本、CD、映画日記

目標は年間読書100冊。その記録と目標管理をかねたブログです。

箱入り息子の恋

2016-11-23 11:06:04 | Weblog
■本
89 世界で最もクリエイティブな国デンマークに学ぶ 発想力の鍛え方/クリスチャン・ステーディル、 リーネ・タンゴー
90 逆境からの仕事学/姜 尚中
91 丘の上のバカ ぼくらの民主主義なんだぜ2/高橋 源一郎

89 発想力は既存のアイデアの模倣から始まる、など、クリエイティブをテーマにした類似書と重なる内容も多いですが、既存の枠組みを「超える」のではなく「限界ぎりぎり」で発想することの大切さを繰り返し主張されている点が特徴的です。また、薬物とクリエイティブに関わる問題に踏み込んで、その関連性をはっきりと否定しているところも、この本をユニークなものにしています。ミュージシャンの「AQUA」やレゴブロックで有名なレゴといったデンマークの有名人・企業を事例として取り上げているので、普段あまり意識することのない、デンマークという国を知るにもよい本です。個人的には、デンマーク出身の映画監督、ラース・フォン・トリアーが大好きなので、彼と仕事をした人々のエピソードが興味深かったです。

90 姜尚中さんの仕事論です。姜さん自身が在日韓国人としての生い立ちから就職に苦労した話(正規の大学教員となったのが37歳というのは、今のご活躍を思うと本当にびっくりしました)なども踏まえ、不確実な右肩下がりの時代に、どのように仕事に向き合えばいいかをやさしく語ってくれています。基本的には、読書や人文知を重視する、という、これまでの姜さんの主張の繰り返しですが、「多次元の価値観を持つこと」、「社会関係資本を大切にすること」、「自分のミッションを見つけること」、など、今後仕事とどのように向き合って行くべきかについての具体的な提言もなされていて参考になります。

91 朝日新聞に連載されていた「論壇時評」をまとめた「ぼくらの民主主義なんだぜ」の続編で、前作に収録されなかった「論壇時評」の残りと「民主主義」をテーマにインターネットなどで発表された文章が収録されています。こちらも、学生運動に挫折した話や売春の斡旋をしていた話など、高橋源一郎さんの個人的な話が収録されていて、彼がどのようにして現在主張されているような考え方を持つに至ったのか(なぜ、断定的な物言いをしないのか)について窺い知ることができて興味深いです。安倍首相やその周辺の人たちに対する批判の切れ味もユーモラスかつ鋭いです。個人的に印象的だったのが、多くの人が賞賛したオバマ首相の広島での演説に関しての文章です。その言葉の美しさや意義の大きさを評価しつつもどこか違和感を感じ、「私」ではなく「私たち」という主語で多く語りかける、この演説の主体のあいまいさを見事に見抜いた洞察力に、高橋さんの作家としての凄みを感じました。


■CD
65 ANTHEM OF THE SUN/GRATEFUL DEAD
66 LOVE & THEFT/Bob Dylan
67 Simple Dreams/Linda Ronstadt

65 大御所のGRATEFUL DEADの1968年に発表された2作目です。全く派手なところはないですが、語りかける様なヴォーカルとゆったりとリラックスした演奏で、どこかに連れていかれそうな気分になります。彼らの代表作として語られることは少ない作品ですが、通の間では、5本の指に入る傑作と評されているようです。今にまで続く彼らのスタイルがすでに確立されています。

66 ボブ・ディランの21世紀に入ってから最初の作品で、名作と誉れ高い作品です。シンプルに良い曲を集めたといった印象の気楽に聴ける作品で、いつにも増してしゃがれ声で軽やかにかつ朗々と歌い上げるボブ・ディランが実に楽しそうです。気難しい印象のボブ・ディランですが、この作品はとても敷居が低く取っつきやすいです。60歳を過ぎてからこんなにも軽やかな作品を作れるところもボブ・ディランの魅力だと思います。

67 リンダ・ロンシュタットの全盛期の作品で、全米1位にもなった作品です。冒頭の「It's So Easy」の力強くも楽し気な歌声が大好きなので、安くなっていたこともあり買いました。今や混沌としたアメリカが、大きくて、大らかで、夢に満ちていたころのサウンドが(それが、多くの人にとって幻想だったとしても)聴いていて心地よく、また、少し物悲しいです。


■映画
80 箱入り息子の恋/監督 市井 昌秀

 今、歌にドラマに大人気の星野源さんの映画初主演作です。市役所に勤める地味で生真面目な青年が、盲目の美人女性と恋に落ちるお話です。目が見えないからこそ、外見の雰囲気に惑わされずその人の内面に惹かれるという紋切型に陥ることなく、恋によって人が不格好までに変わっていく姿を、パワフルに描き切っているところが素敵です。地味な男子に希望を与える作品と勝手に思って、中二の長男と一緒に見始めたのですが、途中から思いもよらずエロティックな展開になって、ちょっと戸惑いました。どこか、違和感のある星野源さんの演技と相まって、微妙にずれた雰囲気が漂っているところも魅力的です。夏帆さんが難しい役を熱演されていますし、その母親役の黒木瞳さんが異常に美しくびっくりしました。

 
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第四の手

2016-11-19 11:06:29 | Weblog
■本
87 第四の手〈上〉/ジョン・アーヴィング
88 第四の手〈下〉/ジョン・アーヴィング

 5年以上前に文庫本で買ったっきりになっていたのですが、久しぶりにジョン・アーヴィングの本を読みたくなったので、引っ張り出してきました。長い時間の流れを扱った大作が多いジョン・アーヴィングにしては短めの作品で、取材中に片手をライオンに食べられたプレイボーイのテレビ記者が、恋愛を成就させるまでの5年程度が描かれています。相変わらずあっけらかんと、悲惨な事件が次々と起こりますが、これまでの作品以上にコミカルな展開で、下品な下ネタも続出します。日本が舞台の章もありますが、日本人から顰蹙を買う寸前のギリギリの際どいところをついた、ブラックネタが満載です。この作者の特徴である、独特過ぎるキャラクターと自由自在のストーリー展開が堪能できる作品ですが、短めの作品なため、各キャラクターの有機的な関わり合いという点では少し物足りなさが残ります。ただ、この辺りも熟練のジョン・アーヴィングのことですから、恋愛小説ということで、主人公の女性遍歴に的を絞ったのかもしれません。ジョン・アーヴィング作品で未読のもっと長めの小説を読みたくなりました。


■CD
63 Here/Alicia Keys
64 Beats, Rhymes & Life/A Tribe Called Quest

63 アリシア・キーズの4年ぶりの新作。以前のような才気が迸りまくった凄みはなくなりましたし、「If I Ain't Got You」や「No One」のような、万人を惹きつけるキラーチューンもありませんが、力強い歌声が印象的な骨太の作品です。ソングライターとしてよりも、シンガーとしてのアリシア・キーズを堪能すべき作品なのかもしれません。もう少し聴き込んでみたいと思います。

64 18年ぶりの新作が出たばかりのア・トライブ・コールド・クエスト 。新作を聴く前の復習として、なぜか1作だけ持っていなかったこの作品を買いました。名作と評判の2、3作目と、今回の再結成前の最終作である5作目との間の4作目ということで、地味な扱いを受けることが多い作品のようですが、実は今回の新作以前に唯一全米1位となった作品です。ジャズとヒップホップが見事に融合した、洗練されたサウンドが心地よいですが、洗練され過ぎて身体性があまり感じられなくなっている点が、前2作品ほど評価されていない理由かもしれません。とはいえ、センス抜群で何度でも繰り返し聴ける深みもあります。今回の新作も楽しみです。


■映画
79 サマータイムマシン・ブルース/監督 本広 克行

 名作漫画「究極超人あ~る」にも通じる、「SF研究会」というゆるーい文系部活をテーマにした作品です。こういうモラトリアムな世界観は、自分の怠惰でかつ楽しかった大学生活を思い出させてくれるので大好きです。いわゆるタイムパラドックスもので、伏線の回収が心地よい作品ですが、その回収の仕方もそれほど厳密にリアルさを追求せず、大らかに辻褄を合わせていくところが斬新です。「ヨーロッパ企画」の舞台が原作とのことですが、押し付けがましくなく、さりげなくセンスの良さを見せつけているところが上品です。瑛太さん、上野樹里さんが初々しい演技でリアルに大学生を演じていますし、今をときめく、ムロツヨシさんが抜群の存在感です。
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ちゃんと伝える

2016-11-13 07:17:21 | Weblog
■本
86 グローバリズムが世界を滅ぼす/エマニュエル・トッド、 ハジュン・チャン

 「ソ連崩壊」、「米国発の金融危機」、「アラブの春」などを予言したとされ、近年注目されている、フランスの歴史人口学者、家族人類学者であるエマニュエル・トッドさんと韓国の経済学者であるハジュン・チャンさんを日本の大学教授、評論家の方が招いた、グローバリズムをテーマにした、複数のシンポジウム、対談をまとめた本です。タイトル通りグローバリズム、新自由主義を批判した本ですが、そこから、フランス人らしく、ドイツやエリートに対する批判にも広がっていきます。シンポジウムということもあってか、感情的な発言が多く、グローバリズムの進展に対する不安が募ります。国内産業保護色の強いトランプ新米国大統領の主張にも通じるところがあり、今後、グローバリズム、新自由主義がどのように修正されるか(それとも、無批判に進展していくのか)に注目していく必要があると思いました。


■CD
62 Running on Empty/Jackson Browne

 疾走感溢れるタイトル曲が大好きなので手元にCDを置いておきたくて買いました。ツアーの最中にステージやホテルの部屋などで録音された作品ということで、ライブ感やメンバーとの一体感が強く感じられる、アットホームな雰囲気に満ちた幸せな作品です。ブルース・スプリングスティーンのような派手な大御所感はないですが、普通のアメリカのお兄ちゃんという感じが好ましくてこの時期のジャクソン・ブラウンは大好きです。


■映画
77 ちゃんと伝える/監督 園子温
78 インフェルノ/監督 ロン・ハワード

77 父親と息子の絆や人の命をテーマにしたヒューマンドラマをサスペンスタッチで描いたとてもユニークな作品です。ベタになりがちなテーマをあえてベタに描きつつ、それでも、独特の個性が迸っているところが、さすが鬼才と呼ばれる園子温監督作品だと思います。監督の出身地である豊川市の描き方もとても魅力的で、地方都市の疲弊という日本映画にありがちなテーマに陥っていないところも素敵です。園子温監督の毒を求める方々には、この作品の評価はあまり高くないようですが、ありきたりなテーマでここまで観客をひきつけ、かつ、作家性を盛り込んでいる点にはただただ感心しました。素晴らしい作品だと思います。

78 ダン・ブラウン原作の芸術作品をからめたミステリーを監督ロン・ハワード、主演トム・ハンクスで映像化した第3弾です。前2作ほど評価も興行的にも高くないようですが、記憶があいまいな主人公が冒頭から事件に巻き込まれて、観客ともども訳がわからないままストーリーが進展するというテンポのよい展開に冒頭から引き込まれます。2度のどんでん返しも予想ができなかったもので、個人的にはとても楽しめました。ストーリーがあまりに急に進みますし、芸術作品をからめた謎解きはまずますマニアックになっているので、不親切に感じる場面もありますが、流れに乗っかるとジェットコースターに乗っているかのような快感が得られます。一級品のエンターテイメント作品だと思います。
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恋しくて

2016-11-05 09:46:42 | Weblog
■本
84 いちばんやさしいLINEビジネスコネクトの教本/豊田義和、荒川夏実
85 恋しくて - TEN SELECTED LOVE STORIES/村上 春樹

84 LINEのビジネス活用について知りたくて読みました。「いちばんやさしい」かどうかはわかりませんが、くどすぎるくらい丁寧に、LINEビジネスコネクトについて説明してくれるので、このサービスについてよく理解できました。事例が豊富なところも参考になります。要は開封されにくくなった電子メールの代わりに、LINEというプラットフォームを活用して、ONE to ONEマーケティングが実現できるソリューションなのですが、親しみやすいコミュニケーションの場という特性や、スタンプというインセンティブ、さらにはAIを活用した自動応答による省力化など、なかなかよく考えられています。そのサービス利用料金の高さを見て、LINEが手に入れたパワーに恐れおののいてしまいました。

85 村上春樹さんが興味を持った海外作家の恋愛小説を、自ら翻訳されたアンソロジーです。村上春樹さん書き下ろしの「恋するザムザ」という、カフカの「変身」の続編的な作品も収録されていて、また、村上さん自身の各作品の解説もあり、ファンの方にも楽しめる内容です。僕自身、齢を取ったのか、青年期の恋愛小説よりも、「薄暗い運命」や「モントリオールの恋人」といった、閉塞感たっぷりの中年のラブ・ストーリーの方に心を動かされることが多かったです。どの作品も魅力的ではあるのですが、初めて読む作家の小説ばかりで、かなり読むのに苦労しました。慣れ親しんだ作家の作品ばかり読んでいる、自分の偏った読書習慣に気づけたのも収穫でした。


■映画
76 ニック・オブ・タイム/監督 ジョン・バダム

 ヒッチコック作品をモダンにしたかのようなサスペンス・ムービーです。主人公を演じるジョニー・デップが、娘を人質に取られ、理不尽な要求に振り回されます。映画の中の時間と実際の時間の流れをほぼ連動させた、「24 -TWENTY FOUR-」のような作品ですが、1時間半とスピーディーに展開する点がよいです。なかなか事態が好転せず、最後の最後にやっと救われる展開も爽快感があります。癖の強い、ジョニー・デップやクリストファー・ウォーケンが普通の演技をしているのが新鮮ではありますが、もったいない気もします。結構組織力がある悪役が、素人の主人公に暗殺を命じる背景がよくわからなくて、結果的に失敗確率を高めただけにしか見えない点が少し残念でした。
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