読書日記 嘉壽家堂 アネックス

読んだ本の感想を中心に、ひごろ思っていることをあれこれと綴っています。

影踏み鬼-新撰組篠原泰之進日録- 葉室麟 オール読物2014.2-6

2015-01-10 22:26:53 | 読んだ
篠原泰之進は新撰組の中で気になっていた人物である。

彼は、新撰組の中でいわゆる「伊東派」の重鎮である、ということはいろいろな物語で知っていた。

新撰組に関しては、最初に読んだ物語が「燃えよ剣」(司馬遼太郎)であり、その後も近藤・土方が中心となっている物語を読んでいたので、私は、近藤・土方サイドの人間であり、伊東一派はあまり好きではなかった。

特に伊東甲子太郎は『何を考えているんだろう?』と思っていた。
にもかかわらず、なんだか篠原泰之進は気になる、というか好ましい人物だと思っていたのである。

というようなことから、ワクワクしながら読んだのである。

物語は、篠原が新撰組に入隊する前から始まる。
彼は、京都で一人の武士を些細なことから切り捨てた。
そして、偶然にもその武士の妻と子と出会う。
この二人との関りと、新撰組でのそして脱退して御陵衛士での活動がこの物語で描かれている。

物語であるからして、篠原は非常に魅力的に描かれている。
多分資料の中から魅力的な部分を抜き出しているからだろうと思うのだが、やっぱり魅力的な人物であったのだろうと思う。

御陵衛士の時代には伊東を助け、藤堂平助から
「篠原さんは土方さんに似てきた」
といわれている。

組織の中の地位が、篠原をそうさせたのであろう。しかも所属している組織は拠って立つ基盤が脆弱であるから、実務を請け負うナンバー2の人物は、組織を確固たるものにするため、権謀作術の限りを尽くす、したがって、他から見れば冷徹に見える。

そして、土方も篠原も強かった。

いわゆる油小路事件で、伊東が斬殺された後、油小路に駆けつけるものの、なんとか切り抜けることができたもの、思慮深く強かったからである。
そして、彼は近藤を狙撃する。

このあたりまで、なんとか分かっていたのであるが、その後、赤報隊に加わったり、明治政府に出仕したりしたことについては知らなかった。

維新後に、新撰組の斎藤一と出会う。この物語では篠原と斎藤は親友のように描かれている。
斎藤一も創作には魅力的人物であるらしく、壬生義士伝(浅田次郎)でも主人公の吉村貫一郎の親友であった。
この物語でも、副主人公のように描かれていて面白い。

ラストシーンでは、維新の混乱時に連絡が途絶えた、母子と出会い、鬼となっていた自分の影が消えていくのを自覚する。

面白かったです。

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