尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

イスラエルのワクチン接種とドイツのビオンティック社

2021年02月12日 23時12分10秒 |  〃 (新型コロナウイルス問題)
 諸外国では昨年のうちに新型コロナウイルスへのワクチン接種が始まったという報道が聞かれた。しかし、日本ではどうなっているんだろうか。河野太郎が突然「新型コロナウイルス感染症ワクチン接種推進担当大臣」なんて任命を受けたが、調べてみるとそれは1月18日のことだった。そしてようやく、2月12日になってファイザー社(推定)のワクチンがベルギーから到着した。もっとも日本ではまだ厚労省の正式承認が下りていないから、明日から打てるということはない。(異例に早く14日に承認され、すぐにも医療関係者の接種が始まるらしい。)
(ワクチンが到着)
 日本政府はワクチン製造会社と国民全員分の契約を済ませているということだが、アメリカやEUも「ワクチン囲い込み」を強めている。自国の分を後回しにしてまで他国に輸送するのは難しいだろう。世界ではイスラエルでワクチン接種が進んでいる。すでに国民の4割ほどが2回の接種を行ったという。これはネタニヤフ首相がファイザー社と契約し、接種時のデータを提供する代わりに早めにワクチンの提供を受けたらしい。

 イスラエルでは直近2年間で4度目の総選挙が予定されている。収賄で訴追されている首相と人口は約880万人ほどの国でデータが得られるファイザー社の思惑が一致したのだろう。しかし、パレスチナの占領地域では接種が遅れているのと話もある。データとしては「2回目の接種から7、8日後のワクチンの有効性は、現在のところ93%と推定される」という。ネタニヤフ首相は「過去30日間に国内で死亡した感染者は1536人で、このうち97%以上がワクチン未接種で、接種済みの人は3%より少なかった」とも発表している。接種していても死亡する例がある。

 そのイスラエルでワクチンを打った日本人がいる。共同通信の特派員の体験記が2月6日付東京新聞に掲載されている。事前に「震えや肩の痛みがあるかもしれません。肩の痛みは3日ほど続くでしょうが、さらに続けば連絡して」と言われた。接種後に10分ほどアレルギー反応確認のため待機したが、全部で15分程度で済んだという。しかし、夜になって左肩の痛みが増し、激しい頭痛や歯ががたがたするふるえに襲われた。翌日も肩の痛みや頭痛が続いたが、2日後に回復。2回目の接種の方が副反応が強いと話す人が多く不安が募るともいう。

 これをどう思うか。他のワクチンに比べて結構副反応が強いような気がする。許容範囲とも考えられるが、イスラエルでも若い世代は感染リスクが少ないと考えるのか、接種が進まないとも言う。12月20日から接種が始まったイスラエルでも、最近は人数が減ってきているらしい。果たして日本でどのような副反応が出るのか。このような肩の痛みや頭痛がウェブ上でリアルタイムで拡散されると、恐ろしいと思う人が増えるかもしれない。もっとも副反応は少ないかもしれず、今のところなんとも言えない。

 ところで今回今までに比べて非常に早くワクチンが開発された。イスラエルの接種を報告した特派員によれば、そのワクチンには「ファイザー・ビオンティック・COVIDー19」と書かれていた。ファイザーはアメリカの大企業だが、次のビオンティックはドイツのベンチャー企業である。「多和田葉子のベルリン通信」(朝日新聞1月26日付)に出てくる。そこでは「バイオンテック」と表記されている。興味深いのはその会社を創設したのが、トルコ系移民夫妻だったということだ。2001年に最初の会社を作り、2008年に小都市マインツにバイオンテック社を作った。トルコ系の医学生夫婦が会社を作って研究を積み上げてきた。それが可能なドイツの社会はやはり素晴らしい。
(mワクチンの仕組み)
 今回のワクチン開発が早く進んだのは、従来の病原体のウイルスを弱毒化して使うワクチンと違うからだ。それは「メッセンジャーRNA」を体内に送り込んで体内でウイルスのタンパク質を作らせるという方式である。僕がこれ以上書いても混乱させるだけなので、詳しく知りたい人は自分で調べて欲しい。ここ数十年の生命科学の発展がワクチン開発に生かされている。ところで中国もロシアもワクチン開発を行っているのに、何で日本製ワクチンがないのだろうか。いや、日本の会社も開発を進めているのだが結局遅れを取っているらしい。ドイツの例で判るように、若い人が起業してワクチンを開発するということは不可能ではない。それも凄いことだ。
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