本、CD、映画日記

目標は年間読書100冊。その記録と目標管理をかねたブログです。

Channel Orange

2012-12-30 07:53:02 | Weblog
■本
127 サムスンの戦略的マネジメント/片山 修

 取材対象に媚びるような語り口が個人的にはあまり好きではありませんが、躍進を続けるサムソンのマネジメントについて裏事情も含めて知ることができ、参考になります。激烈な競争主義など、若干ネガティブな記述もありますが、基本的にサムソンマンセーの内容なので、もう少しポジネガ含めて多面的に書いていただいた方が読み物としては深みが出たように思えます。確かに、現時点では絶好調の企業なだけあって、スケール感の大きい立派なマネジメントをされている会社だと思いますが。


■CD
107 Black Gold/Soul Asylum
108 Drops of Jupiter/Train
109 My Private Nation/Train
110 Channel Orange/Frank Ocean
111 Making Mirrors/Gotye

107 全体を通して聴くとクオリティにばらつきがありちょっとつらいですが、ヒット曲「Runaway Train」、「Misery」はやはり名曲です。ちなみに、「Runaway Train」のPVは行方不明の子供たちの写真が次々と流れる構成で、実際にこのビデオのおかげで、何人かが見つかったという傑作です。

108、109 2枚合わせての企画パッケージがとても安かったので購入しました。派手さはないですが、真っ当な癖のない良い曲を作り続けているという印象のバンドです。2000年代屈指の名曲「Drops of Jupiter」など、ヒット曲だけでなく、アルバムを通して聴いてもクオリティが高くて楽しめます。あまりにも毒がないサウンドなので、そのあたりを物足りなく感じる人はいるかもしれません。

110 緊張感溢れる音で、続けて聴くとかなり疲れますが、今年最高の完成度を誇る作品の一つであることは間違いありません。マーヴィン・ゲイを髣髴とさせる都会的でスタイリッシュな歌唱法はR&Bの王道といった趣ですが、その声がミニマルな音響を重視した内省的なサウンドにからみ最先端の音楽になっています。息が詰まるほど非常に緻密に計算された作品世界に圧倒されます。

111 大シングル「Somebody That I Used To Know」が収録された、こちらも今年を代表する作品です。ルックスと「Somebody That I Used To Know」のシンプルで奇妙なサウンドから、こちらも内省的でリスナーに緊張を強いるタイプの作品と思ってたのですが、意外とポップで軽快なサウンドで、気楽に楽しめる作品となっています。


■映画
75 DRIVE/監督 SABU
76 デメキング/監督 寺内康太郎

75 豪華な俳優陣を、魅力的に描くこともなくわずかな登場時間で惜しげもなく使う贅沢な作品です。特に、ヒロインの柴咲コウさんはほとんど見せ場という場面がなく、他の作品では考えられない扱いですが、逆にその使われ方が妙に印象に残ります。メインのストーリーも特に大きな盛り上がりがなく、登場人物のエキセントリックな空想シーンだけが派手に演出されるという独特な構成です。身も蓋も無い感想で恐縮ですが、「普通じゃなくてもいいんだ」と妙に優しくなれる映画です。

76 いましろたかしさんの未完の傑作をかなり忠実に映画化した作品です。原作が未完なのだから、映画の方で独自の解釈のエンディングを追加してもよいと思うのですが、そういうものは全くなく、見終わったあと原作を読んだときと同じような、消化不良感が残ります。原作の方はその消化不良感が、それまでのくだらない日常描写と相まって不思議な魅力となっていますが、映画の方は、付加価値もつけずにお金をかけてまで映像化するほどの内容か、とちょっと疑問に感じました。なだき武さんや主人公の少年役の方など、俳優陣の演技が達者なだけに、残念な作品です。
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Farm

2012-12-23 06:34:55 | Weblog
■本
125 総理の資格/福田 和也
126 車谷長吉の人生相談 人生の救い/車谷長吉

125 小泉さん、森さん、安倍さん(一回目)が首相だった際に書かれた福田さんの文章を集めた本です。今回の選挙で安倍さんの首相復帰が確実そうだったので、長年読まずに積んでおいたままだったものを読みました。当時から、福田さんは日本の置かれた危機的な状況を「卑小」という言葉を使って痛烈に指摘されていますが、それから10年近くたっても状況が全く改善されておらず、さらにひどくなっていることにまず絶望的な気持ちになります。結局、落ちるところまで落ちないといけないのかもしれませんが、政治家に期待するのではなく個人として少しでも行動を変えていく必要があると改めて思いました。小泉さんや森さんのお気に入りの店(高いところばかりです)に通って、食から首相の人柄を分析するという企画は、その人となりを表す新しい切り口があまり出ておらず失敗だったような気がします。

126 新聞読者からの悩み相談に対し、さらに自分の不幸な体験を話し、いなすような感じで宗教的な回答を連発する奇妙な感じの人生相談です。どんな深刻な悩みも、その悩み自体が滑稽で無意味な感じすらするところに凄みを感じます。車谷さんの小説は初期のひたすらクールで悲惨でえげつない生活を描いたものしか読んでいなかったので、現在はご結婚もされてそれなりに幸せそうな感じさえすることが意外でした。いろんな意味で違和感ありまくりですが、なぜか人生に対して、ポジティブな気持ちになれる不思議な人生相談集です。


■CD
105 Greatest Hits/Sweat Blood & Tears
106 Farm/Dinosaur Jr.

105 骨太のヴォーカルに絡むホーンの使い方がやはり格好いいです。ベスト盤なので全体の統一感はないですが、スケール感の大きい各曲のクオリティは高いです。泥臭いようで洗練されていて、リズムの跳ねっぷりが軽快なのに重厚な印象が残る、いろんな意味でのバランスが素晴らしいです。「Spinning Wheel」は今聴いても古臭くなく不朽の名作だと思います。

106 再結成後のDinosaur Jr.の作品でなぜか本作だけ聴き逃していたので、ダウンロードで購入しました。本作は明るくPOPな曲が多いので聴きやすく楽しいです。目新しい要素はないですが、轟音ギターにJ・マスシスの気だるいヴォーカルが絡むだけでワクワクします。泣きのメロディーの曲も随所に挟み、ダイナソーファンが聴きたいであろう音を忠実に再現した、非常にリスナーオリエンテッドな作品です。初めてこのバンドを聴く方にもお勧めです。


■映画
74 ライラの冒険 黄金の羅針盤/監督 クリス・ワイツ

 映像やキャラクターなどファンタジー的な世界観はよくできていると思います。主人公のライラが全く魅力的ではないですが、ニコール・キッドマン演じる悪役など、他のキャラクターは立っています。ただ、ストーリーの方はメリハリのつけ方が稚拙なのか、随所に説明不足なところが多く、ダイジェスト版を見せられているような気がします。クライマックスも完全に続編へのつなぎ的な描かれ方で、さらにその続編が無期延期らしいので、人にお勧めできるような作品ではないです。残念な作品です。
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僕らはいつまで「ダメ出し社会」を続けるのか

2012-12-15 07:00:09 | Weblog
■本
123 しくみづくりイノベーション/電通コンサルティング
124 僕らはいつまで「ダメ出し社会」を続けるのか/荻上 チキ

123 事業を成功に導くには、顧客を理解し、顧客が求める価値を提供する仕組みを作り、その仕組みを市場からのフィードバックにより常にバージョンアップさせていく、ことが重要という趣旨の本です。その方法論をまとめた、「マーケティング・ドリブン・ビジネス・デザイン」(MDBD)という手法が解説されています。書かれている内容や事例はどれも説得力があり、参考になります。ただ、若干抽象的過ぎて、MDBDとは具体的には何で、どのように実務に活かせるかまでは、腹落ちしませんでした。結局は「エスノグラフィー」、「ビックデータ」、「プラットフォーム」、「ソーシャル・ビジネス」など流行の言葉や考え方を羅列しているにすぎない読後感も残ります。

124 現在の日本社会の閉塞感やさまざまな問題の背景を時系列で整理し、それぞれの立場からの論点やその思考の癖をまとめ、さらにその構造を分析し、その上でささやかながらも具体的に個々人がとるべき改善案を提示されているとてもよい本です。日本の社会問題の深刻さ、解決の困難さをクールに分析しつつ、それでも、丹念にそれらの問題(この本の筆者は「バグ」と読んでいます)をつぶしていくしか方法はないし、個々人が少しずつ行動していけばそれはできるはずというポジティブなメッセージもこめられています。投票前に自分の考えをまとめるのにとても役立ちました。筆者の主張がわかりやすく腹落ちし、行動に繋がる本だと思います。お勧めです。


■CD
103 March 16/Uncle Tupelo
104 Some Nights/Fun.

103 Wilcoのフロントマン、ジェフ・トゥイーディが以前に所属していたバンドの3作目です。「オルタナ・カントリー」と形容されることが多いですが、日本人の私には普通の「カントリー」作品のような気がしました。特に派手なキャッチーさはないですが、地味にしみ込んでくるような楽曲が多い作品です。

104 今年バカ売れしたFun.のアルバム。輸入版だと安く、前から気になっていましたが、グラミー賞にもたくさんの部門にノミネートされていたので聴いてみました。クイーンを髣髴とさせる変幻自在のメロディ展開とメリハリの巧みさで、全曲ドラマティックに聴かせます。古いような新しいような絶妙のところを突いてきます。通して聴くとゴテゴテし過ぎて、ちょっと胃がもたれる感じがしますが、ヒットしたのも納得のハイクオリティです。ヒット曲「WE ARE YOUNG」を聴くと、構成が似ているのかいつもドン・マクリーンの「アメリカン・パイ」を連想してしまいます。


■映画
73 砂漠でサーモン・フィッシング/監督 ラッセ・ハルストレム 

 「マイ・ライフ・アズ・ア・ドッグ」以来、大ファンのラッセ・ハルストレム監督の新作。「HACHI 約束の犬」あたりから、その甘すぎて、予定調和な世界観についていけなくなりつつありましたが、やはり好きな監督の新作ということで観て来ました。クリスティン・スコット・トーマス演じる、豪腕首相広報官を筆頭に、ユアン・マクレガー演じる水産学者とエミリー・ブラント演じる投資コンサルタントの主人公二人を含め、登場人物のキャラ設定は抜群でとても魅力的でした。ストーリーの方も、中だるみすることなく、テンポよくグイグイと観客を引きこみ展開させていく手腕もさすがです。ただ、この監督の以前の作品は、主人公サイドに、もう少し人生の苦味や葛藤を負わせていたのですが、本作でも特に恋愛的側面で主人公二人にそれなりの決断を迫る場面はあるものの、どちらかといえば主人公にとって「出来すぎた」話で少し興ざめしました。それでも、脇役のセリフに人生の苦味や葛藤に対する深みが感じられて、一見お手軽なラブ・ストーリーのフォーマットの中に、巧みに考えさせられる要素を盛り込んでいるところは好ましく思いました。ラッセ・ハルストレム監督の低迷脱出を感じられる良作です。
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Summer Teeth

2012-12-08 11:18:42 | Weblog
■本
120 ここがおかしい日本の社会保障/山田 昌弘
121 BE ソーシャル!/斉藤 徹
122 〈アイデア〉の教科書 /山田壮夫

120 「パラサイト・シングル」の山田昌弘さんによる日本の社会保障制度の問題点を指摘した本です。社会環境の変化により、非正規雇用やフリーランスといった、これまでの社会保障制度が想定していた「サラリーマン-専業主婦」と「自営業」の2つパターン以外の世帯が増大したため、現行社会保障制度はすでに実態にあっていない、というのが主な論点です。若年層の支援による少子高齢化の緩和や、女性のより一層の社会進出を促し日本経済を活性化させると言う意味でも、社会保障制度の抜本改革が必要と何度も主張されています。財源の見通しについては詳細に書かれていないので、若干理想的過ぎる印象は残りますが、問題点の指摘や改善案は非常にロジカルに整理されていて、とても説得力があります。問題点の指摘に終始し暗い気持ちにさせるだけでなく、具体的な提言によりかすかな希望が残る良い本だと思います。

121 斉藤さんの著書である「ソーシャルシフト」の続編的位置づけの本です。前作が企業がソーシャル化(企業の取り組みを特にソーシャルメディア上で隠し立てなくオープンに情報公開し、生活者と直接交流していく取り組み、と私は理解しています)する上でのテクニカルな話が多かったのに対し、本作はソーシャル化にあたっての心構えや理念といったより上位の話に力点が置かれています。規模の大小、国内外を問わず成功事例も豊富にありとても参考になります。かなり性善説的な内容で、善人以外はソーシャル化の進んだ社会では成功できないとなると、私のような屈折した人間は生きにくくなりそうな気もしますが、本書で論じられているような流れに社会は間違いなく進んでいる気がします。いずれ、揺り戻しがある可能性もありますが、ソーシャルメディアの発達により、「今何が起ころうとしているか」を知るためには非常に良い本だと思います。この本を鵜呑みにするのではなく、そこから次の行動のヒントをどのように得るかがより重要な気がします。

122 「アイデアのつくり方」など、これまでのアイデア創出のノウハウについて書かれた本と筆者及び電通の現場で使われている方法論のエッセンスをとてもコンパクトにわかりやすい言葉でまとめられています。筆者も書かれている通り、読んで理解するだけでなく、実際にこのノウハウを使ってみて、自分の中に落とし込むのが重要でかつ時間がかかりそうです。1時間もあれば読める短い本ですが、消化するのに時間がかかるタイプの本です。


■CD
101 Raw Power/Iggy & The Stooges
102 Summer Teeth/Wilco

101 パンクロックの代表作の一つ。ClashやSex Pistolsが怒りを基本にしつつ、意外と知性やかわい気を感じさせるのに対し、こちらは、どろそろとしたむき出しの情念が滲み出ています。そういう意味では日本人向きなような気がします。曲数も短くたたみかけるような疾走感が聞いていて心地よいです。

102 Wilcoの3作目。一般的には次作の「Yankee Hotel Foxtrot」が最高傑作と言われることが多いですが、この作品もかなりの完成度の高さです。カントリー・ロックという枠組みを超えて、よりスケールの大きいWilco独自のポップなサウンドは本作で完成の域に達したと思います。捨て曲無しの楽しく和める作品です。


■映画
72 ウディ・アレンの夢と犯罪/ウディ・アレン

 ウディ・アレンのシニカルで悲観的な面が強く出た作品。救いがありません。ユアン・マクレガーやコリン・ファレルといったメジャーな俳優を使いながらのこの地味で全く主人公が魅力的に観えない描き方はさすが。ウディ・アレンはぶれません。非常に監督の作家性が強く出た作品ですが、逆にウディ・アレンの成功した作品(「アニー・ホール」、「カイロの紫のバラ」、「ミッドナイト・イン・パリ」などなどたくさんありますが)が俳優の個性も存分に発揮されていたのと比べると、若干の物足りなさが残ります。人物があまり魅力的ではないのと対称的に、ロンドン郊外の風景はとても美しく描かれていて、「ロンドン3部作」は結局人よりもこの風景を描きたかったのかも、という印象を受けました。単純にウディ・アレンは女性を描くほどは男性には興味がないだけかもしれませんが。
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John Barleycorn Must Die

2012-12-02 10:15:44 | Weblog
■本
119 絲的サバイバル/絲山 秋子

 絲山秋子さんのキャンプ生活(友人や編集者と行くものもありますが、基本は一人キャンプです)をテーマにした連載エッセイをまとめた本です。絲山さんの文体そのもののストイックなキャンプ生活で、友人の庭にテントをはる会などは、「何でそこまで」と思わせる不思議な面白さがあります。当然、小説家のエッセイなので、一人キャンプの際の絲山さん自身の思索や風景の描写は巧みですが、叙情的になりすぎずに、あくまでクールです。キャンプの際に作られる簡単な料理やそのお供のお酒がどれもおいしそうで、少しだけ真似したい気もしてきます。


■CD
98 The Greatest Hits/Gladys Knight
99 Rock Action/Mogwai
100 John Barleycorn Must Die/Traffic 

98 アレサ・フランクリンのような歌唱力を前面に出したゴテゴテしたソウルでなくて、あくまでPOPでさりげなく力量をアピールしている感じです。通して聴くとホイットニー・ヒューストンなど80年代以降のソウル系女性アーティストに多大な影響を与えていることがわかります。今、聴いても全く古臭くないです。

99 基本的に静謐な印象が残る作品ですが、轟音による盛り上げ方がとても巧みでクライマックスの高揚感は聴いていてとても気持ちよいです。自分の内面世界に浸りたいときに最適な作品です。集中力が研ぎ澄まされる感じがします。

100 非常に練りこまれたアレンジに、スティーブ・ウインウッドの力強い声がフィットした傑作です。オルガン、ピアノ、フルート、サックスなど各楽器の音が効果的に配置されていて、音に知性を感じます。初期衝動のアイデアだけでなく、左脳も駆使してセンスよく仕上げられています。ロックの可能性を広げた作品と言っても褒めすぎではないと思います。


■映画
71 カイジ2 人生奪回ゲーム/監督 佐藤東弥

 クライマックスまでは生瀬勝久さんの軽快な演技もあり、テンポよく進んで前作より面白いと思ったのですが、最後の大勝負がくどすぎます。藤原竜也さんのいつもどおりの暑苦しい演技に香川照之さんも同調し、狙ってわざとやっているのがわかっていても、観ていてつらくなります。逆に敵役はもっとエキセントリックに演じてもよかったかも。吉高由里子さんが出ている時点で最後は主人公側につくのが見え見えで、ストーリー的な意外性も全くありません。こういう世界観もありだと割り切って気楽に楽しむのが建設的な観かただと思います。
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