本、CD、映画日記

目標は年間読書100冊。その記録と目標管理をかねたブログです。

There Goes Rhymin' Simon

2011-06-25 06:22:09 | Weblog
■本
52 メディアと日本人/橋元 良明
53 サッカー代理人/ロベルト 佃
54 先生はえらい/内田 樹

52 いきなり日本におけるメディアの歴史から始まり、少々戸惑いましたが、2章以降は1995年から5年ごとに行われている調査結果を元に、丁寧に各メディアの利用実態の変化を解説してくれていて勉強になりました。これまで、感覚的に感じていたこと(新聞がインターネットに利用者を奪われている)が実証されると同時に、感覚と違うところ(テレビは必ずしもインターネットに視聴者を奪われていない)もありました。共同研究者である電通に配慮してか、考察において若干インターネットの影響力を軽視する傾向にあると個人的には思いましたが、よく言われるインターネットの悪影響についても、冷静な分析がなされていて、納得感の高い本でした。

53 中村俊輔選手ら日本人選手の海外移籍をサポートした方の書かれた本。サッカー代理人の仕事内容と筆者の所属選手や仕事への情熱が伝わる本です。筆者が伝えたい思いを綴った短文が集まって構成されており、体系だった考察というよりは、筆者が感じる日々の雑感を通じて、サッカー代理人という職業のおおまかな全体像が浮かび上がってくる、という構成の本です。サッカー好きの方であれば楽しく、気楽に読めます。

54 内田樹さんが中高生向けに書かれた本です。中高生向けといってもかなり難解です。「難解」であることがコミュニケーションの本質、というのがこの本の主題の一つでもあるので、あえて意図的に難解にされているところもあります。これも意図的なのでしょうが、読後奇妙な違和感が残りいろいろと考えさせられます。とはいえ、これまでに、内田さんがいろんな本で書かれていることが、コンパクトにまとまっているという意味では、内田さんの本の入門書であるとも言えます。内田さんの本で再三語られている「前未来系で語られる過去」という考え方については、この本を読んで初めてなんとなく理解できた気になりました。


■CD
38 Paul Simon/Paul Simon
39 There Goes Rhymin' Simon/Paul Simon
40 Still Crazy After All These Years/Paul Simon

 Amazonで安くなっていたのでポール・サイモンの初期の作品を3枚まとめて購入しました。いろんな国の音楽を貪欲に吸収しつつもポップさを損なわない、そして、聴く易さを重視しリスナーに負担を強いない、素晴らしいアーチストだと思います。

38 アルバム全体の感性度としてはそんなに高くない気がしますが、「Mother And Child Reunion」や「Me And Julio Down By The Schoolyard」といった代表曲の破壊力は抜群です。

39 こちらはアルバム全体としての完成度がかなり高いです。古きよきアメリカって感じで、素朴に楽しい感じになります。

40 前作が土着的な印象だったのに反しとても都会的な雰囲気の作品です。しっとりと洗練された音楽が続きます。ある意味ポールサイモンのセンスの高さが最もダイレクトに表れた作品だと思います。ポール・サイモンの作品を最初に聞くなら本作か「Graceland」をお勧めします(真逆のテイストの作品ですが)。


■映画
30 フォー・ウェディング/監督 マイク・ニューウェル
31 パイレーツ・オブ・カリビアン 生命の泉/監督 ロブ・マーシャル

30 原題の「Four Weddings and a Funeral」に惹かれてずっと観たいと思っていた作品です。「4つの結婚式と1つの葬式」というタイトルからは、コミカルではありつつも、もう少し哲学的な深みのある内容を期待していたのですが、意外と普通のラブコメディでちょっと拍子抜けしました。逆に、押し付けがましいメッセージのない、適度の軽さがヒットした原因なのかもしれません。ヒュー・グラントを筆頭とする俳優陣は突飛なキャラ設定ですが、妙にリアリティのある絶妙の演技で観ていて楽しめました。気楽に質の高い映画を観たいときにはお勧めです。

31 キャラが立っていてとても楽しい、いい映画だと思うのですが、前3作と比べると少し冗長な印象です。結構予算をカットされたとの話ですが、その分上映時間を短くして、例えば1時間50分程度にしていたら、もっと密度の濃いよい作品になっていた気がします。ペネロペ・クルスは正直好きな役者ではないのですが、思ったよりキャラが立っていてよかったです。たいしたことないですが、これまでと同様にエンドロール後まで席を立たないことをお勧めします。
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大きなハードルと小さなハードル

2011-06-19 07:20:48 | Weblog
■本
50 「美女と野獣」の野獣になる方法/水野 敬也
51 大きなハードルと小さなハードル/佐藤 泰志

50 「夢をかなえるゾウ」を読んで勢いがついたので、引き続き水野敬也さんの本を読みました。「セックス」って文字がやたらと出てきて、電車の中で読むのがかなり憚られましたが、読みやすいので一気に読みました。ノウハウを面白く伝えているところはさすがですが、それにも増してすごいと思うのが、そのノウハウを用いて「実践」へと一歩踏み込ませるための、モチベーターとしての筆者の才能です。あと、「夢をかなえるゾウ」でもありましたが、ここまでさんざんノウハウについて語ってきておいて、最後にノウハウなんて所詮は「実践」へと踏み込むためのきっかけに過ぎず、一番大切なのは自分自身がオリジナリティを持つこと、っとあっさりとノウハウを否定しているところ。細やかに考えつくされていて、意外と深い本だと思います。

51 最近はまりまくっている佐藤泰志さんの短編小説集。文庫で再発されたものは本作品で全て読み終えたことになるので少し寂しく感じています。前半は同じ主人公による5つの短編の連作、後半は主人公と友人の元妻とその子との交流という同じ構図の異なる作品が2つ収められています。本作も佐藤さんの主要テーマの一つである(と僕が勝手に理解している)、「終わりつつある青春に対する苛立ちと戸惑い」が描かれています。ただ、他の作品と違って、終わった青春を引き受ける覚悟のようなものも感じます。特に晩年に書かれた作品にこの傾向が強く、作風の変化の兆しのようなものが感じられました。この変化の行き着く先を読めないことがとても残念に思います。


■映画
27 グッドナイト&グッドラック/監督 ジョージ・クルーニー
28 さや侍/監督 松本人志
29 イーグル・アイ/監督 D・J・カルーソ

27 優れた小品といった趣の作品です。こういう国家権力者に対抗するジャーナリストを題材にしたものは、表現者の主張が全面に出すぎてギラギラと重くなりがちですが、白黒画面とジャズ音楽を巧みに用いて抑制されて描かれているので、とてもセンス良く仕上がっています。監督のジョージ・クルーニーが役者としては脇に周っているところも成功の要因です。なにより、有名テレビ番組のアンカーマンであるエドワード・R・マローを演じる、主演のデイヴィッド・ストラザーンの癖のある演技が秀逸です。じわじわと後になって効いてくる類の良作です。

28 今までの松本人志さんの作品の中では最も映画になっているのではないでしょうか?良くも悪くもこれまでの作品はコントの集合体というイメージでしたから。前作「シンボル」と同じく、前半の若干ユルめのコメディタッチから、終盤には一気に加速し、怒涛のように哲学的内容を展開していきます。このあたりの手際はかなり、洗練されてきたイメージです。松本さんは突然歌いだすミュージカル映画の不自然さを常々批判されていたような記憶がありますが、それを逆手に取って、歌によりメインメッセージを伝えるというやり方も嫌いではありません。主人公の素人のおっさんに、突っ込み役として卓越した演技力を持つ子役の熊田聖亜ちゃんをぶつけ、それに放送作家的役割として松本さんが信頼する板尾創路さんを配するという、キャスティングの巧みさも松本さんの監督としての進化を感じます。ただ、若干世界を意識しすぎているところ(「万物が流転する」、など、外国人のイメージしそうな日本像がわかりやすく提示されています)と、その影響としてメッセージをわかりやすくど直球で投げ込んできているところは賛否が分かれるかもしれません。これまでの2作品は観終わったあとの奇妙な違和感しか印象に残りませんでしたが(それはそれで映画としては重要な成果だと思いますが)、それ以上の、物語としての完成度の高さを感じられる作品だと思います。

29 グイグイ引き込むスピーディーな展開と十分にお金がかけられた迫力ある映像は評価できますが、ストーリーとしてはスーパーコンピューターの暴走による監視社会の悪用とそれによる世界(特にアメリカ)の危機、という、これまでに何度も繰り返されてきたチープなものです。おそらく制作側は確信犯的にやっているのだと思いますが、ハリウッドにおける優秀なシナリオの不足が少し心配になる作品です。でも、それなりに爽快感が得られて楽しい映画です。
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そこのみにて光輝く

2011-06-12 06:41:03 | Weblog
■本
47 そこのみにて光輝く/佐藤 泰志
48 40歳の教科書NEXT/モーニング編集部、 朝日新聞社
49 あの空の下で/吉田 修一

47 ときには人は幸福や安定自体に恐れをなすということを思い知らされる作品です。そして、その幸福や安定を捨て去る人に、ある種の美学を感じることも。良くも悪くも一本筋が通っている登場人物ばかりで、そのこだわり故の生きにくさと気高さが感じられます。それでいて、筆者の描写がとても抑制が効いているので、泥臭い題材を扱っているはずなのに、とてもクールな印象です。期待通りの展開から微妙に外れるストーリーで、ぐいぐい引き込まれます。唯一の長編だけあって、筆者の力量が最もよくわかる傑作だと思います。

48 「老いに対する対応」、「うつ対策」、「介護も含めた親との関係」、「経験の活用方法」という4つのテーマは前作の「子育て」とともに、40歳前後の人の大きな課題だと思いますので、これらの題材の選び方は適切だと思います。ただ、そのテーマを語っている人が、芸術やスポーツ界の人に偏りすぎている気がしました。こういったテーマに対するビジネスパーソンの意見も聞きたかったです。綾戸智恵さんの壮絶な介護の話には心を打たれました。

49 おしゃれでウエルメイドな方の吉田修一さんが楽しめます。ANAの機内誌に掲載されていたということで、旅や飛行機をテーマにした、超短編小説とエッセイが集められています。随所に心にひっかかる表現があり、やはりうまい作家さんだなあ、と改めて思いました。飛行機が苦手なのであまり機内誌を読む機会もないはずなのに、2作品ほど読んだことのあるものが収録されていて、そのときの僕自身の旅の様子を思い出せるという副次的な効果もあり楽しめました。


■CD
37 Suck It & See/arctic monkeys

 arctic monkeysの新作。豪腕投手がキレのいいチェンジアップを覚えたような印象で、緩急自在の渋ささえ感じされるよい作品です。静かな夜にリラックスして聴くのにも最適です。そのような聴かれ方をこのバンドが望んでいるのかはわかりませんが。


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黄金の服

2011-06-04 11:22:17 | Weblog
■本
44 日本復興計画/大前 研一
45 夢をかなえるゾウ/水野敬也
46 黄金の服/佐藤 泰志

44 震災直後にYoutubeにUPされた動画の書き起こし部分が多いとのことですが、非常に適切に現状を分析されていると思います。原子力の博士号をお持ちなので、福島原発の何が問題なのかもよく理解できました。また、電力使用量の削減は総量よりもピーク時をいかに下げるかが大切、という言われてみればごく当たり前のことが、計画停電時などで、マスコミで強調されることがあまりなかったと記憶しているので、この本の主張の納得感は高いです。国に頼らず自分自身だけが頼りと覚悟を決めろ、という主張も最近の政治の混乱を見ているとその通りだと思います。住宅ローンを組んだばかりなので、家を所有するのはやめよう、という主張にはへこみましたが。

45 過剰なサービス精神が読んでいて時に鬱陶しく感じるときもありますが、自己啓発本とエンターテイメント小説の融合という視点の発見はやはりすごいと思います。いろんな教えが提示されますが、「知ることよりも行動して経験することが大事」というのがこの本の最大のメッセージだと思います。そして、本というメディアでは実感させにくいこのメッセージを(本はなんといっても「知ること」に適したメディアですので)、なんとか読者に行動につなげてもらって、実感してもらおうという工夫も最大限になされていると思います。軽薄な文体の背後に非常に計算しつくされた戦略が隠されている本です。170万部も売れたとのことですが、それだけ多くの人を惹き付けるだけのことはあると思う反面、そう簡単に踊らされるなよ、と自省もこめて少し思いました。

46 「青春」をテーマにした短編が3編収められています。日本の若者の閉塞感をバブル崩壊前にすでに描ききっているところに、筆者の感性の鋭さを感じます。「オーバーフェンス」のように、東京で挫折した青年が故郷で再生の兆しを見つける、という構成も現代的です。学生当時国立近辺に住んでいたので、国分寺~立川あたりを舞台にした「黄金の服」が特に興味深かったです。非常に丁寧に説明しつくしてくれるので、読者の想像の入り込む余地が少ない、という欠点はあるものの、完成度の高い素晴らしい作品集だと思います。なんといっても、ぐいぐい作品世界に引き込む力がすごいです。


■CD
36 19/ADELE

 今最も勢いのあるアーチストと言ってもよい、ADELEのファーストアルバム。発売当時はNapsterで聴きまくっていたのですが、今回CDで買って聴きなおしています。スケール感はセカンドアルバムの方が上ですが、独特の世界観はすでにこの作品で完成していますし、ここの楽曲のクオリティはこちらの方が上かもしれません。10代のアーチストがこれだけ深みのある作品を作れるところにイギリス文化の底力を感じます。


■映画
26 ブラック・スワン/監督 ダーレン・アロノフスキー

 ナタリー・ポートマンの好演に目が行きがちですが、監督の力量が光る映画です。特にラストに向かう構成の巧みさは秀逸。悲劇にもかかわらず、主人公の充実感が伝わってきて不思議と後味は悪くありません。スケールの大きさで「英国王のスピーチ」の方が監督賞を取ったのだと思いますが、作品世界を監督が完璧にコントロールした素晴らしい作品です。純情さの中に次第に静かに広がりつつある狂気を巧みに演じたナタリー・ポートマンもオスカーに値すると思いますが、監督の演出があってこそだと思います。(もちろんその期待通り演じられることがすごいのですが)。ピークを過ぎたバレリーナを演じたウィノラ・ライダーに女優業の悲哀を感じました。
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