遠い森 遠い聲 ........語り部・ストーリーテラー lucaのことのは
語り部は いにしえを語り継ぎ いまを読み解き あしたを予言する。騙りかも!?内容はご自身の手で検証してください。
 



   昨年から折を見ては日帰りの旅を続けていた常陸に一泊旅行に行きました。なぜかは知らねど、心誘われるのです。

   イシが浜はとても好きな海岸です。砂浜に座ってパラソルの下で空と海を眺めていましたが、幼な心がうずいて波打ち際に走り波に遊んでもらいました。波が引くとき、隙をついてきらきら耀く貝のかけらを拾うのですが、結局着衣も靴もずぶ濡れになってしまいました。草原では草のうえにまろび大地に接吻...春の匂い、あまやかな草の匂い....しだいに野生に帰ってゆくみたい....。ここ常陸は縄文のひとびとが多く棲んだところです。



   「薔薇の木」という可愛いカフェに今度こそ入ろうと思ったのですが、庭にひっそり花が咲くばかり、閉まっていました。このところ不況をもろにかぶって、個人の経営している素敵なお店がつぎつぎに消えてゆきます。チェーン店だけになったらどんなに味気ないことでしょう。その日、とても美味しいお店を見つけたのがせめてもの喜びでした。磯ごはん、値段も手ごろでこれが実に美味でした。そのお店の創作料理だそうです。




   泊まったのは海辺の萩屋という旅館でした。部屋に入ると一望のもとに太平洋が見渡せ、歓声があがりました。和洋の調理法をとりまぜた地魚を堪能しました。この旅館も料理といい風呂といい、創意工夫のある旅館でした。

   ......そして部屋に帰ったわたしたちは、水平線上に赤い月が昇るのを見ました。今日は満月だったのです。海上に月の道が耀いています。ライトを消し潮騒を聴きながら末娘の二十歳を20本のろうそくを灯して祝いました。夜、わたしは玉石のサウナにこもって語り続けました。お風呂は澄み通ったセルリアンブルー、誰もいません。




   朝、4時45分ごろ、ほのかにすみれ色に染まった空に赤い太陽が昇りました。日輪はぐんぐん昇りやがて黄金に耀き、波の上に煌くひとすじの道ができます。見るひとの胸までも一直線に届くようです。日輪に向かって七度深呼吸をしました。太陽のエナジーが腹中に入り、脊髄が震えました。

   ちいさな旅から戻れば戦いがはじまります。語りつづけることができるか、それさえわかりません。けれども...ひとの人生、時代の嵐に翻弄されながら創意と気概で乗り越えてゆこうとする、あり得べきものに向かってゆこうとする試みこそが、それぞれの”ものがたり”.....なにを逡巡することがありましょうか。

   

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