■本
94 これからの政治をゼロから考えよう/佐々木 俊尚
95 臆病者のための億万長者入門/橘 玲
96 ウォーターゲーム/吉田 修一
94 佐々木俊尚さんが現代の民主主義について考察された本です。「権力のありか」、「正義を決める人」、「保護されるべき人」、「政治の担い手」、「民主主義の未来」といった5つの論点が語られています。非常に平明な文章で書かれていて理解しやすく、安易な陰謀論への警鐘やフェアであることの重要性の強調など、共感できる内容でもありました。特に、「最も困っている人」は「わかりやすい弱者」ではなく、例えば「キモくて金のないおっさん」という指摘は、かなり的を射ていると思いました。世界的に混乱している民主主義に対して、悲観的にも理想主義的にもならず、日常性をベースにした議論による信頼感の醸成の重要性を説くなど、地に足のついた議論を展開されていて信頼できる内容だと思います。
95 いろんなものごとの背景にある「不都合な真実」を指摘し続ける橘玲さんによる投資論です。「臆病者のための・・・」とある通り、以前に読んだ橘さんの「お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方」と比べると、かなりディフェンシブな投資方法について書かれているような気がしますが、「臆病者」である私にとっては腹落ちしやすい内容でした。基本的には、「リスクは分散することによって軽減できる」という大前提に則って、そもそも分散した投資を実現している投資信託の活用や、為替や日本も含めた一国への依存を避けるための海外の金融商品へのバランスの取れた投資を、ゆっくりと考えて実施していくことを勧められています。「損は得よりも3倍も苦痛」や「自分がいなくなれば世界も消滅してしまうから」私たちは誰もが「世界の中心」、といった人間の本質を喝破する表現も印象に残りました。
96 芥川賞作家吉田修一さんによる産業スパイアクション小説の3作目です。作品の世界観に慣れてきたので、純文学畑の吉田修一さんが、べたなエンターテイメント小説を書いているという違和感もなく、頭を空っぽにしてシンプルに楽しめました。前2作を読んでいると、ある重要人物の正体が結構早めにわかってしまい、また、その他の展開もほぼ予想通り進み、サスペンス的な楽しみ方はできませんが、ルパン三世のアニメを観ているような(峰不二子のような魅力的な女性スパイも出てきます)お約束の様式美は楽しむことができます。映画化前提で書かれているシリーズだと思いますので、日本映画の予算で世界を股に掛けるこの壮大なストーリーをどこまで描けるかが楽しみです。
■映画
90 八十日間世界一周/監督 マイケル・アンダーソン
91 テラフォーマーズ/監督 三池 崇史
90 1956年度のアカデミー最優秀作品賞です。19世紀後半を舞台に、80日間で世界一周できるかを友人たちと賭けたイギリス紳士とその従者が、気球や船、列車などを駆使して世界各地を周る冒険映画です。60年以上も前の作品ということもあり、展開は非常にゆっくりと、そして休憩時間も挟みながら上映時間は3時間近くもあり、なかなか観るのに覚悟の必要な作品です。海外旅行が珍しかった時代なので、インド、香港、日本といった滞在地の描写は非常に丁寧で、尺も長く一緒に旅をしている気分になります。かなり違法な捜査をする刑事や現地住民に対する差別的な描写など、今観るとコンプライアンス的にどうかと思う点もありますが、逆に当時のおおらかさも感じ取ることができます。ロマンスや最後にちょっとしたどんでん返しもあり、冗長な点を除けば脚本もよくできています。ゆったりとした時間を過ごしたいときにお勧めの作品です。
91 ネットでの評価はかなり低いですが、私はそれなりに楽しめました。原作を読んでいないためか、有名俳優を惜しみなく序盤から殺し、誰が主役かわからず先の読めない展開も面白かったです。なにより、進化したゴキブリと昆虫の遺伝子を注入された人間が、その特性を活かして火星で戦うという設定が秀逸です。小栗旬さんや滝藤賢一さんの怪演も作品の世界観にあっていました。CGのクオリティの高さと、その技術で描かれているのが進化したゴキブリや昆虫に変身した人間というギャップもいい味を出しています。原作漫画や出演俳優に思い入れのある方の意見は違うと思いますが、いい意味でのB級感あふれる作品だと思います。
94 これからの政治をゼロから考えよう/佐々木 俊尚
95 臆病者のための億万長者入門/橘 玲
96 ウォーターゲーム/吉田 修一
94 佐々木俊尚さんが現代の民主主義について考察された本です。「権力のありか」、「正義を決める人」、「保護されるべき人」、「政治の担い手」、「民主主義の未来」といった5つの論点が語られています。非常に平明な文章で書かれていて理解しやすく、安易な陰謀論への警鐘やフェアであることの重要性の強調など、共感できる内容でもありました。特に、「最も困っている人」は「わかりやすい弱者」ではなく、例えば「キモくて金のないおっさん」という指摘は、かなり的を射ていると思いました。世界的に混乱している民主主義に対して、悲観的にも理想主義的にもならず、日常性をベースにした議論による信頼感の醸成の重要性を説くなど、地に足のついた議論を展開されていて信頼できる内容だと思います。
95 いろんなものごとの背景にある「不都合な真実」を指摘し続ける橘玲さんによる投資論です。「臆病者のための・・・」とある通り、以前に読んだ橘さんの「お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方」と比べると、かなりディフェンシブな投資方法について書かれているような気がしますが、「臆病者」である私にとっては腹落ちしやすい内容でした。基本的には、「リスクは分散することによって軽減できる」という大前提に則って、そもそも分散した投資を実現している投資信託の活用や、為替や日本も含めた一国への依存を避けるための海外の金融商品へのバランスの取れた投資を、ゆっくりと考えて実施していくことを勧められています。「損は得よりも3倍も苦痛」や「自分がいなくなれば世界も消滅してしまうから」私たちは誰もが「世界の中心」、といった人間の本質を喝破する表現も印象に残りました。
96 芥川賞作家吉田修一さんによる産業スパイアクション小説の3作目です。作品の世界観に慣れてきたので、純文学畑の吉田修一さんが、べたなエンターテイメント小説を書いているという違和感もなく、頭を空っぽにしてシンプルに楽しめました。前2作を読んでいると、ある重要人物の正体が結構早めにわかってしまい、また、その他の展開もほぼ予想通り進み、サスペンス的な楽しみ方はできませんが、ルパン三世のアニメを観ているような(峰不二子のような魅力的な女性スパイも出てきます)お約束の様式美は楽しむことができます。映画化前提で書かれているシリーズだと思いますので、日本映画の予算で世界を股に掛けるこの壮大なストーリーをどこまで描けるかが楽しみです。
■映画
90 八十日間世界一周/監督 マイケル・アンダーソン
91 テラフォーマーズ/監督 三池 崇史
90 1956年度のアカデミー最優秀作品賞です。19世紀後半を舞台に、80日間で世界一周できるかを友人たちと賭けたイギリス紳士とその従者が、気球や船、列車などを駆使して世界各地を周る冒険映画です。60年以上も前の作品ということもあり、展開は非常にゆっくりと、そして休憩時間も挟みながら上映時間は3時間近くもあり、なかなか観るのに覚悟の必要な作品です。海外旅行が珍しかった時代なので、インド、香港、日本といった滞在地の描写は非常に丁寧で、尺も長く一緒に旅をしている気分になります。かなり違法な捜査をする刑事や現地住民に対する差別的な描写など、今観るとコンプライアンス的にどうかと思う点もありますが、逆に当時のおおらかさも感じ取ることができます。ロマンスや最後にちょっとしたどんでん返しもあり、冗長な点を除けば脚本もよくできています。ゆったりとした時間を過ごしたいときにお勧めの作品です。
91 ネットでの評価はかなり低いですが、私はそれなりに楽しめました。原作を読んでいないためか、有名俳優を惜しみなく序盤から殺し、誰が主役かわからず先の読めない展開も面白かったです。なにより、進化したゴキブリと昆虫の遺伝子を注入された人間が、その特性を活かして火星で戦うという設定が秀逸です。小栗旬さんや滝藤賢一さんの怪演も作品の世界観にあっていました。CGのクオリティの高さと、その技術で描かれているのが進化したゴキブリや昆虫に変身した人間というギャップもいい味を出しています。原作漫画や出演俳優に思い入れのある方の意見は違うと思いますが、いい意味でのB級感あふれる作品だと思います。