本、CD、映画日記

目標は年間読書100冊。その記録と目標管理をかねたブログです。

人工知能の核心

2017-08-26 10:01:56 | Weblog
■本
66 仕事ができる人はなぜモチベーションにこだわらないのか/相原 孝夫
67 人工知能の核心/羽生 善治、 NHKスペシャル取材班

66 人材・組織コンサルタントの方による「モチベーション」をテーマにした仕事論です。モチベーションのような上がり下がりする不安定なものに左右されず一定の成果を出し続けることが、できる人の条件である、という趣旨の本です。「モチベーション」という、高ければ高いほどよいと思考停止しがち言葉に対して、一石を投じている点で参考にすべき本だと思います。日々働いている上で、モチベーションを上げられることよりも下げられることの方がはるかに多いことは、多くの方が肌感覚で実感していると思うのですが、「モチベーションは研修では上げられない」、「会社は社員の邪魔をしないことが第一」など腹落ちする指摘も多いです。高モチベーションの人が周囲に与える、パワハラ等の悪影響にも触れられている点も今っぽいです。「"道"としての労働」(「やりがい」よりも職人のように「技術」を極めるという仕事観)や「"つながり"としての労働」(自己の業績よりも組織への貢献や他者とのかかわりを重視する仕事観)を推奨するなど、精神の安定を重視する仕事観が提示されている点も興味深いです。

67 トップ棋士である羽生さんが、人工知能について取材したNHKスペシャルの番組内容を書籍化したものです。トップ棋士にも勝利を収めるようになった人工知能について、「将棋」を補助線に、何ができて何ができないか、また、どのようにつき合えばいいのか、について豊富な取材に基づきわかりやすく解説してくれます。何より、「人工知能が引き算の思考を取り入れた」(可能性のない打ち手をまず省いて、筋のよさそうな手のみの思考に集中し効率化する考え方)や「人工知能には恐怖心がない」(人間では怖くて思いつかない着想により打ち手の可能性を広げる反面、人間には受け入れがたい判断をするリスクに警鐘を鳴らされています)など、羽生さん自身の将棋での思考プロセスを踏まえた、論点の提示が興味深いです。羽生さんの著書を読むといつも思うのですが、地頭の良さをベースにしたユニークかつ納得感の高い論理展開に魅了されます。読んでいる自分も少し頭がよくなった気がします。


■映画
49 スティーブ・ジョブズ/監督 ジョシュア・マイケル・スターン

 スティーブ・ジョブズをタイトルにした作品は2つありますが、こちらは2015年のダニー・ボイル監督版ではない方の、2013年の作品です。冒頭こそipod発表時のプレゼンですが、基本的にはアップル創業から、追放を経て暫定CEOに復帰する(iMac発売前)までの、成功と挫折を描いた作品です。洗練された製品で世界的な大企業となったアップル社も、最初はガレージで創業され、スティーブ・ジョブズの泥臭い営業と交渉力により急速に大きくなったことがよくわかり、前半の成功ストーリーはワクワクします。しかし、事実に忠実なのかもしれませんが、この作品のスティーブ・ジョブズの人物像に全く共感できません。妊娠した恋人を冷たく突き放したり、創業時の友人に冷酷であったりと、ただの嫌な奴にしか見えません。アップル社の役員も、ほぼ全員ただの野心家で、描かれ方があまりにもチープです。スティーブ・ジョブズを主人公に映画を創るなら、たくさんある人間的欠陥を補ってあまりある情熱と才能、そして、その製品がいかに人々の生活を豊かにしたのか、についても合わせて描くべきだと思うのですが、その点が物足りなく感じました。
 
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リーダーシップからフォロワーシップへ

2017-08-19 10:43:08 | Weblog
■本
62 闇ウェブ/セキュリティ集団スプラウト
63 リーダーシップからフォロワーシップへ/中竹 竜二
64 山本周五郎で生きる悦びを知る/福田 和也
65 さよなら、愛しい人/レイモンド・チャンドラー

62 少しマニアックな内容なので、読む人を選ぶと思いますが、万人に開かれたインターネットとは別に、アクセス可能な人を選び、検索エンジンのクローリングも許さない「ダークウェブ」なるサイバー空間で、どういうことが行われていて、どういう問題があるかについて、技術的な背景にも触れながら丁寧に解説されています。薬物取引やハッキング集団の温床など、ネガティブな印象が強い「ダークウェブ」が、そもそもは、情報統制の強い非民主的国家などで、個人を特定されて弾圧されることなく、自由に政府批判を行うための手段として発達してきた経緯など、その存在の功罪両面を知ることができて参考になりました。

63 早稲田大学ラグビー蹴球部元監督の方による組織論です。ここ数年話題の「フォロワーシップ」という概念について非常によく理解できます。kindleの日替わりセールだったので何気なく買ったのですが、とても参考になりました。私が日々の会社生活の中で感じている、スキルやリーダーシップ至上主義に対する違和感が言語化されていてすっきりしました。結局、自分のことをよく理解して、周囲の期待に応え過ぎず、自分が力を最も発揮できる、好きなこと、頑張れること、得意なこと(その総体としてのスタイル)を突き詰めることが大切で、リーダーはそのそれぞれの個人がスタイルを見つけ、伸ばす手助けをしつつ、組織としての力も最大化するように努めることが重要だということを、具体的なラグビー部のチームマネジメントの事例を踏まえつつわかりやすく教えてくれます。スキルよりスタイルが大事だということや多様性の大切さを、西尾維新さんの「めだかボックス」よりわかりやすく教えてくれます。

64 福田和也さんお得意の小説の舞台背景の詳細な解説を交えた、山本周五郎作品の評論集です。山本周五郎さんの作品は読んだことがないのですが、市井の決して幸せとは言えない生活を送った人々の強さ醜さを描いた作品世界の魅力を、福田さん自身の解釈を含めてわかりやすく説明してくれているので、評論対象となった小説も読んでみたくなりました。ただ、読む側の人生に向き合う姿勢を問うような作品ばかりなので、それなりの心構えが必要そうです。まずは、この本でも取り上げられている「季節のない街」が原作の、黒澤明監督の「どですかでん」を観てみたいと思います。

65 先月の「ロング・グッドバイ」に引き続き、村上春樹さん翻訳によるレイモンド・チャンドラー作品を読んでいます。清水俊二さん訳の「さらば愛しき女よ」や同名の映画を観たことがあるのですが、ラジオがキーになっていること以外は、あまり覚えていませんでした。村上春樹さんがおっしゃる通り、小説としての完成度は「ロング・グッドバイ」の方が上かもしれませんが、探偵ものの小説としては、謎が解かれた際の納得感や、捜査のために単身賭博船に乗り込む際の緊迫感など、この作品の方が上かもしれません。どのキャラクターも立っていてわかりやすく、翻訳小説にありがちな登場人物把握の労力も少なく楽しい読書でした。


■映画
47 ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅/監督 デヴィッド・イェーツ
48 心が叫びたがってるんだ/監督 長井 龍雪

47 「ハリー・ポッター」シリーズのスピンオフということで、もう少し気楽に観られる作品だと思っていましたが、コミカルな設定ではあるものの、シリーズ共通の死の不吉な予感が背景に常に感じられる、見応えのある作品です。原作者のJ・K・ローリング自身が脚本を書いているだけあって、魔法界の動物など細部に至るまで世界観に対する配慮が行き届いていますし、邪悪な魔物に取りつかれた気の毒な少年があっけなく死ぬなど安易に万事めでたしめでたしのハッピーエンドにはならない、観客に媚びない姿勢は素敵だと思います。主演のエディ・レッドメインはオスカー俳優らしく、挙動不審ながらもチャーミングで抜群の安定感ですし、脇役も欠陥の多い登場人物ばかりですが、不思議と好感が持てます。大作っぽい仰々しい演出ががない点も含め、地に足の着いた良心的な傑作だと思います。

48 最近実写映画化が公開されて話題の作品ですが、そのアニメ版の方を観ました。こちらは作り手側の意図が見え過ぎて観客に媚びすぎな印象を持ちました。それぞれの悩みを抱える4人の高校生が、地域イベントの実行委員を担任教師に押し付けられ、いろいろな葛藤を抱えながらも、危機を乗り越え当日のミュージカルの舞台を成功させるという「櫻の園」の男女版のような作品です。私が歳を取っただけなのかもしれませんが、登場人物の誰にも共感が持てませんでした。高校生の悩みってここまでくっきりわかりやすいものではなく、もう少し曖昧で自分では捉えどころがないからこそ、持て余してしまうと思うのですが・・・。男女2組の登場人物が安易に付き合うようにならなかった点と、教室や部室等の学生風景の丁寧な描写は良かったと思います。
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ジャージー・ボーイズ

2017-08-13 09:52:41 | Weblog
■本
61 直感はわりと正しい 内田樹の大市民講座/内田 樹

 「AERA」で連載されていた、内田樹さんの時事コラム集です。まえがきでご本人もおっしゃっている通り、900文字程度の短めの長さと、「だ、である」調の文体なので、ブログ等を再加工した、内田さんの類似書と比べると少し印象が異なりますが、書かれている内容はいつもの内田さん節です。同じ内容の主張が短めの文章で繰り返し語られているので、内田さんの考えの本質を、より深く理解できたような気がします。これまた、まえがきで書かれていますが、政局等の当時の予測はほどんど外れているものの、10年近く前の時事コラムを今読んでも、興味深く読める点(内田さんの言葉を借りると「リーダビリティ」)はさすがだと思います。


■映画
46 ジャージー・ボーイズ/監督 クリント・イーストウッド

 1960年代初期にヒット曲を連発した、アメリカのポップスバンド、フォーシーズンズの伝記をクリント・イーストウッドが監督した作品です。下積みから苦労の末に成功を収め、そこからの内部分裂と年月を経てからの和解という、ミュージシャンをテーマにした作品の定番のストーリー展開ですが、生々しい感情表現をベースとした手堅い演出と巧みな音楽の使い方でとても魅力的な作品となっています(終盤の「Can't Take My Eyes Off You」と、エンディングの「December, 1963 (Oh, What a Night) 」の2曲の使い方が特に素晴らしいです)。メインキャストはほぼ無名の役者を使いながら、ここまで作品世界に引き込む監督の力量は見事です。脇で支える、クリストファー・ウォーケンの凄みがありながらどこかコミカルな演技も印象的です。クリント・イーストウッドは、人間的にはそんなに好きではないのですが、監督作品のクオリティは本当に高いと思います。特に、「ミスティック・リバー」以降の、この作品も含む2000年代の作品は神がかっています。
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怪盗グルーのミニオン大脱走

2017-08-05 10:06:35 | Weblog
■本
59 できる100の新法則 実践マーケティングオートメーション/永井 俊輔
60 マーケティングオートメーションに落とせるカスタマージャーニーの書き方/小川 共和

59 筆者自身がB to B企業の経営者兼マーケッターという立場で、Mauticというオープンソースのマーケティングオートメーション(MA)ツールなどを活用された経験に基づいて書かれた本なので、とても実践的で参考になります。「できる」シリーズらしく、実際の画面を示しながら、ツールの使い方にまで踏み込んでいるので、実作業にも使えそうです。100の法則ありきの本なので、無理やりな法則もありますが、実作業から逆算して、自社にとってMAの何が使えて、何が使えないのかをイメージできる点もよいと思います。最初から自動化せずにまずは手動で運用すべし、という意見も地に足がついていて共感が持てました。最初は細部に偏り過ぎと思っていましたが、最後まで読むとMAの全体像がよりくっきりと理解できた気がします。

60 同じくMA関連の本です。MAで施策をある程度自動化する際に必要とされる、カスタマージャーニー(自社にとって望ましい顧客の行動を、施策と絡めながら具体的に落とし込んだもの、と私は理解しています)の作成の仕方を具体的に解説してくれる本です。59の本と異なり、元大手広告代理店社員のコンサルタントの方が書かれた本なので、全体的なマーケティング活動にどのようにMAを活用するかという俯瞰的な視点に立たれています。ネット上での行動を補足するのが得意なMAツールの活用において、あえて、パーセプションチェンジ(態度変容)を重視して設計すべし、と主張されている点がユニークです。単価の高いB to B商材が得意なMAの、B to C商材での活用方法を重点的に書かれている点も参考になります。コンテンツを重視されているなど、少し理想論に偏り過ぎな気もしますが、59の本など現場目線の本や記事と併読するといろんな気づきが得られる本だと思います。


■CD
39 Everything Now/Arcade Fire

 似たような楽曲が増えた最近の音楽シーンの中で、独特の個性を持つ存在として大好きなアーケイド・ファイアの新作です。ポップな楽曲の陰に隠れた粗削りなおどろおどろしさがこのバンドの魅力の一つですが、今作は、多幸感たっぷりのテンションの高さが印象的で、少し戸惑っています。聴くたびに新たな発見がある点はさすがですが、少し作りこみ過ぎているような気もして、私の中でなかなか評価が定まっていません。もう少し聴き込んでみたいと思います。


■映画
44 スター・トレック イントゥ・ダークネス/監督 J・J・エイブラムス
45 怪盗グルーのミニオン大脱走/監督 ピエール・コフィン、カイル・バルダ

44 J・J・エイブラムス監督によるスター・トレック新シリーズの2作目。この監督らしく、冒頭から見せ場たっぷりの王道SF大作に仕上がっています。独特の世界観に基づく複雑なストーリーを、わかりやすくロジカルに演出している手腕も見事です。ベネディクト・カンバーバッチ演じる悪役は、公開当時話題になった通り、主役を食うほどのクールで知的な魅力がたっぷりです。一方、前作でも思ったのですが、主役の若き日のカーク船長が、ただのわがままで無謀な熱血漢にしか見えず、あまり共感できない点が残念です。スポックも含め、これまでのシリーズと比べると、主要キャラの弱さが少し気になりますが、安定したクオリティのエンターテイメント作品だと思います。

45 ミニオンたちが日本でも大ブレイク中の、怪盗グルーシリーズの3作目です。主役のグルーを筆頭に様々な屈託を抱えた、癖の強いキャラクターを本作でも堪能できます。ミニオンズも相変わらず毒の効いた愛くるしさ全開で、ファンにとってはうれしい限りです。人気がなくなった元天才子役という悪役のインパクトも強く、この作品の世界観に合った実に練られたキャラクターだと思います。とても楽しい映画なのですが、過去2作及びスピンアウトの「ミニオンズ」と比べると、グルー家族(奥さんもいい味出しています)、ミニオンたち、悪役といった魅力タップリのキャラクターが満載過ぎて、少し消化不良になった印象が残ります。グルーを怪盗として復帰させる必然性を作る上では仕方なかったのかもしれませんが、グルーの双子の兄弟のドルーは不要だったかもしれません。邦題の「ミニオン大脱走」という割には、ミニオンたちの脱走シーンは少なめで、物足りないです。キャラクターが成功しすぎたシリーズものの宿命でしょうが、どうしても、もう少し各キャラクターを観たかったという印象が残ってしまいます。
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