ひとが果てしなくつづり、みずからもつづってきた
記憶の資源を惜しみなく余さず風景に投入する
そうして視覚を変化させることはできる
満開の桜はところかまわず咲いている
いまも轟々たるいにしへの春の風が吹き荒んでいる
*
忍辱の歌謡が奏でられるとき
かなしみを噛み殺しながら唱和を拒み
埋葬を許さないものがいる
すべてが虚無の諦念へ転移する境界があって
この境界に出会うとき
一つのシグナルが点灯する
訣別によって滅んでいくものを
なんどでも奪い返す
奪い返して「いまここ」に集わせよ
過去、現在、未来
光、影、花、毒、天、地
線形的な時間配列に亀裂を入れて粉砕し
全時間全項連結するように「いまここ」を構成する
なぜそうするのか
どこでもないただ一点、「いまここ」に集わせ
すべてをほんとうに懐かしむために
そうしてはじめて未知の視覚を手に入れるために
俺たちは永遠に訣別を知らない者にならなければならなかった
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