読書日記 嘉壽家堂 アネックス

読んだ本の感想を中心に、ひごろ思っていることをあれこれと綴っています。

新三河物語(中) 宮城谷昌光 新潮文庫

2011-05-03 22:32:49 | 読んだ
大久保彦左衛門忠教の三河物語を下敷きとした「新三河物語」
中巻は、徳川家康がいよいよ三河から遠江へ進出し、武田との戦いとなる。

「三方ケ原の戦い」と「長篠の戦」が描かれている。

この物語はいわゆる「大久保党」を中心としているので、今まで読んできたものとは違った角度で新鮮である。

徳川の家臣団において大久保党は一族の結束も強く、いわゆる三河気質といわれている律儀で篤実、泥臭さを代表するものではないかと思う。

それは、徳川家が小さいときには素晴らしい輝きを持っていたが、徐々に大きくなっていくにつれ泥臭さを洗練していかなければならなくなってきている。
他の家臣団は遅かれ早かれ変わっていくのであるが、大久保党はなかなか変われない。

その大久保党を著者は愛している、のではないかと思う。
著者は、大久保党の人たちの口を借りて語る。

『(前略)目的とは術に似て、おのれを育てるが、成長をとめるということもする。人がもたなければならないのは、目的ではなく、大志である。大志があるかぎり、人は成長し続ける。(後略)』

『(前略)生きているものが恃みがたければ、死せるものに依り、人が恃みがたければ、天と地に縋るがよろしい。なにはともあれ、人は何かを信じていなければ、生きてはゆけませぬ。』

『天下にとって、害であり毒であるがゆえに、滅ぶのです。(後略)』

『慢心するものは、滅ぶ。』

大久保党は、遠州攻めにおいても、三方ケ原でも長篠においても活躍をするが、長篠の戦いでは、大久保忠世と忠佐の兄弟が織田信長に褒められるほどの戦いをする。

褒められる、というのもなかなか難しい。まして直接の上司でないものから褒められるというのは、直接の上司や仲間達との関係も難しい。

ということで、ただひたすら徳川のために働いてきたのであるが、家康の長男・信康の問題で家中が微妙な常態となり、大久保忠世は抜き差しならない状態に追い込まれ、信長から呼びつけられたときに、信康の非を認めてしまう。

信康の非を責めた信長は本能寺の変で死んでしまう。
そのとばっちりを受けた家康は人生で最大の苦難の道のりを経て故郷に戻る。

そして、武田家の領地であった駿河、甲斐、信濃の経営に乗り出す。
それは、大久保党にとっても大きな出来事になっていく。

というところで中巻は終了。いよいよ下巻へ突入である。

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