本、CD、映画日記

目標は年間読書100冊。その記録と目標管理をかねたブログです。

働く男

2015-09-23 16:15:01 | Weblog
■本
85 働く男/星野 源

 歌手としても俳優としても活躍されている星野源さんの映画評やその他の文章をまとめた本です。くも膜下出血で倒れられる前の多忙な時期の作品とのことで、冒頭に書かれている体調回復後の「働く」ことに対する考え方の変化についての文章が、とても誠実な内容で共感できます。優しい外見と異なり、「表現する」ということにとても熱く、ストイックな人だということがわかりました。「SAKEROCK」時代の音楽はほとんど聴いたことがないので、自作楽曲について解説された文章を読んでいると聴いてみたくなりました。巻末に芥川賞作家となったピース又吉さんとの対談も収録されていて、盛りだくさんでお得な感じのする本です。


■CD
43 At the Apollo/James Brown

 名作の誉れ高い作品です。独特の「癖」がまだそれほど強くない時期の作品なので、シンガーとしてのジェームス・ブラウンの実力がよくわかります。大御所となるにつれて、パフォーマンスがどんどん重厚にクドくなっていくイメージですが(それはそれでこの人の唯一無二の個性で魅力的ですが)、この作品はライブ盤ということもあり、軽快なグルーブ感がむしろ心地よいです。聴いていてテンションが上がる作品です。


■映画
64 エンド・オブ・ホワイトハウス/監督 アントワーン・フークア
65 すーちゃん まいちゃん さわ子さん/監督 御法川 修

64 ホワイトハウスが北朝鮮のテロリストに襲撃されて陥落するという現実離れしたストーリーで(アメリカ領土内それもホワイトハウス上空に敵機が単独であんなに簡単に襲撃できることがまずありえません)、あまり期待せずに観たのですが、絶望的な状況から一歩一歩着実に状況を好転させていく展開が抜群に面白かったです。大統領を救出するためにたった一人でテロリストに立ち向かう主人公という設定は「ダイ・ハード」を連想させますが、主人公のキャラクターが若干弱いことを除けば(よくよく考えるとブルース・ウィリスのジョン・マクレーン刑事は、強さだけでなく悲哀や可愛げがあってとても魅力的なキャラクターだと思います)、この名作に決して劣らないと思います(1作目に勝つと言うと言いすぎですが、少なくとも2作目と同等、3作目以降には勝っていると思います)。監督の手腕があまりに見事なので調べてみたら、これも名作の「ザ・シューター/極大射程」を撮った人なんですね。安定感のあるエンターテイメント作品をコンスタントに撮れる素晴らしい監督だと思います。

65 アラサー女子3人が、それぞれ悩みを抱えつつも真摯に日常生活を送る姿を友情を軸に描いた作品、といういかにもミニシアター受けしそうな作品で期待を持ってみましたが、個人的にはあまり共感できませんでした。私が男性だからかもしれませんが、主演の柴咲コウさんがゴージャス過ぎて(料理好きの素朴な女性を好演されていましたがそれでもオーラは隠せません)、恋愛下手な女性という設定にリアリティを全く感じませんでした。登場する男性キャラクターが、それぞれそれなりの優しさや弱みを持ちつつも、結局は単なる自分勝手な人間としてしか描かれていない点も物足りませんでした。真木よう子さん、寺島しのぶさんを含めて、メインキャラクターはとてもいい演技をされていたので、もう少し脚本がこなれていたらと思うと少し残念です。もっとも、男性目線の映画の大半に女性は同じような不満を持つのかもしれませんが。
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職業としての小説家

2015-09-20 06:34:45 | Weblog
■本
82 職業としての小説家/村上 春樹
83 新・現代思想講義 ナショナリズムは悪なのか/萱野 稔人
84 え、なんでまた?/宮藤 官九郎

82 タイトル通り村上春樹さんのプロの小説家としての考えが詳細に書かれている本です。普段あまり語られない村上さんの個人的な話もたくさん語られていて、ファンにとっては興味深い本だと思います。小説家としても一人の人間としても、残された時間がそう多くはないと村上さん自身が悟られているような雰囲気が全編に漂っていて、読んでいて少し寂しい気もしますが、齢を重ねてからもいかに進化していくかの一つのロールモデルとしても参考になり勇気づけられます。村上さんの自伝としても、小説家を志す若者のガイドブックとしても、中年世代が参考にすべき一つの職業論としても読める、多面的な魅力を持った本です。

83 ナショナリズムを否定し、グローバル化が過度に推進されると、日本のように比較的早く発展した国は、結局、世界的な均一化圧力で国内経済力が大幅に低下し、その低下度合が限界を超えると戦前のようなファシズムに至ってしまうので、ナショナリズムをやみくもに否定するのではなくうまくコントロールしていこう、という趣旨の本と私は読みました。議論の丁寧さを意識しすぎるあまり、表現がまどろっこしくて若干読みにくい箇所がありますが、ドゥルーズ=ガタリやフーコーといった他の思想家の概念をわかりやすく説明しつつ、巧みに援用した非常に明快な論理展開で筆者の主張がよく伝わってきます。個人的には、今度は逆にグローバリズムやグローバリゼーションの定義についてよく勉強してから結論を出したいと思いましたが、少なくとも妄信的にある概念を否定するのは危険だということがよく理解できました。少し自分の視野が広がった感じがするよい本です。

84 宮藤官九郎さんのエッセイ集の続編です。基本的には脚本家、映画監督、俳優、ロックミュージシャン、父親として幅広く活躍されている多忙な日常が面白おかしく語られています。ご出身地が被害にあった東日本大震災直後のエッセイも収録されていて、現地と東京での生活の情報のギャップや非常事態での作家の無力さに悩まれていることが語られていて興味深いです。個人的には、学生時代の「なにもの」でもなかった時代に、焦燥感に駆られて「なんか書きたい」と松尾スズキさんと電話で話されたエピソードが印象的でした。そこで行動を起こせるか起こせないかが表現者としての分かれ目なのでしょうね。


■映画
62 ザ・インタープリター/監督 シドニー・ポラック
63 ジュラシック・ワールド/監督 コリン・トレボロウ

62 とてもしっかりとした映画で見ごたえがありました。社会派の作風を取りながら主張は強すぎず、ダイナミックで予測が難しい魅力的なストーリー展開でグイグイ引っ張るサスペンス映画です。「愛と哀しみの果て」でアカデミー監督賞を受賞したシドニー・ポラック監督の手腕が光ります(すでにお亡くなりになっていてこの作品が最後の作品となったようです)。ニコール・キッドマンはいつもと違った抑え目の演技が陰のある主人公にマッチしていますし、ショーン・ペンはいつも通りの癖のある役を好演していて、この二人のセクシャルになり過ぎない、ぎこちない心の交流も見どころです。

63 遺伝子操作された新種の恐竜や恐竜同士の戦いなど、観客の観たいシーンが徹底的にマーケティングされています。パーク側の慢心によるミスというお約束のストーリー展開に、映像技術の進化を活かした、過去のシリーズ作をはるかに上回る大迫力の映像で、頭を空っぽにしてひたすらスクリーンからの刺激に身を委ねる快感が得られます。アメリカで大ヒットしているのも納得です。結局は安易なシリーズものなのですが、豊富な資金に裏打ちされた力技のクオリティで屈服してしまいます。
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クズころがし

2015-09-12 08:45:06 | Weblog
■本
79 円卓/西 加奈子
80 0ベース思考/スティーヴン・レヴィット、 スティーヴン・ダブナー
81 クズころがし/鈴木拓

79 ピース又吉さんが絶賛している西加奈子さん。一度読みたいと思っていたので、地元の関西弁満載で映画化もされたこの本を読みました。まず、文体で勝負する作家さんだという印象を受けました。軽快で視点が自在に入れ替わる地の文がとても個性的で読んでいて心地よいです。エンディングの言葉の使い方も非常に巧みでその才能に圧倒されました。かと言って、キャラクターやストーリーがおろそかにされているわけではなく、主人公「こっこ」と幼なじみの「ぽっさん」の強烈な個性と、その大人びた哲学的な会話にしびれます。子ども時代の楽しさと生きにくさが丁寧に描かれていて、子どもたちを一人の人間として敬意を持って接することの大切さに気付かされます。

80 オフビートな文体は読みやすいですし、語られている事例も面白いのですが、結論があいまいでとらえどころのない本というのが途中までの印象でした。ただ、終盤に他人を説得する上での「物語」の有効性を語られる場面で、だらだらとストーリーが語られてきた種明かしがされ、非常に周到に巧まれた本だったということに気づかされます。書かれている内容は、先入観にとらわれず0ベースで考える、知ったかぶりをしない、慣例をやめてみる、と類似書で語られているものと大差はないですが、物語中心の内容は確かに記憶に残り、筆者達の試みは成功している気がします。

81 炎上芸人ドランクドラゴンの鈴木さんが、自分のクズさについて語られている本です。12年のレギュラー番組の中で、ほとんど必要とされなかった(レギュラーなのに3か月に1度しか呼ばれないこともあったそうです)苦い経験を踏まえ、そのレギュラー番組が終了した際の危機感から、自分の芸人としてのポジショニングを考え抜き、ブログやひな壇トークでの試行錯誤から、「クズ」というポジションを獲得するに至った経緯が語られています。最近テレビで見る鈴木さんは確かにとても面白く独特で、個人的に注目していたので、興味深く読みました。中高とサッカーに打ち込み、格闘技でもかなりの実力者であるなどかなりの努力家であることや、自己プロデュースについては周到に考え込まれていることがわかり、鈴木さんに対する印象も変わります。限られた自分の持っているもので、どう戦うかについて考え抜くことの大切さに気付かされるよい本です。でも、基本的に書かれている内容はかなり「クズ」です。


■映画
60 ハムナプトラ3 呪われた皇帝の秘宝

 これまではエジプトが舞台でしたが、今度は古代中国のミイラです。わがままな人ばかりでどのキャラクターにも共感できませんし、ストーリーもB級テイストたっぷりですが、肩の力を抜いて気楽に楽しむにはよい映画です。映像やアクションは意外とお金がかかっていてクオリティが高いです。カチッと作りこまれた作品が増えてますが、こういう緩い作品もたまにはいいですね。家族で突っ込みながら観ると楽しいです。
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インサイド・ヘッド

2015-09-05 14:51:36 | Weblog
■本
78 幸福のレッスン/鴻上 尚史

 タイトル通り鴻上尚史さんが幸福になるためのヒントを与えてくれる本です。ポジティブさとネガティブさのバランスがちょうどよくて、自己啓発本の自信満々な文体にも、アンチ自己啓発本の過度の現状肯定感にも、抵抗がある方にお勧めの本です。幸福は人それぞれ、(そもそも幸福が人生の意義かどうかも疑問ですし)、ということがよくわかり、自分を見つめ直すのに役立つと思います。個人的には「『めんどくさい』がすべてを腐らせる」という言葉に、大いに反省させられましたし、「10年先から戻ってきたと考える」(自分の齢の10年後の世界から戻ってきたと考えると「手遅れ」とか「年老いた」という気分がなくなる、というアドバイスです)という言葉に大いに励まされました。即効性もありますし、長期的にじわじわと効いてくる要素もある、よい本です。


■CD
42 What are you looking for/ハナレグミ
43 Constellations Of Music/CORNELIUS

42 冒頭から優しさに溢れたシンプルで地味な曲が続きます。最後のライブ曲で一気に盛り上がって、グルーヴを大事にするハナレグミの面目躍如といったところですが、全編を通じて、成熟しすぎた感じがします。いい曲を作ろうというこだわりは、すごく感じるのですが、ちょっと単調な印象が強いです。聴きこむと印象が違ってくる気もしますので、じっくり付き合っていきたいと思います。

43 CORNELIUSこと小山田圭吾さんの近年のオリジナル楽曲、リミックス、プロデュース作品を集めた企画盤です。久しぶりのCORNELIUS名義の作品なので、うれしいですが、やはり完全オリジナルなアルバムが聴きたくなりますね。内容はどの曲も少し古い言葉になりましたが、「音響派」の系統に沿った音の響きが心地よいものばかりで、存分に音の余韻に浸ることができます。


■映画
57 わたし出すわ/監督 森田 芳光
58 ミニオンズ/監督 ピエール・コフィン、 カイル・バルダ
59 インサイド・ヘッド/監督 ピート・ドクター

57 周囲の夢や希望を実現するために金銭的支援をする主人公を描いた、お金をテーマにした不思議なテイストの映画です。友情と家族愛をベースにお金で人生がいい方に変わる人、悪い方に変わる人、そもそもお金に人生が左右されない人、が描かれていますが、よくある教訓めいた話に落ち着かず、一種のファンタジーのように描かれているところが森田監督の個性が存分に発揮されていて好ましいです。主人公のお金の出どころを含め、謎の多い少し不気味な主人公を、小雪さんが独特の空気感で演じられています。回収されない伏線が多く、観客に解釈の多くを委ねるタイプの映画なので、賛否が分かれる作品だと思います。個人的には、国家レベルの機密を扱っている秘密組織まで出すことはなかったような気がします。

58 ミニオンズ大好きです。キャラクターの毒の加減が絶妙です。ロッククラシックの名曲をバックに(選曲のセンスが抜群です)、コミカルでかわいい、ミニオンたちのドタバタコメディーを観ていると本当に幸せな気分になります。「怪盗グルー」シリーズのような、心が温かくなるような要素がないので深みには欠けますが、その分シンプルに、ミニオンズのキャラクターを存分に堪能できます。大人から子供まで、頭を空っぽにして安心して楽しめる優れた作品です。

59 「トイ・ストーリー」、「モンスターズ・インク」で有名なピクサー社の新作です。頭の中の5つの感情(ヨロコビ、イカリ、ムカムカ、ビビリ、カナシミ)をキャラクターにして、子どもの思春期による心の変化を描いたチャレンジングな作品です。うちにもちょうど同じ年頃の子どもがいるので大いに共感できました。心理学的要素が入った複雑になりがちな題材をシンプルな冒険物語に仕上げる手腕は見事です。ヨロコビとカナシミに焦点が当たりすぎている点が少し不自然ですが(そもそも、ポジティブな感情がヨロコビしかないのが疑問です)話をシンプルにするためには仕方がなかったのだと思います。主人公が幼少期に作り上げたキャラクター、ビンボンの使い方が非常にうまく、「トイ・ストーリー」に通じる、成長の痛みと喜びが実にうまく描かれています。何より、客観的に見て失敗するリスクの方が大きいこの題材と設定にあえて挑戦する、「新しいものを作り続けたい」というピクサー社の志の高さに感動しました。
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