尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

中教審での教員免許更新制議論ー教員免許更新制考②

2021年05月29日 22時05分45秒 |  〃 (教員免許更新制)
 中央教育審議会中教審)での教員免許更新制の議論はどうなっているだろうか。「「令和の日本型学校教育」を担う教師の在り方特別部会」の中に設置された「教員免許更新制小委員会」は、すでに4月30日と5月24日の2回開かれている。朝日新聞5月25日付の記事では「廃止も検討」と書かれている。次回には「廃止するかどうかの方向性」を決める重大段階にある。ここでは資料の紹介を中心にして、自分の考えは次回に書きたい。
(ウェブ開催の小委員会)
 まず、前回の中教審から申し送りされた「課題」を紹介する。その後で1回目小委員会の議論を見てみる。資料紹介で長くなるので、最初に僕が読んだ感想を簡単に書いておきたい。第1回目の議論は、課題とされる問題点に応える議論になってるのか疑問だ。「教員免許更新制」と「教員研修のあり方」は本来別の問題である。教師が最新の知識を身に付ける必要があるというなら、「免許更新」でなくても済む制度を設計できるはずだ。しかし、「オンライン講習」やウェブ上でポイント制を導入するなどすれば、あまり負担感がなく免許の更新が可能なのではないかという理解出来ないアイディアも出ている。結論が出る前にパブリック・コメントなどで是非教員のナマの声を聞く機会を作るべきだ。

 中教審の資料を見てみると、そもそもの問題意識が判る。「「令和の日本型学校教育」を担う教師の養成・採用・研修等の在り方について関係資料(2) 」にある「次期教員養成部会への申し送り事項」である。その中に「教員免許更新制や研修をめぐる包括的な検証について(概要)」という文書がある。その中の「教員免許更新制の課題について」を見てみたい。

2.教員免許更新制の課題について 【関係者へのヒアリングの際の意見】
教員免許更新制の制度設計について
教員免許状の更新手続のミス(いわゆる「うっかり失効」)が、教育職員としての身分に加え、公務員としての身分を喪失する結果をもたらすことについては疑問がある。教員免許更新制そのものが複雑である。
教師の負担について
教師の勤務時間が増加している中で、講習に費やす30時間の相対的な負担がかつてより高まっている。講習の受講が多い土日や長期休業期間には、学校行事に加え補習や部活動指導が行われたり、研修が開催されている場合もあり、負担感がある。申込み手続や費用、居住地から離れた大学等での受講にも負担感がある。
管理職等の負担について
教員免許更新制に関する手続や教師への講習受講の勧奨等が、学校の管理職や教育委員会事務局の多忙化を招いている。
教師の確保への影響について
免許状の未更新を理由に臨時的任用教員等の確保ができなかった事例が既に多数存在していることに加え、退職教師を活用することが困難になりかねない状況が生じている。
講習開設者側から見た課題等について
受講者からは、学校現場における実践が可能な内容を含む講習、双方向・少人数の講習が高い評価を得る傾向がある。一方で、講習開設者は、講習を担う教員の確保や採算の確保等に課題を感じている。

 ここで指摘された問題点は概ね同意出来るものだろう。では、それがどのように審議されているだろうか。5月24日開催の小委員会における「小委員会(第2回)合同会議資料」に1回目の会議の「委員からの主なご発言」という資料が入っている。今回は資料紹介を中心に。

 一番最初の意見が「更新講習をなくすということは基本的に考えにくい継続を強く希望・要望する。指導要領改訂や世の中の動向、最新の教育テクノロジー、教育メソッド等アップデートされるものを忙しい先生方が通常の業務の中で触れることは難しいので、更新講習で触れ、考え、振り返る機会は有益」とある。一体誰の発言か判らないが、先の申し送り事項から考えても理解出来ない「上から目線」発言だ。

 その後、「研修は重要であり必要であるということは誰も異論がないこと。免許更新制が必要であり重要であるということについては相当異論が出ているというのが事実。きちんと機能するのであればいい。強制ではなく自ら学ぶことが大事」という意見もある。「現在10年スパンだが最新の知識等の習得に照らせば、労力に対する効果については正直なところ疑問。教師は学び続ける必要があるが、そのことが教員免許と紐づいている必要があるのか。」

 「教員免許の有効期限が10年という言葉が独り歩きし、制度を熟知していない教師が失効したり、病気休職や育児休業等長期間休業中の教師が失効しないために管理職や教育委員会が有効期限を正確に把握・手続きさせる対応が相当な事務量で負担」という指摘も出ている。

 「教員の量の面では、教師不足は非常に深刻であり、臨時的任用教員はなかなか確保できない。教頭や副校長が担任をしているケースも珍しくない。10年で失効するなら教師以外の職を選ぼうという若手の声も聞こえる。他業種からの教師への参入についても増やしたい。教師不足はかなり深刻であり、教員免許更新制の見直し、できれば廃止も含めて検討していただきたい。」

 「更新講習の受講を最優先するために、特別支援学校教諭免許状の取得の認定講習を後回しにするというケースが多いという声も聞いている。制度が違うので代替するのは難しいかもしれないが、更新講習と認定講習をお互い代替できるようになるとスムーズになるという部分もあるのではないか。」このような特別支援学校の実情は知らなかった。

「最新の情報でいかに学んだかということが重要。個々の教師のキャリアステージに応じた10年、20年という年次研修を加えながら研修内容を教師自らが主体的に選択することができるシステムを構築していくべき。」主体的な科目履修の選択の保証は必須。自らがデザインし自らがマネジメントしたということが効果の体感と大きく連動する。オンライン化、オンデマンド化することによって、より主体的な選択の保証を拡大していくということが重要

 「千葉県では研修履歴システムが導入されておりマイページで研修履歴が確認できる。自分自身の研修の受講履歴の確認や今後の受講計画の検討上に主体的にマネジメントしていけるシステムとなっている。」「校内研修や校務分掌なども含め研修をポイント化していく仕組みもあり得るのではないか。マイページを設け、各自の研修をポイント制とすることによって免許更新が継続されたり、自らの振り返りにも役立つ仕組みはどうか。」

 他にも多くの意見が掲載されているので、詳しくは直接資料に当たって欲しい。最後に小委員会の委員と臨時委員の名前を資料として掲載しておく。
「教員免許更新制小委員会」委員 6名、主査=加治佐哲也
荒瀬克己(教職員支援機構理事長)、 加治佐哲也主査、兵庫教育大学長)、貞廣斎子(千葉大学教育学部教授)、清水 敬介(公益社団法人日本PTA 全国協議会長)、藤田裕司(東京都教育長、全国都道府県教育委員会連合会長 )、吉田晋(学校法人富士見丘学園理事長、富士見丘中学高等学校長、日本私立中学高等学校連合会長)
臨時委員 15名、主査代理=松木健一
秋田喜代美(学習院大学文学部教授)、安家周一(学校法人あけぼの学園理事長、あけぼの幼稚園長、梅花女子大学心理こども学部こども教育学科客員教授、公益財団法人全日本私立幼稚園幼児教育研究機構理事長)、安部恵美子(長崎短期大学長)、市川裕二(東京都立あきる野学園校長、全国特別支援学校長会長)、大字弘一郎(世田谷区立下北沢小学校長、全国連合小学校長会対策部長)、木村国広(長崎大学教育学部・大学院教育学研究科教授)、坂越正樹(広島文化学園大学・短期大学長)、高橋純(東京学芸大学教育学部准教授)、戸ヶ﨑勤(埼玉県戸田市教育委員会教育長)、根津朋実(早稲田大学教育・総合科学学術院教授)、萩原聡(東京都立西高等学校長)、松木健一主査代理、 福井大学理事・副学長(企画戦略担当))、松田悠介(認定特定非営利活動法人Teach for Japan 創業者・理事、株式会社松田グローバル人財研究所代表取締役社長)、三田村裕(八王子市立上柚木中学校長、全日本中学校長会長)、森山賢一(玉川大学大学院教育学研究科・教育学部教授)
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