Leikon's Photo Diary

写真とカメラなどに係わる独り言

七月大歌舞伎 夜の部

2024年07月15日 23時57分34秒 | 歌舞伎

誤認衆の H 口さんのご厚意で「七月大歌舞伎」夜の部に芝居見物。お目当ては宙乗りも演じる幸四郎の三役と贔屓の巳之助です。
 
序幕。厳しい言い方かもしれませんが、本も役者も学芸会レベルですな。中車は歌舞伎の台詞廻しをもう一回やった方が良いでしょう。最悪なのは本能寺の場。蘭丸に眉間を鉄扇で割られ、馬盥。これを経ての謀反でしょうが。それがその場で直ぐに鎖帷子なら、堪え難きを堪え、忍び難きを忍んだうえでの「時は今」にならんでしょう。本が悪過ぎ!! この本で芝居にできる光秀役者なら兎も角、松也は大根だし。愛宕山山中も期待の巳之助でしたが、然程のことは無し。最後に右近の殺陣をやる時間があるなら、光秀の遺恨を溜める場面に使って欲しかったですね。
二幕目。備中高松塞の場は渡辺保さんも書いているとおり、唯一の芝居らしい場面。幸四郎も良い芝居で、笑也、笑三郎も脇を固めていました。染五郎も力いっぱいです。四人の密な空間を感じました。処が、この場の終わり頃、秀吉になった幸四郎が孫市の染五郎に対して、良い父、という場面で笑う客に興醒め。ここは、その関係性でなくて芝居を観る部分でしょ。本水は猛暑のクーラー程度の味かな。必然性に欠けます。
大詰。宙乗に価値を見出す観客であれば良かったのですが、ウチ夫婦は違います。今日のなかで、最後の所作 2 場は良かったです。二幕目の「杉の森」とこの舞踊が今日のハイライトでしょう。白頭翁は所作事は不得意ですが、今回くらい踊り手のレベルが違うと、なる程と思いますし、所作事への興味が湧きます。舞踊に詳しい妻に訊いてみましたが、ほぼ同評価なので安心してここに書きますと、雀右衛門、高麗蔵の踊りは手堅いです。中車は、長じてから修業している人に辛い言い方で申し訳ないですけど、子供の頃からやっていないハンディキャップは大きいですね、観ていて辛いです。女舞二人に紛れての家康の舞で下手なのが見え難くしたのでしょうが、分かりますよ。さて、次の最も興味深く見物した 5 人の舞。幸四郎がトップとして当然ですが、次に僅差で巳之助が良いです。贔屓ばかりでもなく、体幹がどっしりして頭が(立っていて)ブレないですね。観ていて綺麗です。かなり差をつけられて、右近と染五郎の順でしょうか。更に大きな差の或る最下位の松也。バタバタしていますし、軸はブレるし(前に倒れる)、修業が足らんでしょう。華もあるのにこの出来栄えは悲しいです。


【 本日の演目 】

奈河彰輔 脚本
藤間勘十郎 演出・振付
千成瓢薫風聚光(せんなりびょうたんはためくいさおし)
裏表太閤記(うらおもてたいこうき)
松本幸四郎宙乗り相勤め申し候
序幕  第一場 信貴山弾正館の場
    第二場 本能寺の場
    第三場 愛宕山登り口の場
    第四場 同 山中の場
二幕目 第一場 備中高松塞の場
    第二場 山崎街道の場
    第三場 姫路秀吉陣所の場
    第四場 同 海上の場
    第五場 道中の場
    第六場 大津坂本大滝の場
大詰  第一場 天界紫微垣の場
    第二場 大坂城大広間の場

豊臣秀吉/鈴木喜多頭重成/孫悟空 幸四郎
明智光秀/前田利家  松也
織田信忠/加藤清正  巳之助
光秀妹お通/毛利輝元 尾上右近
鈴木孫市/宇喜多秀家 染五郎
服部弥兵衛      廣太郎
十河軍平/天帝    猿弥
重成妻関の谷     笑也
重成母浅路      笑三郎
出井寿太郎      寿猿
僧日計実は四王天但馬/猪八戒 青虎
沙悟浄        九團次
多喜川一益      錦吾
織田信長       彦三郎
天帝大后       門之助
淀殿         高麗蔵
松永弾正/徳川家康  中車
北政所        雀右衛門
大綿津見神      白鸚