■本
34 東京の夫婦/松尾スズキ
35 さざなみのよる/木皿 泉
36 イーロン・マスク 未来を創る男/アシュリー・バンス
34 20歳下の一般女性と再婚した松尾スズキさんによる夫婦をテーマにした連載エッセイをまとめた本です。お得意のエログロを排し、抒情的な文体で若い奥様との発見に満ちた日常が綴られています。そこに、離婚した前の奧様や痴呆症となった母親とのパンチの効いたエピソードも重なり合い、「人との出会いと別れ」や「老い」についてもいろいろと考えさせられます。以前のような戦闘的でホスピタリティ溢れる姿勢から、積み重ねた自信と諦めが微妙に混ざりあった円熟味のある語り口へと変化している点も、アラフィフ目前の私にとって興味深かったです。
35 一昨年と昨年のお正月にNHKで放映された木皿泉さん脚本によるテレビドラマ「富士ファミリー」の、スピンアウト的な書き下ろし小説です。ドラマ版では既に死んで幽霊として登場していた、ナスミさん(ドラマでは小泉今日子さんが演じられていました)の死にまつわるエピソードが、様々な人との生前(そして死後)の交流を交えながら丁寧に描かれています。生きることも死ぬこともそれほど大したことではないという清々しいまでの割り切りと、その反面のただ生きて人と交流するだけでも十分に価値があるという肯定感のバランスが絶妙で、自分の人生に対する姿勢がバージョンアップされるような不思議な感覚になりました。毎日の通勤時に読んでいたのですが(各章がちょうど通勤時間で読み終える長さでした)、誰かに優しく許されているような気持になり、涙をこらえるのが大変でした。お勧めです。
36 一方、こちらは火星に移住する環境を整え人類を救うという壮大な野望を持ち、宇宙ロケットや電気自動車の製造会社を経営するイーロン・マスクの伝記です。今やロック・スター的な人気を持ち、スティーブ・ジョブスに匹敵するカリスマとして目される人物です。最近の有名な経営者はインタネット上でのサービス展開で財をなした人が多いですが、実際に製造業として輝かしい業績を残されている点と、一社だけでなく複数の会社を成功に導いている点でも評価の高い人物です。ペイパル等初期に成功して得た資産を民間では誰もやったことのないリスクの極めて高い事業にためらうことなく投資し、実際に実現していく行動力に感嘆します。その達成の過程で様々な陰謀や挫折も味わっていて読み物としても抜群に面白いです。映画の「アイアンマン」とグウィネス・パルトロー演じる女性秘書のモデルは、イーロンマスクとその秘書ということ、しかも、その10年以上尽くした理想的な秘書をイーロン・マスクがあっけなくクビにしたというエピソードに(私がグウィネス・パルトロー演じる秘書がかなり好きだったので)驚きました。映画の「アイアンマン」は、理想主義者ではあるものの、かなり独善的で一緒に働きづらいタイプですが、実際のイーロン・マスクもそれに匹敵する癖の強い人間のようです。離婚した二人の奥様方も含め、身近にいる人を不幸にしつつも、人類全体、アメリカ全体にとっては間違いなくプラスとなる偉業を成し遂げていることに、人間の不思議さについて考えさせられます。これからも毀誉褒貶が激しい人だと思いますが、その圧倒的なエネルギーと実行力はやはり魅力的です。
■映画
29 アフター・アース/監督 M・ナイト・シャマラン
30 帝一の國/監督 永井聡
29 M・ナイト・シャマラン監督による近未来SF作品です。あまり評判がよくありませんが、世界観が明快でコンパクトにまとまっていて素直に楽しめました。原案ウィル・スミス(そして主人公の父親役)、息子のジェイデン・スミスが主演ということで、公私混同のごり押し作品と取られかねませんが、ジェイデン・スミスの演技は言われているほど悪くはないと思いました。M・ナイト・シャマラン監督特有のどんでん返し的要素もありますが、その見せ方はかなり控えめです。そのためか、監督よりもウィル・スミス色の強い作品(つまり典型的なヒーローもの)になってますが、監督と俳優が別々に主張し過ぎて、混乱するよりはよほどましだと思います。
30 主人公の帝一がピュアなのか腹黒いのかがよくわからず、なんともつかみどころのない作品でした。他の登場人物もそれぞれに癖が強く、微妙に誰にも共感できませでした。しかし、そのキャラの立ち方が、菅田将暉さんを筆頭とした若手男優の魅力を引き出す上ではプラスに働いていたと思います。キャラ頼みでストーリーが弱い面もありますが、イケメン俳優を観て楽しむという点に特化した潔さは評価すべきだと思います。男性客向けにエンドロールで永野芽郁さんを可愛く描くという配慮も尽くされています。
34 東京の夫婦/松尾スズキ
35 さざなみのよる/木皿 泉
36 イーロン・マスク 未来を創る男/アシュリー・バンス
34 20歳下の一般女性と再婚した松尾スズキさんによる夫婦をテーマにした連載エッセイをまとめた本です。お得意のエログロを排し、抒情的な文体で若い奥様との発見に満ちた日常が綴られています。そこに、離婚した前の奧様や痴呆症となった母親とのパンチの効いたエピソードも重なり合い、「人との出会いと別れ」や「老い」についてもいろいろと考えさせられます。以前のような戦闘的でホスピタリティ溢れる姿勢から、積み重ねた自信と諦めが微妙に混ざりあった円熟味のある語り口へと変化している点も、アラフィフ目前の私にとって興味深かったです。
35 一昨年と昨年のお正月にNHKで放映された木皿泉さん脚本によるテレビドラマ「富士ファミリー」の、スピンアウト的な書き下ろし小説です。ドラマ版では既に死んで幽霊として登場していた、ナスミさん(ドラマでは小泉今日子さんが演じられていました)の死にまつわるエピソードが、様々な人との生前(そして死後)の交流を交えながら丁寧に描かれています。生きることも死ぬこともそれほど大したことではないという清々しいまでの割り切りと、その反面のただ生きて人と交流するだけでも十分に価値があるという肯定感のバランスが絶妙で、自分の人生に対する姿勢がバージョンアップされるような不思議な感覚になりました。毎日の通勤時に読んでいたのですが(各章がちょうど通勤時間で読み終える長さでした)、誰かに優しく許されているような気持になり、涙をこらえるのが大変でした。お勧めです。
36 一方、こちらは火星に移住する環境を整え人類を救うという壮大な野望を持ち、宇宙ロケットや電気自動車の製造会社を経営するイーロン・マスクの伝記です。今やロック・スター的な人気を持ち、スティーブ・ジョブスに匹敵するカリスマとして目される人物です。最近の有名な経営者はインタネット上でのサービス展開で財をなした人が多いですが、実際に製造業として輝かしい業績を残されている点と、一社だけでなく複数の会社を成功に導いている点でも評価の高い人物です。ペイパル等初期に成功して得た資産を民間では誰もやったことのないリスクの極めて高い事業にためらうことなく投資し、実際に実現していく行動力に感嘆します。その達成の過程で様々な陰謀や挫折も味わっていて読み物としても抜群に面白いです。映画の「アイアンマン」とグウィネス・パルトロー演じる女性秘書のモデルは、イーロンマスクとその秘書ということ、しかも、その10年以上尽くした理想的な秘書をイーロン・マスクがあっけなくクビにしたというエピソードに(私がグウィネス・パルトロー演じる秘書がかなり好きだったので)驚きました。映画の「アイアンマン」は、理想主義者ではあるものの、かなり独善的で一緒に働きづらいタイプですが、実際のイーロン・マスクもそれに匹敵する癖の強い人間のようです。離婚した二人の奥様方も含め、身近にいる人を不幸にしつつも、人類全体、アメリカ全体にとっては間違いなくプラスとなる偉業を成し遂げていることに、人間の不思議さについて考えさせられます。これからも毀誉褒貶が激しい人だと思いますが、その圧倒的なエネルギーと実行力はやはり魅力的です。
■映画
29 アフター・アース/監督 M・ナイト・シャマラン
30 帝一の國/監督 永井聡
29 M・ナイト・シャマラン監督による近未来SF作品です。あまり評判がよくありませんが、世界観が明快でコンパクトにまとまっていて素直に楽しめました。原案ウィル・スミス(そして主人公の父親役)、息子のジェイデン・スミスが主演ということで、公私混同のごり押し作品と取られかねませんが、ジェイデン・スミスの演技は言われているほど悪くはないと思いました。M・ナイト・シャマラン監督特有のどんでん返し的要素もありますが、その見せ方はかなり控えめです。そのためか、監督よりもウィル・スミス色の強い作品(つまり典型的なヒーローもの)になってますが、監督と俳優が別々に主張し過ぎて、混乱するよりはよほどましだと思います。
30 主人公の帝一がピュアなのか腹黒いのかがよくわからず、なんともつかみどころのない作品でした。他の登場人物もそれぞれに癖が強く、微妙に誰にも共感できませでした。しかし、そのキャラの立ち方が、菅田将暉さんを筆頭とした若手男優の魅力を引き出す上ではプラスに働いていたと思います。キャラ頼みでストーリーが弱い面もありますが、イケメン俳優を観て楽しむという点に特化した潔さは評価すべきだと思います。男性客向けにエンドロールで永野芽郁さんを可愛く描くという配慮も尽くされています。