本、CD、映画日記

目標は年間読書100冊。その記録と目標管理をかねたブログです。

下り坂をそろそろと下る

2016-05-14 09:21:32 | Weblog
■本
38 下り坂をそろそろと下る/平田 オリザ

 本の帯の二人の推薦者である、内田樹さんの著書でもある「沈む日本を愛せますか?」という問いに、「里山資本主義」の藻谷浩介さんが実践された考え方を応用し、各地域で特色ある「コミュニケーション教育」を施すことによる地方文化振興を通じて、人口減少局面で国力現象が避けられない日本の痛みに耐えていこうという趣旨の本です。ネット上での文化の影響力を若干軽視している感じがしますが、リアルでの集客力に比べるとネット上での集客の経済効果はまだまだ低いので、特色ある魅力的な文化環境を整備することにより、その地域との関係を持つ人を増やし、活性化していこうという平田さんの主張は説得力があります。結局はどうあがいても相対的に今後力が落ちていく「経済力」に変わる価値観を持つ必要がある、ということだと思いますが、成功体験が大きいだけに、この価値観の転換は難しく、時間のかかることだと思います。ただ、これも平田さんがおっしゃる通り、この痛みに耐えられないと、日本は(特に若い世代で)もっと悲惨なことになると思いますので、耳を傾けるべき主張だと思います。教育に関わられている方だけに、グローバル競争により代替可能となった勤勉な生産労働者の育成から、サービス業やマネジメント層で必要なコミュニケーション能力の高い人材育成への転換、いう視点からも語られていて、ただの夢物語ではない説得力があります。


■映画
37 永遠の僕たち/監督 ガス・ヴァン・サント

 他人の告別式で両親を亡くした主人公と死期が近いヒロインが出会うという設定からちょっと甘すぎるような気もしますが、「マイ・プライベート・アイダホ」や「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち」のガス・ヴァン・サント監督らしい、青少年の繊細な悩みや葛藤を丁寧にかつ独創的に描いた美しい作品です。主人公の空想上の友人である、特攻隊員の幽霊(この設定もベタ過ぎますが)を加瀬亮さんが好演されています(話は逸れますが、こんなに素晴らしい役者である加瀬亮さんに、ただ怒鳴るだけの演技をさせた「SPEC」はある意味すごいと思います)。トラウマを抱えた繊細な主人公はデニス・ホッパーの息子さんが演じられています。偉大な父を持つ子特有の危うさと傲慢さがこの作品によくマッチしています。この作品の他で名前を聞くことはあまりないので、評価が高くなかったのかもしれませんが、線が細い割には強い存在感を放っているところはさすがです。ヒロインは「アリス・イン・ワンダーランド」で大ブレイクした、ミア・ワシコウスカ。エキセントリックで芯の強い美しさが印象的です。こじんまりとした突っ込みどころの多い作品ですが、久しぶりに正統派の青春映画を観たような気がして、後味は非常に良い作品です。
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