本、CD、映画日記

目標は年間読書100冊。その記録と目標管理をかねたブログです。

これからの政治をゼロから考えよう

2018-11-24 09:28:49 | Weblog
■本
94 これからの政治をゼロから考えよう/佐々木 俊尚
95 臆病者のための億万長者入門/橘 玲
96 ウォーターゲーム/吉田 修一

94 佐々木俊尚さんが現代の民主主義について考察された本です。「権力のありか」、「正義を決める人」、「保護されるべき人」、「政治の担い手」、「民主主義の未来」といった5つの論点が語られています。非常に平明な文章で書かれていて理解しやすく、安易な陰謀論への警鐘やフェアであることの重要性の強調など、共感できる内容でもありました。特に、「最も困っている人」は「わかりやすい弱者」ではなく、例えば「キモくて金のないおっさん」という指摘は、かなり的を射ていると思いました。世界的に混乱している民主主義に対して、悲観的にも理想主義的にもならず、日常性をベースにした議論による信頼感の醸成の重要性を説くなど、地に足のついた議論を展開されていて信頼できる内容だと思います。

95 いろんなものごとの背景にある「不都合な真実」を指摘し続ける橘玲さんによる投資論です。「臆病者のための・・・」とある通り、以前に読んだ橘さんの「お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方」と比べると、かなりディフェンシブな投資方法について書かれているような気がしますが、「臆病者」である私にとっては腹落ちしやすい内容でした。基本的には、「リスクは分散することによって軽減できる」という大前提に則って、そもそも分散した投資を実現している投資信託の活用や、為替や日本も含めた一国への依存を避けるための海外の金融商品へのバランスの取れた投資を、ゆっくりと考えて実施していくことを勧められています。「損は得よりも3倍も苦痛」や「自分がいなくなれば世界も消滅してしまうから」私たちは誰もが「世界の中心」、といった人間の本質を喝破する表現も印象に残りました。

96 芥川賞作家吉田修一さんによる産業スパイアクション小説の3作目です。作品の世界観に慣れてきたので、純文学畑の吉田修一さんが、べたなエンターテイメント小説を書いているという違和感もなく、頭を空っぽにしてシンプルに楽しめました。前2作を読んでいると、ある重要人物の正体が結構早めにわかってしまい、また、その他の展開もほぼ予想通り進み、サスペンス的な楽しみ方はできませんが、ルパン三世のアニメを観ているような(峰不二子のような魅力的な女性スパイも出てきます)お約束の様式美は楽しむことができます。映画化前提で書かれているシリーズだと思いますので、日本映画の予算で世界を股に掛けるこの壮大なストーリーをどこまで描けるかが楽しみです。


■映画 
90 八十日間世界一周/監督 マイケル・アンダーソン
91 テラフォーマーズ/監督 三池 崇史

90 1956年度のアカデミー最優秀作品賞です。19世紀後半を舞台に、80日間で世界一周できるかを友人たちと賭けたイギリス紳士とその従者が、気球や船、列車などを駆使して世界各地を周る冒険映画です。60年以上も前の作品ということもあり、展開は非常にゆっくりと、そして休憩時間も挟みながら上映時間は3時間近くもあり、なかなか観るのに覚悟の必要な作品です。海外旅行が珍しかった時代なので、インド、香港、日本といった滞在地の描写は非常に丁寧で、尺も長く一緒に旅をしている気分になります。かなり違法な捜査をする刑事や現地住民に対する差別的な描写など、今観るとコンプライアンス的にどうかと思う点もありますが、逆に当時のおおらかさも感じ取ることができます。ロマンスや最後にちょっとしたどんでん返しもあり、冗長な点を除けば脚本もよくできています。ゆったりとした時間を過ごしたいときにお勧めの作品です。

91 ネットでの評価はかなり低いですが、私はそれなりに楽しめました。原作を読んでいないためか、有名俳優を惜しみなく序盤から殺し、誰が主役かわからず先の読めない展開も面白かったです。なにより、進化したゴキブリと昆虫の遺伝子を注入された人間が、その特性を活かして火星で戦うという設定が秀逸です。小栗旬さんや滝藤賢一さんの怪演も作品の世界観にあっていました。CGのクオリティの高さと、その技術で描かれているのが進化したゴキブリや昆虫に変身した人間というギャップもいい味を出しています。原作漫画や出演俳優に思い入れのある方の意見は違うと思いますが、いい意味でのB級感あふれる作品だと思います。
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コンビニ人間

2018-11-17 09:18:51 | Weblog
■本
92 コンビニ人間/村田 沙耶香
93 これからのマネジャーの教科書/グロービス経営大学院

93 非常に完成度が高く、かつ、読んでいて面白い小説です。同調圧力の強い社会での生きにくさを、コンビニという業務内容が高度に明文化された舞台を用いることで、巧みに描かれています。周囲の空気を読む力に長けた世の中的な基準からは極めて好ましい人たちの善意や好奇心が、他人への共感力が乏しく奇異に思われがちな人々にとっては、恐ろしい凶器でしかないという逆説をシニカルでも諦めでもない独特の視点(うまく言語化できまでんが、強いて言うとそもそもなぜ他人のことをそこまで構いたがるのか理解できないという視点)から描かれています。ひょんなことから主人公のコンビニ店員の女性と同居することになる勝手極まりない男性も、そのような社会の被害者のように感じられる滑稽さもあります。人に迷惑をかけずに与えられた一定の機能を果たすだけでは満足せず、自分たちに理解可能な行動を無意識に強いている、好ましい人間側の傲慢さについていろいろと考えさせられますが、読後感は不思議と悪くないです。

94 中間管理職に必要とされる力について解説された本です。ビジネススクールから出ている本だけあって、フレームワークに沿ってロジカルに必要な3つの力がまとめられていますが、「スキル」(文字通り仕事で成果を出すために必要な力)や「ウェイ」(仕事に対する熱い想いの力)はともかく、「ギャップ」(意見の相違を乗り越える力)が少しわかりにくいですし、なぜ、この3つの力が選ばれたのかの納得感も薄いです。終わりの方では、「期待を超えるミドルマネージャー」(これをもし自称されているのであれば、かなり嫌な人たちですが)へのインタビューに基づく、ケーススタディが多く掲載されていて具体的なイメージを持つことができます。この本の主張に腹落ちはしませんでしたが、取り上げられている人々の前向きなスタンスから刺激は受けました。


■CD
19 Elastic Days/J Mascis

 ダイナソーJrのフロントマン、Jマスシスによる4年ぶりのソロ作。ひたすら優しい作品です。1曲目のイントロを聴いただけで泣きそうになりました。3分前後のミドルテンポの楽曲がたたみかけるように続きます。しゃがれたヴォーカルと哀愁漂うギターの音色のハーモニーが、私のような中年男性との相性抜群です。ダイナソーJr初期のハードコアパンクをやっていたときから愛聴している身としては、一緒に歳を取ったという感慨にも浸れます。


■映画 
86 HOME 愛しの座敷わらし/監督 和泉 聖治
87 奇跡/監督 是枝 裕和
88 怒り/監督 李 相日
89 ボヘミアン・ラプソディ/監督 ブライアン・シンガー

86 原作は新聞に連載されていたときに読んでいたのですが、6年前に公開された映画版を今回観ました。水谷豊さんが主演ということで、こんなお父さん普通いないよな、という感じのいろんな意味での不思議なファンタジーに仕上がっています。座敷わらしが妙にリアルな点も原作と少しイメージが違う気がしました。しかし、独特の癖の強さはありますが、基本は家族の再生の物語。岩手県の美しい自然描写と相まって、ほのぼのとした感情に浸れます。母親役を演じる安田成美さんが妙に新鮮ですし、当時の橋本愛さんはこういう反抗期の少女を演じると抜群の安定感です。

87 先週、熊本に小旅行したのですが、その行きの飛行機の中で観ました。子供たちの即興的な演技を見事に引き出した是枝監督の真骨頂ともいえる作品です。終盤までそれほど大きな事件も起こらず、ストーリーは子供たちの日常を中心に淡々と流れていくのですが、子供たちの自然な表情にグイグイと引き込まれていきます。主人公の兄弟を演じたまえだまえだの芸達者振りは想像以上ですし、妙に色っぽい少女がいるなと思ったら、樹木希林さんのお孫さん(本木雅弘さんのお子さん)だったり、「1000年に1人の逸材」となる前の未完成の橋本環奈さんが観られたりと、メインキャストの子供たちのバックボーンも興味深いです。九州新幹線の全線開通に合わせた企画ものの映画ということもあって、列車や駅の描写が多く、私のような鉄道ファンは違った観点からも楽しめます。音楽は「くるり」が担当していて、「くるり」ファンの私としてはその点でも楽しめました。のこの映画を観て馬刺しを食べたくなったので、熊本で堪能してきました。

88 吉田修一さんの小説映画化です。原作は読んでおり、この作品の一番のキモである真犯人がわかった状態で観ていたので、俳優陣の演技などどうしても細部が気になってしまいました。渡辺謙さんを筆頭に森山未來さん、松山ケンイチさん、綾野剛さん、妻夫木聡さんといった演技派男優が揃い踏みで、そこに広瀬すずさんや宮崎あおいさんといった安定感のある女優さんが絡むので、重厚な演技合戦の様相を呈します。「怒り」というタイトル通り、どうしても「怒り」を中心とした激しい感情表現が目立つのですが(怒りと号泣シーンが目白押しです)、そんな中、繊細な「静」の演技が中心だった綾野剛さんと、ちょい役ながらもこれも控えめな感情表現が巧みだった、高畑充希さんの演技を私は評価したいと思います。犯人の可能性のある、森山未來さん、松山ケンイチさん、綾野剛さん演じる登場人物それぞれの特徴を合成した、容疑者の写真が妙にわざとらしく、かなりの熱演ではあるものの私が原作から受けたイメージからいうと美しすぎる宮崎あおいさんの演技など、映像に対して読者の想像に委ねることのできる文章の優位性を考えさせられる作品でもありました。

89 クイーン、特にフレディ・マーキュリーの一生を描いた作品です。ストーリー的には、ミュージシャンをテーマにした作品にありがちな、無名→努力→成功→分裂→再生の展開をなぞっただけでそれほど目新しいところはありません。また、このフォーマットだと、フォー・シーズンズの経歴を描いたクリント・イーストウッド監督作の「ジャージー・ボーイズ」という傑作があるので、どうしてもそれと比べて評価が辛くなります。しかし、そのようなネガティブな要素は、ラストの「ライブエイド」を見事に再現したシーンで吹っ飛びます。大観衆の前で歌うフレディ・マーキュリーの高揚感を一緒に体感できて、鳥肌が立ちました。フレディ・マーキュリーの数奇な運命をこのライブシーンで象徴的に表現する手際が見事過ぎて、そこまでの凡庸な展開もあえてやっていたのかという気にすらなりました。このシーンだけでも完全に元が取れるので是非映画館で体感してもらいたいです。フレディ・マーキュリー以外のメンバーも意外とヒット曲を作っていたということも知ることができて、熱心なファンではなかった私にとっては興味深い面もありました。

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なんとか生きてますッ

2018-11-09 06:45:16 | Weblog
■本
90 デス・バイ・アマゾン/城田 真琴
91 なんとか生きてますッ/大宮 エリー

90 ECのモンスター企業、アマゾンの躍進とその最新の取り組むを紹介しつつ、その影響で破綻に追い込まれた企業や、逆にそのアマゾンと差別化することにより、生き残りを模索している企業の国内外の事例が豊富に取り上げられていて、非常に参考になります。「ショッピング体験」を重視する顧客の要請に応えて、EC企業がリアル店舗に力を入れたり、「消費疲れ」に対応するためにサブスクリプションサービスに力を入れたりする中で、アマゾンを含めた各企業が自社の強みをどのように活かすかを必死に模索している様子がよくわかります。この業界の動きは非常に速く、すぐに陳腐化する内容なので旬の時期は短いと思いますが、現状を手際よく把握するには良い本だと思います。

91 最近画家としても活躍されていて、まずます肩書が不明となっているクリエイター、大宮エリーさんのエッセイ集です。大宮さんのドジっぷりにますます拍車がかかっていて(特にお酒での失敗談は他人事ながら心配になります)、めちゃくちゃ面白いです。自分は他人と違っていても、多少欠点があってもよいと読んでいて思える不思議な本です。大宮さんの笑いは常に自分(と母親)を一段も二段も下げることから生まれていて、他人を傷つける種類の笑いでは決してないので、彼女の周りに自然と人が集まり、それなりに迷惑をかけられたり絡まれたりしつつも、良い関係性が築けているのだと思います。本を読んでいるとそのよい関係性の一員になれたような気がしてきて、妙にうれしい気分になってきます。


■映画 
85 マイ・インターン/監督 ナンシー・マイヤーズ

 ロバート・デ・ニーロが演じる主人公の老人が、アン・ハサウェイが演じるファウンダー兼CEOのファッションEC会社にインターンとして働くというお話です。この設定から、もっと男女や世代間の対立をコミカルに描いたドタバタコメディだと思っていましたが、予想に反して、主人公が包容力のある物分かりのよい老人で、落ち着いたハートフル・コメディに仕上がっていました。「ミート・ザ・ペアレンツ」シリーズの偏屈なキャラクターとはまた違った味わいを出していて、ロバート・デ・ニーロの役者としての引き出しの多さに、いまさらながら感心しました。むしろ、アン・ハサウェイの方が偏屈で傲慢なキャラクター設定でしたが、不快になるギリギリのところで愛らしさを出していたのはさすです。メインキャラクターを観客の予想と逆の設定をしつつ、安定感あるストーリーに仕上げた監督の手腕も見事です。アメリカのベンチャー企業の状況もよくわかり、期待以上に良質の作品でした。
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劣化するオッサン社会の処方箋

2018-11-03 06:40:16 | Weblog
■本
87 教養としてのテクノロジー/伊藤 穰一、 アンドレー・ウール
88 常識的で何か問題でも?/内田 樹
89 劣化するオッサン社会の処方箋/山口 周

87 タイトルからもっとお堅い本だと思いましたが、AI、仮想通貨、ブロックチェーンといった最新テクノロジーを技術的側面から説明するというよりも、これらの技術が私たちの生活をどう変えていくのか、についての仮説が提示されている本です。ですので、私のような文系の方にもとっつきやすいと思います。「アルゴリズムが社会を良くするわけではない」という主張など、科学技術に対する適度な距離感も伊藤穰一さんの発言だからこそ、説得力があります。個人的には「ICO」(自社のサービスで使えるコインを投資家に買ってもらい資金調達する手法)が注目されている状況で、冷静にその胡散臭さを批判されている点が印象に残りました。最後には、東京オリンピックを通じて、日本や日本人はどう変わっていくべきか、という天下国家の話になり、その視野の広さにも圧倒されます。テクノロジーが社会をどう変える可能性があるのか、を考える上では参考になると思います。

88 内田樹さんによる時事コラム集です。基本的にはいつもの安定した内田さん節ですが、森友学園や加計学園の問題やトランプ大統領の影響などつい最近の出来事に対して、内田さんがどのように考えているのかを知ることができて興味深いです。これだけの量の連載コラムで、毎回ちょっとしたトリッキーな展開を仕込む、サービス精神とその引き出しの多さに感心しました。

89 先週読んだ「武器になる哲学」がとてもよかったので、引き続き山口周さんの本を読みました。新書らしくタイトルはかなり挑発的ですが、内容としては『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 』の延長線上で、「アート・サイエンス・クラフト」のバランスの重要性と、閉鎖的な会社組織だけでしか通用しない「クラフト」(経験知や人間関係)のみにその存在意義を見出し、変化の激しい時代でその経験知自体の陳腐化が急速に進む中でも、高い地位に居座る「オッサン」を痛烈に批判しています。人生100年時代で5、60歳代でそう簡単にリタイヤできなくなりつつある中、オッサン世代になっても学び続ける重要性と、経験の量より質の大切さを強く主張されている点にとても共感しました。結論としては、オッサンも若者も質のよい経験を継続的に得るために挑戦し続け、組織外でも通用する能力を磨き続けるということになり、そう簡単に実行できない面もあるかと思いますが、少なくとも質のよい学びを得るための努力はしていきたいと思いました。


■CD
18 Suspiria/Thom Yorke

 ホラー映画「サスペリア」リメイク版のサントラです。レディオ・ヘッドのフロントマン、トム・ヨークによる作品ということで購入しました。ホラー映画は苦手なので、「サスペリア」も観てませんが、音の方もとにかくおどろおどろしく、トム・ヨークらしい神経症的な緊張感と美しさの危ういバランスが印象的です。インストだけでなく、トム・ヨークのヴォーカルが入った「Suspirium」という非常に完成度の高い楽曲も収録されていて)、一聴の価値はあると思います。


■映画 
84 ミックス。/監督 石川 淳一

 気楽に楽しめるコメディ作品です。テーマとかにはこだわらず、エンターテイメントに徹しているところが潔いです。新垣結衣さんのいろいろな表情に癒されるための映画だと思いますが(癒されました)、共演されている俳優さんも質量ともにとにかく豪華です。特に、広末涼子さん、蒼井優さんの主演を食わない範囲での、自由奔放な怪女優っぷりには圧倒されました。映画にせずともテレビでの2時間枠で十分なのでは、という気がしないでもないですが、予算のかけ方に差があるんでしょうね。映画館に足を運んでいたら同じ評価だったかは別として、家でリラックスしたいときに観るには最適だと思います。
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