尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

経団連会長の原発発言を考える

2019年03月16日 22時43分50秒 |  〃 (原発)
 経団連中西宏明会長が2019年になって原発に関する発言を何回も行っている。2月14日には「原発の再稼働はどんどんやるべき」と発言し、その中で「原発と原子力爆弾が頭の中で結びついている人に『違う』ということは難しい」と述べた。この部分に関しては批判が集中し、後に撤回している。年初から「真剣に一般公開の討論をすべきだと思う」と言っていたが、「原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟」(原自連=顧問を小泉純一郎、細川護熙が務め、事務局長を河合弘之弁護士が務める民間団体)が公開討論を申し込んでも拒否している。
 (中西経団連会長)
 原発事故から8年になる3月11日の会見では、「エモーショナルな反対をする人たちと議論しても意味がない。絶対嫌だという方を説得する力はない」とまで語った。さらに「再生エネルギーだけで日本の産業競争力を高めることができればいいが、失敗したらどうするのか。いろんな手を打つのがリーダーの役目だ」とも述べた。「エモーショナル」(emotional)とは「感情的」「情緒的」といった意味だが、僕はこの発言に対してとても不快な気持ちを覚えた。その不快さは何に由来するのだろうかと思って、少し考えてみることにした。その前に「経団連」の説明。

 一般社団法人日本経済団体連合会(経団連)は、日本商工会議所(日商)、経済同友会と並んで、経済三団体と呼ばれる。かつては「日経連」(日本経営者団体連盟)を含めて「経済四団体」と言われたが、2002年に経団連が日経連を統合した。そういう経緯もあり、経団連は日本の「財界の総本山」と呼ばれる。世の中には法律で定められた団体もあり日弁連、日本医師会などと並び日商もその一つ。でも単なる民間団体である経団連の方が影響力が大きい。2018年5月から日立製作所会長中西宏明氏が経団連会長を務めている。

 話を戻すと、そもそも「原発反対論はエモーショナルなものなのか」、「エモーショナルな反対論ではいけないのか」という問題もあるが、今はその問題を棚上げする。原発反対論はエモーショナルで、だから間違いだと考えるとして、「そのエモーショナルな反対論」は今の安倍政権の下では現実的な影響力を持ってない。政策的に原発ゼロは今のところ実現可能性がない。もし「エモーショナルな反対論」が国会の多数を占めていて、今にも原発ゼロ政策が決まりそうだというのなら、経団連会長が反対論をぶつのも判らないではない。でも全然そんな気配はないじゃないか。

 今の日本で一番「エモーショナルな議論」をしているのは、原発反対運動ではない。それは誰が見たって、安倍首相の憲法改正論である。エモーショナルな議論がいけないというんだったら、憲法の方が原発よりもっと問題が大きい。そして反原発と違って、改憲は首相自身が自ら訴えている。どうして安倍首相の改憲議論の方は批判しないのだろう。僕が感じた違和感はそれが一番大きい。それに各企業は毎日毎日、テレビ等でアイドルなどのCMで商品を「エモーショナル」に宣伝している。それは問題にしなくていいのか。

 そもそも人間は感情を持つ動物なんだから、エモーショナルな議論を全否定するのはおかしい。何も8年目の「3・11」に、「原発反対はエモーショナル」なんて言うべきなのか。人間の情として理解できない。まだ多くの人が避難を余儀なくされている。それと同時に、中西会長の出身母体の日立製作所こそ、原発メーカーであるという問題がある。利害関係者なんだから、経団連を代表して、つまり「財界の総意」と受け取られる立場で、原発の議論をしてもいいのだろうか。中西会長発言こそ、「秘められたエモーショナルな動機」がないと言えるのか。

 原発はどんどん再稼働しても、また稼働年数をできるだけ延長しても、やがて期限がくる。だから、本当に今後もずっと原発にエネルギーを依存していくのなら、もう次の原発を作る計画を進めないといけない。でも「エモーショナルな反対」がある日本において、どこに新原発を作ることが可能だろうか。それに原発のエネルギー源であるウランが日本に豊富に出るわけでもない。原油と同じく、輸入していることに変わりない。自動車の排ガス規制の歴史を考えても、厳しい規制を科すことにより新技術が発展した。それをクリアーして日本の自動車産業も世界に発展できた。

 このままでは日本に自然エネルギー技術が育たない。外国で発展したものを追いかけることになってしまう。コンピュータで起こった歴史が繰り返される。経団連会長が心配するなら、そっちのほうではないか。大分前に書いたことだが、電気は発電するだけではない。送電して各家庭や各工場に届いて初めて意味がある。その「送電ロス」が大きい。また食品のように「冷凍」しておけない。でもバッテリーの機能が充実して、電気自動車もできるようになった。「省エネ」「電池」「送電」の大技術革新こそ必要で、そういう大きな視野での発言こそ、経済界のリーダーに必要だろう。
コメント (1)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 映画「天国でまた会おう」、... | トップ | ドナルド・キーン、堀文子、... »
最新の画像もっと見る

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
スモーキーマウンテン (三毛猫)
2019-03-18 03:47:32
福島瑞穂が「内閣府にヴェオリア社の担当者が入っている事は問題だ」と指摘していました。
ヴェオリア社は、水道事業の他に産廃事業もやっていて、麻生太郎の娘が嫁いだフランスのロスチャイルド家により、設立された会社。
麻生セメントに出資しているのは、フランスのロスチャイルド家で、麻生太郎は、彼らの代理人。
2016年4月16日の日経新聞によれば、ヴェオリアが、放射性廃棄物の処理を日本で開始するという。それを受けるかの如く、日本は、同月28日~8000ベクレルの放射性廃棄物を公共事業で再利用出来る様になりました。
日本列島が、世界中の放射性廃棄物のゴミ捨て場になろうとしています。
返信する

コメントを投稿

 〃 (原発)」カテゴリの最新記事