本、CD、映画日記

目標は年間読書100冊。その記録と目標管理をかねたブログです。

絶対悲観主義

2022-07-01 05:52:32 | Weblog
■本
52 絶対悲観主義/楠木 建
53 中高年ひきこもり/斎藤 環

52 大好きな楠木健さんによる連載エッセイをまとめた本です。タイトルからして私のツボに入りまくりです。仕事に取り組むマインドセットとして「うまくいくことなんてひとつもない」という絶対悲観主義というポジションを取ることを推奨されています。自分の期待値を極めて低めに設定することにより、予想通りうまくいかなかったときのダメージコントロールと、予想に反してうまくいったときの喜びを最大化するという狙いです。ネガティブに極端に振ることによりかえって、失敗を恐れず何度もチャレンジできるポジティブさへと転化する見事な発想の転換です。この考え方に象徴的なように、全体を通じて、ポジティブさなど世間一般的に良いものとされている考え方に逆張りしつつ、そのユニークな考え方に論理的な整合性を与える緻密な思考と熟練の話芸を堪能できます。結局、思考の差別化について書かれた本なのだと思います。凝り固まった頭に、異なる視点の刺激を与えてくれるとても良い本です。

53 引き続き心理学の勉強をしています。タイトル通り「中高年のひきこもり」の実態とその対応について書かれた本です。私の周囲にも少なからず、同じ悩みを抱えている人が存在するので、読んでいて胸が締め付けられる思いでした。一方で、具体的な対応方法についても丁寧に解説してくれていて、希望が持てる内容でもあります。「安心」や「承認欲求」を満たすことの重要性は認識していたつもりでしたが、社内参加するためにはある程度の「欲望」が必要で、一定の小遣いを与えることが望ましいという視点は私にはなかったのでとても参考になりました。とかく、ひきこもり問題は「心」の問題であるととらえがちですが、経済的な問題でもあることに気づかされました。ひきこもりは「反」社会ではなく、「非」社会的な行為であるという視点も新鮮でした。現代の様々な社会課題と共通の「社会的包摂」の問題なのだと思います。


■映画
36 間違えられた男/監督 アルフレッド・ヒッチコック
37 シン・ウルトラマン/監督 樋口 真嗣

36 強盗犯と間違えられた主人公とその家族の心理的ダメージを描いた作品です。事実をベースにしているため、ヒッチコック監督独特のたたみかけるような演出や劇的な展開は少ないものの、濡れ衣を着せられ追い込まれる主人公の淡々とした描写が、静かな恐怖を呼び起こします。アリバイを証明してくれるはずの人たちが、偶然にもことごとく死んでいる点などは、フィクションにありがちな陰謀論ではないだけに、かえって恐ろしいです。冤罪に対する怒りよりも、理不尽な状況に置かれた戸惑いを強調されている点も、静かな恐怖を描く上で効果的です。派手さはないですが、個人的にヒッチコック監督の新しい凄みに気づかせてくれた興味深い作品でした。

37 子どものころはウルトラマンよりも仮面ライダー派でしたが、話題になっているので観に行きました。冒頭でテンポよく背景説明をし、一気に怪獣(作品中では「禍威獣」)と戦う対策本部(作品中では「禍特対」)の描写に移り、そこからウルトラマン登場へと進む怒涛の展開のスピーディーさが何と言っても見事です。レトロ感溢れる映像と現代社会への風刺のバランスも絶妙で、ノスタルジックさと、まさに今の社会状況に感じる戸惑いとが入り混じった不思議な気持ちになりました。ジェンダー的な視点からは長澤まさみさん演じる女性隊員の描かれ方は賛否が分かれると思いますが(それこそ、レトロなセクハラ的な描写と、社会進出が進んだ女性活躍の描写がいびつな感じで混在しています)、その他の隊員のキャラクターは、若干誇張はされているものの、現実の様々な組織にも実際にいそうで親しみが持てました。ウルトラマンがなぜ地球(というか日本)のために戦うのか、という疑問にも明確に答えてくれ、超次元的な存在の不自然さも極力抑えて、破天荒なストーリーにもかかわらず、印象的なラストシーンの効果もあって、鑑賞後の納得感はとても高かったです。庵野秀明さんが関わっているだけあって、クセの強さとポピュラリティーを見事に兼ね備えた、素晴らしいエンターテイメント作品だと思います。
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