本、CD、映画日記

目標は年間読書100冊。その記録と目標管理をかねたブログです。

友だち幻想

2017-06-24 10:31:59 | Weblog
■本
48 女の子が生きていくときに、覚えていてほしいこと/西原 理恵子
49 九十歳。何がめでたい/佐藤 愛子
50 友だち幻想/菅野 仁

48 西原理恵子さんが、これから社会に出る女の子に向けて書かれた人生訓です。自分の置かれた現実をきちんと認識すること、男に依然しなくても生きていけるように自分で稼げる仕事を持つこと、など西原さんの実体験を踏まえ、これまでの書籍で語られてきたことと基本的な主張は同じですが、反抗期を迎えた娘さんとの関わりについて書かれている点(「毎日かあさん」終了の背景も書かれています)が興味深いです。うちも男の子ですが、思春期を迎えた子どもがいるので、その接し方の参考になりました。子どもに教えるべきことは、成功するための方法ではなく(そんなもの簡単にわかりませんし)、失敗したときに立ち直る方法だということに、あらためて気づかせてもらいました。

49 話題のベストセラーなので読みました。私も齢を重ねるにつれ、体力や目の衰えを日々実感していますが、さらに齢を重ねると、突然膝から力が抜けることや、花粉症が治まる(そもそもアレルギー反応する免疫力さえ衰える)ことを知り衝撃を受けました。90歳を過ぎた身に起こる、その衝撃的な実態を、達観しつつも悲観することのないユーモラスかつ毒の効いたテイストで書かれているところがこの本の最大の魅力です。子どもが蹴ったサッカーボールに当たって体調を崩して亡くなった老人の遺族が、その少年の両親を訴えた事件に対する違和感を表明するなど、若い世代がなかなか言いにくい、不寛容な「良識派」の主張に対する批判を、その良識派のさらに先輩世代である佐藤さんがおっしゃって下さっている点も、とても痛快です。

50 こちらも最近評判になっていると記事になっていたので読みました。「驚異の源泉」としての他者(心身ともに傷つけられる可能性のある脅威としての他者)、「生の味わいの源泉としての」他者(承認欲求を満たしてくれたり、交流そのものが生きる喜びとなり得たりする他者)、など人間関係に対して、人々が感じている不安感や充足感をわかりやすく言語化してくれているので、頭の整理にとても役立ちます。地域社会の崩壊により「同質性共同性」(同じ文化や利害関係に基づく共同性)だけではなりたたなくなったので、相手との共通点をよりどころに仲良くする方法だけでなく、「やり過ごす」ことも含めて、「気の合わない人と併存する」作法を教育することの重要性を強調されている点が印象的です。子どもに教えるべきことは「失敗したときに立ち直る方法」と「気の合わない人間ともそれなりにやっていける方法」の二つが最優先だと気づかされた今週の読書でした。
 

■映画
36 ゴールデンスランバー/監督 中村 義洋
 
 伊坂幸太郎さんのベストセラーの映画化。時間の制約もあり原作ほどのストーリーの厚みはなかったですが、割り切るところは割り切ってダイジェスト的にはならず、うまくエッセンスが抽出されたエンターテイメント作品となっています。原作と比べて主人公を助ける元恋人役の活躍が目立ちますが、竹内結子さんが好演されていて(というか竹内結子さんが出演されるのでシーンが増えたのだと思いますが)、原作とはまた違った印象が残ります。仙台の街並みの映像や斉藤和義さんの音楽も効果的で、原作ファンにも楽しめる映画化に成功していると思います。
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2017-06-17 08:56:57 | Weblog
■本
46 できる100の新法則 Instagramマーケティング/株式会社オプト
47 全思考/北野武

46 企業によるInstagramのマーケティング活用について、投稿方法や利用者とのコミュニケーション方法など、細かい点まで具体的に解説されている本です。効果測定に使うツールや、他ソーシャルメディア連携が楽になるアプリなども丁寧に説明してくれているので参考になります。どちらかというと、マーケティング戦略を考える人よりも、実務者向けの本だと思います。

47 北野武さんが、生死、教育、(人間)関係、作法、映画、について自由に語られている本です。2007年に出された本ですが、現在のスマホやソーシャルメディア全盛の、人間関係が豊かなようで息苦しい社会を予言されたような記述が多く、北野武さんの時代を読み取る力の鋭さに驚かされます。これらのテクノロジーに溺れないように、どのように子どもを育てたらよいか、という教育論としても有益な視点がたくさんあります。映画についての部分は、作品に対する考え方や編集についてのこだわりが具体的に書かれていて、映画監督としての北野武さんファンにとっても興味深い内容です。北野武さんの本を読むといつも思うのですが、その地頭の良さに圧倒されます。


■映画
34 ウルヴァリン:SAMURAI/監督 ジェームズ・マンゴールド
35 メッセージ/監督 ドゥニ・ビルヌーブ

34 「X-MEN」シリーズのメインキャラクターである、ウルヴァリンを主人公に、それも日本を舞台にしたスピンオフ作です。「ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT」を観た時にも思いましたが、ハリウッド大作シリーズで、日本を舞台にしたものは、日本人にとってはどうしても違和感が残るものになりますね。上野で新幹線に乗ったのに、なぜか長崎に着いているのは驚きでした。そもそも、原爆投下時にウルヴァリンが長崎にいた理由もよくわかりませんし。真田広之さんを筆頭に、日本人俳優が窮屈そうに演技されているのも気になりました。ストーリーは、日本人とウルヴァリンの友情を描いたもの、という想像の斜め上をいく展開で、徹底的に日本人が悪者にされている点がかえって痛快でした。

35 観た人の評価が賛否くっきりと分かれている作品なので興味を持って観ました。タイムパラドックスもの特有のご都合主義な側面は拭えませんが、エイリアンが地球に訪れているにも関わらず、戦闘にならないという切り口は斬新だと思います。「言語」をベースにエイリアンの来訪目的を解き明かす過程も丁寧に描かれていて、その過程が退屈に思われる方も多いと思いますが、個人的にはユニークな切り口を評価したいと思います。核心の謎が解き明かされるシーンでの賛否が最も大きいようですが、そのほろ苦くも慈愛に満ちた結末はとても心に残りました。全体的には、粗が目立ちますし、最近の映画の急展開のストーリー展開に慣れると冗長すぎる気がしますが(冒頭のつかみは完璧なのですが、その後少しダレてしまいます)、エイリアンや彼らが使う独特の表意文字を含むひっかかりの多い映像や、哲学的で崇高なストーリーなど、これまでにない作品を作ろうという高い志を感じる映画で好感が持てました。
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2017-06-10 10:00:07 | Weblog
■本
44 大国の掟 「歴史×地理」で解きほぐす/佐藤 優
45 子どもをのばすアドラーの言葉/岸見 一郎

44 地政学(地理的な環境が政治・経済等に与える影響を分析する学問)の視点を元に、最近のアメリカ、イギリス、ドイツ、ロシア、中東、中国の行動の背景を解説してくれる本です。誰でも知っている地理的要因を元に、イギリスのEU離脱や中東の混乱、中国の一帯一路構想などを論理的に分析してくれていて、知的好奇心が満たされます。「海と川は人間を接近させるが、山脈は人間を分離させる」という、言われてみれば当たり前のことに、多くの国の行動が大きく影響を受けていることを知り、目から鱗が落ちたような気分です。簡単に入手できる情報からも、緻密に論理的に分析することにより、いろんなことが予測可能ということを知る意味でも、素晴らしい本だと思います。佐藤優さんの新書の中でも秀逸な本だと思います。

45 ベストセラー「嫌われる勇気」でアドラー心理学を日本中に広めた岸見一郎さんによる、子育てに対する心構えが書かれた本です。「嫌われる勇気」にも書かれていましたが、子どもを「叱る」ことだけでなく「ほめる」ことも否定されている点に衝撃を受ける人が多いと思います(「ほめられないと適切な行動をしないこどもになる」悪影響を考慮しての主張です)。基本は子どもの人生は子どものものなのだから、過度に干渉せず、望む人生を自らの判断で選び取る力が付くような子育ての実践を奨励している本だと私は理解しました。中学受験情報誌の連載が元になっているので、受験生を持つ親の心構えについてもたくさんのページが割かれていて、私自身高校受験を控える子どもがいるので参考になりました(その息子と口論になったのがこの本を読んだ動機でもあるのですが)。

■映画
33 シェフ/監督 ジョン・ファヴロー

 監督のジョン・ファヴロー自ら主演していることもあり、やりたいことを自由に制約なく実現できていて、楽しんで演じていることが画面から伝わってきます。アイアンマンシリーズの監督らしく、エンターテイメントのツボを押さえた楽しい作品です。シェフである主人公の葛藤、挫折、再起、成功という流れが絶妙の時間配分で展開され、子どもとの関係修復や友情なども巧みに織り込まれていて、後味がとてもよいです。シズル感タップリの料理の描写や、大作監督のコネクションを最大限に活用し、スカーレット・ヨハンソン、ダスティン・ホフマン、ロバート・ダウニー・Jrといった超有名俳優を惜しげもなく端役に使っているところも、ちょうどいいアクセントになっていて、観ていて飽きません。マイアミからロサンゼルスに向かうシーンの風景描写も美しく、アメリカのヒューマンドラマとして理想的な作品だと思います。
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マンチェスター・バイ・ザ・シー

2017-06-03 09:31:25 | Weblog
■本
42 デジタル変革マーケティング/横山 隆治、内田 康雄
43 金メダル男/内村 光良

42 マーケティングのデジタル化やIoTの進展により、広告の閲覧数や商品の受注数など自動的に取得できる数値が高まったことで、それらの主要数値を統合し一覧でリアルタイムに閲覧できるダッシュボードの必要性が高まり、BI(ビジネス・インテリジェンス)ツールと呼ばれるものをを用いてどのように活用していけばよいか、について書かれた本です。具体的なマーケティングダッシュボードのイメージが示されているので参考になります。ただ、文章が若干わかりにくいですし、3000円を超える価格に見合う価値があるかというと少し疑問です。

43 ウッチャンナンチャンの内村さんによる小説です。主人公による過去の回想という形式もあり、会話中心にストーリーが展開されていくので、小説というよりも戯曲に近いな、という印象でしたが、ウッチャンの一人芝居の戯曲をベースに映画化が決まり、その後に小説化されたようです。東京オリンピックが開催された1964年に生まれた、分野にこだわらず常に一等賞(金メダル)を目指す主人公の人生を描いた話です。おそらく映画の「フォレスト・ガンプ」に影響を受けていると思うのですが、主人公が成長する過程での時代時代の実際のエピソードを交えつつ、波乱万丈の主人公の人生がファンタジックに描かれています。ちょっと捻りが効いたストーリー展開と、どこまでもポジティブな主人公の描かれ方がウッチャンらしいと思いました。


■CD
23 岸田繁「交響曲第一番」初演/岸田繁

 くるりの岸田繁さんが京都市交響楽団に依頼されて、オーケストラ向けに書き下ろした作品です。クラシックの作品の良し悪しは私にはよくわかりませんが、くるりの楽曲のメロディーが効果的に挿入された「Quruliの主題による狂詩曲」は、ファンとしてとても楽しめました。メインの「交響曲第一番」も壮大で印象深く、岸田さんの多彩な才能を堪能できます。


■映画
31 BRAVE HEARTS 海猿/監督 羽住英一郎
32 マンチェスター・バイ・ザ・シー/監督 ケネス・ロナーガン

31 先週に引き続き「海猿」シリーズを観ました。「THE LAST MESSAGE」同様にスピーディーな展開と、安易に人の死に頼らない点が好ましいです。少し現実離れしている点(海に沈んだ佐藤隆太さん演じる「吉岡」はふつう死ぬでしょ)がひっかかりましたが、わかりやすいストーリー展開は安心感があります。サイドストーリーを手際よく処理し、メインの救助シーンで観客を魅了するというシリーズものの良さを十分活かした作品だと思います。

32 今年のアカデミー作品賞にノミネートされ、ケイシー・アフレックが主演男優賞を取った作品ということで、ずっと日本での公開を楽しみにしていました。基本的には喪失と再生の物語なのですが、完全に再生できない主人公の葛藤と、再生の兆しのようなものをケイシ―・アフレックが見事に演じています。素朴ながらも美しい、マサチューセッツ州マンチェスター・バイ・ザ・シーの風景描写がとても暖かく、主人公の冷え切った心との対比が巧みです。主人公に比べて、元妻や兄の元妻など女性の描かれ方が少し紋切型な気がしますが、全てを語り切らない抑制の効いた演出が好ましいです。観終わった直後よりも、後々でじわっとした感動が湧き上がってくる味わい深い作品です。
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