本、CD、映画日記

目標は年間読書100冊。その記録と目標管理をかねたブログです。

ニンフォマニアック Vol.2

2014-11-08 08:22:44 | Weblog
■本
96 音楽配信はどこへ向かう?/小野島 大
97 クラウドからAIへ/小林 雅一
98 すべてがうまくいく8割行動術/米山 公啓
99 悪意の手記/中村 文則

96 「ミュージックマガジン」での連載内容を時系列で収録されているので、国内外の音楽配信ビジネスの進化(そして日本国内の停滞状況)について順序立てて理解することができます。Nine inch nailsやMercury Revといったなじみのアーチストが無料配信していたことやnyctaperというサイトでWilcoなどの大好きなアーチストがライブを無料配信していることが知れて有益でした。音楽業界に対する提言も実に的を射ていて共感しました。

97 小林さんの本は丁寧な取材に基づいたファクトが積み重ねられていてとても参考になります。難解になりがちな技術的用語をわかりやすく解説してくれているところも非常によいです。本作は、AI(artificial intelligence 人工知能)発展の紆余曲折にふれながら、アップル、グーグル、フェイスブックなどのプラットフォーマーがなぜ、クラウドやビッグデータに力を入れているのかの背景を説明してくれます。自動翻訳や自動運転など現在実用化されつつあるAI技術は統計的処理をベースにしていおり、その精度を高めるには分析対象のデータがあればあるほどよい、ということでその分析材料としてのデータを押さえるために、各社がフロントエンド(スマホのファーストチョイスのアプリやデフォルトのブラウザなど)を争い合っている背景がよくわかります。

98 仕事や自分の欲望の実現など、あらゆることを頑張り過ぎず8割くらいで満足するようにすればうまくいくという趣旨の本です。脳科学の視点から8割行動術の正当性を主張しているところは、素人目にも少し強引に感じますが、頑張ることに価値を置きすぎるあまり、息苦しくなりがちな現代社会において、オルタナティブな視点を与えてくれるという意味ではよい本だと思います。現在は作家として成功をおさめている筆者自らが、大学病院勤務時代に窓際に置かれた経験も書かれているので、一度や二度の挫折でも考え方次第では道は開ける、という勇気がもらえます。

99 善悪という二元論になりがちなテーマに対し、あえてあいまいな領域を描くことに挑戦した意欲作だと思いました。生に対する憎悪を感じ人を殺してしまった人間のその殺意や殺したと言う事実を受け入れていく論理、(他人の目から見たら極めて卑劣で自分勝手な論理ですが)を丁寧に描くことにより、逆説的に、命の大切さや殺人と言う罪の重さを描くことに成功していると思います。その罪からの再生の可能性についても描かれていて、極めて暗い作品ですが、かすかな希望も感じられ不思議と読後感は悪くないです。


■CD
54 魅力がすごいよ/ゲスの極み乙女。
55 So many tears/So many tears
56 Age Ain't Nothing But a Number/Aaliyah

54 ちょっと商業的過ぎると思うほど、とにかくキャッチーなメロディーに引き込まれます。あからさまなあざとささを力技で魅力的にしているところがこのバンドの才能だと思います。最近の新しいバンドでは最も印象に残っていて、アルバムを通して聴きたいと思い購入しました。1曲のなかにアイデアを出し惜しみせず、ふんだんに盛り込んでいるところが太っ腹です。

55 元FISHMANSと東京スカパラダイスオーケストラのメンバーによるバンドと言うことで期待していたのですが、FISHMANSとは全く別物の英語歌詞によるスタイリッシュなロックを奏でるバンドです。メンバー自身が楽しんでいるようなリラックスした雰囲気が好ましいですが、なんかアマチュアっぽいです。

56 典型的な早世の天才アーリヤのデビュー作。とにかくクールでスタイリッシュです。発表当時15歳にもかかわらず、幼さを武器にせず、大人の作品として真っ向勝負しているところが素晴らしいです。メアリー・J・ブライジのような鬼気迫る迫力はないものの、逆にしなやかさを武器に一つのヒップホップ・ソウルの完成形を示しています。「年齢なんてただの数字」というタイトルは、ロックやパンクのアルバムも含めて、最も尖がった格好いいものの一つだと思います。


■映画
72 半落ち/監督 佐々部清
73 GODZILLA/監督 ギャレス・エドワーズ
74 ニンフォマニアック Vol.2/監督 ラース・フォン・トリアー
75 カンパニー・メン/監督 ジョン・ウェルズ

72 各登場人物の心情が丁寧に描かれていて引き込まれました。主人公の心情が最大の謎なので仕方がないのですが、脇役を丁寧に描いている反面、主人公の存在感が気迫で、過去敏腕刑事だった面影もさほど感じられませんでした。原作は直木賞選考会で「落ちに欠陥がある」ということが問題になったそうですが、個人的には全く気になりませんでした。認知症、骨髄移植、警察の官僚化、新聞記者のスクープ主義など、紋切り型な各種問題をテーマにしつつも、ありきたりな結末となっていないところが原作の凄さだと思います。映画の方も演出が情緒的過ぎる面がありますが、実力派の俳優を配して手堅く仕上げていると思います。

73 ストーリーはご都合主義的ですし(主人公とその妻子は絶対死なないということが見え見えでした)、ゴジラの造形や行動原理に対する不満はありますが、潤沢な予算を元に怪獣に大都市が壊滅的被害を受ける様子を大迫力な映像と音声で描かれると思わず画面に引き込まれ、爽快感すら感じてしまいました。ヒューマンドラマはあくまでサイドストーリー的にして、ゴジラを主役として描いている点も好感が持てました。欠点は多々ありますが、単なるパニック映画として描いたローランド・エメリッヒ監督版と比べると元ネタへ敬意を感じ、ギリギリのところで怪獣映画ファンにも満足のいく作品となっていると思います。

74 Vol.2もあっという間に時間が過ぎ去りとても楽しく観ました。予想通りVol.1から性的描写はよりドロドロとしたものになり、複数人プレイ、放置プレイ、SM、同性愛、とマニアックな性的描写のフルコースです。「サイレント・ダック」のベタなギャクは、これまでのラース・フォン・トリアー作品にはないド直球のギャグで笑えました。落ちは読めましたが、この作品の唯一の救いのシーンをあえてぶち壊すこの監督の悪意にしびれました。間違いなく傑作です。

75 私自身構造変化にさらされる業界で仕事をしているので、突然リストラされる人々を描いたこの作品に身につまされました。大好きなベン・アフレックが、粗野で自信家なリストラ社員を好演していますし、ケビン・コスナーもいつものナルシスティックな演技を控えめに、皮肉で心優しい義兄を好演しています。何より、異星人や逃亡者を追いかけていない、トミー・リー・ジョーンズのまともな演技(私財を投げ打って、リストラ社員とともに新会社を設立する元副社長を好演しています)を観られたのがうれしかったです。非情なリストラを宣告する利己的な社長をあえて破滅させないところが、かえってリーマンショック後の金融機関のエクゼクティブを批判しているようで、その淡々としたエンディングに好感が持てました。
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