■本
87 バカと無知―人間、この不都合な生きもの―/橘 玲
88 世間ってなんだ/鴻上 尚史
87 心理学、脳科学、進化論などの最新の研究成果から、なかなか受け入れ難い、人間の思考の癖や行動原理をあぶり出す、「言ってはいけない」シリーズの3作目です。人間の「きれいごと」をあざ笑うような、橘玲さんの本は大好きなのですが、最近の暗い世相を反映してか、本作もその毒を笑いながら楽しむ、というよりも、人間の悲しい性に暗い気持ちになる読後感です。「正義は最大の娯楽である」や「すべての記憶は『偽物』である」など、不都合な真実が次々と紹介されています。特に、「無意識の差別」を計測する実験から、「黒人自身も黒人を差別している」という結果が導かれているということは(そこまで単純化して受け止めてよいかは精査する必要があるとも思いますが)、衝撃的でした。暗い気持ちになる面も多いですが、自分の思考の癖や歪みを理解することからしか、人間社会の様々な不都合を解消することはできない、というメッセージと読むこともでき、自分を相対化してとらえる視点を養う上では有益な本だと思います。
88 「人間ってなんだ」、「人生ってなんだ」に続く、鴻上尚史さんの長期連載エッセイ「ドン・キホーテのピアス」からテーマ別に再編集された本の三作目です。よくよく考えると、楽なビジネスに加担しているだけだという気もしますが、ファンなので投げ銭替わりに本作も読みました。今回は、鴻上さんのライフワークでもある「世間」がテーマなので、これまで繰り返し主張されてきた、「社会」と「世間」の違いや「同調圧力」に関する、世相を切るエッセイが堪能できます。基本的には不合理な「謎ルール」を排して、日本の「生きづらさ」を解消していこう、という熱い思いが充満しています。いじめや未成年飲酒による被害者のご家族が、自分と同じような思いをして欲しくない、という思いから学校や自治体などの管理強化を要請し、そのことにより、社会全体の窮屈さが増しているという状況に、個人的にも切ない思いをしておりますが、この不幸な連鎖を断ち切るために、若干の「いい加減さ」を許す寛容さが社会に必要なのだと思います。そのためには、ルール自体の合理性やその決められたプロセスの透明性を高めることが、得体のしれない「空気」に対抗するために重要なのだとも思いました。
■映画
64 るろうに剣心 最終章 The Beginning/監督 大友 啓史
それなりに面白かったのですが、前作で完結していたので、やはり蛇足な印象が拭えませんでした。シリーズ最終作で前日譚を描いて一作目につなげ、シリーズ全体の構造を円環状にしたかったのだと思います。しかし、基本的に主人公の喪失と再生の物語なので、この構造だとシリーズが「喪失」で終わってしまうのが、個人的には残念でした。あと、予想通り、前作で見せ場が少なかった有村架純さん(ちなみに有村さんは好きな女優さんです)への配慮が全開で、シリーズの番外編という印象が強かった点も少し違和感を感じました。評価していたシリーズだったので、大団円で終わって欲しかったです。とはいえ、漫画原作映画化作品としては、最高級の傑作だと思います。
87 バカと無知―人間、この不都合な生きもの―/橘 玲
88 世間ってなんだ/鴻上 尚史
87 心理学、脳科学、進化論などの最新の研究成果から、なかなか受け入れ難い、人間の思考の癖や行動原理をあぶり出す、「言ってはいけない」シリーズの3作目です。人間の「きれいごと」をあざ笑うような、橘玲さんの本は大好きなのですが、最近の暗い世相を反映してか、本作もその毒を笑いながら楽しむ、というよりも、人間の悲しい性に暗い気持ちになる読後感です。「正義は最大の娯楽である」や「すべての記憶は『偽物』である」など、不都合な真実が次々と紹介されています。特に、「無意識の差別」を計測する実験から、「黒人自身も黒人を差別している」という結果が導かれているということは(そこまで単純化して受け止めてよいかは精査する必要があるとも思いますが)、衝撃的でした。暗い気持ちになる面も多いですが、自分の思考の癖や歪みを理解することからしか、人間社会の様々な不都合を解消することはできない、というメッセージと読むこともでき、自分を相対化してとらえる視点を養う上では有益な本だと思います。
88 「人間ってなんだ」、「人生ってなんだ」に続く、鴻上尚史さんの長期連載エッセイ「ドン・キホーテのピアス」からテーマ別に再編集された本の三作目です。よくよく考えると、楽なビジネスに加担しているだけだという気もしますが、ファンなので投げ銭替わりに本作も読みました。今回は、鴻上さんのライフワークでもある「世間」がテーマなので、これまで繰り返し主張されてきた、「社会」と「世間」の違いや「同調圧力」に関する、世相を切るエッセイが堪能できます。基本的には不合理な「謎ルール」を排して、日本の「生きづらさ」を解消していこう、という熱い思いが充満しています。いじめや未成年飲酒による被害者のご家族が、自分と同じような思いをして欲しくない、という思いから学校や自治体などの管理強化を要請し、そのことにより、社会全体の窮屈さが増しているという状況に、個人的にも切ない思いをしておりますが、この不幸な連鎖を断ち切るために、若干の「いい加減さ」を許す寛容さが社会に必要なのだと思います。そのためには、ルール自体の合理性やその決められたプロセスの透明性を高めることが、得体のしれない「空気」に対抗するために重要なのだとも思いました。
■映画
64 るろうに剣心 最終章 The Beginning/監督 大友 啓史
それなりに面白かったのですが、前作で完結していたので、やはり蛇足な印象が拭えませんでした。シリーズ最終作で前日譚を描いて一作目につなげ、シリーズ全体の構造を円環状にしたかったのだと思います。しかし、基本的に主人公の喪失と再生の物語なので、この構造だとシリーズが「喪失」で終わってしまうのが、個人的には残念でした。あと、予想通り、前作で見せ場が少なかった有村架純さん(ちなみに有村さんは好きな女優さんです)への配慮が全開で、シリーズの番外編という印象が強かった点も少し違和感を感じました。評価していたシリーズだったので、大団円で終わって欲しかったです。とはいえ、漫画原作映画化作品としては、最高級の傑作だと思います。