本、CD、映画日記

目標は年間読書100冊。その記録と目標管理をかねたブログです。

Give a Glimpse of What Yer Not

2016-08-27 09:45:42 | Weblog
■本
65 地域再生の失敗学/飯田 泰之
66 拡張するテレビ/境 治
67 おとなの教養/池上 彰

65 「地域再生」を「人口10万人以上の市の中心街とその通勤圏」における「平均所得の向上」と定義し、経済学者の著者が、この分野の実務者や研究者との対談を通して、これまでの地域再生の取り組みの問題点を明らかにし、今後どのように取り組むべきかのいくつかの視点を提示する本です。シャッター商店街の店主は意外と資産家なので実はそれほど困っていない、とか、公共サービスの民間への委託により自治体の借金が見えにくくなっている、とか、紋切型のメディア報道では得られない事実を(もちろん全てがそうではないのでしょうが)知ることができて参考になりました。地域のお金の入りと出をきちんと管理するなど、ごく当たり前でシンプルですが、実際できていないことに鋭く切り込んでいるので、より具体的に地方都市の課題とその処方箋がイメージできました。結局は、「モノ」ではなく、やる気のある「ヒト」に投資するという視点も参考になりました。

66 HULU、Netflix、AbemaTVといった最新の動画配信サービスの流れが網羅的に整理されているので、この分野をざっと理解するのに役に立ちます。また、これらの動きが既存のテレビやコンテンツ産業、そして広告コミュニケーションに与える影響についても考察されていて参考になります。考察自体は「コンテンツ中心」など目新しい視点は、あまりないですが、論点がうまく整理されているので、自分でこの変化を考える材料としては優れた本だと思います。

67 池上彰さんが「現代の教養七科目」と認識されている、「宗教」「宇宙」「人類の旅路」「人間と病気」「経済学」「歴史」「日本と日本人」の各テーマについての基礎知識をコンパクトに解説してくれるよい本です。単に知識を教えてくれるだけでなく、「時代の課題に応じて経済学は変わる」や「歴史観は一つではない」など、それぞれの分野を学ぶ上で、どのような視点が必要なのかについても解説してくれているので、今後学びを深めていくうえでも非常に参考になります。冒頭での「すぐ役に立つことは、すぐ役に立たなくなる」という指摘はまさにごもっともで、このような教養とすぐに役に立つTipsとのバランスを考えて学んでいく必要があるとあらためて思いました。


■CD
49 Give a Glimpse of What Yer Not/Dinosaur Jr

 激しいギターサウンドですが、なぜか心が穏やかになる優しいメロディ満載のいつものDinosaur Jr節です。音から各メンバーの温かい人間味が溢れてきます。と言っても決してマンネリではなく、齢を重ねたからこそ出せる、艶のあるヴォーカルやリズムセクションの安定感が際立っていて、ここ最近のこのバンドの作品の中では最も優れていると思います。古くからのファンだけでなく、初めて聴く人にもお勧めです。


■映画
59 武士道シックスティーン/監督 古厩智之

 女子剣道部という設定は捻りが効いてますが、内容は王道の青春スポーツもので素直に楽しめます。友情、努力、葛藤、成長、勝利、別れ、再会という必要な要素が無駄なく全て入っています。成海璃子さんが屈託を抱えるストイックな天才剣士で、北乃きいさんが素直で天然な剣道部員というキャスティングも絶妙です。最初は成海璃子さんの演技力に感嘆しますが、次第に北乃きいさんのヘタウマな演技にも共感してきます。天然少女のお父さん役の板尾創路さんが、これまた天然な演技で絶妙のアクセントとなっています。お姉さん役として今をときめく波瑠さんがチョイ役で出演していて、芸能界の競争の激しさを垣間見ることができます。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ファインディング・ドリー

2016-08-21 06:30:19 | Weblog
■本
64 アイネクライネナハトムジーク/伊坂 幸太郎

 斉藤和義さんからの作詞の依頼で書いた小説「アイネクライネ」(この小説をもとに斉藤和義さんは「ベリーベリーストロング」という素晴らしい曲を書かれています)とその続編や同一世界での別の登場人物の小説を収めた短編集です。各短編の登場人物が群像劇的に絡み合い、さらに時系列が前後に行き来する複雑な構造ですが、伊坂さんの作品らしくキャラクターの書き分けが非常に巧み(気負いすぎないやさしい人間のさりげない勇気が繰り返し描かれています)なので、混乱することなく楽しく読み進めることができます。伊坂さんの他の作品のような事件の謎解きはありませんが、予測不能なストーリー展開のスリリングさを楽しむ作品です。齋藤和義さんの曲のフレーズの一部を客のその時の気分に応じてかけてくれる「斉藤さん」というキャラクターが最高で、このあたりの伊坂さんのセンスに感心します。必ずしもハッピーエンド過ぎない展開も伊坂さんらしく、偶然の人との出会いを大切に、気楽に愚直に生きていくのも悪くないと思わせてくれる作品です。


■映画
58 ファインディング・ドリー/監督 アンドリュー・スタントン

 言わずと知れたヒット作「ファインディン・ニモ」の続編です。可愛く擬人化された海洋生物と美しい海中世界の映像はさすがピクサーとうならされますが、それにも増して、環境をテーマにした「ウォーリー」も監督したアンドリュー・スタントンらしく、一筋縄ではいかない深みのあるテーマ設定に感心しました。前作同様親子の絆をメインに置きつつ、すぐにものごとを忘れるドリーを主人公にしてハンディキャップをテーマにし、お互いに足りないものを補い合う個性尊重や自分の強みを理解して殻を破ることの大切さもさりげなく教えてくれます。ストーリーの方は、かなりご都合主義的で、水族館という人工的な施設が舞台の大半ということもあって、前作にあった生存競争の厳しさのようなスリルはほとんど感じませんが、ドリーが両親に出会うシーンや最後の脱出シーンの演出が非常に巧みで、思わず涙腺が緩みました。エンターテイメント作品としてももちろん一級品ですが、押し付けではない教育的要素もしっかり満たしていて、ハリウッドの底力のようなものを感じる奥行豊かな作品だと思います。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

DANCE TO YOU

2016-08-13 13:31:01 | Weblog
■本
62 スーパーヒューマン誕生!/稲見 昌彦
63 カリスマが語る経営塾/日本経済新聞社(編)

62 科学技術により人間の運動機能や感覚を拡張させる「人間拡張工学」について解説してくれる本です。タイトルのように、「スーパーヒューマン」として人間の能力をさらに拡張する技術だけでなく、眼鏡のように低下した機能を一般的な水準にもってくるための技術についても説明してくれていて、SF的な好奇心を充たす以上の社会貢献をこの学問が果たしていることがわかります。SF小説や映画の場面を引用しつつ説明されているので、私のようなサブカルチャー好きな人にはお勧めです。また、AR、ウェアラブルデバイスやロボット技術の進化が私たちにどのような意味をもたらすのか、について、一つ次数を上げて俯瞰的に考えるのにも参考になります。この分野を取り組むことが本当に楽しいという、筆者の研究者としての熱量が伝わってくる本です。

63 おそらく電子書籍向けに日経新聞のインタビューをまとめて、その分野の有識者の解説を加えた本だと思います。「事業再生」と「ITによる需要拡大」の2つがテーマとして取り上げられています。「事業再生」の方は、日本マクドナルド、星野リゾート、カルビーの取り組みを「ストーリーとしての競争戦略」の楠木建さんが解説して下さるので、楠木さんファンにはお勧めです。「ITによる需要拡大」の方は、サイバーエージェント、松井証券、ネットイヤーグループが事例として取り上げられているので、若干事例としては古い印象が残りますが、国領二郎さんの解説がなかなか熱くて興味深いです。コンパクトに日本企業のケースを学びつつ頭を整理するにはよい本だと思います。


■CD
48 DANCE TO YOU/サニーデイ・サービス

 最近の曽我部恵一さんや再結成後のサニーデイ・サービスの作品は勢いで作ったようなシンプルな曲が多い印象でしたが、この作品は結構作りこまれています。第一期のラスト3作「24時」、「MUGEN」、「LOVE ALBUM」にテイストとしては、似ているかもしれません。ソングライターとしての曽我部さんの才能を堪能できる素晴らしい作品ですが、なぜか閉塞感を感じます。サニーデイ・サービスというバンドが、また、転換期に来ているのかもしれません。次作以降の展開が楽しみです。


■映画
57 16ブロック/監督 リチャード・ドナー

 ブルース・ウィリス主演のサスペンス・アクション。そんなにヒットした記憶はないですが、ストーリーにメリハリがあり、エンディングの後味もよく手堅く好ましい作品です。リーサル・ウェポンシリーズの監督作品ということもあって、アクションシーンの見せ方も巧みです。脚が悪い主人公によるアクション映画という設定が、個人的には斬新だと思いました。思わぬ偶然からダメ警官が事件に巻き込まれ、過去の行いを反省し、一念発起してある人を救って再生する、というありがちな作品ですが、腹の出たブルース・ウィリスがこの役に見事にはまっていて、類似作品を上回る魅力を放っています。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

できれば愛を

2016-08-06 09:59:39 | Weblog
■本
60 勝ち続ける意志力/梅原 大吾
61 誰がこの国を動かしているのか/鳩山 友紀夫、白井 聡、木村 朗

60 先週読んだ、ちきりんさんとの対談本のきっかけとなった、世界一のプロゲーマーである梅原さんの書かれた本です。将棋の羽生名人が書かれたベストセラー「決断力」にも通じる、ある道を究めた人だから言える名言、考え方が満載の本です。実体験に基づき、自分の言葉で書かれているので、よくある自己啓発本をはるかに超える腹落ち感があります。ある道のトップで居続けるためには、変化し続けること、考え続けることの大切さがよくわかります。結局、何かに自分を委ねるという安易な道に逃げない(思考停止に陥ってひたすら努力をし続けることも含めて)勇気がとても重要なのだと思います。

61 不勉強ながら木村朗さんのことをよく存じ上げていなかったのですが、あの鳩山元首相と「永続敗戦論」で大ブレークした政治学者の白井聡さんとの鼎談ということで、興味を持って読みました。もう少し喧々諤々とした議論を期待していたのですが、アメリカへの従属姿勢を強める現政権への批判で一致しているためか、穏やかな議論が中心で少し物足りない印象が残ります。鳩山さんは、世間で言われているほど、無能ではないですし、おっしゃっている主張の中には耳を傾けるべきものも多くあると私も思っていますが、やはり理想主義的過ぎて現実の局面を打開するしたたかさに欠けていたのだと思います。対米従属する日本のシステムに負けた恨み言をいうだけでなく、鳩山政権はどうすべきだったのか、という点を失敗した反省や「永続敗戦レジーム」という考え方を用いて、もっと突っ込んで議論してもらいたかったです。


■CD
46 醒めない/スピッツ
47 できれば愛を/坂本 慎太郎

46 評価が難しい作品です。美しいメロディの安定のスピッツ節、とか新作が聴けるだけでうれしいといった評価をすることはできるのですが、今ひとつさらっと流れていって引っかかりが少ない印象が残ります。美しくも穏やかな世界観の中に、一瞬垣間見えるゆらぎや違和感もこのバンドの魅力だと思うのですが、そういったものは現時点ではあまり感じられませんでした。ただ、結成後30年近くたったバンドで、ここまで仲のよいアットフォームな雰囲気を出し続けられる彼らの人柄よさは素晴らしいと思います。ずっとファンでいたいと思わずにはいられない作品でもあります。

47 こちらは違和感全開の作品です。前作は「人類滅亡後の地球でむなしく鳴り響く」音楽という、視界を極限まで長く取った世紀末的でやけくそのような明るさを持った作品でしたが、今作は「顕微鏡でのぞいたLOVE」という、逆に極限まで視界を小さくした哲学的でかつ人をなめたようなサウンドになっています。全体的には明るくポジティブなのですが、この作品の方がいろいろと深く考え込まされることが多く、聴き手に妙な緊張を強います。「鬼退治」という人をなめ切ったボコーダーを使った曲の、「さあいくぞ きついぞ」という歌詞にこの作品のエッセンスが集約されていると思います。やけくその明るさだけでは通用しない、現実の「きつさ」が滲み出ています。でも、全体の雰囲気が明るいところがつかみどころがないです。


■映画
56 振り子/監督 竹永 典弘

 鉄拳さんの有名なパラパラ漫画か動画の映画化です。とてもベタな展開ですが、安易にファンタジーに逃げなかった点は評価できると思います。ただ、進みゆく時間に抗う主人公の苦悩が原作の主題だと思いますので、原作から改変したストーリー展開は「振り子」というタイトルにはそぐわないと思いました。安直な企画ものの映画とは一線を画する意欲作だとは思うのですが、鉄拳さんの原作を上回るほどのオリジナリティやインパクトを残せていないことも事実で、あらためて原作の秀逸さに感嘆します。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする