■本
23 プロジェクトのトラブル解決大全/木部 智之
24 ネット右翼になった父/鈴木 大介
23 仕事で関わっている大規模プロジェクトが終盤に差し掛かっているので、参考にしようと思い読みました。プロジェクト・マネージャーとして、数々の炎上プロジェクトに関わってきた方の本だけあって、プロジェクトの立ち上げから、クロージング、そして、その後のナレッジシェアにまで至る、実践的な知識が得られました。多くの人間がかかわることもあり、技術的な問題と同じくらい、リーダーとしての心構えやメンバーの心理面に対する配慮が強調されている点(懇親会や打ち上げのテクニックまで解説されています)が印象に残りました。「1つひとつの作業ごとにバッファーを置く」のではなく「バッファーをかき集めて最後に置く」(なぜなら、バッファーがあれば、人はそれを使ってしまいがちで、結局は本当に必要なときにバッファーが残っていないから)という、セオリーは特に参考になりました。この本で取り上げられているセオリーのうち、既に実践できているものも多く、自信にもつながりました。これからも、トラブルに陥りそうなときに読み返したいと思います。
24 衝撃的なタイトルですが、著者の鈴木さんの父親との関係の説明と、その父親がネット右翼的な発言をするに至った背景の考察が中心の内容で、読み応えがあります。要は、思想の異なる相手との分断を乗り越えるためには、人を安易にラベリングするのではなく、相手がそのような発言をするに至った背景と、自分がそのような発言を嫌悪する理由をしっかりと考察することが重要、という結論なのだと思いますが、実体験として悩まれた末の結論なので、難しくはあっても、分断を解消できる希望も感じます。団塊の世代の人たちが嫌韓嫌中となった背景として、在職時代に在日外国人からの恐喝やクレーム対応に苦労した経験があったから、という指摘はとても納得感がありました(私も理不尽なクレームを受けた経験のある企業の商品はあまり買いません)。その関係を容易に断ち切る訳にいかない親が相手だけに、それぞれの個人の性格の問題として捉えるのではなく、その背景を理解した上で、どのように歩み寄れるかを考えるという、とても面倒くさい作業をやり続けるしかないのだ思います。逆に子どもたちが、このような面倒くさい作業をできるだけしなくても済むように、私自身が時代の変化について行けるだけの柔軟さを保たねばという気持ちにもなりました。分断を乗り越えられる希望とともに、価値観を時代の変化に合わせてブラッシュアップできなくなる「老い」に対する恐怖心も高まりました。
■CD
1 Cracker Island/Gorillaz
すっかり音楽はサブスクで聴くことが増えましたが、大好きなゴリラズ(というよりもデーモン・アルバーン)の新作ということで購入しました。一時は年間100枚以上CDを買っていたこともあるので、時代の変化を感じます。前作「Song Machine, Season One: Strange Timez」は、曲数も多く、ごった煮的な印象でしたが、本作は、しみじみと聴かせるいい曲だけを集めましたという感じで、あっという間に聴き終わります。スティーヴィー・ニックスと共演した、気だるい「Oil」や、終盤の盛り上がりがヤバい「Skinny Ape」など、メリハリの効かせ方も絶妙です。美味しいものを食べたときと同様に、聴いていて思わず頬が緩む、素敵な作品です。Blurが出演するサマー・ソニックにも行きたいと思っています。
■映画
20 ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男/監督 ジョー・ライト
アカデミー主演男優賞を受賞したゲイリー・オールドマンの憑依系の演技と、そのメイクを担当した日本人メイクアップアーティストがアカデミー賞のメイクアップ&ヘアスタイリング賞を獲得したことでも話題になった作品です。ゲイリー・オールドマンの原型をほとんど留めないその技術には、もはやCGでよかったのでは、という気さえします。戦争に勝利したにもかかわらず、その後の選挙で敗北するなど、浮き沈みの激しい、ウィンストン・チャーチルという人物に個人的に興味を持っていたので観ました。その複雑な人物の細かい心の動きが、ナチスに対して劣勢だった当時の厳しい意思決定の背景と組み合わさって、巧みに表現されています。若い専属女性タイピストとのやりとりや、クライマックスの演説前の地下鉄での市民の交流など、いかにも作りっものっぽいエピソードも、この映画を魅力的にする上で効果的だったと思います。原題の「Darkest Hour」(日本での「ヒトラーから世界を救った男」という副題は安っぽくて好きになれません)の通り、決して明るい話ではないのに、欠点だらけの人間のポジティブな側面に焦点が当てられていて、心地よい高揚感が得られます。このあたりのジョー・ライト監督の構成力は素晴らしいと思います。戦争や政治に関する映画が苦手な方にもお勧めできる作品です。
23 プロジェクトのトラブル解決大全/木部 智之
24 ネット右翼になった父/鈴木 大介
23 仕事で関わっている大規模プロジェクトが終盤に差し掛かっているので、参考にしようと思い読みました。プロジェクト・マネージャーとして、数々の炎上プロジェクトに関わってきた方の本だけあって、プロジェクトの立ち上げから、クロージング、そして、その後のナレッジシェアにまで至る、実践的な知識が得られました。多くの人間がかかわることもあり、技術的な問題と同じくらい、リーダーとしての心構えやメンバーの心理面に対する配慮が強調されている点(懇親会や打ち上げのテクニックまで解説されています)が印象に残りました。「1つひとつの作業ごとにバッファーを置く」のではなく「バッファーをかき集めて最後に置く」(なぜなら、バッファーがあれば、人はそれを使ってしまいがちで、結局は本当に必要なときにバッファーが残っていないから)という、セオリーは特に参考になりました。この本で取り上げられているセオリーのうち、既に実践できているものも多く、自信にもつながりました。これからも、トラブルに陥りそうなときに読み返したいと思います。
24 衝撃的なタイトルですが、著者の鈴木さんの父親との関係の説明と、その父親がネット右翼的な発言をするに至った背景の考察が中心の内容で、読み応えがあります。要は、思想の異なる相手との分断を乗り越えるためには、人を安易にラベリングするのではなく、相手がそのような発言をするに至った背景と、自分がそのような発言を嫌悪する理由をしっかりと考察することが重要、という結論なのだと思いますが、実体験として悩まれた末の結論なので、難しくはあっても、分断を解消できる希望も感じます。団塊の世代の人たちが嫌韓嫌中となった背景として、在職時代に在日外国人からの恐喝やクレーム対応に苦労した経験があったから、という指摘はとても納得感がありました(私も理不尽なクレームを受けた経験のある企業の商品はあまり買いません)。その関係を容易に断ち切る訳にいかない親が相手だけに、それぞれの個人の性格の問題として捉えるのではなく、その背景を理解した上で、どのように歩み寄れるかを考えるという、とても面倒くさい作業をやり続けるしかないのだ思います。逆に子どもたちが、このような面倒くさい作業をできるだけしなくても済むように、私自身が時代の変化について行けるだけの柔軟さを保たねばという気持ちにもなりました。分断を乗り越えられる希望とともに、価値観を時代の変化に合わせてブラッシュアップできなくなる「老い」に対する恐怖心も高まりました。
■CD
1 Cracker Island/Gorillaz
すっかり音楽はサブスクで聴くことが増えましたが、大好きなゴリラズ(というよりもデーモン・アルバーン)の新作ということで購入しました。一時は年間100枚以上CDを買っていたこともあるので、時代の変化を感じます。前作「Song Machine, Season One: Strange Timez」は、曲数も多く、ごった煮的な印象でしたが、本作は、しみじみと聴かせるいい曲だけを集めましたという感じで、あっという間に聴き終わります。スティーヴィー・ニックスと共演した、気だるい「Oil」や、終盤の盛り上がりがヤバい「Skinny Ape」など、メリハリの効かせ方も絶妙です。美味しいものを食べたときと同様に、聴いていて思わず頬が緩む、素敵な作品です。Blurが出演するサマー・ソニックにも行きたいと思っています。
■映画
20 ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男/監督 ジョー・ライト
アカデミー主演男優賞を受賞したゲイリー・オールドマンの憑依系の演技と、そのメイクを担当した日本人メイクアップアーティストがアカデミー賞のメイクアップ&ヘアスタイリング賞を獲得したことでも話題になった作品です。ゲイリー・オールドマンの原型をほとんど留めないその技術には、もはやCGでよかったのでは、という気さえします。戦争に勝利したにもかかわらず、その後の選挙で敗北するなど、浮き沈みの激しい、ウィンストン・チャーチルという人物に個人的に興味を持っていたので観ました。その複雑な人物の細かい心の動きが、ナチスに対して劣勢だった当時の厳しい意思決定の背景と組み合わさって、巧みに表現されています。若い専属女性タイピストとのやりとりや、クライマックスの演説前の地下鉄での市民の交流など、いかにも作りっものっぽいエピソードも、この映画を魅力的にする上で効果的だったと思います。原題の「Darkest Hour」(日本での「ヒトラーから世界を救った男」という副題は安っぽくて好きになれません)の通り、決して明るい話ではないのに、欠点だらけの人間のポジティブな側面に焦点が当てられていて、心地よい高揚感が得られます。このあたりのジョー・ライト監督の構成力は素晴らしいと思います。戦争や政治に関する映画が苦手な方にもお勧めできる作品です。