尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

安倍「信賞必罰」人事と総裁任期延長問題

2016年08月09日 23時19分48秒 |  〃  (安倍政権論)
 少し時間がたったけれど、8月3日に安倍内閣の内閣改造が行われた。その内閣を「第3次安倍第2次改造内閣」と呼ぶ。(官邸ホームページにそう出てるから、一応それでいいんだと思う。)最初の第3次というのは、国会で総理大臣指名を受けた回数を指すから、次に衆院選を行うまでは何度改造をしても、第3次安倍内閣である。2回目の内閣改造だから「再改造内閣」と呼ぶこともあるが、まあ最近は「第2次改造内閣」というんだろう。

 さて、この内閣改造では、何人かは留任し、丸川環境相は五輪担当相に横すべりした。ほとんど同じような人が出ている。その中で、遠藤利明五輪担当相は留任を希望していたという。2015年6月に五輪担当相が新設されて、一年あまり務めてきた。まあ、変えてもいいような人事だとは思うけど、そうすると都知事は変わったわけだから、都知事、五輪担当相、組織委委員長の中で二人が変わることになる。ひそかに俺は留任できるかもと思っていたのかもしれない。

 翌日の産経新聞によると、これは安倍流の「信賞必罰」人事なのだという。どういうことかというと、遠藤五輪相の地元、山形では参院選で野党系の舟山康江が大差で当選した。東北では秋田を除き、5県で野党統一候補が当選したわけである。そして、東北選出でただ一人入閣した金田勝年法相は、秋田県選出である。また接戦の末、自民党が野党を振り切った愛媛県からも、山本公一環境相が入閣している。さらに神奈川県では自民、公明に続いて、自民党推薦の無所属(当選後、公認)が当選し、与党が4人のうち3人を占めた。神奈川からも、菅官房長官に続き、松本純国家公安委員長、防災相が入閣した。1人区で野党が当選した県出身の閣僚は誰もいない。

 ホントにそういう基準で選んでいるのか。誰にもわからないけど、少なくとも党内ではそういう風に受け取られたということだろう。そして、「お気に入り」しか使わない。「女性枠」は3人だけど、小渕優子、松島みどりで懲りたからか、思想傾向を同じくする稲田朋美高市早苗ばかり重用する。高市総務相はなんで留任なのか。女性閣僚の数合わせばかりではないだろう。「放送法発言」で放送局の牙を抜き、参院選の報道はかつてなく少なかった。「憲法問題」が争点になっていると知らない人がかなりいたらしいが、新聞を読まない人はテレビでやらない限り判らない。選挙報道を少なくさせた「功績」を高く評価しての留任ということではないか。

 そして、稲田朋美はなんと政調会長から防衛相に抜擢である。「重要閣僚」と言われていたが、今は経済閣僚より「安保重視」なのか。「国家安全保障会議」の中核をなす「4大臣会合」(首相、外務、防衛、官房長官)の構成メンバーに入れて経験を積ませたいということではないかと思う。どうも稲田後継を本気で考えているのかもしれない。稲田防衛相の歴史認識はもちろん、防衛問題に関する知見を野党は徹底的に追及して欲しい。いずれ「ボロを出す」と思うけど、放っておくと「本当の大物」に化けてしまいかねない。

 一方、谷垣幹事長の不慮のケガという事情があり、二階総務会長が幹事長に選任された。(谷垣氏も国会に出てこれないんだから、「公人」として病状をもう少し明らかにする必要があるんじゃないか。)さて、前々から「総裁任期延長」を唱えていた二階氏が幹事長になって、事実上「任期延長」が既成事実化しつつある。安倍総裁のもと、自民党は衆院2回、参院2回の国政選挙に勝利した。そして今もなお、高い支持率を続けている。しかし、自民党総裁の任期は2018年9月には切れる。連続3選はできないから、そこで安倍総裁は退任せざるを得ない。議院内閣制だから、与党の総裁が国会で首相に指名される(のが原則)。だけど、「3選禁止」は、私的結社自民党の党内ルールに過ぎない。自民党が党則を変えさえすれば、何の問題もない。

 安倍総裁、安倍首相のもとで、衆議院に当選してきた若手議員がたくさんいる。時々問題を起こすから、けっこうおかしな人もいるらしい。それらの議員は地盤も盤石ではなく、民主党(当時)が不調のため当選できたような人がたくさんいる。もし蓮舫が民進党代表となり、相手候補の支援に来たら…。それは心配だから、今まで選挙で当選した時の安倍首相を変えたくないだろう。そういう「党内心理」を読んで、二階発言が出てきているのだろうと思う。だけど、それは党内で次を狙う人には困った事態である。それに、2018年9月になっても、「アベノミクスは道半ば」なわけだから、いい加減支持率も下がりつつあるかもしれない。

 さて、安倍首相は何をしたいのか。東京五輪まで首相をやりたいのか。それとも、「憲法改正を成し遂げた史上初の首相」になりたいのか。かつて、中曽根首相は選挙で勝利して、その功績により「総裁任期一年延長」になったことがある。当時は任期2年、2回までだったのだが、一年アディショナルタイムが追加されて、5年間首相をやった。その結果、「余力を残して」辞めることになり、中曽根後は「竹下、安倍(晋太郎)、宮澤」が立候補した中で、中曽根に一任ということになり、中曽根は竹下を指名したという事実があった。

 2018年9月に切れる任期を1年延長しても、東京五輪には届かない。だから五輪までやる気なら、総裁任期そのものを変えるしかない。でも、それを言い出したとたん、今度は「安倍は独裁者になる」という批判が野党ばかりではなく、自民党内からも出てこないとは言えない。普通はルールを変えるときは「次の人から適用」だけど、自分が総裁としてルールを変えて、自分から適用というのは、虫が良すぎるというもんだろう。一方、憲法改正のための「改憲派3分の2」は、2019年7月の参院選で失われる。だから、改憲はこの3年で仕上げるしかない。改憲発議ということだけを目標とするなら、「総裁任期一年延長」でも構わないわけである。そして、一年延長だと「余力を残して退陣」になるかもしれず、その場合安倍に「後継指名」権が出てくる可能性もないではない。

 そうすると、次の総選挙をいつにするか。野党の準備が整わないうちにやってしまうか。しかし、「蓮舫を首相に」が受けて、共産党も候補を絞ったりすれば、過半数はいっても3分の2を失いかねない。そうすれば、改憲はすべてチャラである。今度の総選挙は2018年12月までに行うわけである。では、いつやるのが一番有利か。与党の都合ばかりで解散していいのか、それは憲法違反だという解釈もある。だけど、日本では今まで与党側の「不意打ち解散」も認められてきた。(イギリスはそういう不都合をなくすため、任期5年の途中で解散しにくくする法律を作ってしまった。それも善し悪しだと思うが。)安倍首相は今そのことをじっくり考えているはずである。任期一年延長なら、2017年を選挙のない年にして、2018年に予算承認後の4月か5月に解散というやり方の方がいい。一方、今年秋の臨時国会で抜き打ち解散もありうる。僕にはわからないけど、要するに政局は自民党の総裁任期延長問題を軸に動いていくということである。
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