本、CD、映画日記

目標は年間読書100冊。その記録と目標管理をかねたブログです。

新しい道徳

2015-10-31 09:30:26 | Weblog
■本
95 ネットフリックスの時代 配信とスマホがテレビを変える/西田 宗千佳
96 新しい道徳 「いいことをすると気持ちがいい」のはなぜか/北野 武

95 非常に丁寧に取材されていて、ネットフリックスを代表とする、サブスクリプション型オンデマンド動画配信サービスの現状を知るにはよい本です。海外サービスだけでなく、NTTドコモのこの分野での取り組みを時系列で振り返るなど、日本の状況も解説されているので参考になります。Apple Musicなど、音楽配信の状況にも触れ、その類似点、相違点について考察されているので、少し先行している音楽配信の動向を見つつ、動画配信サービスの今後を予測する上でも役に立ちます。個人的には、ネットフリックスのレコメンドでの強みの秘密がわかりやすく解説されているところが、「ビッグデータの活用」という上滑りしがちな議論に、しっかりとした枠組みを提示してくれていて興味深かったです。

96 ビートたけしさんによる道徳論。学校で使われている道徳の教科書を引用しつつ、ブラックな切り口で突っ込みを入れまくっています。「はじめに」で結論は「道徳がどうのこうのという人間は、信用しちゃいけない」と語られていますが、この本の主題は、「道徳」という権威に思考停止に陥らずに、自分なりの生き方や行動指針を自分の頭で考えて決めないといけない、ということだと私は理解しました。北野武さんなりに、最近の同調圧力が強い日本の状況に危機感を感じられているのかもしれません。「いいこと」が絶対的なものではなく、時代や社会状況によって容易に変わる相対的なものである、という指摘もされていて、自分で考えた生き方や行動指針に縛られ過ぎず、都度見直していく柔軟な思考の大切さにも気づかされます。


■映画
72 96時間/リベンジ/監督 オリヴィエ・メガトン

 リュック・ベッソン脚本らしい、スタイリッシュなアクション映画です。リーアム・ニーソンが、アクションだけの肉体バカではない知的な主人公を好演していて、前作は大好きでした。今作は続編にありがちな迷走ぶりで(主人公の災難ありきで脚本を作っているので、悪役の動機や行動に説得力が乏しく、行き当たりばったりな感じが否めません)、かなりパワーダウンしていますが、キャラクター設定が巧みなので、なんとか持ちこたえています。舞台となるイスタンブールの街並みも美しく、フランス制作のアクション映画として、ハリウッド映画とは違う個性を見せようという気概のようなものも感じられます。
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Very Best of Cat Stevens

2015-10-24 09:42:14 | Weblog
■本
92 反応しない練習/草薙 龍瞬
93 カウンセリングを語る(上)/河合 隼雄
94 充たされざる者/カズオ・イシグロ

92 最近はいくぶんましになりましたが、仕事で受け取る配慮の足りないメールにすぐにネガティブな反応をしてしまうので、読みました。「反応する前に『まず、理解する』」、「良し悪しを「判断」しない」など原始仏教の教えをわかりやすい言葉で解説してくれているので参考になります。「『勝つ』という動機以外で競争社会を生きていくこと」など、単なる理想論を語るだけでなく、現代社会で生きていくうえで、現実的な提案をしてくれているところも好感が持てます。基本は不快な外界からの刺激に対して、反射的に反応せず、そのときの自分の心の動きを客観的に把握できるよう自分を訓練することが大切なのだと思いました。

93 カウンセラーの国家資格化という話もあり、「産業カウンセラー」の資格を取ってから、最近あまり勉強をしてないので読みました。講演の書き起こしなので、とても読みやすいですが、書かれている内容はとても高度で実践するのが難しい内容ばかりです。白か黒かをはっきり分ける二元論を嫌う河合先生らしく、理論重視も体験重視も否定する味わい深い講演内容です。結局は矛盾そのものの人間を相手にする仕事である以上、明確なよりどころがない中、常に葛藤し続ける覚悟が必要なのだと私は理解しました。

94 最近、最新作「忘れられた巨人」を読み終えたので、カズオ・イシグロさん作品の中で唯一読んでいなかったこの本を読みました。なぜ、読んでいなかったかというと、異色でシュールでかなり長い作品という評判を聞いて腰が引けていたためです。評判通りとにかく長い作品でした。ストーリーらしいストーリーもなく、空間や記憶が不思議に捻じれて絡み合う不思議な世界観も、慣れるのに時間を要します。しかし、このような長大で難解な素材にもかかわらず、不思議に読みやすく、世界観に慣れると先の読めない展開が気になり一気に読み終えました。確かに、カズオ・イシグロさんの他の作品と比べると洗練度合いは低いですが、この作品のあとに「わたしたちが孤児だったころ」や「わたしを離さないで」という、よりスケールアップした傑作を生みだしたという事実を鑑みると、この作品が筆者のキャリア上必要なものであったことがよくわかります。これまではセンスとテクニックで勝負していた作家が、この作品でパワープレーでも勝負できることを示したのだと思います。頭の中のこれだけの情報量を文章化できる力技に感嘆しました。


■CD
46 Hitnrun Phase One/Prince
47 Very Best of/Cat Stevens

46 21世紀に入ってからのオーガニックなサウンドから、最近は全盛期のポップでなんでもありな作風に回帰した印象です。深みはないですが、ポップで踊れる楽しい楽曲が満載です。さすがに、目が覚めるような革新的なサウンドは生み出せなくなってますが、安定感のある作品です。まあ、全盛期の作品を聴いておけばいいという意見もあると思いますが、ファンとしては定期的に一定のクオリティの作品を出してくれるだけでうれしいです。

47 60年代後半から70年代前半にヒット曲を連発したキャット・スティーブンスのベスト盤です。今では、イスラム教に改宗して改名もされているなど、少し変わった人というイメージになっていますが、楽曲は間違いなく素晴らしいものばかりです。シンプルな演奏のメロディアスな楽曲に乗る、エモーショナルで緩急自在の優しい歌声に魅了されます。いろんなアーチストにカバーされた「Wild World」など、このアーチストのことを知らなくても聴いたことのある曲も多いと思います。個人的には「Where Do The Children Play?」という曲が大好きです。「いい歌」を聴きたい人にお勧めの作品です。


■映画
71 図書館戦争/監督 佐藤信介

 とらえどころのない作品ですね。表現の自由を守るために図書館を舞台に戦闘が行われる、という突っ込みどころ満載のSF的設定に、ありがちな先輩後輩の恋愛がからんでいるだけの作品なのですが、妙な引っかかりが残ります。岡田准一さん、石坂浩二さんといった実力のある俳優さんが、チープな脚本上で熱演されている点が、安易に駄作と切り捨てられない原因かもしれません。榮倉奈々さんの演技か地なのかわからない、不思議な演技も私を混乱させます。シュールな世界観に、恋愛、正義、友情、萌え要素など、観客が望む要素を、わかりやすく盛り込んでいる点が人気の秘密なのだと思います。
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いたいこと 言えないこと 言いそびれたこと

2015-10-17 09:48:38 | Weblog
■本
91 最速の仕事術はプログラマーが知っている/清水 亮

 天才プログラマーによるプログラミング思考をもとにした仕事術について書かれた本です。私のような文系の人間にもわかりやすく、よいプログラムを書く上でのノウハウと、そのノウハウをプログラミング以外の仕事に活かす方法を解説してくれます。速く動くプログラムを書くためには徹底して無駄な計算を避けることにあり、その無駄を省くノウハウが仕事の生産性向上につながるというわけです。ライブ感を出すために「プレゼン資料は直前に書け」など、言いたいことはわかるけど凡人には真似できないノウハウもありますが、「最適化の原則は”ループの内側から最適化しろ”である」-繰り返し行われる計算(作業)を効率化できると最も効果が高い、という意味と私は理解しました-など、普段何となく感じている効率化のノウハウを言語化してくれているので、読んでいて納得感が高いです。筆者の地頭の良さが感じられる参考になる本です。


■CD
45 言いたいこと 言えないこと 言いそびれたこと/ザ・コレクターズ

 安定のコレクターズ節で、素敵な泣きのメロディが満載です。新作が出る度に言ってるような気がしますが、ここ数年で一番の傑作だと思います。どんどん円熟味が増していて、エンディングの「自分メダル」に象徴されるように、年長者としての同世代や若者に対する優しい視線に溢れています。この「自分メダル」という曲はマラソンレースに出場するときに聴くと元気が出そうです。父親への感謝の気持ちを込めた切ない曲があるかと思えば、「未来を一緒に作ろう」という希望に溢れた曲もあり、どんなテーマでも魅力的な楽曲に仕上げられる圧倒的な能力の高さを感じます。


■映画
69 フィッシュストーリー/監督 中村 義洋
70 バクマン。/監督 大根 仁

69 ご都合主義極まりない展開なのですが、原作者の伊坂幸太郎さんらしい、うまくいかない人生に必死に立ち向かっている人を決して裏切らないポジティブなストーリー展開と俳優陣の見事な演技、そして斉藤和義さんプロデュースの素敵な楽曲で、グイグイ惹きこまれました。6つの年代を行き来する複雑な展開にもかかわらず、親切な作りになっているので、エンディングで全ての伏線がつながるシーンがわかりやすく、観ていて心地よいです。濱田岳さん、伊藤淳史さん、高良健吾さん、森山未來さん、大森南朋さんといった、今の映画界を支えている実力派若手俳優が多数出演しているところも見どころです。多部未華子さんはどちらかと言えば苦手な女優さんなのですが、この作品ではとても魅力的でした。原作も読んでみたいと思います。

70 「努力、友情、勝利」をベースにしたシンプルなストーリー展開に、細部にこだわりまくった情報量満載の映像、そして、サカナクションによる疾走感と緊迫感のあるBGMが見事にマッチした完成度の高い作品です。佐藤健さんと神木隆之介さんのキャスティングは逆ではないかと思っていましたが、全く違和感を感じませんでした。リリー・フランキーさん、宮藤官九郎さんもサブカルっぽい雰囲気満載の素敵な演技でした。繰り返しになりますが、こういう衒いのないキラキラとした青春ストーリーを、引っかかりのある映像でまとめ上げたところがとても斬新だと思います。いい映画を観たという満足度の高い作品です。
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損したくないニッポン人

2015-10-10 09:47:08 | Weblog
■本
88 小説にすがりつきたい夜もある/西村 賢太
89 下流老人/藤田 孝典
90 損したくないニッポン人/高橋 秀実

88 西村賢太さんのエッセイ集です。芥川賞受賞前後の時期に書かれたものが、ほぼ発表順に収録されているということで、芥川賞の受賞コメントなど、この賞に関して書かれたものが多いです。この賞を少し斜に構えて受け止めつつ、これまで取れなかった恨みや取ったことの素直な喜びが透けて見えて、西村さんらしい真っすぐさと屈折の両方を味わえる文章が多数収録されています。西村さんの神髄はやはり私小説にあると思いますが、特に後半に収録されている「色慾譚」という連載エッセイで、西村さん独特の人間が生きていく上で付きまとう、どうしようもないみっともなさの描写を堪能できます。

89 センセーショナルなありがちなタイトルに反して、内容はとても地に足のついた良心的な内容です。野宿生活者支援のNPO法人理事の方が書いた本というだけあって、現実的な提案がなされていますし、何より、困窮している老人を救いたいという熱い思いが伝わってきます。自己防衛策として、現状あるさまざまな困窮者支援制度を知ることから提案されているところも現実的で(生活保護者などの制度利用者が増えればその制度が破たんすることも目に見えてますが、本当に困っている人をあぶり出すにはこの方法が一番現実的だと私も思います、破たんしたらしたでその時点で制度や予算配分の方を見直すのが政治なのだと思います)、単なる精神論を否定しているところも共感できます。この問題は、非正規雇用問題、少子化問題など、様々な問題とも複雑に絡み合い解決が難しいですが、だからこそ、世代間対立や自己責任論などの感情論に陥らないための、適切な情報提供と議論が必要なのだと思います。

90 私自身が「損をすること」が大嫌いで、そのために「安物買いの銭失い」の過ちを犯すこと多いので読みました。筆者自身の独特のユルい考察と、トピックスに関係のある人への取材を組み合わせた、いつもの高橋さんの構成に、今回は歴史的な文献からの引用も組み合わせて(そのために若干読みにくい部分も増えていますが)、複合的に「損」と「得」について考える視点を提供してくれます。最終章巻末の「人生は失われる。失われるのが人生で、損と引き換えに思い出を得るのである」という文章が非常に印象的に残りました。結局は損と得は表裏一体で、失って初めて得られるものもあるというのが、この本の結論ですし、真理なのだと思います。


■CD
44 CHRONICLE THE 20 GREATEST HITS/Creedence Clearwater Revival

 CCRという略称で有名なCreedence Clearwater Revivalのベスト盤です。土臭くも親しみやすい楽曲が満載で、発表から40年以上経った今に聴くとかえって新鮮に感じます。単なる懐古趣味を超えた楽曲のクオリティの高さも感じられ、「Proud Mary」、「Who'll Stop the Rain」や「Have You Ever Seen the Rain?」など名曲揃いの素晴らしい作品です。荒々しさと洗練さが同居した唯一無二のバンドだと思います。


■映画
68 ナイト&デイ/監督 ジェームズ・マンゴールド

 トム・クルーズとキャメロン・ディアスが共演したスパイアクションものです。能天気な二人のいつものキャラクターを最大限に活かし、予定調和と言えばそれまでなのですが、そのマンネリ感が本作では絶妙の安定感で、良質のエンターテイメント作品に仕上がっています。テンポのよい展開と二人の軽いキャラクターがうまく噛み合っていて、不快になりがちな平板なキャラクターがギリギリのところでキュートに感じられます。評論家受けはしないと思いますが、気楽に素直に楽しめるよい映画だと思います。
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忘れられた巨人

2015-10-04 10:24:36 | Weblog
■本
86 ヤバいLINE 日本人が知らない不都合な真実/慎 武宏、 河 鐘基
87 忘れられた巨人/カズオ イシグロ

86 中盤以降のLINEとその親会社である韓国NAVER社との関わりをセンセーショナルに描いているあたりで若干胡散臭くなりますが(それはそれで読み物としてとても面白いのですが)、序盤のLINEのビジネスモデルやその社会的な影響について触れられている部分は非常によくまとまっていて、私のようなLINEのヘビーユーザーでない人間が、このアプリや会社について理解する上では非常に有益でした。特に子を持つ親として、その子どもに与える影響をさまざまな事例をもとに解説してくれた部分は参考になりました。LINEに対して、過度に好意的でも批判的でもない本ですので(若干韓国との関わりは協調され過ぎている傾向にありますが)、冷静にこのツールと付き合う上での示唆を与えてくれる本だと思います。

87 大傑作「わたしを離さないで」から10年ぶりのカズオ・イシグロさんの新作ということで、発売日に購入していましたが、あまりなじみのない中世イングランドを舞台にしたファンタジータッチの小説ということと、そのボリュームに圧倒されて、少し読み始めるまでに時間がかかってしまいました。しかし、いざ読み始めると抜群に面白く、先の展開が気になって数日で一気に読み終わりました。カズオ・イシグロさんの作品は全て、基本的には「記憶」、「罪」、「赦し」というテーマを、歴史小説、探偵小説、SF、そして今回のようなファンタジーと舞台設定を変えつつ繰り返し語っていると個人的には思うのですが、それでも新作を読むたびに新たな気づきと感動が得られます。今回の作品は主要登場人物5人中3人が老人という地味な設定なのに、冒険小説としても恋愛小説としても高いクオリティーで成立させているところに感心しました。カズオ・イシグロさんの作品にしてはエンディングが必ずしも救いの要素のあるものではないですが、それでも後味はよく、現在の民族紛争や難民問題などの世界情勢を自分の肌感覚に落として考えるきっかけを与えてくれます。


■映画
66 劇場版 SPEC〜結〜漸ノ篇
67 劇場版 SPEC〜結〜爻ノ篇

 オカルト・コメディ刑事サスペンスとでもいった感じのテレビドラマの映画版完結編です。2部構成にして長々と引っ張る必要があったのか、とかそもそもの企画自体にいろいろ疑問に思うところもありますが、それ以上に内容的に突っ込みどころが満載で、いろんな意味で問題作です。加瀬亮さんは好きな役者さんなのですが、その彼にどなるだけのひどい演技をさせているところが何よりすごいです(北村一輝さん、栗山千明さん、大島優子さんあたりもかなりチャレンジングな演技をさせられてます)。エヴァンゲリオンに影響を受けたであろう、オカルトタッチの展開に随時挟まれる微妙なギャグもかなり失敗しています。ただ、安易にわかりやすさに流れることなく、「新しいものを作りたい」という心意気のようなものは伝わってきて、その点については評価できると思います。
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