本、CD、映画日記

目標は年間読書100冊。その記録と目標管理をかねたブログです。

パラレル

2008-06-29 07:10:57 | Weblog
なんとか6月中に目標の半分の50冊に到達しました。

■本
48 グーグルに勝つ広告モデル/岡本一郎
49 座右のニーチェ/齋藤孝
50 パラレル/長嶋 有

48 お勧めしません。何より「グーグルに勝つ広告モデル」については全く書かれていませんから。安易な悲観論に陥らず既存メディアに対して前向きに提案しているところは評価できますが、提案の内容は、「利用者をセグメントして広告単価をあげましょう」というものばかり。それは、まさにグーグルが卓越した技術力で取り組みつつある内容であって、「グーグルに勝つ広告モデル」ではありません。具体的なソリューションを持たない既存メディアに「とりあえずやってみること」と精神論を語ってもなんの役にも立ちません。脈絡もなく統計学や経営学の専門用語を散りばめている点も、単なるハッタリにしか思えず不快です。この本のようにハッタリだけの企画にならないようにしなければ、と自戒をこめて後半は読んでいました。

49 読んでいてなんか元気になってきました。高い志を持たせてくれるいい本です。既成概念を破壊しようとしたニーチェの思想は、閉塞感漂う今の日本においてまさに、読まれるべきものだと思います。そういう意味での筆者の嗅覚に改めて感心しました。ニーチェがこのような解説本を望むとは思えませんが、少なくとも齋藤先生がおっしゃるように、ニーチェの書いた文章を声に出して読み、暗唱できるまで血肉化することはとても有益だし、ニーチェも望んでいたと思います。やはり、原典に挑戦しなければと改めて感じました。それにしても、ニーチェと同様に筆者のこの自信はどこから来るのでしょうか。その自信がちょっと鬱陶しかったりもします。

50 最近はまりつつある長嶋 有さんの初の長編とされる作品です。親友、親友の愛人、師匠と弟子、元妻などとのさまざまな関係に対する友情について書かれた作品だと思いました。かなり打算的であったり、必ずしも美しい人間関係について語られているわけではないのですが、なんとなく人と人との交わりについてささやかな希望が持てるいい作品です。僕が読んだ長嶋さんの作品の主人公はほぼ全て離婚しているのですが、喪失後の生活をたんたんと描くのが持ち味なのかもしれません。激しく心を揺さぶられるような作品を書くタイプの作者ではないですが、どんな人生であっても肯定しようと思えるような、しみじみとした活力が得られる読後感が好きです。

■CD
17 present from you/BUMP OF CHICKEN
18 PIED PIPER/the pillows

17 まだあまり聴き込めていません。各曲のクオリティはさすがです。カップリング集なので、全体の統一感はやはりあまりない気がします。

18 最近凄く評判のいいピロウズ。ただ、「Please Mr.Lostman 」、「LITTLE BUSTERS 」時代が一番好きなファンとしては、あまり新機軸もなく、作品全体としてアップテンポに偏っていて一本調子すぎる気がします。作品の完成度は間違いなく高いので、よい悪いの話ではなく、僕にとって合う合わないの問題だと思います。そろそろ僕がピロウズから卒業する時期なのかもしれません。


■映画
15 アフタースクール/監督 内田けんじ

 とてもおもしろかったです。かなりのお勧め。ネタバレになるのであまり詳しいことは書かない方がいいと思いますが、非常に練りこまれた脚本で状況が二転三転する、エンターテインメントとしてとてもよくできた作品だと思います。途中一切だれることなく気がつけばエンディングでした。ここまで、観ていてストレスを感じない映画も珍しいです。俳優陣の演技もよくて、大泉洋さん、佐々木蔵之介さん、堺雅人さんといったメイン3人のキャスティングも絶妙。堺雅人さんの取ってつけたような胡散臭い善人ぶりと佐々木蔵之介さんの屈折していながらどこか品のある演技もストーリーとよくマッチしています。大泉洋さんの飄々とした演技は陰影がなさ過ぎるかな、という印象を途中で持ちましたが、観終わってみるとこれも計算づくなのかもしれないという気もしています。田畑智子さんのやぼったい感じもなかなか印象的だし、常盤貴子さんもきれいで存在感が大きかった。逆に、その存在感がアダとなってか、僕はこんなちょい役で出ているわけがないと深読みしてしまって、結末が事前に予測できてしまったところが少し残念でした。
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VIVA LA VIDA

2008-06-22 16:14:34 | Weblog
■本
46 ひなた/吉田 修一
47 地球温暖化で伸びるビジネス/日本総合研究所

46 おしゃれな(僕の好きでない方の)吉田修一さんの作品です。さりげない会話や逆に語られない部分の感情描写が巧みです。不倫、同性愛、血のつながらない兄弟など、重いテーマをくどすぎず、軽すぎず、描くバランス感覚もさすがです。でも、吉田さんの東京を舞台にした小説はどうも作り物の匂いがしすぎて好きにはなれません。「長崎乱楽坂」や「悪人」といった地方都市を舞台にした作品の方が好きです。そういう意味では、本作の中にも登場人物の実家の千葉のヤンキー家族を描いた場面は好きです。

47 共著本のためか、同じ内容の繰り返しの冗長な部分と説明不足で唐突なところがあって、格好読みづらい本です。産業別に地球温暖化に伴う対応策やビジネスチャンスについてまとめるという狙い自体はおもしろい着想なので残念です。巻末に用語の索引だけでもあると、もっと印象が変わったのでしょうが。地球温暖化について学ぶためのメインテキストとしては適さないので、サブテキストとして関心のある産業のところだけ走り読みすることをお勧めします。

■CD
16 Viva la Vida/Coldplay
 
 スケールの大きい音を聴かせる傑作です。これまでのイギリス出身の成功したバンドという位置づけから、世界規模でのモンスターバンドとして生きていく覚悟を決めたかのような志が高く力強い作品です。ブライアン・イーノのプロデュースという類似性もありますが、「The Joshua Tree」を出したときのU2と同じような腹の据わった感じがします。これまでのどこかひ弱で繊細だったイメージはもうないです。今作で新たに手に入れた力強いリズムをバックに、世界に向けて堂々と音楽を奏でるといったイメージです。2008年の音楽シーンを語る上では聴いておくべき作品だと思います。

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サイバージャーナリズム論

2008-06-15 08:45:28 | Weblog
■本
44 愛しの座敷わらし/荻原 浩
45 サイバージャーナリズム論/歌川 令三 他

44 少しバランスを崩していた家族が、父親の地方転勤と「座敷わらし」との出会いをきっかけに、それぞれが活力を取り戻していくお話です。おばあちゃん、父親、母親、長女、長男と巧みに語り手を変えながら、それぞれの葛藤とその克服の過程が描かれています。「座敷わらし」の由来や「いじめ問題」などヘビーなテーマを重くなりすぎない程度に盛り込んでいるウエルメイドな作品です。父親のキャラクターが誇張されすぎていて、ちょっと鼻につくところを除けば概ね楽しめる作品でした。

45 「サイバージャーナリズム論」と大風呂敷を広げたタイトルですが、目新しい視点はあまりなく、Web2.0ブーム前後に語られた論点をあらためて整理しているにすぎないという印象です。共著本の宿命か論点も散漫ですし、今後のジャーナリズム像についても、そのイメージが筆者間でまちまちです。提示されている論点は比較的漏れがないので、自分でこの話題について考えるための参考資料として読むのがよいのかもしれません。個人的には、誰もが情報発信手段を手にした故の問題が今後顕在化してくると思います。例えば、今回の秋葉原の通り魔事件で、重症を負った人を助けることなく、携帯で写真や動画を撮影して顰蹙を買った人が多数いたという話を聞きましたが、何か事件があった際に、実際に行動することなく傍観者に徹する人に大義名分を与えてしまった感じがあります。「事実をありのままに記録する」という大義名分により、実際に助けを求めている人に手を差し伸べる人がその場にいない、というようなことが現実に起こりうるのではないか、という印象を東北の地震報道などを見て少し思いました。確かに「事実を伝える」ということは大切ですが、現実に手を差し伸べれば救える命を、見殺しにしてまで伝える価値のある情報はない気もします。災害現場の取材では、被災者に対するボランティア活動をしながら取材をするなど、単なる傍観者ではなく、事象にコミットする必要もジャーナリストには求められるようになるのかもしれません。
コメント (3)
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おはなしの知恵

2008-06-09 06:13:25 | Weblog
■本
42 図解 よくわかる排出権取引ビジネス/みずほ情報総研
43 おはなしの知恵/河合 隼雄

42 正直「よくわかる」というほど、わかりやすい本ではないです。図解部分も妙に字が多くて直感的に理解しにくいですし。とはいえ、「排出権取引」について網羅的に書かれた良書は少ないので、本書の役割は大きいと思います。海外の事例も豊富ですし、何が決まっていて、何が現在進行形で議論や社会実験が行われているのか、ということが理解できます。

43 「桃太郎」など国内外の「おはなし」の心理学上の持つ意味を分析しながら、そこから得られる知恵を解説してくれる良書です。河合先生の豊富な知識と分析力を背景に、身近なおはなしや、なじみの全くないナバホ族の神話やケルト神話などまで、いろんな視点から読み解いてくれます。決して二元論に陥ることなく、分析的視点と全体としてものごとをとらえる視点のバランスが絶妙です。「人間はいろんな区別を立てないと生きていけないが、区別をした後に、区別された両者の間にある秘かな結びつきをできる限り知ることが大切ではなかろうか。」という筆者の意見が特に印象に残りました。体を二つに引き裂かれた少年や「片子」の話など、人間の善悪の二面性をまるごと受け入れる生き方の大切さ、どちらか片方だけの人生だとかえって矛盾が出るという視点も、善悪の区別を安易に付けたがる現在の風潮に対する警鐘のような気がします。


■CD
15 Weezer (Red Album)/Weezer

 相変わらずの情けなくも力強い「Weezer」節ですが、スケールの大きな曲や癖の少ないすごくまっとうなポップソングまで、結構楽曲のバリエーションは広がっています。全体的にリラックスした雰囲気で余裕があり、こういうのを円熟味っていうのでしょうか? 独特のアクが少なめな点が従来のファンには賛否が分かれるかもしれませんが、オーソドックスなロックアルバムとして充実した傑作だと思います。国内盤ボーナストラックのBOAのカバーはトホホなできなので、マニアの方以外は輸入盤の方をお勧めします。
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IPTV

2008-06-02 07:11:35 | Weblog
■本
40 IPTV―通信・放送融合サービスの大本命/本間 祐次
41 日本の近代 上―教養としての歴史 (1) /福田 和也

40 IPTVの定義、海外も含む現状、制度、標準化、著作権問題、課題と展望などが網羅的に書かれているので、この分野について詳しく知りたい人にはお勧めです。ただ、筆者が制度屋さんのためか、制度、標準化の比重が多すぎるような気もします。ようやくこの分野も入門書が増えてきたので、まずはその種の本を読んでから、より詳しい内容を知りたい場合に本書を読むのがいいかもしれません。海外事例がここまで豊富な本はまだないとは思いますので、その点に関心のある人には強くお勧めします。

41 高校で地理選択の上、中学では江戸時代までしか日本史の授業で教えてもらっていないので、日本の近代は僕にとっては最も弱い分野の一つです。そういう意味で弱点を補う意味もあり本書を読みました。いくぶん視点に偏りもあり、受け入れにくい部分もありますが(筆者は自覚的ではありますが、あくまで日本人の視点から見た近代なので、特に他のアジア圏の人から見れば承諾しかねる内容も多い気がします-が、そもそも万人が承諾できる内容の歴史書もありえないので、仕方がないのですが-)わかりやすくまとめてあるので、読みやすいです。日本が曲がりなりにも植民地にならずに、独立を維持できたのはこの時代の人たちの、危機感と努力のおかげだとは言えると思います。それに今の社会と比べていろんな意味で、当時の社会は国益というものをしたたかに考えていたような気がします。私たちも含めて、今の日本は、国の存続という点に関して少し危機感が欠けているのかもしれません。とはいえ、深い考えもなく愛国心とか言われても同意しかねるのですが。


■映画
13 オーシャンズ13/監督 スティーブン・ソダーバーグ
14 ヴィレッジ/監督 M・ナイト・シャマラン

13 「オーシャンズ12」がかなりひどかったので、それと比べるとかなり持ち直している感じはあります。展開も速く、豪華出演陣も効果的で、ソダーバーグ監督一流のスタイリッシュな映像も素敵です。こういうシリーズ物の宿命ですが、キャラクターの特徴説明がほとんど省略されていますので、13人もの登場人物を識別し、細かい伏線を理解するのには苦労します。たぶん、ほとんど製作側の意図は僕には伝わっていない気がします。それでも、娯楽映画としてはそれなりに楽しめる作品だと思います。

14 細部に伏線を張りめぐらせながら、重々しい演出で緊迫感を高めるシャマラン監督の手法は相変わらずお見事。ただ、作品を追うごとに陳腐化していく結末はもはや救いようがないレベルにまで来ています。1時間過ぎまではおもしろいのですが、最後の30分でがっかりすることは確実です。失望覚悟で過程を楽しめる人にのみお勧めできる映画です。とはいえ、その過程の完成度はなかなかのものだとは思いますが。

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