本、CD、映画日記

目標は年間読書100冊。その記録と目標管理をかねたブログです。

英国王のスピーチ

2011-04-24 06:17:45 | Weblog
■本
33 ビジネスに「戦略」なんていらない/平川 克美
34 14歳の子を持つ親たちへ/内田 樹、 名越 康文

33 かなり高度な思考をされているので、完全に理解できたか自信はありませんが、「戦略」という戦争の用語をビジネスに持ち込むことにより、勝つか負けるかという非常に偏った思考方法に陥りがちなことに警鐘を鳴らしている本と理解しました。あとがきにあるように、筆者は必ずしも「戦略的思考」を否定しているわけではなく、それにとらわれすぎることによる視野狭窄を否定しているのだと思います。ビジネスを通じて丁寧にコミュニケーションを行うことにより、短期的にはすぐに成果はでなくても、信用・満足などといった「見えない資産」が蓄積されていき、長期的に見れば持続的な事業の維持が可能、という考え方に非常に共感しました。原発を含む日本のエネルギー「戦略」を考察する上でも重要な示唆を与えてくれる本だと思います。

34 学級崩壊や少年犯罪など、今の日本で子どもを育てる身にとっては、悲観的な記述が満載ですが、結局は明確な答えなどなく、腹をくくって試行錯誤しながら子育てをするしかないという覚悟が生まれる本です。いわゆるノウハウ本のような「こうすれば子どもはちゃんと育つ」という回答は得られませんが、その点を期待せずに読むと逆にいろんな発見があるかもしれません。
「自分の意見をはっきり言いなさい」という強制が子どもにとっては害悪で、「シャイネスというのは美徳なんだよ」と言ってあげることが大切、という部分は、僕自身常に自己主張するように家や学校で教えられてきましたし、子どもにもそのように言ってきたので、かなり衝撃的でした。紋切り型名教育方針を当てはめるのではなく、子どもの性格や発達段階に応じて、丁寧に接し方を変えていくしかないという、当たり前のことに改めて気づきました。


■CD
29 The Fall/Gorillaz
30 まほろ駅前多田便利軒オリジナルサウンドトラック/岸田繁

29 地味でミニマムな印象ですが、個人的にはかなり好きです。バラエティに富んた発想豊かな楽曲の数々は単純に聴いていて楽しいです。ゴテゴテとした装飾がない分、曲のよさがダイレクトに伝わり、また、リラックスして聴けるところもよいです。デーモン・アルバーンがこんなポジション(自分の才能の赴くままに自由に楽曲を発表して、かつ長期的に商業的成功もおさめる類)のアーチストになるとは10数年前には考えられませんでした。

30 「くるり」の岸田さんが作ったサントラ。ボーナストラックとして「くるり」の楽曲が2曲入ってますが、基本的には純粋なサウンドトラック集です。多国籍的なごった煮の音が満載で聴いていて楽しいですが、基本的にはディープな「くるり」ファン、もしくは映画を気に入った人向けの作品だと思います。


■映画
15 ジャンパー/監督 ダグ・リーマン
16 英国王のスピーチ/監督 トム・フーパー

15 世界各国をテレポートできる主人公という発想と次々と世界の観光名所が現れる映像は楽しく、面白くなる予感は満載だったのですが、正直かなりの期待はずれの映画でした。ハリウッドの失敗作にありがちな、「予告編で十分」な作品です。複雑な家庭環境ということは理解しつつも、特殊な能力を自分の欲望の充足のためにしか使わない主人公にまず共感できませんし、その主人公を追う集団の屈折した正義感の動機も今ひとつ弱く、登場人物の誰にも共感できません。ヒロインも学生時代はよかったのに成長してからは全く魅力がなくなりますし。ネタバレになるのであえて言いませんが、主人公と母の関係もご都合主義的すぎます。とにかく脚本がひどすぎます。とても、名作「ボーン・アイデンティティー」を撮った監督の作品とは思えません。もっとも、この監督の前作が「Mr.& Mrs.スミス」だったということを考えると妙に納得できますが。いろんなしがらみがあるんでしょうね。

16 巧みにエピソードを積み重ねながら、中だるみなくクライマックスまで一気に持っていく構成が素晴らしいです。2時間近い作品なのにほとんど長さは感じませんでした。ティム・バートン作品でおなじみのヘレナ・ボナム=カーターが普通の演技をしているのに少し違和感を感じたものの、俳優人の演技は完璧。ヨーク公とスピーチ矯正専門家ローグとの関係の描写も、感傷的になりすぎず、監督、俳優のセンスが感じられました。この題材に同時代性があるかといえば少し疑問な気もしますし、逆に今こそ描かれるべき作品だったという気もして、オスカーを取るほどの作品かという評価は僕自身の中でまだ定まっていません(例えば「スラムドッグ$ミリオネア」は内容といい同時代性といいあの年の受賞作品としては文句なしだった気がしています)。とはいえ、作品のクオリティは文句なしで高いです。王室を題材にしつつ、普通のエンターテイメント作品として成立させている力量も素直に評価すべきだと思います。

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映画の構造分析

2011-04-17 07:24:17 | Weblog
■本
31 日本的ソーシャルメディアの未来/濱野 智史、佐々木 博
32 映画の構造分析/内田 樹

31 日本のソーシャルメディアの普及状況やその位置づけを社会学的に分析したセミナーを収録した本です。濱野さんの著書「アーキテクチャの生態系」のソーシャルメディア部分がさらにわかりやすく噛み砕いて説明されています。ツイッターの時間性=選択同期(普段は非同期の交流だが、あるタイミングで動機的な交流が盛り上がる)、ニコニコ動画の時間性=擬似同期(別々に非同期で動画を見ているのに、コメントが動画にかぶさって出てくるので、あたかも一緒に動画を見ているように感じられる)という説明の切れ味はやはり鋭いです。ソーシャルメディアをビジネスやマーケティングにどう活用していくかという視点からさらに一歩高みにたって、日本社会とソーシャルメディアのかかわりについて考えるヒントとなるよい本です。

32 映画分析を通じて、現代思想を解説する本です。特にラカンがエドガー・アラン・ポウの小説「盗まれた手紙」を用いてフロイトの理論を分析した枠組みを使って、内田さんがヒッチコックの「北北西に進路を取れ」を用いてラカンの理論を分析している部分はスリリングでさえありました。映画の楽しさを感じつつと知的好奇心も満たされるとてもよい本です。ヒッチコックが解説した「マクガフィン」(無意味であるがゆえに機能するもの)という装置についても、この本を読んで初めて理解できた気がします。また、「ゴドーを待ちながら」という演劇が評価されている理由もなんとなくわかった気がしました(ゴドーがこの「マクガフィン」なんですね)。


■CD
28 YOU MORE/チャットモンチー

 先行シングル曲がないということもあってかアルバム全体の構成が練りに練られた完成度の高いコンセプチュアルな作品という印象を持ちました。いろんなジャンルの音楽的要素を取り入れたりトリッキーなアレンジがなされていたりして、実験的な作品とも言えます。単純にロックの持つ格好よさが感じられる素敵な作品です。小手先のテクニックではなくて、体幹の強さで勝負するサッカー選手のプレーを観ているような感動があります。


■映画
13 トゥルー・グリット/監督 ジョエル・コーエン, イーサン・コーエン
14 わたしを離さないで/監督 マーク・ロマネク

13 単純にエンターテイメント作品として面白かったです。コーエン兄弟の持つ毒やシニカルさを押さえつつ(といっても他監督の作品と比較すると十分に毒もシニカルさもありますが-「ノーカントリー」のような全編毒満載という作品と比べてという意味です)、スピーディーな展開とヒロインのジョシュ・ブローリンを筆頭とする俳優陣の好演で、ぐいぐい観客をひきつけます。逆に言うと観た後の引っかかりが少ないので、その点がオスカーを逃した理由かもしれませんが、そんな能書きが不要なくらいひたすら面白い作品だとも言えます。観て損はないです。

14 カズオ・イシグロさんの原作が大好きなので観たのですが、期待値が高すぎたのか少々期待外れでした。小説の世界観を忠実に反映した映像は美しいですし、小説では聴けない「わたしを離さないで」という曲を聴けたのは映画ならではの楽しみだと思います。ヒロインを演じたキャリー・マリガンーの抑制の効いた演技も原作のイメージどおりで素晴らしかったです。このようなたくさんの利点があるにもかかわらず、この作品は原作の持つエピソードの取捨選択に完全に失敗しているので、その点が大きな不満として残りました。2時間前後に収めるために当然原作そのままというわけにはいかないことは理解していますが、主要キャスト3人の恋愛感情に焦点を当てすぎな気がしました(原作の印象では、恋愛感情よりも友情の方や同じ運命を持つものの共感が強かった気がします)。また、本作で最も重要なカセットテープにまつわる3つのエピソード(ヒロインがカセットを聴いて踊っているのをみてある女性がショックを受ける場面、そのカセットがなくなる場面、そのなくなったカセットと同じものを探しに行く場面)がカットされているところも不満でした。個人的な思い入れが強すぎるが故の不満ですが、原作を持つ作品の映画化の宿命とも言えるかもしれません。
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The King of Limbs

2011-04-10 06:28:53 | Weblog
■本
29 「つながり」を突き止めろ/安田 雪
30 静かな爆弾/吉田 修一

29 個人的な話の脱線が多くて、この文体に慣れるまでは読むのが結構つらいです。しかし、大学の講義のようなものと割り切ると、社会ネットワークについての筆者の研究のエッセンスが詰まっているので、それなりに楽しく読めます。扱っている題材は示唆に富んでいるので、もう少し違うまとめ方があったのでは、という残念な印象が残りますが、ここは好みの問題だと思います。あとがきの「時間」と「空間」の話が一番興味深かったです。

30 東京での比較的おしゃれな暮らしを舞台にした方の吉田さんの作品。僕は個人的には地方都市を舞台にした粗野で閉塞感漂う生活を描いた吉田さんの作品の方が好きなので、本作の評価はどうしても辛めになります。TV局でドキュメンタリー番組にかかわる主人公がタリバンの仏像破壊の関係者を取材する様子と、耳が聞こえない恋人との関係が深まっていく(そして仕事が多忙になり、少し綻びが見え始める)過程をからめながら、他者を理解することの困難さやわかった気になっていることの危険性を示しています。読者に考えさせるためにあえてそうしているのだと思いますが、あまりどろどろとした感情を描かずに(特に主人公の恋人)、さらっと流れているところが、個人的には食い足りなさが残りました。とはいえ、一気に読ませる魅力のある作品だと思います。


■CD
26 Loose/Nelly Furtado
27 The King of Limbs/Radiohead

26 以前にNapsterではまっていた作品を改めて購入。やはり楽曲の質が秀逸。アイデア満載のアレンジで何度聴いても楽しめます。アーチストよりも純粋に作品自体が評価対象になる特殊な作品です。正直、Nelly Furtadoの他の作品には全く興味ありませんし。

27 静かな作品。さらっと流れて印象も薄いのですが、なぜかもう一度聴いてみようという引っかかりが残ります。Radioheadの作品という先入観がそうさせるのか、作品自体の魅力なのか、現時点ではまだ判断しかねています。個人的にはRadioheadの現時点の最高傑作は、実験性とポップさが絶妙に融合した前々作の「Hail to the Thief」なのですが、前作「In RAainbows」と本作はエレクトロニックとオーガニックが融合した新たな傑作を生み出すための過渡期的作品という印象も持ちました。当分聴きこみます。


■映画
12 なくもんか/監督 水田伸生

 宮藤官九郎さんの脚本らしく、スピーディーな展開で悲惨な人生をコミカルにポップに描いた作品。阿部サダヲさんを筆頭に俳優人の演技もすばらしく、瑛太さんや竹内結子さんもすごく魅力的。「もう終わり」といった感じで時間も忘れて一気に観たのですが、不思議と観終わった後の引っかかりは少ないです。全ての映画が観客に何か引っかかりを残す必要はなく、2時間現実を忘れさせて楽しませる作品があってもいいと思いますが、本作は完全に後者の作品です。リラックスして笑える映画を観たい方にお勧めです。
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Voodoo

2011-04-02 07:04:10 | Weblog
■本
27 怒らないこと 2/アルボムッレ・スマナサーラ
28 東京ファイティングキッズ・リターン/内田 樹、 平川 克美

27 前作より仏教の本質により触れられている気がします。「生きることは苦」、「自我はない」、「許しは成り立たない」など直接的で挑発的な言葉が続きますが、全面的には受け容れられない面はあるものの、「こういう考え方も確かにあるな」という発見がありました。怒りを10の種類に分類し分析しているところや「智慧」を重んじるなど、仏教が意外と論理的であるということがわかったのも収穫でした。「怒り」への対処だけでなく、「人生」に対する考え方に新しい視座を与えてくれる本です。「仏教」をきちんと学んでみたいという気にもなりました。

28 楽しく読めましたが前作よりも少し難解で身内受けのネタが多い気がしました。特に「時間」の概念についての話はよく理解できませんでしたし、理解した気になってもいけないと感じました。しばらく時間をおいて再読したいと思います。


■CD
25  Voodoo/D'Angelo
 
 あまり良く知らないアーチストなのですが、以前から気になっていて思い切って購入しました。チープな表現をあえてすると、メアリー・J. ブライジの男性版みたいな印象を持ちました。アルバムとしての完成度は半端なく高いです。微妙にテンポをずらして、ヴォーカルが入るところなども癖になります。夜にどっぷり浸って聴くのに適した作品だと思います。とにかくセンスがよいです。どこかで聴いたことのあるような楽曲ばかりなのに、よく聴くと絶妙のさじ加減でオリジナリティが配合されています。

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