本、CD、映画日記

目標は年間読書100冊。その記録と目標管理をかねたブログです。

リトル・ダンサー

2014-09-28 10:18:44 | Weblog
■本
83 クリエイティブ・マインドセット/デイヴィッド ケリー、トム ケリー
84 こころ/夏目 漱石

83 イノベーティブな会社として世界的に評価の高いデザイン会社のIDEO創業者兄弟が「創造力に対する自信」をテーマに書いた本です。人間のクリエイティビティに対する強い信頼を背景に、個々人がその創造力を発揮するための心構え(創造力を発揮することの恐怖を克服する、など)を豊富な具体例を元に教えてくれます。心構え(マインドセット)から、実際に行動に移すための励ましへと移り、次第に実用的な方法論やテクニックへと進んでいく構成も巧みで、単なる知識習得だけではなく行動へとつながる本になっているところもよいです。結局熟慮するよりもどれだけ手数を多く出して、素早く行動し、失敗から学べるかが重要であることがよくわかります。

84 朝日新聞の朝刊に連載されていたので欠かさず読みました。高校の教科書で一部分を読んだときは、先生が一方的に手紙で語るだけの退屈な話だと思っていましたが、あらためて通して読むと、人間の弱さ、醜さをかなり自分ごととして捉えられる凄まじい作品だと思いました。特に犯した過ちの取り返しのつかなさを、先生が実感する場面の描写が衝撃的で、人間が自分の人生を台無しにする瞬間に立ち会えたような錯覚を感じて背筋が冷たくなりました。登場人物がほぼ5人しかいない、極めて狭い人間関係のさして盛り上がりもない話なのに、ここまで普遍的で重層的な作品となっているところがこの作品が名作と呼ばれている所以だと思います。先生の手紙の場面は一気に読んでも退屈なような気がしますので、新聞連載という形式で読んだのがよかったのかもしれません。


■CD
44 Songs of Innocence/U2

 itunesの無料ダウンロードで入手しました。非常に若々しく、全うなギターロックを展開しています。5年という長いブランクを考えると、全くの新機軸か「All That You Can't Leave Behind 」のような円熟味のある作品を個人的には期待していたので、結構想定の範囲内というのが正直な感想です。素直によい曲を集めました、といった印象でそれはそれでU2らしくて誠実でよい作品だとは思います。


■映画
64 ザ・ハリケーン/監督 ノーマン・ジュイソン
65 リトル・ダンサー/監督 スティーブン・ダルドリー

64 全盛期のデンゼル・ワシントン主演作ということで、冤罪で刑に服していた元チャンピオンが出獄後様々な苦労を乗り越えてカンバックする、といったエンターテイメント作だと勝手に思って観ていたのですが、そうではなくて、実話に基づく差別と冤罪をテーマにした本格的な社会派映画でびっくりしました。冤罪に陥れる刑事や検察側が非常に差別主義的で憎々しく描かれていて、思わず主人公に共感してしまいます。主人公が、支援者の青年との交流により、復讐心や絶望から、次第に許しや希望へと心境が変化していく様子も丁寧に描かれていて、人間の持つ強さや変化への可能性を感じられる内容になっています。

65 少し前に観た「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」の監督のデビュー作ということで観ました。イギリス社会の問題点を描きつつ、家族の絆や夢を持つことの大切さをシンプルに教えてくれるいい映画です。登場人物がみんな一癖があり、屈折しつつも心の底では優しさを持っているという描き方をされていて、紋切り型な善人が出てこないところもよいです。主人公の少年が抱える閉塞感とそれを開放するダンスの存在の描き方も秀逸で、父親に詰問された少年が思わずダンスを踊り出すシーンのカタルシスは素晴らしいです。Tレックス、ザ・ジャムやザ・クラッシュといった70年代イギリスロックの使い方も的確で、作品全体を貫く鬱屈した空気感とかすかな希望を感じさせるのに成功しています。
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Amplified Heart

2014-09-21 10:15:41 | Weblog
■本
82 キング誕生 池袋ウエストゲートパーク青春篇/石田衣良

 安定のIWGP節で楽しめます。いつにも増してストーリーがご都合主義的(いくらなんでも母親が死んだ日に兄まで死ぬなんて悲し過ぎます)ですが、それもご愛嬌です。とにかくキャラ設定が抜群で、その世界観に慣れればなれるほど登場人物が愛おしくなる手腕はさすがです。


■CD
42 ベストポルノ/ビッグポルノ
43 Amplified Heart/Everything But The Girl

42 先週「コヤブソニック」(めちゃくちゃ楽しかったです)に行った際に購入しました。正統派ヒップホップのフォーマットに、えげつないほどのシモネタと凝った言葉遊びの歌詞を乗せてきます。女性ヴォーカルがフィーチャーされている曲も多いのですが、どんな雰囲気でレコーディングしたのか心配になります。ヘビーローテーションになることはないですが、たまに聴きたくなりそうです。

43 Everything But The Girlの作品の中で唯一持っていなかったので購入しました。彼らの転機となった超名曲「Missing」が収録されています。実は「Todd Terry Club Mix」じゃない方のオリジナルのこの曲を初めて聴いたのですが、ギターのリフとリズムが印象的でこちらも素敵です。自分達のやりたい音楽を作ろうというリラックスした雰囲気の中に、新しいことにも挑戦しようという意欲も感じられます。この作品のあと一気にドラムンベースの方向にシフトしますが(それはそれで好きですが)、若干ハイテンションな作風は彼らに無理を強いていた部分もあるように感じられ、振り返って見るとこの作品が彼らの最高傑作だと思います。


■映画
62 LUCY/監督リュック・ベッソン
63 ありえないほど近くて、ものすごくうるさい/監督 スティーブン・ダルドリー

62 久しぶりにラストシーンで「なんじゃこりゃ」とつぶやいてしまいました(ラース・フォン・トリアー監督の「メランコリア」を見て以来です)。リュック・ベッソンが迷作「フィフス・エレメント」を監督した人だと言うことを思い出しました。「ニキータ」、「レオン」のようなハードボイルドな雰囲気に、制作や脚本で絡んだ「TAXi」シリーズのようなカーアクションもたっぷりで久しぶりに元気でエンターテイメントに徹したリュック・ベッソン作品を観られて途中まではワクワクしました。さらに、大好きな「オールド・ボーイ」のチェ・ミンシクがリュック・ベッソン作品によく登場する狂った悪役を好演していて、スカーレット・ヨハンソンのクールなヒロインとともにキャラの立ち方も最高です。それだけに終盤に向けて徐々に哲学的になっていく展開と突っ込みどころ満載のエンディングに呆然としました。この監督にはあまり潤沢な制作費を与えない方がいいですね。いろんな制約の中でのシンプルな作品の方が輝きを発揮すると思います。とはいえ、まだまだリュック・ベッソンが枯れずに、いい意味でも悪い意味でも才気が迸っていることがよくわかる作品で、ファンには楽しめる作品だと思います。

63 素直によい映画だと思います。9.11により父親を亡くした少年の喪失と再生を描きつつ、アメリカ社会の抱える希望と矛盾を巧みに描いていて深みがあります。主人公の少年の好演はもちろんですが、トム・ハンクス、サンドラ・ブロックの抑えた感じの演技もよいです。ただ、9.11の衝撃的な映像が多用されているところに少し違和感を感じました。直接的な表現を使わず、その対象をを描くことがフィクションの醍醐味であり、ここまでテーマに直接的に触れるのなら、ノンフィクションのドキュメンタリーの方がよいのでは、という気がしました。原作小説を読んでいないのでなんとも言えませんが、映像のインパクトに頼れない分、小説の方はそのあたりの工夫がもっとなされているような気がします。
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笑う仕事術

2014-09-14 07:56:12 | Weblog
■本
80 笑う仕事術/菅 賢治
81 イノベーションの最終解/クレイトン・M・クリステンセン, スコット・D・アンソニー, エリック・A・ロス

80 タウンタウンの「ガキ使」にも登場する菅プロデューサーの仕事観について書かれた本です。独立されたことを契機にこれまでの仕事やそこから得られた気づきをまとめられた感じの本で、ダウンタウンや明石家さんまさんとの交流エピソードなども随所に挿入されていて、読み物として面白いです。素人には漠然としか持っていないプロデューサーの仕事内容や番組企画の立て方にも触れられていて興味深いです。結局好きなことしか頑張れないし、だからこそ自身やチームが楽しめる環境づくりが必要という、仕事で成果をおさめる上で極めて当たり前ですが重要なことが書かれています。

81 クリステンセン教授の新刊という割にはずいぶん事例が古いな(2004年当時の事例が中心です)、と思っていたら過去に出版された「明日は誰のものか」という本を出版社を変えて再度翻訳したものなんですね。最後まで読み進んで気づきました。今回は、「イノベーションのジレンマ」などで明らかにされた理論を用いて通信、教育、航空、半導体、医療などの各業界を分析し、その未来を予測する方法について具体的に解説してくれています。10年以上も前に書かれた本なのに、結構その予測が当たっているのが驚きですし、この理論の正しさを意図せずして証明している気がします。個人的に興味のある通信業界の分析が中心となっているところも参考になりましたし、これまでの2作(「イノベーションのジレンマ」と「イノベーションへの解」)の復習的要素(主要概念のまとめやキーワード解説など)も入っていて、まさに「イノベーション三部作」の完結編と呼ぶにふさわしい内容だと思います。


■CD
40 Tied to a Star/J.Mascis
41 V/Maroon 5

40 Dinosaur Jr.の中心人物J.Mascisのソロ作品です。ソロ一作目の前作同様アコースティック中心のシンプルなサウンドですが、より優しく、より穏やかになっています。泣きのメロディはDinosaur Jr.からの特徴ですが、もっと繊細な涙さえ出ない感じの微妙な感情が喚起される音です。しみじみ染みわたります。

41 実にマーケティングがしっかりなされたPOPの見本のような作品です。冒頭の「Maps」の第一声から聴き手を一気に引き込みます。その一方で、このバンドにしかできない独特の哀愁や色気をうまく醸し出していて、オリジナリティと売れ筋を共存させている手腕は見事です。大作志向のテンション高めでインパクトの大きな曲に偏っていて、1stアルバムに収録されている「Sunday Morning」のような地味ながらもセンスに溢れた楽曲もバランスよく配されていたらもっとよかったに、という贅沢な不満を少し感じました。


■映画
61 オカンの嫁入り/監督 呉美保

 「そこのみにて光輝く」でモントリオール世界映画祭最優秀監督賞を受賞した呉美保監督が、この作品の前に撮った映画です。大竹しのぶさん、宮崎あおいさんとも慣れない大阪弁の違和感を感じさせない相変わらずの素晴らしい演技です。この二人の名女優の演技合戦にならないように調和させている監督の手腕も見事です。脇を固める國村隼さんのとぼけた感じの演技も味わい深いです。ストーリー的には先の展開がかなり読めますが、その点がかえって二人の演技に集中して楽しめます。大阪に住んでいる人間としては見慣れた京阪電車やその沿線風景、さらには地元の芸人さんが多数登場して親しみが持てます。でも、失礼ながらこんな素敵な親子は京阪沿線には住んでいないと思います。そういう意味でもファンタジー的な作品です。
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NO

2014-09-07 10:14:59 | Weblog
■本
79 他人を攻撃せずにはいられない人/片田 珠美

 私自身も少なからず他人を攻撃する傾向にあるので、売れていることもあり読んでみました。ちょと性悪説寄りの議論に振り過ぎてる傾向にあり、読み進むにつれて辟易してきますが、こういう精神分析をテーマにした本は極端に性善説なものも多いので(相手の話に真摯に耳を傾ければ理解し合えるとか)、バランスを取る意味ではこういう本を読んでみるのもよいかもしれません。逃げる以外の解決策が提示されていないので、人によっては消化不良に感じるかもしれませんが、安直な解決策を提示していない分、誠実とも言えます(語り口はかなりシニカルですが)。決して読んでいて楽しい本ではないのに売れているということは、人間関係に悩んでいる人が想像以上に多いんでしょうね。逆説的ですがその事実に勇気づけられました。


■CD
38 Girl/Pharrell Williams
39 Check Your Head/Beastie Boys

38 ここ最近で最も完成度の高い作品だと思います。超ヒット曲「Happy」を筆頭にどの曲もとにかくメロディと構成が素晴らしいです。シンプルな素直に楽しめる楽曲が多いのですが、何度聴いても不思議と飽きません。緩急のバランスも自在で、前半はダンサブルな曲でたたみかけ「Happy」で頂点に達し、そこから次第にスローダウンして落ち着いたエンディングへと向かうアルバム全体の流れも工夫されています。

39 浮かんだアイデアを全てぶち込み衝動に任せてつくったという感じのごった煮の勢いが楽しい作品です。それでいて、前作ほどではないですが、荒々しさの中にも時折アーチスティックなセンスのよさも感じられます。おバカな振りをしつつも、滲み出る知性が心憎いです。


■映画
58 アンノウン/監督 ジャウム・コレット=セラ
59 NO/監督 パブロ・ラライン
60 ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q/監督 庵野秀明、摩砂雪、前田真宏、鶴巻和哉

58 私好みの大どんでん返しが終盤にあり大いに楽しめました。前置きが少なめで一気にストーリーが展開するところも好感が持てました。主演のリーアム・ニーソンを筆頭に、出演俳優の全員が堅実な演技で安定感もあります。成功率の極めて高い犯罪組織が信じられないような凡ミスをするところと、タクシー運転手がびっくりするほど美人なので(ダイアン・クルーガーが好演しています)、後にストーリー上かかわることがバレバレなのが少し興ざめでしたが、これらの欠点を補って余りある面白い作品だと思います。

59 チリの独裁政権の是非を問う国民投票に、広告の力で勝利をおさめ政権を引っ繰り返した若きクリエーターの命がけの奮闘を描いた作品、というストーリーに興味を持って見ました。独裁政権の悲惨な過去からの変化を、ユーモアを交えたテレビCMで訴えているところが興味深いです。伝えたいメッセージを視聴者の望むかたちで提示し人を動かす、という広告の理想的な姿を体現しています。一方でこういう広告の力が、ゴアではなくブッシュが米国大統領になるという悲劇を導いた一因となったかと思うと少し怖くなります。この作品では、ベタな広告キャンペーンに取り組んでいる姿を合わせて描くことにより、主人公をを聖人として描いていない点にバランスを感じました。最初は抵抗していた主人公がこのキャンペーンに参加するに至った心の変化を、もう少し丁寧に描いていたらより共感できたと思うのですがそこだけは残念でした。独特の個性を持った素晴らしい映画であることは間違いありません。

60 なんかすごいですね。前作を結構忘れていたのとストーリー展開がとても速いのでついていくのに大変でした。これまでのいろんな謎や伏線が回収されるそばから新たな謎がたたみかけられるように提示され、そのめくるめく刺激に圧倒されました。TV版では共感していた、シンジの葛藤振りがかなり鬱陶しく感じたのは、その高速のストーリー展開の妨げに感じたからかもしれませんが、私がより歳をとったからかもしれません。発散しきったこのストーリーをどう収束させるのか(はたまた収束させないのか)ますます楽しみになりました。
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