尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

脱原発の「失われた10年」

2021年02月14日 22時47分47秒 |  〃 (原発)
 2月13日の夜11時8分頃、宮城県を中心にかなり強い地震があった。福島県、宮城県では震度6強を記録し、負傷者も9県で150人に及んだ。東北新幹線も那須塩原ー盛岡間で止まってしまい、全線復旧には10日ほど掛かるという。東京は震度4だったが結構長く揺れていた。家では絵が倒れて額のガラスが割れてしまった。もともと壁に掛かっていたのだが、紐が劣化して数年前に床に落ちてしまった。その後立て掛けておいたが、前は割れずに今回割れたのが不思議。

 ところで今回の地震は2011年3月11日の大地震の余震とみられるという。こんなに時間が経っても余震があるのか。まあ10年は人間にとってはかなり長いが、地球にとっては「ほんのわずか」なんだろう。「3・11」から10年が近づいて、マスコミの報道も多くなってきた。節目だけしか報道しないのかとも思うが、この後は節目の報道も減っていくのだろう。阪神淡路大震災を見ても当時を知らない世代が多くなっていき、課題が変わっていった。ただ東日本大震災の場合、津波による被害があまりにも大きかったこと、原発事故の影響で帰還できない地域があることなど、今まで日本が経験したことがないスケールの大災害だった。
(大飯原発設置許可取消判決)
 「2020年の書き残し」に原発問題がある。2020年12月5日、大阪地裁で福井県の大飯(おおい)原発3号機、4号機の設置取り消しを求めた裁判で、原告側の主張を認めて設置許可を取り消す判決が出た。原子力規制委員会は2017年に設置許可を出していたが、その判断が不合理とされた。規制委は全国で同じ計算式を用いて判断しているため、全国の原発に波及する可能性も指摘されている。具体的な判決趣旨は詳細にわたるもので、僕にはよく判らない点が多く省略する。

 かつては原発訴訟はほとんど裁判所で却下されていたが、3.11後は少し変わってきた。上級審で取り消されたものの、高浜原発(福井県)でも運転停止の仮処分が出たことがある。また伊方原発(愛媛県)3号機の運転を認めない仮処分が2020年1月17日に出ている。このように裁判で原発を停止する決定が出るというのは、「安全性」の判断がいかに困難なものかを示しているだろう。安全性の判断に上限はなく、住民が安心して暮らせることはない。
(高浜原発)
 ところが大飯原発設置取り消し判決の1ヶ月ほど前に、40年を過ぎている高浜原発1,2号機の20年延長に高浜町議会が同意したという報道があった。すでに原子力規制委員会は延長に同意していて、安全性対策と地元合意が残っていた。(まだ福井県の同意が残っている。)原発事故後、規制委員会が発足し「原発は原則40年」というルールが作られた。それが破られているのだ。40年までだったら安全で、少しでも延びたら危険というわけではないだろうが、「60年」というのは長すぎるのではないか。

 それに20年延長しても、その後は「廃炉」である。原発新設が出来ないなら、廃炉の時期を延ばしただけである。そして新しい原発の新設なんて出来ないだろう。出来ると言うんだったら、原発維持を主張している自民党の有力議員が地元に誘致すればいい。そんなことが出来る議員はいないだろう。結局「脱原発」の時期を延ばすだけで、その間に世界の再生エネルギー技術に遅れを取ってしまうだけだ。福島第一原発の深刻な大事故でも何も変わらないのか。その現実が日本人に与えている無力感は大きい。世論はずっと原発に批判的ななのに、一向に政府の政策に反映されない。これが10年間の現実だった。「失われた10年」だ。

 「温暖化対策」で原発を支持する人もいるが、未だにそんなことを言ってる人がいるのが信じられない。確かに原発は運転時に二酸化炭素を排出しない。その代わりに冷却に使った高温の排水を海に流している。それはCO₂に換算すれば、どれほどのものになるだろう。そして安全対策や安全審査、さらに必ず起きる訴訟で必要な文書のやり取り、そこに費やされる膨大な労働力と紙などの製造に使われるエネルギーでどれほど二酸化炭素を使うだろうか。僕には原発が地球温暖化対策になるなどというのは「悪い冗談」としか思えない。
(ウランの生産国)
 それでも日本でウランが採掘されるというのなら、「エネルギーの自給」という意味はある。よく原油液化天然ガスは中東地域からの輸入に頼らざるを得ず、「エネルギーの安全保障」の面から考え物だという人がいる。しかし、ウランこそ日本にはほとんどないレアメタルである。上記2016年度のグラフでは、カザフスタンが一番多く、カナダオーストラリアと続いている。確かに戦争などの危険性は低いかもしれないが、日本にはないことには変わりない。

 もちろん再生エネルギーには、特に太陽光風力など天候に左右されやすい問題がある。しかし、電気は「発電」だけでなく、「送電」して初めて消費者に届けられる。そして送電には大きなロスがつきまとう。さらに日本には「水力」も大きい。大規模発電ダムは環境破壊につながるが、小規模水力発電は可能性が大きいのではないか。そして「蓄電」技術の革命によって、発電も大きく変わるだろう。政府が率先して「脱原発」「再生エネルギー重視」を打ち出し、「送電」「蓄電」技術の開発に注力すれば、日本は世界をリードする技術を築けるのではないか。

 ちょっと大きな地震があるたびに、付近の原発の状況が報道される。やはり皆心配なのである。倫理的側面も含め、即時ではなくても「脱原発」に舵取りすることが日本にとって絶対に必要だ。
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