読書日記 嘉壽家堂 アネックス

読んだ本の感想を中心に、ひごろ思っていることをあれこれと綴っています。

果断<隠蔽捜査2> 今野敏 新潮文庫

2010-02-11 20:38:21 | 読んだ
「隠蔽捜査2」とあるように、竜崎警視長シリーズである。

第1話の「隠蔽捜査」は文庫で、第3話の「疑心」は小説新潮連載で、そして隠蔽捜査外伝ともいうべき、竜崎の親友(竜崎はそう思っていないらしいが)の伊丹刑事部長のシリーズも小説新潮で読んでいる。

竜崎警視長は、警察庁の超エリートであったが、隠蔽捜査において息子が薬物を使用していることについて「もみ消し」を拒み、また捜査においても筋を通したため、警察庁から警視庁の警察署長に左遷させられたのである。
(ちなみに「処分」ではないと思う、なぜなら警視長のままで降格されていないから)

竜崎は常に「筋を通す」のである。
この「筋を通す」というのは非常に難しい。
私も常にそのようにありたいと思うのだが「筋を通す」ということは、周囲との「軋轢」を重ねるということであり、私には到底できそうもない。

竜崎は東大卒業のエリートであり、自らを強く信じている。

本物語においても、警察署長として防犯対策会議に出席し、出席者から要望を受けたあと
「可能な限りのことをやらさせていただきます。それはお約束します。さて、私たち警察があなたがたにして差し上げることはすでに地域課長からも私からも申し上げました。それでは、あなたがたは警察に対して何をしてくださいますか?」
と言うのである。

そんなことを言われたことのない市民は唖然とし続いて反撃しようとするが、ことごとくやり込められてしまう。
で、最後に
「教育や学習について面白い意見を持っているが、さぞかしあなたも勉強されたんでしょうが、出身の大学は?」
ときかれて
「東大法学部です」
と答え、さらなるギャフンにさせた。

兎に角、正論を堂々と述べて、それが通っていくのは、読んでいて気持ちいいしすがすがしい。

物語の筋というか謎を追うのも面白いが、竜崎の行動と言動をチェックしていくのも面白い。

竜崎の署を統括する第2方面部の管理官がきて
「私が入室したら、起立せんか」
に対して、たった一言
「なぜ?」

「副署長が課長を怒鳴りつければ、課長は係長を怒鳴りつける。そして、係長は係員たちを怒鳴りつけるわけだ。そういう連鎖は士気をそぐ。管理職は、感情で物事を処理してはいけない。大切なのは合理性だ。心得ておいてくれ」

我々の周りで起きていることの対応に常に合理性を考えている人がいるだろうか?
多くの人たちは感情である。

あいつの言っていることは正しいが、あいつが嫌いだから反対する。
あいつの言っていることはなんだか変だけれど、あいつが好きだから賛成する。

というのが多くの人たちの行動原理のような気がする。

しかし、竜崎は
「俺は、いつも揺れ動いているいるよ。ただ、迷ったときに、原則を大切にしようと努力しているだけだ」
という。

そして、何故人はそのように行動しないのか不思議で、自分が変人と呼ばれることに納得いかない。

物語の主人公として非常に魅力的である。
「竜崎ならどうするだろう?」
と思うことで、困難に向かっていけるかもしれない。
だから読書はやめれれない。

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