本、CD、映画日記

目標は年間読書100冊。その記録と目標管理をかねたブログです。

サーカスの息子

2018-01-27 11:27:15 | Weblog
■本
7 サーカスの息子〈下〉/ジョン・アーヴィング
8 ノヤン先生のマーケティング学/庭山一郎

7 年末年始の休みを使って読もうと思っていましたが、やっと読み終わりました。とにかく長かったです。「長編小説を読んだ!」という達成感を感じています。上巻のパワフルさはそのままに、下巻になると内省的な表現も目立ちはじめます。とにかくたくさんの人が死に(特に最後のエピローグに入ってから、主要人物を容赦なく死なせています)、ジョン・アーヴィング作品の特徴である、理不尽さと暴力に満ちた世界が存分に描かれています。その一方で、彼のもう一つの特徴である、不条理な世界の中でのささやかな救いを求めた抵抗(本作ではサーカスの「ネット」の比喩として表現されています)についても、これまでの作品以上に意識的に描かれていて、読んでいて心が揺さぶられました。本作は「アイデンティティ」がテーマの一つですが、現在の移民問題についての予言の書としても読めて、なかなか興味深いです。インドが舞台ということもあり、彼の中ではかなり異質な作品だと思っていましたが、読み終わってみるといつものジョン・アーヴィング節が堪能できるファンとしては楽しい読書でした。

8 B to B向けのマーケティングコンサルタントとして有名な筆者によるマーケティングに関するコラム集です。筆者がマーケティングが本当に好きなことが伝わってきます。好きなことを仕事にすることの大切さを間接的に教えてくれます。4P、STP、SWOTなどマーケティングや経営戦略のフレームワークをその成り立ちと業務での応用方法について、面白く解説してくれていて、断片的には知っていた知識が統合される感覚になります。コンサルタントとしての経験からの、事例を踏まえた徹底した現場目線での知見なので、わかりやすく、行動に結びつきやすいという点でも有益です。マーケティングの初心者が読んでも、経験者が読んでも、得られるところの多い本だと思います。


■映画
7 モネ・ゲーム/監督 マイケル・ホフマン
8 トランスフォーマー/ロストエイジ/監督 マイケル・ベイ

7 「泥棒貴族」という有名な映画(この作品はまだ観たことがありません)のリメイクということですが、いかにも英国映画といったシニカルなセンスが重視されたクライムコメディです。コーエン兄弟の脚本ということですが、いつもの退廃感や暴力性は控えめで、イギリス的なベタなギャクが満載です(21世紀に日本人ビジネスマンがこんなに紋切型に描かれるとは思ってもいませんでした)。コリン・ファースはMr.ビーンを思わせるような、過剰なドジ振りを熱演していますが、オスカー受賞後にこの役を演じる意味が今ひとつよくわかりません。そんな中、キャメロン・ディアスは全盛期を思わせるような、少し野暮ったいアメリカ娘を楽しそうに演じていて、ほのぼのとした気分になりました。ラストのどんでん返しは綺麗に決まっていて、さすがはコーエン兄弟の脚本だと感心しました。

8 「トランスフォーマー」シリーズの初期3部作は、映画館で観るほど好きだったのですが、この作品以降はあまり評判がよくなかったので少し遠ざかっていました。今回ふと思い立って観てみたのですが、評判通りなかなか微妙な作品でした。何と言っても詰め込み過ぎで長すぎます。トランスフォーマーは車からロボットにトランスフォームするシーンが見どころなのに、敵のロボットは一度粒子レベルに分解されてから再構成される変身方法で、ワクワク感が格段に落ちていました。また、主人公が青年から中年男性に変わったことにより、車に対する若者特有の憧れがなく、トランスフォーマーと主人公の関係性も少し微妙なものに感じました。あと、ヒロインが魅力的でない(どこかの偉いさんのコネかと思うほどです)ところもがっかりです。中国人女性キャラが結構立っていたので、そちらをヒロインにした方がよかった気がします。ロボット化した恐竜が暴れまくる映像はなかなか迫力があったので、もう少しそちらの方向を突き詰めて欲しかったです。登場人物に魅力がないので、人間のアクションシーンは不要だと思いました。
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サタデー・ナイト・フィーバー

2018-01-20 06:13:37 | Weblog
■本
5 日本人だけがなぜ日本の凄さに気づかないのか/ケント・ギルバート、 石 平
6 日本電産永守重信社長からのファクス42枚/川勝 宣昭

 この本ではないですが、昨年ケント・ギルバートさんの新書がかなり売れたということで、Kindle本で値下げされていたので読んでみました。この本は、石平さんという中国から日本に帰化した方との対談の形式になっています。とにかく、韓国、中国をけなして、日本を持ち上げる内容で、日本人にとっては読んでいて気持ちのよい面があるのは事実ですが、逆に、このお二人がどういう動機でこういう本を書いたのか、についても思わず深読みしたくなります。単に売れるからというビジネス上の理由であれば、まだ潔いのですが、あまりにその批判が激しいので、個人的な恨みがあるのでは、と思うほどです(日本への中国人留学生という過去を持つ石平さんの中国批判はまだ理解できるものの、ケント・ギルバートさんのあまりの嫌韓ぶりには、少し戸惑ってしまいます。弟さんがモルモン教普及のために韓国にいらっしゃったという記述があるので、そのときになにかあったのかもしれません)。日本人の自虐史観に根拠がないと主張する一方で、彼らの主張の根拠も出典があまり明示されておらず、水掛け論の印象も残ります。日本の今のある種の空気感をうまくマーケティングした本だとは思います。

6 買収した赤字会社を短期間で黒字化させることにより成長を続ける優良企業の日本電産で、ある企業の再建を担当された「代官役」の筆者が、永守社長から受けた指示について、当時の背景も含めて解説して下さる本です。「1番以外は、皆ビリや」や「すぐやる、必ずやる、出来るまでやる」という永守社長の考えを端的に示したものから、「営業を機関車にせよ」や「8月を黒字にせよ」といった少し禅問答のようなテイストのものまで、さすがに結果を残し続ける経営者のお言葉だけあって、その成功経験に基づく一貫したシンプルな論理の切れ味に唸らされてしまいます。また、単なる精神論だけでなく、営業力強化やコストカットの方法論もグループ内でしっかりと確立されていて、他のグループ会社から学べる仕組みを作られている点もさすがだと思いました。筆者の川勝さんが、日産自動車というカルロス・ゴーンさんがいらっしゃるまで合議制で強みを発揮するタイプの会社のご出身ということもあり、永守さんのトップダウンでのマネジメント手法の長所がよりくっきりと浮かび上がります。個人的には「君は経営者か、経営管理者か」というお言葉が心に残りました。当事者意識をしっかりと持って日々の仕事に取り組まねばと思います。


■CD
1 Trout Mask Replica/Captain Beefheart & Magic Band

 いろんなディスク・ガイドで名盤(迷盤?)と取り上げられることが多くずっと気になっていたのですが、サブスクリプション音楽サービスでも配信されていないので、中古盤で見つけて聴いてみました。浮かんだアイデアをすぐに楽曲にしたような、インパクトは絶大なものの雑な楽曲がてんこ盛りです。初期衝動のみで音楽を創ること、演奏することについてのハードルを下げたという意味で、後世に与えた影響は大きいと思います。私のような凡人は、全編を通して聴くとかなり疲れてしまいますが、1曲目の冒頭のリフに象徴されるようにキャッチーなワンフレーズの切れ味は快感です。Twitterのようなマイクロコンテンツの影響力が大きい現在の状況を、ある意味先取りした作品かもしれません。


■映画
6 サタデー・ナイト・フィーバー/監督 ジョン・バダム

 サントラは何度も聴いていますが、実は映画を観たことがなかったことに気づいて観ました。冒頭からビージーズのキャッチーな楽曲と、若きジョン・トラボルタの瑞々しい演技に引き込まれます。鬱屈を抱えた若者が自分の得意なダンスを通じて成長していく、王道の青春ものかと思えば、ヒロインの違和感のあるキャラクター設定(有名人と会った自慢話ばかりをする、上昇志向の塊の嫌な女性のように最初は描かれています)や、救いがあるのかないのかわからない微妙な(それだけに妙にリアルな)エンディングなど、いろいろと引っかかりが多い、深みのある作品でした。このサントラの「If I Can't Have You」という楽曲が以前から大好きなのですが、この曲もストリップダンサーの奇妙な踊りのバックに使われていて、とにかく一筋縄ではいかない作品世界が個人的には大好きです。単なる大ヒットしたディスコ映画ということで侮ってはいけない作品だと思います。

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太秦ライムライト

2018-01-14 10:38:43 | Weblog
■本
3 ランニングする前に読む本/田中 宏暁
4 データ・ドリブン・マーケティング/マーク・ジェフリー

3 年末年始に怪我をしてあまり走れないので練習できない代わりにランニング本を読みました。医学博士が書かれた本だけあって、「エネルギーを効率的に使う」という観点からの、実際の研究成果に基づく科学的示唆がロジカルに展開されています。また、筆者の方が実際にマラソンを走られてサブスリーなどの成果を出されているので説得力も抜群です。「ウォーキングよりもランニングがよい」、靴は「できれば靴底が薄く軽いものを選ぶ」、「『20分以上運動しないと脂肪は燃えない』はウソ」など、これまで一般的に語られていることが結構否定されているのですが、これもしっかり根拠があるので参考になります。趣旨としては、笑顔で走れるくらいのペースでフォアフット(かかとではなくつま先の付け根あたりで着地する)で走るのが最もエネルギー効率がよいというものですが、その笑顔で走れるくらいのペースを上げるためには、体重を減らすことが重要なので、まずは本格的に食事の管理から始めようと思います。

4 言葉だけが先走りしている感のある「データ・ドリブン・マーケティング」(データに基づくマーケティング)について、わかりやすく説明されている本です。翻訳本にありがちな冗長さに少し手こずりますが、章の最後にポイントがまとめられているので、まずそこから読むと少しは理解しやすいかもしれません。基本は、重視すべきデータを社内で明確にし、小さな施策から始めて、得られたデータに基づき施策をチューニングし、成功体験を元に次第に拡大していく、という極めて真っ当なマーケティングプロセス改善について語られています。重視すべき指標をワークシートなどの実例を踏まえながら示してくれている点と、マーケッターがおろそかになりがちなITインフラ構築についての勘所が押さえられている点が、この本のユニークなところですし、もっとも役に立つところだと思います。「イベント・ドリブン・マーケティング」(顧客の行動に対応して施策を変えるマーケティング手法)など、まだ、日本ではさほど定着していない言葉についてもわかりやすく解説してくれていて参考になりました。デジタル・マーケティングについての記述も多いですが、それに限らず応用できる点も有益だと思います。


■映画
4 太秦ライムライト/監督 落合 賢
5 雲のむこう、約束の場所/監督 新海 誠

4 「5万回斬られた男」の異名をもつ斬られ役俳優、福本清三さんの初主演作という素晴らしいビッグアイデアで勝負ありの名作です。ストーリー自体は、地道に長年精進を続けた斬られ役が、時代劇の減少という時代の流れから次第に肩身が狭くなり、また、加齢のための節々の痛みによる動きの劣化にも悩まされながら、周囲の助力を得ながら最後の一花を咲かせる、という定番のものですが、福本清三さん自身の人生とオーバーラップした重厚な演技で、稀有な作品となっています。ドキュメンタリーにしてもよかったのでは、という気がしないわけではないですが、長年地道に努力を続けてきた人の生き様自体をエンターテイメント作品にするという試みはユニークですし、その試みは成功していると思います。人の「美学」について考えさせられる作品です。

5 引き続き新海誠監督の作品を観ました。やはり駅の描写が美しくて、乗り鉄としては画面に引き込まれました。SF的要素が強く、「君の名は。」にテイストの近い作品ですし、登場人物が重層的に絡まっているので、「秒速5センチメートル」よりこちらの方が個人的には好きです。若干、ストーリー展開が観る側に不親切なところがあるので、評価が分かれるかもしれませんが、この観る人を選ぶ感じが、コアなファンにはたまらないのかもしれません。日本が津軽海峡で南北に分断されているという異常状態でも、結局は少数の登場人物の人間関係に集約するという構造も今風ですし、この世界観が好きな人にはとことん愛されるのだと思います。多くの人に開かれた「君の名は。」はやはり凄い作品だとくどいようですが改めて思いましたが、この作品も創り手の個性を前面に出して勝負を挑んでいる潔さが心地よいです。
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秒速5センチメートル

2018-01-07 10:49:28 | Weblog
■本
1 サーカスの息子〈上〉/ジョン・アーヴィング
2 頭に来てもアホとは戦うな!/田村 耕太郎

1 お正月休みを利用して、数年前に買ったままになっていたジョン・アーヴィングの長編を読んでいますが、あまりに長いのでまずは上巻の感想を。この作品前後の「オウエンのために祈りを」と「未亡人の一年」は、彼の作品にしてはどちらかと言えば抒情的で静かな世界観の作品ですが、本作はインドを舞台にしていることもあり、もっと雑然としてパワフルな印象です。ジョン・アーヴィングの作品は、人生の不条理さが露悪的なまでに描かれている点が特徴的な反面、人間の悪意はさほど強調されていない印象でしたが(人間の癖の強さはこれまでもかというくらいに描かれますが)、本作では残酷な殺人犯というかたちで、悪意がしっかりと描かれています。多数の登場人物が描かれているにもかかわらず、ほとんど混乱させない手腕はさすがです。その登場人物が複雑に絡み合う壮大で読み応えのある作品です。隅々にまで張り巡らされた伏線が下巻でどのように解消され結末に向かうかが楽しみです。

2 朝日新聞の書評に取り上げられていたので読みました。タイトルこそ過激ですが、ご自身の会社員や政治家というキャリアを踏まえて、社会で生きていく上で必要な処世術をわかりやすく説明してくれます。魑魅魍魎が蠢く政治の世界に身を置かれていた方だけに、説得力も抜群です。「時間という有限で最も貴重な資源を、一回きりの人生を充実させるために最大限に活用する」という視点に貫かれていて、書かれている内容はどれも腹に落ちるものです。ピカピカのキャリアの作者にありがちな、失敗談を語っているようで結局は自慢話になってしまっている点に評価が分かれるかもしませんが、それもご愛敬だと思います。こういうエリートでも、自分と同じようなところでつまずいているという気づきがあれば、そこから改めていくという読み方がふさわしいかもしれません。


■映画
1 ミッション・トゥ・マーズ/監督 ブライアン・デ・パルマ
2 秒速5センチメートル/監督 新海 誠
3 ジャック・リーチャー NEVER GO BACK/監督 エドワード・ズウィック

1 定番の火星探検ものです。ブライアン・デ・パルマ監督作品らしい手堅い演出です。屈託を抱えた主人公が、仲間の助けや犠牲を乗り越えながら無事火星に到着し、取り残された友人と合流するという、オーソドックスなキャラクターとストーリー展開で楽に観ることができます。そこから火星人に出会い、哲学的な領域の話へと進展するところも、テーマパークや科学館の映像を観ているかのようなお約束の展開ですが、火星人の描写が古臭くて2010年代の今となってはなかなか衝撃的でした。過去の同種の作品への敬意を感じられるところは好ましいですが、ちょっとオリジナリティには欠けている印象が残りました。繰り返しになりますが、手堅く楽しめる作品ではあると思います。

2 言わずと知れた大ヒット作「君の名は。」の新開誠監督の過去作品です。乗り鉄としては両毛線など沿線風景や駅の描写の緻密さに感心しましたし、種子島の素朴で美しい風景シーンも感動的でした。「君の名は。」でも見られた音楽との見事なシンクロも非常に印象的で、この監督の迸る才気が感じられました。逆に、人物造形については、私が歳を取って純粋さを失ったためか、その青臭さにちょっと共感できませんでした。ある意味、観る人の年齢を選ぶ作品かもしれません。キャラクターとストーリーを魅力的にし、卓越的な風景描写と音楽との親和性という最大の特徴を活かして、わかる人だけにわかる単なるセンスの良い作品から、スケール感を伴った開かれた作品へと飛躍させた点で、「君の名は。」はやはり画期的な作品だと思いました。

3 前作「アウトロー」のトム・クルーズらしくないクールでマッチョな「ジャック・リーチャー」というキャラクターが気に入っていたので続編のこちらも観ました。しかし、本作では、ジャック・リーチャーがいつものトム・クルーズっぽい、女性や子供に優しい、甘めのキャラクターになっていたので失望しました。これなら、予算がもっと大規模そうな「ミッション インポッシブル」シリーズを観た方がよいと思います。本作はストーリー的には先が読めない面がありそれなりに楽しめるものの、アクションシーンは前作同様淡泊で見せ場はさほど多くないです。前作の延長線上で原作に忠実なキャラクターを貫けば、独特のサスペンス作品となり得たかもしれないので少し残念です。
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