■本
75 〈インターネット〉の次に来るもの 未来を決める12の法則/ケヴィン・ケリー
76 何者/朝井 リョウ
75 邦題タイトルが若干ミスリードしそうですね。インターネットの次にくる「もの」をずばり予測する本ではなく、「COGNIFYING]、「FILTERING]、「INTERACTING」など、AR、IoTなどの普及に伴う、今後のテクノロジーの方向性の核となるキーワードについて解説された本です。抽象的な議論が多く少し取っつきにくいですが、各章の後半にそれぞれの要素が浸透することにより、将来の生活がどのように変わるかについて具体的に解説してくれているので、なんとか議論についていけると思います。特段、新しい発見はないですが、現状のテクノロジーの動向とそれらが人々に与える影響を体系的に理解するにはよい本だと思います。
76 人間のダークな部分をこれでもかと描きつつ、後味はそれほど悪くなく、社会批評を随所に盛り込みつつ、エンターテイメント作品としても成立している素晴らしい作品だと思います。「就活」というこれまでの自己肯定感を一気に否定される状況を舞台にしたことと、人間の内面を可視化する装置としてのソーシャルメディアの使い方が非常に巧みです。終盤に思わぬどんでん返しがあるのですが、その伏線の張り方も見事で、「桐島、部活やめるってよ」でも思いましたが、朝井さんの全体的な構成力の高さに感心しました。
■CD
57 Jack White Acoustic Recordings 1998-2016/Jack White
58 Here/Teenage Fanclub
57 タイトル通り、ザ・ホワイト・ストライプス時代の作品も含めた、ジャック・ホワイトのアコースティック楽曲集です。月並みな表現で恐縮ですが、既発表曲はシンプルな構成のため楽曲自体の良さがより際立っていますし、未発表曲も収録されているので、ファンには楽しめる内容だと思います。ただ、もともと凝ったアレンジをするアーティストではないので、楽曲の新しい側面を発見するというよりも、ジャック・ホワイトの迸る才気を再確認するといった位置づけの作品だと思います。
58 ティーンエイジ・ファンクラブの6年ぶりの新作。ジャケットの印象そのままに、淡々と素敵な楽曲を奏でる円熟の極みのような作品です。穏やかで美しいハーモニーを聴いていると悟りの境地に近づける気さえします。過度にドラマティックにならず、それでいて心の琴線にきっちりと触れるメロディが素晴らしいです。短く唐突にフェイドアウトする曲もあり、一聴すると淡泊な印象もありますが、繰り返し聴くとその深みが感じられる、長く付き合っていける作品です。
■映画
67 さらば愛しき女よ/監督 ディック・リチャーズ
68 グッモーエビアン!/監督 山本 透
69 オーバー・フェンス/監督 山下 敦弘
67 コンパクトまとまっていて見やすい映画でしたが、同じレイモンド・チャンドラー原作の映画化である「ロング・グッドバイ」の方が、主人公フィリップ・マーロウのイメージが近かった気がします。ダイジェスト版のように、余計なものを一切排除して、一気に結論へと進んでいきます。そういう意味でも、ロバート・アルトマン的なトリッキーな設定が多かった「ロング・グッドバイ」とは対照的です。若いシルヴェスター・スタローンがチョイ役で出ています。
68 破天荒な親と(その恋人)に振り回される、思春期の子どもというよくある設定の映画ですが、麻生久美子さん、 大泉洋さんの巧みな演技で安定感のある作品となっています。 大泉洋さんは好きな役者さんですが、このキャラクターはあまりにも自由過ぎて、さほど共感できませんでした。麻生久美子さん演じる母親が、主人公の少女を諭す言葉も、一見愛情がこもっているようで、実は自分の価値観の押し付けで(自由に生きろと言いつつ、結局親たちの価値観を押し付けている気がします)、クライマックスシーンもさほど心が動かされませんでした。そんな中、主人公の友人を演じた能年玲奈さんが、これぞ能年玲奈という個性全開の演技で好演されていて印象的でした。
69 佐藤泰志さん原作作品を映画化した「函館3部作」の最終章ということで楽しみに観に行きました。「海炭市叙景」、「そこのみにて光輝く」も素晴らしい作品でしたが、この作品も「地方都市の疲弊」という言葉だけでは片付けられない、「生きる」こと自体の辛さ、難しさが、痛いほどに伝わってきます。ただ、 オダギリジョーさんの抑制の効いた演技もあって、その「生きにくさ」が前面に出るというよりも、ふとした感情のゆらぎにより垣間見えるところがより効果的です。中年男性として、このような立ち振る舞いができればとあこがれてしまいました。ヒロインの蒼井優さんは、オダギリジョーさんとは対照的に、情緒不安定な役を大熱演されていて、その演技力を余すことなく見せつけてくれます。これまでの2作と異なり、ハッピーエンディングなこともあってか、「生きにくさ」を抱えて何とかやっていこうという希望を与えてくれる作品です。
75 〈インターネット〉の次に来るもの 未来を決める12の法則/ケヴィン・ケリー
76 何者/朝井 リョウ
75 邦題タイトルが若干ミスリードしそうですね。インターネットの次にくる「もの」をずばり予測する本ではなく、「COGNIFYING]、「FILTERING]、「INTERACTING」など、AR、IoTなどの普及に伴う、今後のテクノロジーの方向性の核となるキーワードについて解説された本です。抽象的な議論が多く少し取っつきにくいですが、各章の後半にそれぞれの要素が浸透することにより、将来の生活がどのように変わるかについて具体的に解説してくれているので、なんとか議論についていけると思います。特段、新しい発見はないですが、現状のテクノロジーの動向とそれらが人々に与える影響を体系的に理解するにはよい本だと思います。
76 人間のダークな部分をこれでもかと描きつつ、後味はそれほど悪くなく、社会批評を随所に盛り込みつつ、エンターテイメント作品としても成立している素晴らしい作品だと思います。「就活」というこれまでの自己肯定感を一気に否定される状況を舞台にしたことと、人間の内面を可視化する装置としてのソーシャルメディアの使い方が非常に巧みです。終盤に思わぬどんでん返しがあるのですが、その伏線の張り方も見事で、「桐島、部活やめるってよ」でも思いましたが、朝井さんの全体的な構成力の高さに感心しました。
■CD
57 Jack White Acoustic Recordings 1998-2016/Jack White
58 Here/Teenage Fanclub
57 タイトル通り、ザ・ホワイト・ストライプス時代の作品も含めた、ジャック・ホワイトのアコースティック楽曲集です。月並みな表現で恐縮ですが、既発表曲はシンプルな構成のため楽曲自体の良さがより際立っていますし、未発表曲も収録されているので、ファンには楽しめる内容だと思います。ただ、もともと凝ったアレンジをするアーティストではないので、楽曲の新しい側面を発見するというよりも、ジャック・ホワイトの迸る才気を再確認するといった位置づけの作品だと思います。
58 ティーンエイジ・ファンクラブの6年ぶりの新作。ジャケットの印象そのままに、淡々と素敵な楽曲を奏でる円熟の極みのような作品です。穏やかで美しいハーモニーを聴いていると悟りの境地に近づける気さえします。過度にドラマティックにならず、それでいて心の琴線にきっちりと触れるメロディが素晴らしいです。短く唐突にフェイドアウトする曲もあり、一聴すると淡泊な印象もありますが、繰り返し聴くとその深みが感じられる、長く付き合っていける作品です。
■映画
67 さらば愛しき女よ/監督 ディック・リチャーズ
68 グッモーエビアン!/監督 山本 透
69 オーバー・フェンス/監督 山下 敦弘
67 コンパクトまとまっていて見やすい映画でしたが、同じレイモンド・チャンドラー原作の映画化である「ロング・グッドバイ」の方が、主人公フィリップ・マーロウのイメージが近かった気がします。ダイジェスト版のように、余計なものを一切排除して、一気に結論へと進んでいきます。そういう意味でも、ロバート・アルトマン的なトリッキーな設定が多かった「ロング・グッドバイ」とは対照的です。若いシルヴェスター・スタローンがチョイ役で出ています。
68 破天荒な親と(その恋人)に振り回される、思春期の子どもというよくある設定の映画ですが、麻生久美子さん、 大泉洋さんの巧みな演技で安定感のある作品となっています。 大泉洋さんは好きな役者さんですが、このキャラクターはあまりにも自由過ぎて、さほど共感できませんでした。麻生久美子さん演じる母親が、主人公の少女を諭す言葉も、一見愛情がこもっているようで、実は自分の価値観の押し付けで(自由に生きろと言いつつ、結局親たちの価値観を押し付けている気がします)、クライマックスシーンもさほど心が動かされませんでした。そんな中、主人公の友人を演じた能年玲奈さんが、これぞ能年玲奈という個性全開の演技で好演されていて印象的でした。
69 佐藤泰志さん原作作品を映画化した「函館3部作」の最終章ということで楽しみに観に行きました。「海炭市叙景」、「そこのみにて光輝く」も素晴らしい作品でしたが、この作品も「地方都市の疲弊」という言葉だけでは片付けられない、「生きる」こと自体の辛さ、難しさが、痛いほどに伝わってきます。ただ、 オダギリジョーさんの抑制の効いた演技もあって、その「生きにくさ」が前面に出るというよりも、ふとした感情のゆらぎにより垣間見えるところがより効果的です。中年男性として、このような立ち振る舞いができればとあこがれてしまいました。ヒロインの蒼井優さんは、オダギリジョーさんとは対照的に、情緒不安定な役を大熱演されていて、その演技力を余すことなく見せつけてくれます。これまでの2作と異なり、ハッピーエンディングなこともあってか、「生きにくさ」を抱えて何とかやっていこうという希望を与えてくれる作品です。