「珍満」を出た後、桜島の外周を反時計回りに一周した。左の車窓から見る鹿児島湾は穏やかで、とても海底火山があるようには思えなかった。ここは姶良カルデラといい、桜島火山はその外輪山になる。その昔はカルデラ湖だったが、カルデラの外壁が崩れて海水が流れ込み、今の形になったらしい。
すれ違う車もほとんど無いまま、海岸線を離れて内陸部に入ると民家はほとんど見かけなくなった。やがて、ナビに昭和溶岩の文字が現れた。周辺は昭和噴火(昭和21年)の際に溶岩が流れた場所であり、殺伐とした景色が広がっている。天気が良ければ、2006年以降活発に噴火を続ける「昭和火口」を見ることができる場所だが、この日は厚い雲に覆われて、火口はおろか噴煙の識別もできなかった。
しばらくして、唐突に黒神中学校が現れた。
黒神埋没鳥居はこの中学の校舎の体育館の間にある。大正の大噴火(大正3年)で噴出した大量の火山灰・軽石によって埋め尽くされたもので、もともとの高さは3mあったという。鳥居だけでなく、周辺の集落も埋没したに違いない。
黒神中学は埋没した集落の上に建設されたことになる。この中学の開校は昭和22年だから、昭和噴火の時はまさに建設中だったはずである。噴火による溶岩流をギリギリで免れ、地獄絵図のような状況の中で開校にこぎつけたことになる。そのことほうが驚きだ。
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