■本
66 仕事ができる人はなぜモチベーションにこだわらないのか/相原 孝夫
67 人工知能の核心/羽生 善治、 NHKスペシャル取材班
66 人材・組織コンサルタントの方による「モチベーション」をテーマにした仕事論です。モチベーションのような上がり下がりする不安定なものに左右されず一定の成果を出し続けることが、できる人の条件である、という趣旨の本です。「モチベーション」という、高ければ高いほどよいと思考停止しがち言葉に対して、一石を投じている点で参考にすべき本だと思います。日々働いている上で、モチベーションを上げられることよりも下げられることの方がはるかに多いことは、多くの方が肌感覚で実感していると思うのですが、「モチベーションは研修では上げられない」、「会社は社員の邪魔をしないことが第一」など腹落ちする指摘も多いです。高モチベーションの人が周囲に与える、パワハラ等の悪影響にも触れられている点も今っぽいです。「"道"としての労働」(「やりがい」よりも職人のように「技術」を極めるという仕事観)や「"つながり"としての労働」(自己の業績よりも組織への貢献や他者とのかかわりを重視する仕事観)を推奨するなど、精神の安定を重視する仕事観が提示されている点も興味深いです。
67 トップ棋士である羽生さんが、人工知能について取材したNHKスペシャルの番組内容を書籍化したものです。トップ棋士にも勝利を収めるようになった人工知能について、「将棋」を補助線に、何ができて何ができないか、また、どのようにつき合えばいいのか、について豊富な取材に基づきわかりやすく解説してくれます。何より、「人工知能が引き算の思考を取り入れた」(可能性のない打ち手をまず省いて、筋のよさそうな手のみの思考に集中し効率化する考え方)や「人工知能には恐怖心がない」(人間では怖くて思いつかない着想により打ち手の可能性を広げる反面、人間には受け入れがたい判断をするリスクに警鐘を鳴らされています)など、羽生さん自身の将棋での思考プロセスを踏まえた、論点の提示が興味深いです。羽生さんの著書を読むといつも思うのですが、地頭の良さをベースにしたユニークかつ納得感の高い論理展開に魅了されます。読んでいる自分も少し頭がよくなった気がします。
■映画
49 スティーブ・ジョブズ/監督 ジョシュア・マイケル・スターン
スティーブ・ジョブズをタイトルにした作品は2つありますが、こちらは2015年のダニー・ボイル監督版ではない方の、2013年の作品です。冒頭こそipod発表時のプレゼンですが、基本的にはアップル創業から、追放を経て暫定CEOに復帰する(iMac発売前)までの、成功と挫折を描いた作品です。洗練された製品で世界的な大企業となったアップル社も、最初はガレージで創業され、スティーブ・ジョブズの泥臭い営業と交渉力により急速に大きくなったことがよくわかり、前半の成功ストーリーはワクワクします。しかし、事実に忠実なのかもしれませんが、この作品のスティーブ・ジョブズの人物像に全く共感できません。妊娠した恋人を冷たく突き放したり、創業時の友人に冷酷であったりと、ただの嫌な奴にしか見えません。アップル社の役員も、ほぼ全員ただの野心家で、描かれ方があまりにもチープです。スティーブ・ジョブズを主人公に映画を創るなら、たくさんある人間的欠陥を補ってあまりある情熱と才能、そして、その製品がいかに人々の生活を豊かにしたのか、についても合わせて描くべきだと思うのですが、その点が物足りなく感じました。
66 仕事ができる人はなぜモチベーションにこだわらないのか/相原 孝夫
67 人工知能の核心/羽生 善治、 NHKスペシャル取材班
66 人材・組織コンサルタントの方による「モチベーション」をテーマにした仕事論です。モチベーションのような上がり下がりする不安定なものに左右されず一定の成果を出し続けることが、できる人の条件である、という趣旨の本です。「モチベーション」という、高ければ高いほどよいと思考停止しがち言葉に対して、一石を投じている点で参考にすべき本だと思います。日々働いている上で、モチベーションを上げられることよりも下げられることの方がはるかに多いことは、多くの方が肌感覚で実感していると思うのですが、「モチベーションは研修では上げられない」、「会社は社員の邪魔をしないことが第一」など腹落ちする指摘も多いです。高モチベーションの人が周囲に与える、パワハラ等の悪影響にも触れられている点も今っぽいです。「"道"としての労働」(「やりがい」よりも職人のように「技術」を極めるという仕事観)や「"つながり"としての労働」(自己の業績よりも組織への貢献や他者とのかかわりを重視する仕事観)を推奨するなど、精神の安定を重視する仕事観が提示されている点も興味深いです。
67 トップ棋士である羽生さんが、人工知能について取材したNHKスペシャルの番組内容を書籍化したものです。トップ棋士にも勝利を収めるようになった人工知能について、「将棋」を補助線に、何ができて何ができないか、また、どのようにつき合えばいいのか、について豊富な取材に基づきわかりやすく解説してくれます。何より、「人工知能が引き算の思考を取り入れた」(可能性のない打ち手をまず省いて、筋のよさそうな手のみの思考に集中し効率化する考え方)や「人工知能には恐怖心がない」(人間では怖くて思いつかない着想により打ち手の可能性を広げる反面、人間には受け入れがたい判断をするリスクに警鐘を鳴らされています)など、羽生さん自身の将棋での思考プロセスを踏まえた、論点の提示が興味深いです。羽生さんの著書を読むといつも思うのですが、地頭の良さをベースにしたユニークかつ納得感の高い論理展開に魅了されます。読んでいる自分も少し頭がよくなった気がします。
■映画
49 スティーブ・ジョブズ/監督 ジョシュア・マイケル・スターン
スティーブ・ジョブズをタイトルにした作品は2つありますが、こちらは2015年のダニー・ボイル監督版ではない方の、2013年の作品です。冒頭こそipod発表時のプレゼンですが、基本的にはアップル創業から、追放を経て暫定CEOに復帰する(iMac発売前)までの、成功と挫折を描いた作品です。洗練された製品で世界的な大企業となったアップル社も、最初はガレージで創業され、スティーブ・ジョブズの泥臭い営業と交渉力により急速に大きくなったことがよくわかり、前半の成功ストーリーはワクワクします。しかし、事実に忠実なのかもしれませんが、この作品のスティーブ・ジョブズの人物像に全く共感できません。妊娠した恋人を冷たく突き放したり、創業時の友人に冷酷であったりと、ただの嫌な奴にしか見えません。アップル社の役員も、ほぼ全員ただの野心家で、描かれ方があまりにもチープです。スティーブ・ジョブズを主人公に映画を創るなら、たくさんある人間的欠陥を補ってあまりある情熱と才能、そして、その製品がいかに人々の生活を豊かにしたのか、についても合わせて描くべきだと思うのですが、その点が物足りなく感じました。