読書日記 嘉壽家堂 アネックス

読んだ本の感想を中心に、ひごろ思っていることをあれこれと綴っています。

美は乱調にあり 原作:瀬戸内寂聴 漫画:柴門ふみ オール読物2013.4~2014.1

2015-01-05 23:09:33 | 読んだ
年末に雑誌の整理をしていたら、オール読物にこの漫画が連載されているのを見つけた。

実は、ここ2年くらい月刊誌を購入はするものの中をよく見ていないことが多い、で、今回初めて気づいたのである。

原作を読んでいないので、漫画でサラッと予習してみるのもいいか、と思って、前に整理したのを引っ張り出して読んだのであった。
(こういうことだから、本読みに本の整理をさせるのはよくないと思うのだが・・・)

さて、物語は、関東大震災のとき、甘粕正彦に殺された、伊藤野枝が主人公である、らしい。
というのは、原作は伊藤野枝が主人公らしいのだが、この漫画を読んでいると、伊藤野枝と、神近市子、平塚らいてうの3人が主人公に見えてくる。

この3人に共通しているのは、女の自立、女の権利獲得、女の自由、男女平等、といったことである。
そして、その主義を貫くためにいろいろな活動をしていくのであるが、どうも「やりすぎ」の面が多いように思える。

そのなかで「自由な恋愛」ということを実践しようとして、当時では不道徳、今だって不倫という言葉を浴びせられるような行動をする。

伊藤野枝と神近市子は、大杉栄を巡って奪い合いをする。
大杉栄は「自由な恋愛」の実践者である。

原作を読んでいないのでわからないが、この漫画を読む限り、作者はこれらの人々を「婦人運動の先駆者たち」として描くよりも、「女の性(さが)」に惑わされた、振り回された人たちとして描いているように思えた。

たとえば普通の考え方を持つ人から見れば、大杉栄の「自由恋愛」の理論は自分だけのもので浮気性を難しい言葉で行っているだけで、「女たらし」の典型とすぐに断じることができるだろう。

しかし、彼女たちはそれが純粋な人間の生き方と考えてしまう。

大杉栄と伊藤野枝は、関東大震災の際に、当時憲兵大尉であった甘粕正彦によって殺されてしまうのだが、甘粕あるいは陸軍の考え方は、ある種もしくは当時のいわゆる良識ある人と呼ばれる人たちには指示されるものであったように思う。
ただ、だからといって子供まで殺すというのはいかがと思うのだが・・・

新しい考え方というのは既存のものすべてを否定するところから始まるとは思うのであるが、なんというかいわゆる「倫理的なもの」までを否定するのは、新しい考え方を広める勢いにはならないのではないか、という風に思える。

どんな音楽にも音符があるように、どんな文学にも文字があるように、人間の考え方の原点には犯してはならないものがあるんだなあ、とこの物語を読んで思ったのである。

そして、原作は出会いがあったら読んでみようと思ったのである。

それにしても、柴門ふみの描く女性たちは「苦手」である。

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