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死刑は悪の根を根絶できるか

2013-03-04 | ラジオ
日本ではここ数日で3人の死刑囚に対し刑が執行された。そのうち一人は2004年、奈良市で少女を誘拐し、殺害した罪で、他の2人は法務省によれば残忍な殺害方法を理由に、いずれも死刑が言い渡されていた。
法務省のデーターによれば、現在日本には137人の死刑確定囚が収監されている。その中にはオウム真理教の元教祖で、東京の地下鉄サリン事件を起こした罪で服役中の麻原彰晃もいる。
様々な国際法組織は日本に対し、非人道的であるとして死刑廃止を呼びかけているが、日本の世論の85%は死刑を支持している。

ロシアでは1996年、欧州評議会に加盟したときから死刑が廃止されている。それでも子どもが犠牲となる悪質な犯罪が起きるたんびに、社会では死刑復活を求める激しい論争が巻き起こる。
最近にこうした論議が沸き起こったのは、2013年、今年の初頭、タタルスタン共和国とイルクーツク州で2人の女の子が殺害された後、ウラジーミル・コロコリツェフ内務相が行なった発言がきっかけだった。
コロコリツェフ内務相は、死刑反対を叫ぶ人の怒りが自分に向けられるのは恐ろしいが、それでもこうした犯罪を行われないよう、予防となる手段が他にあるとはどうしても思えないと語ったが、この意見は大臣としてではなく、一市民としてのものであると強調した。

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この立場には賛同者も真っ向から反対する人もいる。人権擁護団体レジスタンスの代表で、ロシア社会員のメンバーでもある、コスチナヤさんの意見をここでご紹介しよう。
「人の命を、特に子どもの命を殺めた人間に対しては、その場で犯罪者を八つ裂きにしたいという気持ちが湧くだろう。ただしこれは感情の問題で、国家の処罰制度は別の問題だ。
死刑はアメリカの幾つかの州、東南アジア諸国、ベラルーシと世界46カ国で行なわれている。これは社会と国家がこうした措置に同意するかどうかというコンセンサスの問題だ。ただし、罪のないものが処罰されかねない、恐ろしい過ちをどう回避するかという問題もある。
先ごろ、国際アムネスティーが、刑の執行後に無罪が確定された人のリストを発表した。私の個人的な意見は、ロシアの現状に関するものだが、広範に用いるのは禁固刑でなければならないと思う。
たとえば日本は死刑宣告の延期が行なわれているが、これは裁判で死刑を宣告されても、その執行を数年待つというものだ。これは囚人を苦しめるために行なうものではなく、悲劇的な過ちを起こさないよう、何度も入念に調べる目的で行なわれているものだ」
コスチナヤさんの意見だ。

全く弁護の余地のない犯罪も存在する。しかしこうした重大犯罪に、果たして死刑が予防的な効果を発するのだろうか。
コスチナヤさんの意見を、ここで再びご紹介しよう。
「犯罪者は刑罰を考えないだけでなく、なぜ捕らえられたのかも考えないことになる。この意味では死刑という刑罰は、犯罪の歯止めにはならない。
別の見方をすると大抵の場合、特に犯罪対象が子どもだった場合、これが再発することを恐れる声がある。こうした場合は死刑が執行されれば、犯罪者はこれ以上、他の人を殺さないという以上、死刑は予防策となるといえるかもしれない。
これにさらに道義的な問題もある。国家が人の命を絶つ権利を有するかというものだ。つまり事実上、国も犯罪者のレベルに落ちてしまうことになる。ここでは社会が死刑を行なう、行なわないという両方の場合において支払う代価を的確に理解しなければならない」
コスチナヤさんの意見だ。

様々な調査の結果、ロシアでは死刑復活を支持する人は7割を超えている。ロシア議会下院国家会議の法委員会のクラシェニンニコフ委員長は、死刑モラトリアムの廃止に断固として異議を唱えている。
クラシェニンニコフ委員長は死刑復活を反対する理由として、死刑は世論を宥めることはできるかもしれないが、悪の根を根絶することにはならないと語っている。

舌のもつれるベテラン女性アナウンサーの「起きるたんびに」は方言だね

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2月27日放送 ロシアの声・ラジオジャーナル