣旨です。「ビックデータ」活用をマーケティング、それもWEB起点のマーケティングに限定しているので、「ビッグデータ」の可能性を俯瞰的に理解したい人には物足りないかもしれませんが、その分野の実務のご担当者には有益な本だと思います。共著本なので、筆者によってクオリティが分かれますが、図表が豊富でわかりやすく、海外の先進事例にも触れられているので、今後のこの分野の方向性を理解するには参考になります。

117 カズオ・イシグロさんのデビュー作です。デビュー作にして素晴らしい完成度の作品です。両親が日本人とはいえ、物心ついてからほとんど日本に住んでいない現代の男性作家が、戦後復興期の日本女性の心情をここまで細やかに描けるとは、イシグロさんの想像力に改めて驚嘆します。イシグロさんの他の作品と同様に「記憶」と「信念に従ったゆえの後悔」、そして、そこからのささやかな「再生の兆し」がテーマとなっています。以降の作品ほどのボリュームや重厚感には欠けるものの、だからこそ、イシグロ作品の入門編としてはとっつきやすく、お勧めできる作品です。

118 下巻は一転して、狂言回し的位置づけだった生徒会庶務須木奈佐木咲さんが主役級の活躍を見せます。ですので、球磨川禊ファンには若干物足りないかもしれません。須木奈佐木さんの活躍ぶりは西尾さんらしい心理戦でとても痛快なのですが、キャラ紹介のイラストで、須木奈佐木さんのキャラの豹変がネタバレしていたのが少し残念でした。ラストの後味の悪さも素敵です。


■CD
93 Baby The Stars Shine Bright/Everything but the Girl
94 Eden/Everything but the Girl
95 Idlewild/Everything but the Girl
96 Love Not Money/Everything but the Girl
97 The Language Of Life/Everything but the Girl

 Everything but the Girlの5枚組みセットが安かったので購入しました。後期にドラムンベースに傾倒する前の王道ネオアコ期の作品ですので、通して聴いても音楽的に大きな変化はなく、音楽的成熟を感じつつ、トレイシー・ソーンの美しい声とおしゃれなサウンドを存分に楽しめます。休日の午後にゆったり聴くのに最適です。集中的にどっぷり聴きたいタイプのアーチストではありませんが、たまにCDを取り出して聴きたくなる、いつ聴いても飽きないサウンドです。


■映画
70 20世紀少年 最終章 ぼくらの旗/監督 堤幸彦

 落ちをつけるのには難しい原作ですが、よくまとめたと思います。落とし前をつけるために、細かい伏線をはしょったのも潔い判断だと思います。最後の「ともだち」との対決や、クライマックスのコンサートシーンは、かなり漫画的に(リアル感を極力配して)描かれているのは賛否が分かれると思いますが、仕方のない判断だと思います。テクニカルな面では善戦していると頭ではわかりつつも、あまり好きになれないのは、商業ベースに流れすぎているのが原因なのでしょう。原作好きな方は、1回は観る価値はあると思いますが、繰り返し観る必要はないですね。



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The Best of The spencer davis group

2012-11-18 07:06:00 | Weblog
■本
112 夢を与える/綿矢 りさ
113 めだかボックス外伝 グッドルーザー球磨川 小説版(上)『水槽に蠢く脳だらけ』/西尾 維新
114 夜想曲集/カズオ イシグロ

112 綿矢りささんの初の長編。子どものころからCM出演していた主人公が、高校入学を機に清純派としてブレイクし、やがて、スキャンダルで破滅する話です。文章はとても巧みで読みやすいのですが、ストーリー全体のバランスが悪く(個人的には前置きが長く、話の核心部分が早急で唐突に終わる印象です)決して完成度は高くないです。にもかかわらず、筆者の毒というか狂気というものが、ヒシヒシと伝わってきて、読んでいると心に迫る何かがあります。キャラクターの描き方も、特に母親などは、このテーマでは、「自分の夢を娘に押し付ける親」といった紋切り型になるのですが、ギリギリのところで、もっと複雑で深みのある人物像に仕上げているところも作者の力量を感じます。欠点はあるものの、この作者は「只者ではない」と思わせるだけの、志の高さは感じる作品です。

113 球磨川禊君は大好きなキャラクターなのでとにかく楽しめました。キャラクター設定と心理戦だけで、ここまで引っ張れる作者の力技に感服するのみです。下巻も楽しみです。

114 カズオ・イシグロさんの音楽をテーマにした短編集。さすがに、彼の長編作品から得られる全身が脱力するような深い感動は読後に得られませんが、独特の悲しみと希望が入り混じった、しみじみとした読後感が心地よいです。人生は成果ではなくて、プロセスにどのような姿勢で挑むかが重要ということに気づかせてくれる優しい作品集です。


■CD
89 The Invisible Invasion/Coral
90 A.M./Wilco
91 Greatest Hits/Will Smith
92 The Best of The spencer davis group/the spencer davis group

89 もっとエキセントリックなバンドとの印象を持っていましたが、意外ととっつきやすく楽しいサウンドです。引き出しはたくさんあり、トリッキーな展開をする曲が多いですが、破綻していないので、安心して楽しめます。この作品はCoralの作品のなかで特に評価が高いわけではないですが、個人的にはかなり好きなサウンドだったので、機会があればデビュー盤から聴いてみたいと思います。

90 WILCOのデビュー作。後の作品のような深みやスケール感はまだないですが、ジェイ・ファラーの優しいヴォーカルが、ポップな楽曲に見事にはまっています。カントリー的なテイストも残っていて、リラックスして楽しめます。

91 いまや俳優としての方が有名なWill Smithのベスト盤です。ソロになってからの作品は、「メン・イン・ブラック」を筆頭にコマーシャル過ぎる気がするので、DJジャジー・ジェフ&フレッシュ・プリンス時代の曲の方がエッジが立っていて好きです。出世作「Summertime」は名曲だと思います。 

92 スティーヴ・ウィンウッドの若い頃の迫力ある声を堪能できます。やっぱりこの人すごいと思います。「Gimme Some Lovin'」、「I'm A Man」の2曲は、圧倒的に格好よくてテンション上がります。ほとんどの曲が2分台で、小気味よく始まり、ドラマチックに盛り上げて、潔く終わる、ポップソングの見本のような曲ばかりです。


■映画
69 20世紀少年 第2章 最後の希望/監督 堤幸彦

 3部作の真ん中なのでどうしてもつなぎ役的な位置づけになるのは仕方ないのでしょうが、あんまり面白くなかったです。原作ファンとしては、ストーリー的にはポイントを外さず、うまくまとめていると思いますが、あそこまで、コミカルな演技を俳優に求める必要があったのかが少し疑問です。そんな中、小池栄子さんは独特の存在感で、いい味を出していました。カンナ役の平愛梨さんは申し訳ないですが、完全に力不足です。彼女に感情移入できなかった時点で2作目が楽しめないのも仕方がないです。
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MAKERS

2012-11-11 06:10:05 | Weblog
■本
110 MAKERS―21世紀の産業革命が始まる/クリス・アンダーソン
111 ゲーミフィケーション―<ゲーム>がビジネスを変える/井上 明人

110 「ロングテール」、「フリー」などデジタル社会の半歩先の姿を巧みに論じるクリス・アンダーソンの新作。今度はデジタルの世界で生じた大企業から個人へのパワーシフトが、リアル社会のモノづくりの世界でも生じるという趣旨の本です。インターネット環境の充実とオープンソースの普及により個人が低コストで自由にソフトウエアやデジタルコンテンツの制作が可能になったように、今後の3Dプリンタの普及や小ロットで安価に製造委託できる中国などの工場の増加、そしてソーシャルファイナンスによる資金集めやクラクラウドソーシングによる知の協同が進むことによりこの流れがモノづくりにも及ぶだろうと予言しています。若干SFチックですが、最近元気のない先進国のモノづくりに関わる人々に勇気を与えるよい本だと思います。好きなことにのめりこめる人や、アイデアのある人には可能性が広がっていくのでしょうが、肝心のその自分にあったのめりこめるものをどう見つけるかが今後ますます重要になってくるような気がしました。

111 「ゲーミフィケーション」(人を夢中にさせることに長けたゲームのノウハウをゲーム以外のさまざまなものごとに当てはめ、楽しく人を巻き込み目的を達成するための手法、というのが私の理解です)という言葉を聞いたことのない人にはそれを学ぶにはよい本だと思います。テクノロジーの話ではなくて、考え方やデザインの方に重きが置かれている概念です。逆に雑誌やネットですでにある程度知っている方には物足りない内容かもしれません。この分野に対する筆者の熱意が若干強すぎるのか、情報よりも「筆者の思い」を伝えることにより重きが置かれている印象が残ります。ただ、この概念はより様々な制約が増加する社会で、プロジェクト運営していく上では知っておいて損はないと思います。


■CD
86 Mr Fantasy/Traffic
87 The Allman Brothers Band/Allman Brothers
88 Live/Dead/The Grateful Dead 

86 45年前の作品なのに今聴いても全く古臭くありません。アイデア満載、変幻自在のキラキラしたサウンドに、スティーブ・ウインウッドの瑞々しいヴォーカルが見事にマッチしています。「サイケ」と一言で片付けるにはもったいないくらい、奥の深い聴くたびに発見のある傑作だと思います。

87 一方、今聴くと重厚過ぎて古臭いんだけど、テクニックと独特の存在感で打ちのめされる1969年の作品です。やはり、40年以上経っても語り継がれる作品にはそれ相応の理由があります。小気味よく鳴りまくるギターと骨太のヴォーカルが印象的です。暑苦しい曲が多いのですが、曲数が少ないので、胃がもたれずちょうどよい満足感が得られます。

88 さらに60年代の名盤が続きます。こちらはライブバンドとして名高いグレイトフル・デッドの中でも特に評判の高い1969年の作品。もっと激しいイメージでしたが、1曲目から驚くほど静かで穏やかな曲です。だだっ広い野外で風を感じて、ビールを飲みながら(当時は大麻とかなのかもしれませんが)聴くと最高だったんだと思います。長尺な曲が多いですが、浸れる曲が多いので、飽きません。今の時代のスピード感には全く合いませんが、逆に、動きの速すぎる現代社会で疲れた人を癒す意味では根強い需要がありそうな音です。


■映画
68 エクスペンダブルズ/監督 シルヴェスター・スタローン

 公開当時で楽に60歳を超えていたスタローンがアクション映画に出ているだけで感慨深いですが、正直ストーリーは出鱈目でアクションも大味でつまんないです。大物アクションスターの共演っといっても、ブルース・ウィリスやシュワルツェネッガーはカメオ出演で、主に絡むのは、ジェット・リーとドルフ・ラングレンなので小粒な印象です。準主役級の「トランスポーター」シリーズのジェイスン・ステイサムはそれなりによい演技をしていますが、ちょっと饒舌でイメージと違います。そんな中、ミッキー・ロークは相変わらずの怪演で一人抜群の存在感を見せています。まあ、期待せずに楽に観てください。
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教科書に載った小説

2012-11-03 10:35:00 | Weblog
■本
108 9条どうでしょう/内田 樹、平川 克美、町山 智浩、 小田嶋 隆
109 教科書に載った小説/佐藤 雅彦

108 憲法第9条について4人の筆者が論じた本。賛否は分かれるでしょうが、内田さんがまえがきで書かれているように、4人の筆者のそれぞれの論理展開を楽しみながら、自分の考えを整理していくような読み方が良いような気がします。この本ではみなさん表現は異なるものの、概ね「積極的に改憲!」という方はいらっしゃらなかったので、逆にバリバリの改憲派の文章を入れても面白かったかもしれません。僕個人的には、「押し付けられた憲法は不愉快だが、今の日本人にこれよりもよい憲法が作れるとも思えない」という感じです。メリット、デメリットがありますが、したたかに活用していくのがリーズナブルな姿勢だと思っています。

109 クリエーターの佐藤雅彦さんが教科書に載った短編小説を集めた本です。佐藤さんが仰る通り抜群に面白かったです。お勧めです。ウエルメイドな感動する話ばかりではなくて、やるせない、引っかかりのある小説が多いのが意外でした。まさに「人生の練習問題」って感じです。この本に収録されている「竹生島の老僧、水練のこと」、「蝿」、「ベンチ」の3つは実際に教科書で習った記憶があります。


■CD
84 Hats Off to the Buskers/The View
85 Wide Open Spaces/Dixie Chicks

84 いろんなタイプの曲があり、このバンドの持つ実力は感じられるのですが、なんか深みがないというか、どこかで聴いたような曲ばかりというか、個人的にはあまり刺さりませんでした。オアシスとか英国で成功したバンドの有力なフォロアーであることは間違いないのですが、それらのバンドを脅かす存在にはなり得ない限界も感じる作品です。でも、意外と時間が立てば、こういうアルバムに収録されている曲が隠れた名曲として脚光を浴びるのかもしれません。

85 Dixie Chicksのベスト盤。10年くらい前にアメリカで大人気だったと記憶しています。アメリカのイラク攻撃の際にブッシュ大統領を批判した骨のある人たち(推測ですがカントリーを聴く層とブッシュ支持層は重なるような気がしますので、かなり勇気のある行動だと思います)でもあります。カントリーですが、POPでゆったりと楽しめます。ドライブしながら聴きたくなります。


■映画
67 相棒 -劇場版II-警視庁占拠!特命係の一番長い夜/監督 和泉聖治

 無難に良く出来ている映画だと思いますが、可もなく不可もなくという印象です。警視庁内の権力争いに、日本国内のテロリスト事件を交えたスケールが大きいような小さいような、中途半端な設定が現実感を感じませんでした。水谷豊さん演じる杉下右京を筆頭にキャラクターは立っていて魅力的ではありますが、こちらもリアリティという点では疑問です。別にリアリティーを追求する必要はないと思いますが、それならもっと派手な事件に仕立ててもらった方が観ている方は楽しめたと思います。他のキャラが漫画的なので、ミッチーは想像以上にはまっていました。
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