本、CD、映画日記

目標は年間読書100冊。その記録と目標管理をかねたブログです。

鈴木さんにも分かるネットの未来

2015-06-29 05:41:36 | Weblog
■本
60 鈴木さんにも分かるネットの未来/川上 量生

 2015年時点の「インターネットとは何か」について知りたい人は必読の本だと思います。2006年に出版された梅田望夫さんのベストセラー「ウェブ進化論」はインターネット誕生から10年たった時点での、ネットが社会に与えた成果と今後の可能性がポジティブに語られていたのに対し、この本はそこからさらに10年近くたった現時点でのネットの到達点とその副作用を、いくぶんシニカルに地に足がついた冷静な視点から語られています。川上さん自身がネットにどっぷり浸かっている「ネット住民」ですので、ネットを単なるツールとみなす類似書とは異なる独特の説得力があります。川上さんの深い思考に基づく論理展開は相変わらず刺激的ですが、ジブリの鈴木プロデューサーにもわかるようにと、極力専門用語やバズワードを排した説明が、これまでの川上さんの著作にはない広がりも感じられます。


■CD
33 Sound & Color/Alabama Shakes

 デビュー作「Boys & Girls」での土臭くもエモーショナルな演奏とヴォーカルに感動したので、2作目のこの作品も聴きました。前作と比べるとサウンドはより多様かつマニアックになり、唯一無二の存在感を放つヴォーカルのブリトニー・ハワードの声も、曲ごとにいろんなスタイルで聞かせてくれて、その引き出しの多さに驚かされます。デビュー作ほどの取っつきやすさはないですが、容易に理解できない複雑さを持つ、深みのある作品です。


■映画
45 テルマエ・ロマエ II/監督 武内英樹

 面白かったです。2作目ということで状況やキャラ説明が不要な分、シンプルにギャクを楽しめました。主人公の浴場設計技師ルシウスが現代日本にタイプトリップする度に経験する、いろんな日本の温泉事情体験がショートコントを連続してみるような感じで楽しめました
。阿部寛さんは、ハマリ役とも言える素晴らしい熱演でしたが、白木みのるさん、いか八朗さんといった独特の個性を持った脇役の存在感もすごいです。
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隠し剣 鬼の爪

2015-06-21 07:47:42 | Weblog
■本
57 誰も調べなかった日本文化史/パオロ・マッツァリーノ
58 イニシエーション・ラブ/乾 くるみ
59 シンプルに考える/森川 亮

57 「反社会学入門」で名を上げたパオロ・マッツァリーノさんによる「土下座」等、日本の習慣の起源やそのとらえられ方の推移を調べた本です。題材の選びかたはユニークですし、相変わらずのシニカルで挑発的な語り口はとても痛快なのですが、過去の著作と比べると冗長なために、ギャグや論理展開の切れ味がいま一つで読んでいてそれほど楽しくありませんでした。しかし、明治後期から昭和初期にかけての新聞一面広告の歴史を紐解いたパートは、その広告内容のアナーキーさがとても面白かったです。

58 映画も公開されましたし、「最後の2行」の大どんでん返し、という売りに惹かれて読みました。性描写の多さと男性にとって都合がよすぎる女性キャラクターで、途中までポルノ小説かと思えるような内容でしたが、これらの紋切り型の描写も最後のどんでん返しの伏線であり、その切れ味はなかなかです。ネタバレしない範囲で違和感を散りばめる匙加減も見事だと思います。小説でしか成立し得ないこのトリックを映画でどのように表現しているのか、怖いもの見たさで(かなりの確率で失望しそうな気もしますが)映画の方も見たくなりました。

59 LINEの元社長である森川さんによるビジネス思考法の本です。序盤は成功者の自慢話的な話が若干鼻につきますが、読み進むうちに、タイトル通りシンプルに本質を見ようとする森川さんの思考法が実例を元に語られ、成功したという実績があるだけに抜群の説得力です。「『ビジョン』はいらない」や「『イノベーション』は目指さない」など、常識とされていることと反する刺激的なタイトルが並びますが、どれも「ユーザーだけを見る」という森川さんのシンプルな判断基準からは筋が通っていて、成功する人は周囲の常識に流されず、自分の頭でものごとを考え抜いていることがあらためてわかり参考になりました。


■CD
32 Mother's Milk/Red Hot Chili Peppers

 レッチリが名曲「Under the Bridge」で大ブレイクする直前の、知る人ぞ知るバンドから、メジャーアーチストへの階段を一気に駆け上がっていく時期の、勢いと野心に満ちた作品です。スティーヴィー・ワンダーの「Higher Ground」のファンキーなカバーに象徴されるように、自然と体が動くような楽しいパワーに満ちた楽曲が満載です。この作品の後ビッグになるにつれ、泣きのメロディーなども駆使され洗練されていくようになりますが、レッチリの能天気で野性味ある独特の癖と、万人受けするメジャー感が絶妙のバランスで融合した素敵な作品です。


■映画
44 隠し剣 鬼の爪/監督 山田洋次

 山田洋次監督らしい人間の細やかな心の動きを丁寧に描いた佳作です。幕末の小藩を舞台にした身分違いの恋愛の行方と、タイトルにもある「隠し剣 鬼の爪」とは何か、という謎解きを両輪に物語が進み、地味な題材なのにグイグイと物語に引きこまれます。主演の永瀬正敏さんは、いつもと異なりかなり抑えた感じの演技でしたが滲み出る魅力はさすがです。ヒロインの松たか子さんは最近の不気味な感じの演技ではなく、正当派の美人女優として可憐に演じられていました。エンディングの後味も極めてよく、いい映画を観たという心地よい満足感が得られます。
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ゲーマーはもっと経営者を目指すべき!

2015-06-14 08:08:25 | Weblog
■本
56 ゲーマーはもっと経営者を目指すべき!/Gamer.net編集部、川上 量生

 引き続きドワンゴ会長の川上量生さんの本にはまっています。こちらはタイトル通りゲーマーの経営者と対談しながら、ゲームにはまった経験が経営にどのように活かされるか、をテーマにネットで連載されていた対談の書籍化です。結構連載の早い段階で、このテーマは無視され(そもそもゲームにはまった経営者はそう多くはないですし、ゲームの経験が経営に活かされたという例はもっと少ないようです)川上さんが関心を持った人と、対談するという形式になっています。それでも、どの対談も川上さんの独特の思考が披露されていて抜群に面白いです。個人的に一番面白かったのはiモード立ち上げにドコモのプロパー社員として関わられたバンダイナムコゲームスの栗田さんとの対談で、千葉支店で携帯電話とポケベルの販売をされていた方が、端末の仕様策定や絵文字の開発に取り組まれるようになった経緯を聞いていると、松永さん、夏野さんといったスタープレイヤーが語られるのとはまた違った視点でiモードというプロジェクトの背景を知ることができて、とても参考になりました。


■CD
31 Stand By Me/Ben E King

 ベン・E・キングの2枚組み廉価版のベスト版です。彼の訃報を聞いて購入しました。名曲「Stand By Me」の優しい歌声が心に沁みます。全体を通して温かい人柄が伝わってくるような優しい作品です。


■映画
43 ツレがうつになりまして。/監督 佐々部 清

 原作の力もあるのでしょうが、宮あおいさん、堺雅人さんの安定した演技で、うつ病という難しいテーマを重くも軽くもなり過ぎず、絶妙のさじ加減で描かれていて好感の持てる作品でした。時にズケズケとモノを言って傷つけ合う、夫婦関係も綺麗ごとになりすぎず、リアルでよかったです。ツレが講演するシーンで終わったらよかったと思うのですが、その後の夫婦の語り合いは甘くなり過ぎて蛇足な気がしました。また、原作への敬意だと思いますが、原作漫画が動き出すシーンも(西原理恵子さん原作の映画でありがちですが)少し唐突で違和感を感じました。とはいえ、誰にでも起こりうるうつ病を、正確にかつ飽きさせることなく描ききったスタッフの力量は素晴らしいと思います。
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ぼくらの民主主義なんだぜ

2015-06-06 09:24:57 | Weblog
■本
55 ぼくらの民主主義なんだぜ/高橋 源一郎

 朝日新聞に掲載されているときから楽しみに読んでいた高橋源一郎さんの「論壇時評」がまとめられたものです。東日本大震災の1ヶ月後から連載が開始されたこともあって、日本の(特に日本の民主主義の)いろんな矛盾や限界をテーマにしたものが多いのですが、それらの問題に対して声高に語られている意見とは少し異なる、もう一つの視点を提示してくれていて、自分でものを考える上での材料を提供してくれています。特定の個人のとらえ方というごくミクロな視点から、人類の歴史全体にわたるマクロな視点まで、自在に視点が変更されていて、高橋さんの思考の射程範囲の広さに感心します。それでも、最後は上から目線ではなく、一市民としての困惑や戸惑いを抱えながら発言されているので、様々な問題を他人ごとではなく、自分ごととして考えてみようと、不思議とポジティブな気持ちになるいい本です。


■CD
30 Wonder Future/ASIAN KUNG-FU GENERATION

 引っかかりのある目新しいキラーチューンはないですが、シンプルで重厚なロックアルバムに仕上がっています。若々しさから成熟へと武器が変わってきて、大御所の雰囲気さえ漂っています。それがこのバンドに取ってよいのかどうかはよくわかりませんが、継続を力に変えているところは素晴らしいと思います。フー・ファイターズのプライベートスタジオで録音されたとのことですが、確かに最近のフー・ファイターズの作品のような覚悟と安定感を感じます。


■映画
42 バトルシップ/監督 ピーター・バーグ

 もう少し面白くできたと思うので残念です。何より敵である宇宙人の強さが微妙です。太陽系外からやってきて、ハワイを外部から隔離できるシールドを作れるだけの技術力がある割には、序盤で艦隊を撃墜した後は防戦一方で弱過ぎます。宇宙人が日光に弱いという設定もありきたりです。ですので、人類滅亡の危機感もほとんど感じられず、最後に撃退したときの爽快感も弱いです。主人公の破天荒な性格もその背景が描かれていないので全く共感できません。浅野忠信さんは大好きな役者さんですが、よそ行きな感じの演技で違和感を感じました。映像はお金がかかっていそうですが、ストーリーが安っぽく感じてしまうところももったいないです。
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