本、CD、映画日記

目標は年間読書100冊。その記録と目標管理をかねたブログです。

カラスの親指

2015-04-25 10:08:40 | Weblog
■本
40 世界史の極意/佐藤 優
41 迷宮/中村 文則

40 歴史をアナロジー(類比)として見る方法を学び、現代の社会情勢を読み解く思考力やセンスを鍛えるという本です。「新・帝国主義」、「民族問題」、「宗教紛争」の3つをキーワードに現在の状況と似た歴史的事実の理解を深めることで、現在と今後の行方を解説してくれています。佐藤優さんのマルクスやキリスト教についての豊富な知識を背景にわかりやすく解説して下さるので読みやすいです。佐藤優さんの他の本と同じく、資本主義の限界とナショナリズム、帝国主義の危険性を実感できます。

41 中村文則さんらしい、救いようのない暗い子ども時代を過ごした登場人物が、それぞれの心の闇に苦しめられる、という内容ですが、これまでと異なり、殺人事件に関する推理小説的な複雑な謎解きが絡んできます。純文学ではこれらの謎の大半が放置されることが多いですが(村上春樹さんの小説に象徴的です)、この作品では見事にその謎が明かされ、読んでいて気持ちがよいです。ど直球の恋愛小説としても読め、最後にかすかな希望のようなものが感じられる点も好ましいです。


■CD
22 G. Love & Special Sauce/G. Love & Special Sauce
23 His Band & Street Choir/Van Morrison

22 20年以上前に音楽誌で話題になった作品です。懐かしくなって聴きました。ブルースとラップが融合したようなラフでかつ洗練されたサウンドが格好良いです。今聴いても全然古びていないのがすごいです。今の音楽シーンに欠けているのは、こういう温故知新+αの新しさを感じさせる音楽だとあらためて思いました。

23 名作との誉れ高い「Astral Weeks 」、「Moondance 」と「Tupelo Honey」の間の作品です。ヴァン・モリソンのキャリア絶頂期に出された作品なのにこの作品だけあまり取り上げられることがないですが、かなりの傑作です。前述した3作と比べると軽めの曲が多いので、評価が若干低いのかもしれませんが、情念たっぷりに歌うだけでない、緩急自在のヴァン・モリソンのシンガーとしての力量を知るにはよい作品だと思います。


■映画
28 麒麟の翼 〜劇場版・新参者〜/監督 土井裕泰
29 カラスの親指/監督 伊藤匡史
30 ジヌよさらば〜かむろば村へ〜/監督 松尾スズキ

28 先週観た「白夜行」に続き、東野圭吾さん原作の作品を観ました。中井貴一さんのような大物が、ただの被害者役で終わらないということが予想され、大筋のストーリー展開が読めてしまいましたが、緻密に計算された伏線と登場人物の心情の細やかな描写に優れた作品です。ストーリー展開を追うことに気をとられたためか、好きな役者さんである阿部寛さんを含む俳優陣の演技があまり印象に残っていません。人形町は僕も大好きな街なので、その描写はとても楽しめました。

29 「麒麟の翼」つながりの阿部寛さん主演作ということと、大好きな村上ショージさんが重要な役をやっているとのことで観ました。「麒麟の翼」の刑事役とは真逆で、阿部寛さんは悲しい過去を持つ詐欺師を好演されています。村上ショージさんもその相棒の詐欺師役を穏やかに好演されていますが、やはり標準語の村上さんは違和感たっぷりでした。「あまちゃん」以外の能年玲奈さんはあまり魅力を感じていなかったのですが、この作品では瑞々しい素晴らしい演技をされていて、観終わるまで、姉役が石原さとみさんと感じないほどの存在感でした(石原さとみさんが、脇に回った軽いおバカな演技に徹していたこともありますが)。ストーリー的には2段階の大どんでんがえしがあり、最後まで楽しめますが、2時間半を超える上映時間は少し長過ぎますね。よくできた原作なので、全て盛り込みたい気持ちもわかりますが、もう少しメリハリがあってもよかった気がします。

30 松尾スズキさんの監督作品の中では、一番ギャクがわかりやすい作品だと思います。片桐はいりさんの顔芸を見られただけでも、映画館に観に行ったかいがありました。阿部サダヲさんをはじめ大人計画のメンバーの演技は安定感があります。松たか子さんはとても美しかったですが、「夢売るふたり」以降のどこか不気味さを感じさせる演技が印象的でした。いろんな要素を詰め込み過ぎて、ストーリーが少しとっ散らかった感じなのが少し残念でしたが、「何とかなる、思い通りではないけれど」というメッセージが心に残る、楽しくも考えさせられるいい映画でした。
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プロフェッショナルマネジャー

2015-04-19 10:32:56 | Weblog
■本
37 プロフェッショナルマネジャー/ハロルド・ジェニーン
38 王国/中村 文則
39 なぜ、この人と話をすると楽になるのか/吉田 尚記

37 楠木建さんの読書本に取り上げられていたのと、帯のユニクロ柳井社長の推薦文に引かれて読みました。経営のプロとしての心構えが、ストイックに情熱的に書かれています。かと言って、過度な精神論に陥ることなく、ご自身の経験を踏まえて、理詰めで経営者がやらなければならないことが列挙されています。ハードワーク、リーダーシップや数字を見る目の大切さ、そしてエゴチスムに陥ることの危険性など、書かれていることは当たり前のことばかりですが、それだけにその全てをやり遂げることの難しさが実感できます。おそらく、この人を上司に持つととても大変なのだと思います。一つのことを成し遂げるにはこれだけの覚悟と野心が必要であることが理解でき、自分の身の丈とどこまでを目指すか、をあらためて考える上で有益な本です。

38 名作「掏摸」の兄妹篇ということで楽しみに読みましたが、「掏摸」の主人公とのからみは、一場面のみで少し期待はずれでした。代わりに悪役の木崎が抜群の存在感を発揮しています。ただ、主人公個人に対する木崎の外道ぶり(社会に対する悪影響は相変わらず凄まじいですが)が若干まろやかなのは、主人公が若い美形の女性だからでしょうか。「掏摸」の主人公のような特殊技術が今回の主人公にはない点(基本は色仕掛けで要人を騙します)のも、若干物足りない感じがします。中村さんの多くの作品に共通する、「孤児」と「悪」をテーマにした作品ですが、中村作品のもう一つの主題である「生命」に対する掘り下げが、少し浅いような気もしました。「掏摸」の完成度が高過ぎるのでどうしても比較してしまいますが、この作品も見事なストーリーテリングぶりで、作品世界に引き込まれ一気に読めてしまいます。

39 私もコミュニケーションに難があるので読みました。書かれていることは、「話すより聞く」、「相手の発言を引き出すためにオープンな質問をする(Yes/Noで終わらない質問をする」など、類似書に書かれていることも多いですが、その噛み砕き方が非常に巧みです。「『嫌い』、『違う』は口にしない」など、ベーシックなところまでをテクニックとして説明しているところもわかりやすいです。個人的には「劣等感を無視しよう」という、ネガティブな感情を感じなくするように努力するのではなく、感じた上で無視する意思の力を持つ、という視点が新鮮でした。確かに、湧き上がる感情を無視(少なくともその感情に左右されて衝動的に行動することを抑制)することは訓練によってできそうなので、意識して取り組んでみたいと思いました。


■CD
21 The Day Is My Enemy/The Prodigy

 15年以上前の蟹盤(Fat of the Land)から変わらぬ分厚い機械的な音で圧倒的な迫力です。変わらぬ安心感はありますが、「Fat of the Land」を初めて聴いた時のような、「時代の最先端の音」、という革新性はないですね。時代の移り変わりの速さを実感しつつノスタルジックな気分になってしまいました。


■映画
27 白夜行/監督 深川栄洋

 大人の弱さが子どもの人生を大きく損なってしまう切ない話です。堀北真希さんは、慣れない悪女役を頑張って演じられていると思います。抜群の演技をしているのは、もう一人の主人公の高良健吾さん。「ソラニン」、「ボックス!」、「横道世之介」での無垢な青年役とは正反対の、影のある繊細な役を好演していて、この人の演技の幅の広さに感心しました。小学生が犯した二つの罪を解決できないほど警察が無能なのか、という疑問は残りますが、東野圭吾さんの代表作というだけあって、ストーリー展開は独創的で、大筋の展開は簡単に予想できるものの、細かい伏線が随所に効いていて、最後まで飽きさせません。
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マーケット感覚を身につけよう

2015-04-12 08:21:32 | Weblog
■本
34 マーケット感覚を身につけよう/ちきりん
35 「部下なし管理職」が生き残る51の方法/麻野 進
36 ワタシは最高にツイている/小林 聡美

34 タイトル通り、論理思考だけでは容易に辿り着けない、今後の社会や市場の動向を見極めるために必要な「マーケット感覚」の身につけ方について書かれた本です。労働市場のグローバル化が進みスキルや能力がないと不安を感じている私のような人間に、足りないのは「価値ある能力」ではなく「価値ある能力、に気がつく能力」、と喝破してくれて、目から鱗が落ちました。結局、マーケット感覚を身につけるには、マーケットに身を置いて失敗から早く学ぶことが必要になるので、市場からフィードバックを得られる「何か」をとにかく始めることが重要であることに気づかされます。こう書くと、行動することの重要性だけが書かれた精神論のような印象を持たれるかもしれませんが、その結論に至るまでの過程が非常にロジカルで、まさに、論理思考とマーケット感覚の両方を備えた、ちきりんさんの面目躍如たる素晴らしい本です。

35 つい最近「部下なし管理職」になったので読みました。「腐らずにいいヒトとして組織内で存在感を出していけ、そうでないとコスト高の部下なし管理職は真っ先にリストラされる」ということを51種類のさまざまな表現で書かれた本です。全く書かれている通りですが、「部下なし管理職」がリストラ候補の1番手であることがあらためて実感でき、その置かれている厳しい立場に暗い気持ちになりました。まあ、謙虚にしたたかにやっていくしかないのでしょう。

36 テレビドラマ「すいか」や映画「かもめ食堂」で有名な小林聡美さんのエッセイ集です。「かもめ食堂」、「めがね」といった作品撮影時のエピソードも収録されていて、これらの作品のファンとしてはとても楽しめました。タイトルから受ける印象とは異なり、控えめな自虐性に満ちたエッセイが多く、その温い温度感が心地よいです。世代的には小林さんの方が少し上なのですが、若いヒトにはわからない、独特の時代感(団塊ジュニアやバブル)に共感できるところも多かったです。


■CD
20 Kintsugi/Death Cab for Cutie

 ギタリスト脱退の影響がほとんど感じられない相変わらずの「Death Cab for Cutie」節でホッしました。とても優しく切ないメロディアスな楽曲ばかりで、夜中に一人で聴いているとどっぷり浸れそうです。勢いだけでない大人の鑑賞にも耐え得るアメリカのロックバンドが最近少ないので(このバンドと「Wilco」くらい?)、その変わらない姿勢がうれしいです。


■映画
26 ジャッジ!/監督 永井聡

 「白戸家」で有名なクリエイター澤本さんの脚本ということで話題だった作品です。国際広告祭を舞台に広告代理店業界の裏話をコミカルに描きつつ(実在の企業名がバンバンでてくるところも驚きです)、CMに対する愛情がたっぷり詰め込まれています。ストーリーはコメディにありがちなご都合主義なので、キャラクターの濃さを楽しむ映画だと思います。その個性的なキャラクターの中でも、一番優秀なのは豊川悦司さん演じるトップクリエーター(チャーミングに外道な人間を好演されています)の秘書の女性ですね。ハッキング能力がとても高いです。窓際社員のリリー・フランキーさんも、いつも通り飄々といい味出してました。荒川良々さんがブラジル人という設定は多少やり過ぎの気もしますが。
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博士と彼女のセオリー

2015-04-04 07:27:47 | Weblog
■本
32 もぎりよ今夜も有難う/片桐はいり
33 「働き方」の教科書/出口 治明

32 映画それもソフトとしての映画作品ではなくハードとしての映画館を題材にした、とてもユニークな片桐はいりさんのエッセイ集です。片桐はいりさんの銀座文化劇場(現「シネスイッチ銀座」)でのもぎりのアルバイト体験に基づくエピソードと映画愛に満ちた眼差しが、同じ映画ファンとしてとても共感できました。首都圏のエピソードが中心な中で、はいりさんが丹後半島方面に旅された際のエピソードは、関西人としては情景がありありと浮かんできて楽しめました。やはり「好きなこと」にのめりこめる人生が素敵だということに、あらためて気づかされました。映画のさまざまな楽しみ方を教えてくれる素敵な本です。

33 親しくしていただいた諸先輩方が、この春に早期退職を選択されたのに触発され、尊敬する出口さんの「働き方」についての指南書を読みました。基本的なテーマは、50代でライフネット生命を起業された出口さんらしく、「仕事についてのノウハウや人脈が形成された50代で、それまでの経験を活かして起業することは合理的だし、日本経済の活性化や後進にチャンスを与えるという意味でも健全な考え方である」という趣旨の本です。決してご自身の自慢話ではなく、豊富な読書による人間理解や会社人生活から得られた体験を背景に、出口さんがおっしゃる「数字、ファクト、ロジック」に基づく主張なのでとても説得力があります。これだけ充実した職業人生を歩まれているにもかかわらず、「仕事は人生の三割」と言い切る仕事に対する適度な距離感もまた、この本の主張の信頼感を高めています。


■CD
19 Love Is Hell/Ryan Adams

 とても地味で内省的な作品ですが、1曲、1曲に心を込めて丁寧に作りこまれている印象で、強く作品世界に引き込まれます。Ryan Adamsの現時点での最高傑作ではないでしょうか。オアシスのカバー「Wonderwall」もシンプルながらも情熱的なアレンジで、原曲のよさを引き立てているだけでなく、この作品全体のトーンにも非常によくマッチしています。Ryan Adamsが信頼できるアーチストであることを世に示した作品だと思います。


■映画
24 横道 世之介/監督 沖田修一
25 博士と彼女のセオリー/監督 ジェームズ・マーシュ

24 吉田修一さんの原作に忠実に、青春時代特有の能天気さとそれが失われたあとの後味のよい切なさがよく出た映画です。ただ、少し長過ぎますね。もう少し原作のエピソードからメリハリをつけてもよかったのかもしれません。主人公演じる高良健吾さんは好演されていますが、僕の原作のイメージと比べると少し美形過ぎます。ヒロインの吉高由里子さんはハマリ役とも言えるくらい原作のイメージどおりですが、吉高さん自身のキャラのイメージが強過ぎて作品世界を楽しみきれない面もありました。押し付けがましくないポジティブさに溢れた好ましい作品なのですが、原作を読んだときにも感じたご都合主義的な出会いはやはり気になります。原作を読んだときと同じ感想ですが、ファンタジーとして楽しむべき作品だと思います。

25 想像以上に素晴らしい作品でした。最近のアカデミー賞は有名人に似せた演技やハンディキャップを持った人の演技が評価される傾向にあり、その風潮を個人的に疑問に思っていたので、その両方の条件にあてはまるホーキング博士を演じたエディ・レッドメインの主演男優賞受賞も懐疑的でした。しかし、その先入観を打ち破る圧巻の演技と、「愛情にも耐用年数がある」かのような苦味がありつつやはり愛に溢れた夫婦関係の描き方が非常に巧みで、とても感動しました。ホーキング婦人を演じたフェリシティ・ジョーンズも無垢な学生時代から、芯を持った女性への成長を魅力的に演じきり素晴らしかったです。ホーキング博士の学術的な偉業が伝わってこないなどの突っ込みどころはあるにはありますが、人間の強い面と弱い面を忠実に描いた誠実な作品だと思います。
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