■本
89 世界で最もクリエイティブな国デンマークに学ぶ 発想力の鍛え方/クリスチャン・ステーディル、 リーネ・タンゴー
90 逆境からの仕事学/姜 尚中
91 丘の上のバカ ぼくらの民主主義なんだぜ2/高橋 源一郎
89 発想力は既存のアイデアの模倣から始まる、など、クリエイティブをテーマにした類似書と重なる内容も多いですが、既存の枠組みを「超える」のではなく「限界ぎりぎり」で発想することの大切さを繰り返し主張されている点が特徴的です。また、薬物とクリエイティブに関わる問題に踏み込んで、その関連性をはっきりと否定しているところも、この本をユニークなものにしています。ミュージシャンの「AQUA」やレゴブロックで有名なレゴといったデンマークの有名人・企業を事例として取り上げているので、普段あまり意識することのない、デンマークという国を知るにもよい本です。個人的には、デンマーク出身の映画監督、ラース・フォン・トリアーが大好きなので、彼と仕事をした人々のエピソードが興味深かったです。
90 姜尚中さんの仕事論です。姜さん自身が在日韓国人としての生い立ちから就職に苦労した話(正規の大学教員となったのが37歳というのは、今のご活躍を思うと本当にびっくりしました)なども踏まえ、不確実な右肩下がりの時代に、どのように仕事に向き合えばいいかをやさしく語ってくれています。基本的には、読書や人文知を重視する、という、これまでの姜さんの主張の繰り返しですが、「多次元の価値観を持つこと」、「社会関係資本を大切にすること」、「自分のミッションを見つけること」、など、今後仕事とどのように向き合って行くべきかについての具体的な提言もなされていて参考になります。
91 朝日新聞に連載されていた「論壇時評」をまとめた「ぼくらの民主主義なんだぜ」の続編で、前作に収録されなかった「論壇時評」の残りと「民主主義」をテーマにインターネットなどで発表された文章が収録されています。こちらも、学生運動に挫折した話や売春の斡旋をしていた話など、高橋源一郎さんの個人的な話が収録されていて、彼がどのようにして現在主張されているような考え方を持つに至ったのか(なぜ、断定的な物言いをしないのか)について窺い知ることができて興味深いです。安倍首相やその周辺の人たちに対する批判の切れ味もユーモラスかつ鋭いです。個人的に印象的だったのが、多くの人が賞賛したオバマ首相の広島での演説に関しての文章です。その言葉の美しさや意義の大きさを評価しつつもどこか違和感を感じ、「私」ではなく「私たち」という主語で多く語りかける、この演説の主体のあいまいさを見事に見抜いた洞察力に、高橋さんの作家としての凄みを感じました。
■CD
65 ANTHEM OF THE SUN/GRATEFUL DEAD
66 LOVE & THEFT/Bob Dylan
67 Simple Dreams/Linda Ronstadt
65 大御所のGRATEFUL DEADの1968年に発表された2作目です。全く派手なところはないですが、語りかける様なヴォーカルとゆったりとリラックスした演奏で、どこかに連れていかれそうな気分になります。彼らの代表作として語られることは少ない作品ですが、通の間では、5本の指に入る傑作と評されているようです。今にまで続く彼らのスタイルがすでに確立されています。
66 ボブ・ディランの21世紀に入ってから最初の作品で、名作と誉れ高い作品です。シンプルに良い曲を集めたといった印象の気楽に聴ける作品で、いつにも増してしゃがれ声で軽やかにかつ朗々と歌い上げるボブ・ディランが実に楽しそうです。気難しい印象のボブ・ディランですが、この作品はとても敷居が低く取っつきやすいです。60歳を過ぎてからこんなにも軽やかな作品を作れるところもボブ・ディランの魅力だと思います。
67 リンダ・ロンシュタットの全盛期の作品で、全米1位にもなった作品です。冒頭の「It's So Easy」の力強くも楽し気な歌声が大好きなので、安くなっていたこともあり買いました。今や混沌としたアメリカが、大きくて、大らかで、夢に満ちていたころのサウンドが(それが、多くの人にとって幻想だったとしても)聴いていて心地よく、また、少し物悲しいです。
■映画
80 箱入り息子の恋/監督 市井 昌秀
今、歌にドラマに大人気の星野源さんの映画初主演作です。市役所に勤める地味で生真面目な青年が、盲目の美人女性と恋に落ちるお話です。目が見えないからこそ、外見の雰囲気に惑わされずその人の内面に惹かれるという紋切型に陥ることなく、恋によって人が不格好までに変わっていく姿を、パワフルに描き切っているところが素敵です。地味な男子に希望を与える作品と勝手に思って、中二の長男と一緒に見始めたのですが、途中から思いもよらずエロティックな展開になって、ちょっと戸惑いました。どこか、違和感のある星野源さんの演技と相まって、微妙にずれた雰囲気が漂っているところも魅力的です。夏帆さんが難しい役を熱演されていますし、その母親役の黒木瞳さんが異常に美しくびっくりしました。
89 世界で最もクリエイティブな国デンマークに学ぶ 発想力の鍛え方/クリスチャン・ステーディル、 リーネ・タンゴー
90 逆境からの仕事学/姜 尚中
91 丘の上のバカ ぼくらの民主主義なんだぜ2/高橋 源一郎
89 発想力は既存のアイデアの模倣から始まる、など、クリエイティブをテーマにした類似書と重なる内容も多いですが、既存の枠組みを「超える」のではなく「限界ぎりぎり」で発想することの大切さを繰り返し主張されている点が特徴的です。また、薬物とクリエイティブに関わる問題に踏み込んで、その関連性をはっきりと否定しているところも、この本をユニークなものにしています。ミュージシャンの「AQUA」やレゴブロックで有名なレゴといったデンマークの有名人・企業を事例として取り上げているので、普段あまり意識することのない、デンマークという国を知るにもよい本です。個人的には、デンマーク出身の映画監督、ラース・フォン・トリアーが大好きなので、彼と仕事をした人々のエピソードが興味深かったです。
90 姜尚中さんの仕事論です。姜さん自身が在日韓国人としての生い立ちから就職に苦労した話(正規の大学教員となったのが37歳というのは、今のご活躍を思うと本当にびっくりしました)なども踏まえ、不確実な右肩下がりの時代に、どのように仕事に向き合えばいいかをやさしく語ってくれています。基本的には、読書や人文知を重視する、という、これまでの姜さんの主張の繰り返しですが、「多次元の価値観を持つこと」、「社会関係資本を大切にすること」、「自分のミッションを見つけること」、など、今後仕事とどのように向き合って行くべきかについての具体的な提言もなされていて参考になります。
91 朝日新聞に連載されていた「論壇時評」をまとめた「ぼくらの民主主義なんだぜ」の続編で、前作に収録されなかった「論壇時評」の残りと「民主主義」をテーマにインターネットなどで発表された文章が収録されています。こちらも、学生運動に挫折した話や売春の斡旋をしていた話など、高橋源一郎さんの個人的な話が収録されていて、彼がどのようにして現在主張されているような考え方を持つに至ったのか(なぜ、断定的な物言いをしないのか)について窺い知ることができて興味深いです。安倍首相やその周辺の人たちに対する批判の切れ味もユーモラスかつ鋭いです。個人的に印象的だったのが、多くの人が賞賛したオバマ首相の広島での演説に関しての文章です。その言葉の美しさや意義の大きさを評価しつつもどこか違和感を感じ、「私」ではなく「私たち」という主語で多く語りかける、この演説の主体のあいまいさを見事に見抜いた洞察力に、高橋さんの作家としての凄みを感じました。
■CD
65 ANTHEM OF THE SUN/GRATEFUL DEAD
66 LOVE & THEFT/Bob Dylan
67 Simple Dreams/Linda Ronstadt
65 大御所のGRATEFUL DEADの1968年に発表された2作目です。全く派手なところはないですが、語りかける様なヴォーカルとゆったりとリラックスした演奏で、どこかに連れていかれそうな気分になります。彼らの代表作として語られることは少ない作品ですが、通の間では、5本の指に入る傑作と評されているようです。今にまで続く彼らのスタイルがすでに確立されています。
66 ボブ・ディランの21世紀に入ってから最初の作品で、名作と誉れ高い作品です。シンプルに良い曲を集めたといった印象の気楽に聴ける作品で、いつにも増してしゃがれ声で軽やかにかつ朗々と歌い上げるボブ・ディランが実に楽しそうです。気難しい印象のボブ・ディランですが、この作品はとても敷居が低く取っつきやすいです。60歳を過ぎてからこんなにも軽やかな作品を作れるところもボブ・ディランの魅力だと思います。
67 リンダ・ロンシュタットの全盛期の作品で、全米1位にもなった作品です。冒頭の「It's So Easy」の力強くも楽し気な歌声が大好きなので、安くなっていたこともあり買いました。今や混沌としたアメリカが、大きくて、大らかで、夢に満ちていたころのサウンドが(それが、多くの人にとって幻想だったとしても)聴いていて心地よく、また、少し物悲しいです。
■映画
80 箱入り息子の恋/監督 市井 昌秀
今、歌にドラマに大人気の星野源さんの映画初主演作です。市役所に勤める地味で生真面目な青年が、盲目の美人女性と恋に落ちるお話です。目が見えないからこそ、外見の雰囲気に惑わされずその人の内面に惹かれるという紋切型に陥ることなく、恋によって人が不格好までに変わっていく姿を、パワフルに描き切っているところが素敵です。地味な男子に希望を与える作品と勝手に思って、中二の長男と一緒に見始めたのですが、途中から思いもよらずエロティックな展開になって、ちょっと戸惑いました。どこか、違和感のある星野源さんの演技と相まって、微妙にずれた雰囲気が漂っているところも魅力的です。夏帆さんが難しい役を熱演されていますし、その母親役の黒木瞳さんが異常に美しくびっくりしました。