みどりの一期一会

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はだしのゲン:小中学校13校の図書室から回収 大阪・泉佐野教委/回収強行に波紋、校長会が撤回要望 

2014-03-23 08:35:13 | 「ジェンダー図書排除」事件
山梨市主催の上野千鶴子さんの講演会の中止が撤回され、
ぶし講演会が開催されて、
ホットしたのも、つかの間、
大阪府の泉佐野市教委が、「はだしのゲン」を学校図書館から排除していたことが判明。

このニュースの一報を知ったのは、毎日新聞。
記事の署名を見たら、山田泰正さん。
名古屋本社にいらっしゃった時に、ずいぶんお世話になった記者さんです。
毎日新聞は署名記事が多いので、だれが書いているかわかっていいですね。

この事件は、市立図書館と学校図書館の違いはあるけれど、
堺市の図書排除事件とおなじ。
違うのは、「市民の声」ではなく、市教委が自らの判断で図書を回収したこと。

もちろん、表現の自由の侵害ですし、「図書館の自由宣言」にも反しているので、
行政がしたとはにわかには信じられない行為なので、
何とかならないものか、と思っていたら、
市立校長会が、「はだしのゲン」を回収した市教委に対して
抗議の文書を出したそうです。

市教委は市立学校を管轄するのですが、そこに公然と反旗を翻すのは、
校長であっても、勇気が行ったと思います。
まずは、校長会に拍手をおくります。

図書の排除は、マスコミが報道して社会的な問題になりましたが、
校長たちが強く抗議しても、20日まで本を返そうとしなかった
とか。

新学期には本を各学校に返すそうですが、それで済む話ではありません。

行政による政治介入は、けっして許されない行為です。

今後も、全国でおなじことが起きないよとは限りません。
市民が目を光らせることが必要だと思います。

  社説:学校図書回収―首長の危うい教育介入  
2014年3月22日(土)付 朝日新聞

 広島での原爆体験を描いた漫画「はだしのゲン」を、大阪府泉佐野市教委が、小・中学校の図書館から回収していたことが明らかになった。

 「差別的な言葉が多い」と問題視した千代松大耕(ちよまつひろやす)市長の意向を受け、教育長が指示した。

 一部の表現を問題とみて、作品と出会う機会を子どもから奪おうとするやり方は、「暴力的な描写」を理由に、昨年夏まで「ゲン」の閲覧を制限した松江市教委と相通じる。

 国内外で広く読まれてきた「ゲン」への一般的な評価を考えると、あまりに視野が狭く、思慮の浅い行為だ。

 差別的な言葉は人を傷つける。市長が例に挙げた「きちがい」や「乞食(こじき)」といった言葉は、今の時代には違和感はある。子どもたちが覚えて使うことがないよう、大人が注意を払う必要があるのも確かである。

 だが、「ゲン」に限らず、時代を超えて読み継がれる作品にはしばしば、現代なら差別的とされている言葉が登場する。それをすべて子どもから遠ざけることは不可能だし、全体として優れた作品が読めなくなったら弊害のほうがはるかに大きい。

 大事なのは言葉を「狩る」ことではない。今では注意しなければならない表現が、なぜ作品に登場するのか、あえて使われた意味は何か。時代背景も含め、丁寧に子どもたちに教えていくことが大切だ。

 回収のきっかけが、市長の要請だったことにも強い危惧を覚えずにはいられない。

 千代松氏はもともと、共通学力テストの学校別成績を自身の判断で公表するなど、教育行政への関与に積極的だった。今回の回収については、「人権的な観点から教育長に投げかけた」と説明した。

 市長は教育予算を編成し、教育長を含む教育委員を任命する権限も握る。市長の意見を聞いた教育長は、ほかの教育委員たちに相談しないで、回収に踏み切った。校長たちが強く抗議しても、20日まで本を返そうとしなかった。政治家である首長が、教育現場に干渉する危うさが浮き彫りになった。

 自民、公明両党が今国会で成立を目指す教育制度改革案は、首長の権限を強めるものだ。現行の教育委員長に代わって教委トップになる新たな「教育長」を直接任免できるようになる。

 だが首長が上意下達に出たとき、教委や学校現場がブレーキをかけられるのか。はなはだ心もとない。今回の事例を、政治主導の短所、弱点を精査するきっかけにするべきだ。


 はだしのゲン:回収強行に波紋、校長会が撤回要望 泉佐野
毎日新聞 2014年03月21日 

 大阪府泉佐野市教委が市立小中学校13校の図書室に保管されていた漫画「はだしのゲン」を一時的に回収していた問題では、市立校長会が撤回を求める要望書を2回にわたって中藤辰洋教育長あてに提出。市教育委員の協議でも、「一律の回収は不適切」「本は学校側に早く返却するべきだ」と疑問視する意見が相次いだといい、回収が強行されていたことに波紋が広がっている。

 市教委によると、市立校長会は小学校13校、中学校5校の校長らが参加。回収は今年1月、教育長から各校長に個別に電話で指示された。校長会は「蔵書選定や配架、廃棄などを含む学校図書館の運営権限は校長にある」などとして、回収指示の撤回を求める文書を1月23日付で市教委に提出。2月10日に「不適切な表現があるからといって一律に閲覧禁止などの対応をすることは教育になじまない」として、2回目の要望書を提出した。

 一方、市教育委員(7人)の協議は1月24日、31日、2月6日の3回開かれた。委員が「はだしのゲン」の現物を閲覧し、意見交換を重ねた。その結果を踏まえ、市教委は作品中の不適切な表現をリストアップ。新学期が始まる前の校長会で各学校に本を返却することにした。【山田泰正】 


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 はだしのゲン:小中学校13校の図書室から回収 泉佐野 
毎日新聞 2014年03月20日

◇市長が「差別的な表現が多く、放置できない」

 広島に投下された原爆の悲惨さをテーマにした漫画「はだしのゲン」128冊が大阪府泉佐野市の小中学校13校の図書室から約2カ月にわたり撤去されていたことが分かった。千代松大耕(ひろやす)市長(40)が「差別的な表現が多く、放置できない」として市教委に対応を指示。今年1月、中藤辰洋教育長(61)が図書室から撤去し市教委に集めるよう各校に指示したという。市教委は「問題になる表現の把握など今後の指導の準備が済んだ」とし、20日午後の校長会で各校に返却した。

 市教委によると、「はだしのゲン」は小学校13校のうち8校と中学校全5校で図書室に開架で保管されていた。昨年11月、「『乞食』や『ルンペン』など、人権にかかわるような表現が多く、見過ごすわけにはいかない」として、市長が教育長に対応の検討を指示した。教育長は同月、校長会を通じ、「はだしのゲン」を図書室から撤去し、別の場所に保管するよう要請。しかし、各校が従わなかったので、今年1月には、「市教育委員(7人)にも読んでもらい、議論してもらう必要がある」として、回収を指示したという。

 これに対し、同市立校長会(会長=宮本純子・長南中校長)は「学校図書館の運営権限は校長にあり、市教委が一方的に蔵書の回収を行うことは受け入れられない」「特定の価値観や思想に基づいて読むことさえできなくするのは児童への人権侵害」などとする抗議文を1〜2月に計2回、市教委に提出。回収指示の撤回と本の返却を求めた。

 「はだしのゲン」は広島原爆で肉親を亡くした故・中沢啓治氏の自伝的漫画。松江市教委が「過激な描写がある」などとして学校図書室での閲覧を制限していたことが昨年8月に発覚。千代松市長によると、その後、市民から「市長は内容についてどう思うか」と問い合わせを受け、実際に読んだという。「反戦や生命の大切さなど作品の大きなテーマを否定しているわけではない。人権行政を進める立場として、不適切な言葉を放置していいのかという問題提起だ」と説明している。

 中藤教育長は「作品自体ではなく差別的表現に問題があるということだ。学校現場には、使ってはいけない言葉などの指導をしてほしいと思っている」と話した。今後、「はだしのゲン」の中の問題となる表現をリスト化して指導用に使うなどの方法を検討するという。【山田泰正】


  泉佐野市教委、小中学校の「はだしのゲン」回収 
(2014年3月20日 読売新聞)

 原爆の悲惨さなどを描いた漫画家・中沢啓治さんの代表作「はだしのゲン」について、大阪府泉佐野市教委が、市立小中学校の図書室から回収し、閲覧制限していたことがわかった。作品に「差別的表現が多い」として、千代松大耕ひろやす市長が要請、中藤辰洋教育長が指示した。市教委は20日、閲覧制限を撤回し、各校に「ゲン」を返却した。

 「ゲン」を巡っては、松江市教委が昨年8月、「描写が過激」として市立小中学校に閲覧制限を要請していた問題が発覚。泉佐野市教委などによると、11月、千代松市長が「きちがい」「乞食こじき」「ルンペン」などの言葉を挙げ、「問題があるので何らかの対応が必要」と中藤教育長に伝えた。中藤教育長は市立小中学校全18校に所蔵の有無を調査したうえで、市長の要請として、「ゲン」を図書室から校長室に移すよう指示。さらに今年1月、所有する13校から128冊を回収、保管した。

 一方、市立校長会は1月23日、「特定の価値観や思想に基づき、読むことさえできなくするのは子どもたちへの著しい人権侵害」として、指示の撤回と返却を求める要望書を中藤教育長に提出した。

 こうした声を受け、市教委は各校に返却し、児童生徒に同じ言葉を使わないよう指導する方針を決定。20日、市役所で記者会見した千代松市長は、「表現の自由との兼ね合いで難しいが、人権教育を推し進めてきた経緯から指摘した。他の作品で同様の差別的表現があれば、今後も何らかの対応を取っていく」と述べた。

 中沢啓治さんの妻、ミサヨさん(71)は、「当時の人々の間で実際に使われていた言葉だ。主人は、被爆者の一人として、きれいごとではなく、ありのままを描く方が、事実が正確に伝わると信じた」と話した。

 塩見昇・大阪教育大名誉教授(図書館情報学)の話「大人が読ませたい作品ばかりでは、自由に本を選ぶという学校図書館の教育的な意義が失われる。差別的な表現は古い文学作品の一部にもあることで、そこだけを問題視した閲覧制限は適切とは思えない。政治に対する教育の独立性という点でも好ましくない」
(2014年3月20日 読売新聞)



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